概要
「メディアという権威」に対して無意識のうちに「正確な情報を届ける信用に足る存在」と認識してしまうある種の認知バイアスの発露の一例。
ここでは「テレビ」といってはいるものの、ラジオや新聞、インターネット、権威ある人物の書籍、等々である可能性だってある。
実際には、これらすべてにおいて完全な中立は有り得ない人間が介在している以上は絶対にウソをつかないということは有り得ない。
元ネタ
「冷静に考えろよ」
「食べたその日に5キロも痩せるの変だろ⁉」
「だってテレビはウソつかないだろ!」
勘吉
「どうゆう根拠だよその理論‼」
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』におけるパワーワードの一つとして有名。
ある回で実家に戻った勘吉が、自分の名を騙る振り込め詐欺に軽々と応じ、テレビの悪徳通販にはまりまくっていた母親の情弱ぶりを一喝した際にその母親から飛び出した言葉がこれ。
勘吉が詳細を確認すると、これらに加え父親の両津銀次はギャンブル狂いと化していて2人して家の私財を使い込んでおり、実家の商いである佃煮屋はその自堕落な生活から事実上放棄して久しいという末期状態にあることが判明した。作り置きしていた佃煮も放置されて久しく全滅したと判断され、このうえ多額の借金まで確認された。
進退窮まった勘吉は、大叔母にして超神田寿司を取り仕切る擬宝珠夏春都に救援を要請する。そして夏春都と彼の又従姉妹にあたる擬宝珠纏・擬宝珠檸檬ら擬宝珠家の協力のもと、佃煮屋「よろず屋」の老舗の味復活と経営再建に着手することになった。
そして、経営再建に目途が立ってきた折に纏が「あの勘吉がマトモに働いてるなんてwww」と噴き出す。
訝しんだ勘吉が問い詰めると、なんと「よろず屋」の経営破綻は両津家夫妻と擬宝珠家が仕組んだ狂言だったことが暴露された。そしてその目的は、なかなか実家に帰らない勘吉にいろいろと理由をつけて親孝行させることにあったという。
一時は本気で肝を冷やした勘吉が脱力したのはいうまでもなかった。
余談ながら、この間に纏と2人で協力して佃煮の販路開拓のために東京の下町中を駆け回っていた様子を目撃した勘吉の知人らが、その仲の良い様子を勘違いして「両さん結婚したのか」と囁き合ったのは別のはなしーーーー。
現実には
上記のように、『こち亀』におけるこの言葉は勘吉を騙すためのブラックジョークである。
なのだが、実際のところテレビという「権威あるメディア・マスコミ」に目をくらましたユーザーの一部が本気でとなえるケースもそれなりにある。参考
そしてある程度の良識を備えたひとなら周知の通り、テレビはそれなりにウソをつく。
「ウソ」でなかったとしても、誤報もあるし、全て本当のことを話している訳ではない。
事実、テレビだけでなくメディア界全体でコンプライアンス関連のトラブルは今なお絶えない。
こち亀における別回でも、作中屈指のインテリにして実業家である中川圭一から「テレビやマスコミはスポンサー関連事業、局や社の方針などがいろいろと絡んできますので決して中立で正しい意見とは限りません」「目に見えないマスコミ操作もありますから」という言葉が飛び出している。
どうも作者である秋本治氏自身が何度か行われたマスコミからのインタビュー内容を露骨に改竄された経験があることが各ストーリーに影響を及ぼした模様。
もちろん疑心暗鬼になりすぎるのも考えものだが、メディアリテラシーに気を配るのが重要なことに変わりはない。
そして当然だが、代わりにYoutubeやX(旧Twitter)を鵜呑みにするのは何も変わらない。むしろYoutubeやXは再生回数や閲覧数が収益に直結するので、余計に情報は偏るし都合の悪い情報は隠蔽する。実際にネットのデマが元で、スマイリーキクチ中傷被害事件やDappi問題なども存在した。
テレビじゃないから、特定の政治団体を応援/批判しているから、特定の国籍や民族を批判/応援しているから、推しのYoutuberだから…それらの要素は情報の真偽とどう関係があるのか。
情報を信じるときはその情報がなぜ信用できるのか一旦考えてみよう。
しかし人間心理とは不可思議なもので、逆に「飛ばし屋」(=誇張・憶測・捏造記事を濫造する記者)とか「羽織ゴロ」(=肩書だけ立派でぶっちゃけ程度はなっていないマスゴミ)と揶揄される人種・業界に一定以上の需要が生じてしまっているのが現状だから始末が悪い。
事例をテレビやネットだけでなく紙媒体のものに求めればもっと惨い実態が浮かび上がる。
かの東京スポーツがかつて裁判で訴えられた際に「ウチの記事内容をまともに受け取るユーザーなんざいるわけないだろ」と開き直り、このことで裁判長から「信用が担保できていないマスメディアなんて破綻した概念でしょうが」(要約)と𠮟られたのは、笑えるけど笑えない業界の黒歴史である。
こうした週刊誌というかゴシップ文化は近代イギリスが発祥の一つとされ、第一次世界大戦でかの国を訪れたアメリカ兵がそのブラックジョークのキツさに驚愕したとされる。
そしてそのアメリカでも、第一次世界大戦に先立つ米西戦争では『ニューヨーク・ジャーナル』紙が米戦艦メイン号の爆発事故をその原因が分からないうちから「きっとスペイン軍の仕業だ!リメンバー・メイン!」と騒ぎ立て、これに世論が動いてしまい両国を開戦へと追い込んでいる。もう一度いう、マスメディアが国家間の戦争を煽って実現させてしまったのである。この戦争はけっきょくはアメリカの勝利で終わるが、肝心のメイン号の爆発事故に関しては現在でも原因不明である。
現在のアメリカ社会でも俗に言うオールドメディアやSNS上でフェイクニュースという概念が乱舞してしまっている状態で、この種の問題の根が深いことが如実に表れている。
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佐藤栄作 - 首相退陣時に「新聞は偏向記事を書くからテレビで直接発言する」と表明。
テレビが暴走したらまったをかける機関。こち亀での案件で出番になるのは後者。
とあるコンテンツが誤情報を発信してしまい抗議をうけた際の弁明の一例。