概要
中華思想(ちゅうか しそう)とは、中国古来の民族的自負の思想(※a3)。中原(中華文化の発祥地)を治める民族(原初は漢民族)が古代より累々と培ってきた文化的優越主義的概念に基づく思想である。
「中華」の周辺に「夷狄(いてき|未開の民、野蛮人)」(cf.Wikipedia:四夷)を配することをもって(※a4)「華夷思想(かい しそう)」ともいう(※a3~7,b)。
ナショナリズムの一種とされることもある。
この思想は、「中国が宇宙(天下)の中心であり、その文化や思想は神聖なものである。」と自負する考え方で、中原(※後代には地域は拡大したり政情に合わせて移動したりする)を治める民族(原初は漢民族)および儒教において古くから支持されてきた文化的優越主義思想である。
植民地支配を受けたことで宗主国の先進的な文化を受け入れた香港・マカオ・台湾ではほぼ消滅した概念だが、中国本土では未だ根強く残っており、華僑が現地住民と揉める一因になっていたりする。
言語
現代中国語では、「中國中心主義(中国中心主义|拼音:zhōngguó zhōngxīn zhǔyì;ヂォングッォ ヂォンシン チューイー)」または「天朝主義(天朝主义|拼音:tiāncháo zhǔyì;ティエンチァォ チューイー)」と呼んでいる(cf.Wikipedia:zh,Wiktionary:en)。
英語では、「中國中心主義」の拼音に倣って "Zhong-hua si-xiang" と音写し(※a8)、"Sinocentrism / sinocentrism(音写例:サイノーセントゥリゼン、ベタな日本語読み:シノセントリズム)" (cf.Wiktionary:en,Wikipedia:en) と意訳している。
後者の語構成は[ Sino-(中国の、中国人の)+ -centrism(一つの文化・人々・場所、あるいはその他の何かに焦点を当てたり、その優位性を信じたりすること。)]
詳細
本来、「中華」とは「世界の中心」、「中国」とは「世界の中心の国」という意味を持ち、政治的概念の国家を表すものではなく、「自分たちは世界(もしくは宇宙)の中心にいる」といった優越的・自己中心的な選民思想の一種を意味する言葉であった。
歴史としてみれば、紀元前2070年頃から紀元前1600年頃にかけてと推定される神代中国の夏王朝(cf.ピク百、Wikipedia)時代から基本的思想は変わっていないとされるが、はっきりと文献に残るのは四書五経にそのような思想が登場するのが最初である。
この思想は特に儒教に引き継がれ、漢民族が中原を支配していると保持され、特に異民族に圧迫される状況になると強くなるも、異民族が完全に中原を支配するとこの思想は顧みられなくなり、仏教や道教にて国が治められることになる(一部例外あり)。
この思想は、その後の各種停滞の原因となったり内政上の問題を引き起こしたりした。
言葉
この思想を表す代表的な言葉として、「天下、天土に非ざるものなし」(※ア1)というものがある。
これは現代語で言えば「見えるところ全てが支配者の領土である」という意味であり、そのため極端な場合中国神話の一つである「嫦娥奔月」という「もと仙女の嫦娥が月に昇って暮らした」という伝説を利用し、「月も中国の固有領土だ」と主張する者までいる(※注1)という。
なお、嫦娥奔月の件はともかくとして、月面での領土確保を巡って米国と中国の覇権争いは既に始まっていると見られている(※東経_2020,中央日報_2023)。
選民思想
このような考え方は、自体は異なるが世界的には古代文明から現代に至るまでの文明や民族、あるいは宗教などに一般的にみられるものであり、一神教的な宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など)、古代文明ではプレアメリカのマヤ文明、アフリカの古代および中世の諸文明、地中海世界では古代ローマ的世界国家的な思考などがあげられる。
仏教の場合は、「鎮護(乱をしずめて外敵・災難からまもること)」という考え方に沿って世界征服するということをすれば可能かも知れない。
また、これらの思想は「他国への劣等感」の裏返しなのではないか、という意見もある。
特徴
- 中華は世界の中心である(※注2)。
- 中華は世界の中心で、中華圏で起こったことは「全世界の出来事」に等しい。
- 紙の上の(ときには誤った)地図的な世界観を本気で設定する(※注2)。
- 世界の中心にある中華の外には、未開で野蛮な人々、少なくとも自分達より劣った人々が暮らしている(※注3)。
- 中華を統べる者は、自ずと全世界の頂点に立つ君主と見做される(※注4)。
- 中華を統べる者は、下々の者がへりくだるなら、それが夷狄であっても厚遇する。下々の者がよこした貢物への返礼は、等価値で良いはずがなく、過分に授けてやって然るべき(※注4)。
表記揺れ等
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- 表記揺れ : 該当なし
中華思想(tag1,tag2)(作品総数: 0|イラスト部分検索数: 2)… 本項。
華夷思想(tag1,tag2)(作品総数: 0|イラスト部分検索数: 0)
- 類義語
小中華思想(tag1,tag2)(作品総数: 0|イラスト部分検索数: 0)
ピク百およびpixivでは
ピク百では、「小中華思想」を含め、中華思想の関連記事は白紙化されることがある。
これは、「ピク百の記事内容に完全に該当する作品がpixivに未だ存在しない」がゆえで、「それがためのピク百の記事の白紙化」を防ぐ目的をもってピク百の編集者が該当するとは言いがたいイラストを掲載し、一方でそれを認めない向きが多いことによる。
関連作品
左から順に解説する。
1. 日丸屋秀和による国擬人化ギャグ漫画『Axis Powers ヘタリア』を元にしたファンアート。中華国家の擬人化キャラクターである王耀が、中華思想を背景にした俺様な言葉を吐いている。日本国を擬人化した本田菊の無感情は、さんざん聞かされてきた隣人のそれ。はいはいその通りで御座いますとも。まさに中華思想。
2. 同じく、ヘタリアのファンアート。4コマ漫画風。サッカーの2010 FIFAワールドカップ (cf.Wikipedia) において前回大会の優勝者と準優勝者(フランス代表チームとイタリア代表チーム)が酷い成績で大会を去ったことに関する中国人の反応をネタにしたもの。そもそも中国代表は出場できてもいないのに、都合良くアジア勢(日本と韓国が含まれる)を一括りにしてしれっと自国も混ざり、なぜだか上から目線の中国さん。さては中華思想をこじらせちまったか(笑)。なお、これはあくまで漫画としてのネタであり、実際の中国のサッカーファンは相当に自虐的。
3. 《未編集:要解説》 ※このセクションの初稿執筆者はこの作品の掲載理由が判らないため、解説できません。
4. 《未編集:要解説》 ※上に同じ。
脚注
注釈
※注1 この話のソースは不明である。
※注2 この辺りは、無神論や架空現実主義の共産主義においてはかなり修正されたか、過去の悪習として捨て去ったかもしれないと考える向きもある。
※注3 自らを「中華」と呼び、野蛮人を「北狄」「南蛮」「東夷」「西戎」と呼ぶ。
※注4 属国は別のようである。また、外交や財政で各種ネックとなることが多かったとされる。
出典
- 辞事典
※a1 「中華思想」 コトバンク > 小学館『精選版 日本国語大辞典』
※a2 「中華思想」 コトバンク > 小学館『デジタル大辞泉』
※a3 「中華思想」 コトバンク > 平凡社『改訂新版 世界大百科事典』、日原利国
※a4 「中華思想」 コトバンク > 小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』、小倉芳彦
※a5 「中華思想」 コトバンク > 山川出版社『山川 世界史小辞典 改訂新版』
※a6 「中華思想」 コトバンク > 平凡社『百科事典マイペディア』
※a7 「中華思想」 コトバンク > 旺文社『旺文社世界史事典 三訂版』
※a8 「中華思想」 コトバンク > ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』
※b1 「華夷思想」 コトバンク > 小学館『精選版 日本国語大辞典』
※b2 「華夷思想」 コトバンク > 平凡社『改訂新版 世界大百科事典』、日原利国
※c 「小中華思想」 コトバンク > 平凡社『改訂新版 世界大百科事典』、姜在彦
- 書籍等
※ア1 『詩経』小雅・北山之什、「溥天之下 莫非王土 率土之濱 莫非王臣」
- 報道
※東経_2020 「宇宙でも勃発!「中国」VS「米国」覇権争いの行方 -中国は月での領土確保を着実に進めている-」 東洋経済新報社『東洋経済オンライン』、倉澤治雄(科学ジャーナリスト)、2020年6月22日作成。
※中央日報_2023 「NASA 中国、月で領土先取りし米国追い払う恐れも」 中央日報社『中央日報』、2023年1月2日作成。