概要
『ライオンキング』に登場するキャラクター。
本作のディズニーヴィランズ(ディズニー作品の悪役キャラクター)。
原語版声優はジェレミー・アイアンズ、日本語吹き替え版は壤晴彦。ジェレミーということで、とあるセリフがダース・ベイダーへのオマージュとなっている。
プライド・ランドの先代王・アハディと妻のウルの次男で、王ムファサの弟であるオスライオン。シンバの叔父。
ただし、本当の血縁ではないことも示唆されている。(参照)
黒く長い鬣と痩躯、左目の傷が特徴で一人称は「俺」や「俺様」。
裏ではライオンの敵であるハイエナのシェンジ達の住処に足を運んでおり、支配下に置いていた。
初代ライオンガードのリーダーだったアスカリにちなんで名付けられたことが判明していることから、スカーの本名もアスカリまたはアスカリを思わせる名前である可能性がある。傷を負った際にムファサが「スカー」というあだ名をつけたのがスカーという呼び名の由来。
(アスカリの霊が、スカーとウシャリの毒の呪いに苦しむカイオンを助けて、ロアーオブエルダーズの更なる効能を教えている場面)
仕草の一つ一つが無駄に色っぽいライオンでケモナー達から絶大な人気を誇る。
性格
王弟として王位の継承権を持っていたが、後述するシンバのお披露目を欠席するなど、劇中での振る舞いには怠け癖が目立つ。
しかし本来の彼は狡猾にして残忍。力比べでは敵わないと捉えているムファサ相手にも、「知恵比べならいくらでも受けて立つ」と自らの知性を誇っており、プライドの高さが窺える(ただし実際に戦えば、成長したシンバともいい勝負ができるなど、決して弱いわけではない)。
己の目的のためには兄弟親戚すら手にかけるなど、手段を選ばない非情さを持つが、やはり力に自信がないのか、追い詰められるとひどく情けない姿を見せることも。
ムファサに対する嫉妬心や劣等感は強く、後述した王政の裏で陰口を叩かれていることには、非常に嫌気がさしているようだった。
彼の言動をよく見てみると、我々人間を示唆するかのような振る舞いや発言が見当たる。
たとえば、上述した知恵比べをふっかけるような発言は、知恵を発達させることで非力さを補っている人間の特色を想起させている。
また、シンバとの最終決戦では、目潰しの為に火の粉をシンバの顔面に投げ付けているが、火とはそもそも、動物が本能的に避けるはずのものである。それをスカーは何の躊躇いもなく武器として使っているのである。これも、我々人間に当てはまることであり、現時点で火を武器に使う事が出来るのは人間だけなのである。またスカーお得意の嘘も、人間だけがする(と考えられていた)ことである。
人間が一切登場しない本作において、皮肉な事に人間と言う存在を一番体現しているキャラクターとも言える。
経歴
王位継承権はムファサに次いで第二位であったが、王子であるシンバの誕生によって第三位になってしまった。
そのことを不快に感じたスカーは、ハイエナ達をけしかけムファサとシンバを始末し、腕ずくで王位を奪うことを画策する。
何も知らないシンバを騙しヌーの大暴走に巻き込ませ、助けを求めるムファサを崖から突き落として殺害した。
そしてシンバに無実の罪と責任を負わせ、プライド・ランドから逃げ出すように仕向けた(この際にシェンジ、エド、バンザイの三匹にシンバの殺害を命じるがシンバが茨の森に落ちたことで深追いが厳しいと悟り、またシンバが生きているわけがないと高をくくったことで逃がしてしまった)。
その後はプライド・ランドの王になるも、野放図なハイエナ達の振る舞いを許しているうちに、国はすっかりと荒れ果ててしまった。
削除(または省略)されたプロットでは、ノートルダムの鐘のフロローよろしく、なんとナラを己が物にしようとして迫り、それがきっかけでナラはプライドランドから逃走し、結果的にシンバと再会することになる。その時のソングが本来の「準備をしておけ」であった("Old version of Be Prepared" と検索すれば閲覧可能)。そして、それがこのたび、ショートシーンではあるが、20周年記念としてファンが自作で上の動画を作った。
そうして成長したシンバがプライド・ランドに帰還し、一度は言いくるめかけるも、「俺がムファサを殺した」と勝ち誇ったことが仇となり、反撃を受け全面戦争に雪崩れ込む。
「真実の敵はハイエナ達だ」という言い訳も通用しなかったことから、最後の勝機をかけ直接対決に臨むも、あと一歩のところで敗北。
前述の命乞いを聞いていたハイエナ達からも見限られると、炎のプライドロックの中で寄ってたかって食われてしまう。
口八丁だけで王位まで手に入れた男の命運が、口を滑らせたことで一気に尽きてしまうという、皮肉な最期を迎えることになった。
- 用意されていた別バージョンでは、スカーが崖につかまり、シンバに命乞いをする → スカーを助けようとしたシンバを逆に引きずり落とす → 炎に落ちたシンバだが生き延びる → (火炎の上昇気流のため)プライドロックを炎が包み、頂きにいたスカーは高笑いしながら炎に焼かれる、という流れだった(参照)。
シンバらに大きな影響を及ぼし、物語全てを通して最大の敵として描かれた。
続編であるシンバズ・プライドには彼の妻であるジラと子供達(実の息子のヌカ、実の娘のビタニ、実子ではなく養子にした跡継ぎのコブ)が登場する。
シンバとムファサに対する非道とは対照的に、他のオスライオンの子どもであるコブに王の素質を見出して後継者に迎え入れたという寛大な一面も持ち合わせていたことが判明する(一方で、実の息子で本来なら後継者だったヌカに、自分と同じく嫉妬や憎悪を原動力とした闘争心を煽らせる目的があった可能性もある)。
その後
『ライオンガード』シリーズでは、なんと復活している(といっても霊体ではあるが)。関連媒体同様、若干明るい毛色をしている。
新たに明かされた過去によると、ムファサの弟であるため慣習通りに「ライオンガード」のリーダーに任命され「ロアーオブエルダーズ」(日本語では「英雄の吠え声」)を授かった。責任感と仕事への誇りはあったらしく、パトロールを彼自身でほとんど行っていた。ただし、これがとある悪のライオンとコブラに接近されるきっかけの一つとなってしまった。
彼の率いていたライオンガードは、彼ふくめて5頭の雄ライオン達である。が、その「ロアー」のあまりに強大な威力を行使するにしたがって慢心し、王にふさわしいのは自分と思い込んだ。そして、なんとライオンガードにムファサの破滅または転覆または殺害に協力するように命じたが、メンバー達が拒否したため、あろうことかメンバー達を「ロアー」で殺害してしまった。しかし、「ロアー」を悪用したことで祖先の魂達から能力を剥奪された。
この時、「ライオンガード」という組織/システム自体がプライドランドやアウトランドにおいては忘れられた存在や伝説となってしまった。
また、スカーに忠実であったジラが、スカーが生前にジラの息子コブを王位継承者に選んだので、シンバが王位を継承した後にシンバを襲った。が、対格差に適わず、結果、アウトランドに追放されることとなった。
そして、現リーダーであるシンバの息子カイオンが「ロアー」を火山で使用したことにより、炎/マグマの霊体となって復活した。生きていた時よりも生き生きとしている感がある。
そして、新たに判明した事実がある。それは、悪堕ちしたライオンはスカーが最初ではなく、大昔から多数いたということである。ライオンガードという組織と、ライオンとアフリカゾウの連合が作られたのも、悪のライオンたちがプライドランドをほとんど破滅させたからである。
スカーも、とある悪の雄ライオン、それもジラ同様に右耳に傷と額にラインを持つ雄ライオンに「ロアー」の力を授かったために接近され、「力を持つものこそが支配すべき」だと洗脳的に影響されてしまった。そしてそのライオンと徒党を組んでいたコブラによって目に傷がつけられ、スカーはコブラの毒によって凶暴化し、そのライオンは「言うことを聞けば毒を癒してやる」と脅迫した。スカーもそのライオンの「力ある者が支配すべき」という考えには賛同していたが、騙されたことに激怒し突然凶暴化し、結局はそのライオンとコブラを殺した。
(ちなみに、このことはシリーズ内の挿入歌でも語られている。)
しかし、コブラの毒は消えぬまま、敵を葬った事をムファサに報告した際に、本当は誉めて欲しかったのに(←実際にそう言っていた)、ムファサに「スカー」とあだ名をつけられたことで嘲笑されたと思い、関係が悪化してしまった。ただし、ムファサは初代ライオンガードのリーダーだったアスカリと名誉の傷をかけた称賛を込めたあだ名のつもりだったと監督が明かしており、すれ違いとコブラの毒による凶暴化による悲劇が生まれてしまった。また、スカーという名前をスカーが苦々しく思っている事も判明した。
- スカーがガードのメンバーを殺害してしまった場所は、後に悪の動物たちのたまり場となった。ライオンガードのメンバーを殺害してしまったのもコブラの毒の影響かもしれないが、スカーはその際にかすかに笑っており、毒に悩まされたカイオンの姿とは異なっている。もっとも、カイオンの場合は毒の効果を軽減する薬草を常々仲間から貰っているという部分も異なる。
- 祖先の魂達が、なぜスカーがライオンガードを殺害してしまう前に「ロアーオブエルダーズ」を取り上げなかったのかという疑問があるが、カイオンの様子を見ていると、ロアーを発動する事を決定するのは使用者の采配によるが、明確な悪意をもってロアーを使用することと、ロアーをもって一線を越えてしまうかどうか、によると思われる。
そして、霊体となって復活した場所は、かつてあのライオンとコブラがスカーを陥れた火山であり、シェンジたちの子孫であるジャンジャと彼の一族が拠点の一つにしていた。霊体になった後の主な宿敵はカイオン達であり、カイオンもスカーの手下のコブラに今際の瞬間に左目に傷をつけられ凶暴化しつつあり、カイオンは「闇堕ちしなかったスカー」とも言えなくもないライオンになりつつある。
そして、プライドランドを恐怖に陥れた古代の悪の象徴も「目に傷がつけられた者」であり、コブラの毒によってライオンを闇堕ちさせるという手法が古代から取られてきたのかもしれない。
公式以外の世界線
狭義の公式ではない世界線(作者もディズニーも公式である事を否定しているが、ディズニーから出版されているという意味で公式でもある)では、本名は『タカ』であり、幼い頃はムファサとも仲が良かった。父のアハディが次期王にムファサを選び、彼にばかり愛情を注ぐようになったことで疎外感を感じる様になり、ハイエナ達とつるむ様になって、その時に自ら『スカー』と命名したらしい。そのため、ある種の哀しき悪役と言える。ただし、アハディがムファサをより好んだのは自他共に厳しい性格故にムファサの責任感に溢れた性格を評価していたからだとされていて、タカへの愛情も深く、スカーが自らの責任でバッファローの群れを怒らせて傷を負って家族全体を危険に晒した際は、そのことを諌めた一方で、バッファローの群れに対しても怒りを表した。
アハディがスカーに傷をつけたというのは創作であり、スカーがサラビを好きだったというのも創作である。実写版では、ムファサが傷をつけ、スカーがサラビを妻にしようとしたなど、これらの創作と類似している。
キングダムハーツ
『キングダムハーツ2』にて登場。動きは本編と概ね同じだが、後にハートレスとなって復活する。この流れは、『ライオンガード』に先駆けて復活とも言える。なんと、ハートレスになっても、原型や自我を保っている。実はマスター・ゼアノート並みに強靭な精神力の持ち主なのだろうか?
ミュージカル版
左右非対称のマスクとメイクをしており、マスクの左目には原作同様大きな傷がある。影絵の登場もある。
基本的には映画版のスカーと同じだが、他のキャラクター同様に出番が増えている(そもそも作品全体が長く編成し直されているため)。
全体的に台詞が増えたほか、「スカー王の狂気」というスカーがメインの楽曲が追加されている。かなりコミカルに仕上がっているが、演者の力量もあって作品にはよく馴染んでおり、亡き兄や王であることからの重圧に潰されて狂気の淵に一人沈んでいくスカーの様子を窺える。またこのシーンでは、原作では見られない、ナラに自分の妃となるよう迫る様子も見ることができる(返り討ちに遭っているが)。
スカーが王になった後のザズとの掛け合いでは、上演地のご当地ネタが聞ける。
実写映画版
原作映画放映から25年後に放映された実写映画版では、原語版ではキウェテル・イジョフォー、吹替えを江口洋介が担当した。
あまり長いとは言えない鬣や少しくすんだ体色など、どこかツァボの人食いライオンや原作版の長男ヌカを彷彿とさせる、やや不気味な印象を感じさせるデザインとなっている。
劇中では「狩りを制限するムファサのやり方は厳しすぎる。もっと自由にやるべきだ」とハイエナ達に語り、実際にそうした結果国が荒れ果てていくなど、スカーの王政が原作映画より具体的に描かれている。
ムファサ殺害後には、兄嫁のサラビに自分との関係を迫るなどの描写も見られた。画面の変化もあってか原作映画のコミカルさが薄まり、より邪悪な印象を与えているが、断ったサラビ達の食糧を制限して一本取った気になるなど、見ようによってはところどころに情けなさが垣間見えている。(奪った群れの雌を自分の雌にしようとするのは、野生のライオンとしては普遍的な行動でもある)
終盤、シンバと対決して崖に落ちてしまい原作同様ハイエナたちに食べられた。
第2作『ムファサ』ではムファサの過去とともに彼の過去も描かれており、当時は「タカ」と名乗っていた。本作では日本語吹き替え版を松田元太(TravisJapan)が務めている。
余談
- スカーが目に傷を負った理由は様々であり、狭義の公式ではない書籍ではバッファローによって、ミュージカル版については舞台版スタッフの解釈の言及はないので真偽は不明だが出演した俳優の言及ではムファサとのじゃれ合いの中で、実写版ではムファサに敗れ、そしてライオンガードではコブラによってつけられたことになっている。アハディが傷をつけたというのは創作である。
- 制作秘話によると、ムファサとスカーは血の繋がりのない兄弟としてデザインされたらしい。実写版の特殊な世界線で描かれると言うていでフランチャイズ30周年記念作品として2024年末に公開される『ムファサ<ライオン・キング>』ではその設定が踏襲される模様であり、いかにしてムファサと出会い兄弟として同盟を結んだのか、および実写版における先述の傷跡の誕生秘話も深掘りされると思われる。なお予告にはスカーの父と思われるライオンも登場しているが、よく見るとアニメ版の裏設定が踏襲されるのかこちらに近いようにも見える。血統の言及がそれをより促しているようにも見えるが…真相はまだ謎。
- ヘラクレスのワンシーンには彼の毛皮が登場しており、神話の通りヘラクレスが身に付けていた。これらのため、ヘラクレスの試練の一つであった「ネメアの獅子」は、スカーの先祖または関係者なのでは?という考察がされたこともある。どちらも見た目が生息範囲が近いバーバリライオンやインドライオンに似ている。
- ネメアの獅子は、エキドナとテュポーンまたはオルトロスまたはセレーネーと、女神か、最強クラスの魔神や悪魔の血を引いており、スフィンクスの兄弟でもある。また、黄金の羊毛の守護竜、ケルベロス、ヒュドラ、ラドン、パイア、キメラ、プロメテウスを痛めつける大鷲、ゴーゴン、スキュラなど、家族には凄まじいメンバーがそろっている。
- ザズーがムファサに対し「スカーはよい敷物になりますぞ」とすさまじいブラックジョークを言っており、ムファサもそれを大して諌めていない悲しい場面があるが、ヘラクレスの時代にはヘラクレスによって床に投げられ本当に敷物にされかねない状態になっている。
- 私欲のためにライオンガードのメンバー達を殺害したことでプライドランドでの地位を失ったと思わしい。そこからシェンジたちと知り合ったのかもしれない。
- ライオンキングとヘラクレスのアニメーターは同じである。
- 他の媒体ではコブもスカーの子孫とする件もある。一方、ジラもスカーの友とされることもある。単なる表現の違いなのかどうかは不明。
- スカーは、1990年版の『ライオン・キング』と同一または別の『キング・オブ・ジャングル/キング・オブ・ビースツ』では、おそらくは雷に撃たれた過去がある隻眼であり、より巨大で恐ろしい存在であった。おおよそのプロットは同じだが、舞台がジャングルであり、プライドの名前は「ンドナ」(古い敵だが後に同盟先になる「ムバラ・プライド」がいる)、ンドナにおける御法度である獲物の強奪をムファサに対して起こしている(参照)。
- 1月公開のバージョンと5月公開のバージョンがそれぞれあるので注意。
関連イラスト
関連動画
(復活したスカー)
(この動画の01:03に見られるのがネメアの獅子)
関連タグ
バーバリライオン(ライオンの亜種の一つでスカーのモデル)
キングダムハーツ(2で登場。こちらではシンバに倒された後、なんとハートレスとして復活したうえ、上記の通り自我と限界を保つという何気に凄い事をしており、同じことをやったのは原作付きオリジナル含めて彼とマスター・ゼアノートのみである。)
レオナ・キングスカラー(ツイステッドワンダーランドで彼がモチーフのキャラクター。)