概要
『 近畿霊務局 - Kinki Spiritual Affairs Bureau 』とは、2024年10月4日にSteamで発売された霧笛ノト氏による和風ホラーTPSである。「幽霊に思いっきりやり返せるホラーゲーム」をテーマに、セーラー服姿の主人公を操り襲い掛かる幽霊たちを物理的に除霊していく。
ホラーのお約束やネットミームなどを踏まえたギャグアクションゲームではあるが、次第に明らかになっていく世界観、大量の犠牲者が出るシリアス展開、シュールギャグと小粋なセリフ回しを挟みつつ、国家ぐるみの陰謀に立ち向かっていくハードボイルドな主人公など、導入からは想像もつかないストーリー展開が話題を呼んだ。
ストーリー
除霊が行政によって行われる、平行世界の日本。
霊務省 近畿霊務局に属する公認除霊師、白石瑞希(27)は、突如としてインターネットから存在が消えた自治体、奈良県賽河村を調査しに訪れた。村内に住民は一人もおらず、自然発生にしては数が多すぎる違法幽霊と遭遇する。
電力・電話・インターネットはいずれも遮断されており、何者かが巨大な結界で賽河村を封鎖しているのを見抜いた白石は、除霊課長の小日向と後輩の丸岡から無線で助言を受けつつ、悪霊の巣窟と化した賽河村の謎を追う。
(Steam 公式紹介文)
登場人物
- 白石 瑞希(しらいし みずき)
近畿霊務局 霊事部 除霊一課に所属する一級除霊師。fanboxで公開されていたプロフィールでは26歳だが、本編ストーリーでは27歳になっている。
並外れたフィジカルと胆力を持つ近畿霊務局のエース霊媒師で、廃校や空き家を不法占拠する幽霊を強制的に除霊するのが主な業務。対霊銃の扱いに長け、徒手格闘でも幽霊を蹴散らす戦闘力の持ち主だが、無断欠勤、無許可での発砲、手続きをすっ飛ばした行政代執行など、問題行動を挙げればキリがない。前職で過酷な経験をしてきたせいか気怠げでやさぐれており、幽霊だろうが同僚だろうが敵対者と認識すれば躊躇なく攻撃を加える歩く暴力装置。
効率的な除霊の最適解として「か弱い女子高生」の扮装で霊を誘き寄せるという手段を常用しており、学生時代から背が伸びなかったために当時の制服を流用している事から本人は「(本物の制服なので)コスプレではない」と主張しているものの、どちらにせよ同僚からは異常な行為として受け取られている。もっとも、セーラー服姿はあくまでも雑魚潰しのための擬態で、本格的な作戦行動に際してはプレートキャリアやヘルメットを着用し、ボディーアーマーに身を包んだ装甲兵と化す。
(画像左側)
作中では「台湾以降シャバに馴染めなかった元自の2水機1中隊」とも言及しており、陸上自衛隊 水陸機動団の第2水陸機動連隊の隊員として台湾有事らしき紛争を経験した(正規リリース版ではミャンマーのPKOに変更された)ことが示唆されている。手に馴染むのか現職でも20式小銃を愛用しているが、メンテナンスはサボっているらしい。
- 小日向 智樹(こひなた ともき)
近畿霊務局 霊事部 除霊一課長。埼玉出身。白石の直属の上司で、彼女の独断専行には慣れっこになっており、賽河村上空に飛ばした無人飛行機(ISRドローン)で白石を監視しつつ、作戦室より無線で指令を出す。
白石とは互いに皮肉を言い合うほど気心の知れた間柄だが、除霊案件の処理に手段を選ばない部下の蛮勇ぶりの後始末に追われているため、禁煙中でもデスクにはブン投げる用の灰皿を常備している。ちなみに、デスクのネームプレートには『小日向 英二』と書かれている。
- 丸岡 詩織(まるおか しおり)
(白石左側の女性)
近畿霊務局 鑑識課のパーカーを着た眼鏡の鑑識官。心霊現象を科学的に解析する心霊科学のエキスパートとして、御札や護符の解析・無力化などの作業を手掛けている。
大学時代からの仲である白石を現在でも「センパイ」呼びしており、フリーダム過ぎる彼女の行動を「放浪癖」と認識している。白石が賽河村へ乗り込んだ時刻にたまたま職場へ戻ってきたばかりに指令室まで駆り出されてしまう巻き込まれ体質で、小日向の指揮の下で作戦室から白石をサポートする。“セーラー服と機関銃”がピンと来ない世代。
- 紫藤 暁彦(しどう あつひこ)
霊務省 除霊総括審議官。白石や小日向の上司にあたり、裏で賽河神社の秘匿技術を応用した「フナト計画」を進めている。
孫がおり、霊務省本庁舎の執務室にも一緒に写った写真を飾っている。甥も霊務局の所属。
- 賽川 絢音(さいかわ あやね)
賽河村の賽河神社を代々守る賽川家の跡取り娘。神務庁所属の主任巫女でもあり、下級巫女「神社警務隊」を従える現場指揮官。大学への進学のために上京を希望している現役JK。
都会にあこがれる一方、丸岡でも容易に解除できないプロテクトを組んだり、ミサイルやドローンなどの高度電子機器を完全無力化する電子対抗結界を構築するなど、巫術に造詣が深く研究熱心。
密輸を阻止した96式装輪装甲車を戦力として秘匿する等したたかな面もある。白石よりも一回りは年下だが、よほど人間が出来ており、巫女たちからも慕われている。
- 賽河神社警務隊
賽河神社の巫女さん。現地採用のJC集団だが、賽河村の過疎化が著しいため、全員が隣接する下滝町の出身。時給は1300円、食事付きで住み込み可。対霊火器の発砲・整備もちろん、車輛の運転もこなし、休暇の日は奈良市のラウ〇ンに出かけているらしい。
飲酒や喫煙など素行不良も目立つが、警務隊そのものが家庭に問題のある少女のセーフティネットとして機能しており、窃盗や売春に比べればマシとの事。警務隊を家族のように思っている巫女も多く、絢音の人望もあって士気は非常に高い。
白石が交流するのは菊川、大崎、板倉、橋爪、柴山、西岡の6人。
過去回想では栗原、七瀬、伊藤(班長)、川嶋(班長)、長岡、筒井、葛西、鈴木、菅原、飯島、池上が登場。墓地での初交戦時には坂井、木塚、前川の3人が登場している。
用語
- 対霊火器・対霊銃
外傷性ショックにより違法幽霊を強制成仏させる、対霊弾の装填された銃火器。
現政権下では国民が霊障から身を守るべく、対霊火器の販売・使用の許可を含む銃刀法の改正が検討されている。ただし対霊銃による成仏は完全ではなく、怨念の強さによっては数日で復活してしまう。
- 対霊弾
対霊火器に装填されている弾丸。幽霊“にも”有効なだけで対人殺傷能力は据え置きのため、銃器の流通による自殺者のさらなる増加が懸念されている。
- 霊務省
作中日本における行政除霊組織。本庁は東京都千代田区におかれ、職員は国家Ⅰ種エリート官僚。東京の墓地不足に対処するため、サーバールームはチタン製墓石を用いた納骨堂となっている。
- 近畿霊務局
霊務省の管轄下で近畿地方の除霊を実行する現場担当(総務省に対して、窓口となる郵便局のようなもの)で、除霊困難な霊の収容も行なっている。
対霊火器をはじめ、大型ヘリやドローン、対地ミサイルなど装備・資金面では優遇されているが、本質的に人手不足であり、年間の除霊件数には限界がある。
- 除霊師
霊務局において違法幽霊除去の行政代執行を担当する職員。警察における刑事の役割。
- 警備部戦闘部隊
除霊師の除霊業務を数の力で援護する部署で、警察における機動隊の役割を担う。戦闘服にはデジタル迷彩が施されている。
- 神務庁
霊務省とは別の除霊組織。この世界では古くから神社や寺が独自に地域の除霊を行っており、神務庁は神社を管轄下においている。宗教組織から除霊行為を取り上げようとする霊務省とは対立関係にあるが、互いの人手不足もあり、近年ではある程度の協力関係にある。
戦闘に最適化された霊務省に比べると練度には不足も見られるが、兵員輸送車や攻撃ヘリ、対空ミサイルの運用など武装面では見劣りしない。自衛隊車輛との混同を避けるためか、ビークル類は赤で全塗装されている。
- 警務隊
神務庁所属の神社で除霊を行う武装した下級巫女。画一的な出で立ち、集団生活、除霊戦闘に耐えられる女の子なら採用される。
悪霊に個人を特定されないよう巫女装束・装備はもちろん、髪型や化粧で外見を似せており、賽河神社の場合は全員おかっぱ頭。神務庁直属の巫女は黒髪ロングで統一されている。
- 防衛省
「霊障の実戦運用」のモデルケースとして、賽河村での事変に干渉。警察の対処能力では手に余る事態を受けて陸上自衛隊を派遣している。
- 陸上自衛隊
デモ対応や証拠隠滅のために派遣される。白石の前職であり、海外派遣で実戦を経験していると思われる。
- 警視庁
デモ対応や証拠隠滅のために警察官や機動隊、SATが出動する。
- 内閣情報庁
事態収束と口封じとして、現場に配備されたSATと自衛隊を使役する。
- 賽河村
さいがむら。奈良県某所(吉野郡近辺)に位置する人口213人の限界集落で、高齢化率は45パーセント以上。ふるさと納税の返礼品に「濃縮還元口噛み酒」なる代物を出しており、まんまと釣られた白石が村のSNSをフォローしていた事が巡り巡って物語の端緒となる。
- 賽河神社
祭神である瀬音姫命を祭る賽河村の神社。当代の神主(絢音の実父)は婿入りした東京の神務官僚。
代々保有してきた村を守るための霊石鏡による結界技術「幽遷結界」が本作の事件の発端となっている。祭神の記したという巫術の古文書を研究していた神主や絢音によって、現代流の結界をいくつか開発・実用化されており、惨劇の中でもギリギリの秩序を保っている。
- フナト計画
違法幽霊の増加に対して霊務省が推進する“持続可能”な解決策。賽河村でのテストを経て、山梨県駒石村(人口357人)、秋田県荒瀬村(人口518人)、鳥取県金ヶ谷村(人口193人)で実施。最終的に全国10ヶ所程度に拡大する予定。
違法幽霊
いわゆる悪霊であり本作の敵性存在。ボス格の特殊個体や様々なバリエーションが登場する。
基本的に孤独死や自殺などで現世に未練をもって死亡し、法定成仏を拒んだ霊魂が性別・年齢に関係なく「髪の長い女性」型の悪霊(曰く「初期アバター」)となる。日常的な会話を交わしたり、ブラックな業務に愚痴るなど生前の習性を残した個体もいる。
光を嫌う習性を持つため、自ずと光源の少ない田舎に集まって霊障を引き起こし、霊障から逃れようとする人々の都市部への移住を加速させる一方、過疎化した地方にさらなる幽霊が流れ込むという“霊害スパイラル”に歯止めが掛からない状態が続いている。
違法幽霊の徘徊を放置すると霊障や霊災という形で人的被害をもたらすために、行政レベルでの対処が必要となっており、除霊に特化した霊務省が創設された経緯がある。作中の日本ではおおよそ年間1万体が発生。これに対して処置件数は年に2千から3千体に留まっており、対霊銃による成仏も確実ではないため、対処の難しい霊は各地の霊務局で収容・拘留されているが、それすらパンク寸前。
- 長い髪の女
一般的な髪の長い女性型の雑魚幽霊で、とにかく数が多い。特に武器も持っておらず、寄ってたかって標的をタコ殴りにする。
- 自爆霊
地縛霊の誤字ではない。体にC4爆薬をくくり付けて突っ込んでくるため、至近距離で爆発すると一発アウト。
- エンハンスド
陽変器によって反転した太陽の莫大なエネルギーを吸収し、助走つけて殴りかかってくるレベルにパワーアップした幽霊。本来であれば幽霊の活動できない日中に生前より元気に暴れ回り、対霊火器も効果が薄い。
- 幽撃連隊
知能・身体能力に優れた個体に訓練を施し、武装させた幽霊。戦力的には一般的な兵士に劣らないらしい。最低でも500体は養成されている。
なお、作中世界で死者の軍事利用は国際法違反。すでに死んでいるため、兵士として捕虜にもされない。
- 歩兵
知能の高さが災いして成仏を恐れているので、射線から遮蔽したり、人間を見て驚く、負傷した味方に蘇生措置を行う、倒れている悪霊を見て「幽霊が死んでいるぞ」と警戒、敵を発見できずにしばらく経つと警戒を解除したりと、本作の悪霊たちの中でも極めてツッコミどころが多い。哨戒、狙撃のほか、運転も可能。
- 装甲兵
全身アーマーを装備し、軽機関銃を乱射する。
- サタコ
貞子みたいな幽霊。某ホラー映画よろしくテレビの井戸からダッシュで殴り掛かる。出現時の大きさはテレビの画面サイズに比例するようで、巨大スクリーンからはメガサタコが登場する。
元ネタどおりに伊豆や四国で活動していたが、井戸の近隣に建てられた新築物件から聞こえてくるホラゲ実況の騒音に耐えきれず、あやしい誘いに乗って賽河村へと引っ越した。知り合いのカヨコは「絶対に闇バイトだ」と断ったらしい。
全国的に散らばる噂の数だけ存在する普遍的な幽霊。廃校となった村立賽河中学校跡地を拠点に、全体の3分の2が集結している。「最近の子はテンプレートでは驚かない」ため、出現のパターンに工夫を凝らすなど苦慮している様子。
- オリジナル
全ての花子さんの原点。量産花子さんの背負っているランドセルは黒く染まってしまっているが、彼女の物はいまだ真紅を保っている。違法幽霊の間では顔役的な存在らしく、以前からサタコやカヨコとSlackで繋がっていたらしい。本人曰く「カリスマ性と戦闘力は比例しない」とのこと。
- スケバン幽霊
廃校内でオリジナル花子とつるんでいる幽霊。釘バットを振り回すほか、銃火器も使用する。元々無かった青春を取り戻そうと躍起になるオッサン達など、学生生活に未練を持つ魂がスケバン化しやすいという。
登場銃火器・兵器
日本が舞台ということもあり、自衛隊や警察が装備する銃火器がメインで登場する。各省庁組織の他、違法幽霊や幽撃連隊も装備している。
本編での表記・呼称準拠。
- 銃火器
- 手榴弾
- スタングレネード
- 9㎜拳銃:サプレッサー付きの拳銃。正式名称は言及されないが、グリップにはP228の刻印がある。
- MP5:サブマシンガン。各組織が装備している。
- 64式小銃:賽河神社所属の巫女達が装備している。
- 89式小銃:各組織が装備している。固定銃床型のみ。
- 20式小銃:各組織が装備している。
- M14DMR:絢音が最初から装備している狙撃銃。
- Mk14:狙撃銃。
- M1014:12ゲージのショットガン。
- M249:軽機関銃。
- M32ランチャー:最終面のみで使用可能なグレネードランチャー。
- ブローニングM2重機関銃:車載機銃や銃座として登場。
- スティンガー:携帯式の対空ミサイル。携帯式を賽河神社(正式な装備ではない可能性がある)と自衛隊(現実の携行式は91式に更新済み)が装備し、それ以外はアパッチに搭載された状態で登場する。
- C4:自爆霊が体にくくりつけて自爆攻撃に用いる他、巫女達が車輌を爆破する際に使用。
形状から推定。
- 兵器
- 軽トラ:テクニカルに改造されている。
- LAV:自衛隊の軽装甲機動車。賽河神社や霊務省に配備されている。
- 装甲車:自衛隊の96式装輪装甲車(自動てき弾銃を装備するA型)。正式な装備ではなく、解体業者がヒズボラに横流ししようとしていたのを押収した車輌。
- MQ-9:近畿霊務局が装備する無人機。偵察、無線中継の他、対地ミサイルを8発搭載し空爆支援を行う。
- アパッチ:陸上自衛隊(ニュースに一瞬だけ、日の丸の機体が映る)、神務庁、近畿霊務局が配備する、AH-64D戦闘ヘリ。
- CH-47:近畿霊務局が運用する大型輸送ヘリ。
- UH-60:霊務省と神務庁が装備する汎用人員輸送ヘリ。
- 陽変器:「陽」を「陰」へと変換する事で太陽光を変質させ、幽霊の能力にブーストを掛ける装置。その性質から日中に真価を発揮し、効果範囲を地獄のような赤い光で染め上げる。
関連動画
関連項目
CoD…作者がかなり影響を受けていると思われる作品で、パロディと思われるシーンが登場する。コレっぽい武装も出て来る。