列車種別の1つで、「特急」の派生種別にあたる。停車駅の違いのほか、他路線への直通運転を行うため、通常の「特急」と区別することになった。日本国内で運行しているのは下記の通り。
阪神電気鉄道・山陽電気鉄道
阪神本線・阪神神戸高速線・山陽電気鉄道本線を経由して運転される列車。山陽側からはJR西日本が運行している新快速・快速列車への対抗策、阪神側からは成熟しきった沿線の外への活路を見出す手段として、1998年より運行を開始した(同時に阪急神戸線から山陽電気鉄道方面への乗り入れが終了)。
現在のダイヤではラッシュ時に毎時5本が、日中は毎時4本が設定され、両社間の最速達列車としての位置づけにある。また、早朝深夜には区間運転の列車も設定されている。
なお、直通特急の種別表示は2種類あり、種別が「赤」の直通特急は阪神神戸三宮駅-山陽板宿駅間も通過運転をするのに対し、種別が「黄」の直通B特急は阪神神戸三宮駅-山陽板宿駅間を各駅に停車する。これは、日中のダイヤで阪神が10分ヘッド・山陽が15分ヘッドを組んでいるので間隔調整が必要になったため。
山陽電車本線はもとからJR神戸線よりも所要時間が長かったことから、直通特急も梅田-山陽姫路間の所要時間はA直特で約95分、神戸三宮-板宿間各駅停車のB直特で約100分と、JR神戸線の新快速より35-40分長くかかる。2016年3月改正現在、最も遅い電車の所要時間は112分。該当するのは平日夕方梅田18時50分発・姫路20時42分着の赤い表示の便など。
ダイヤ変更する度に停車駅が増えていった結果、阪神線内では直通特急への乗客の一点集中を招き、雁行する急行や快速急行が空気輸送になる事が多く、輸送効率が悪い。区間によっては遅れが多発しやすくなっている事さえある。
- 尼崎:千船・センタープールの手前での信号待ち解消のメリットもある故に仕方ないし、直通特急(特急)が西大阪線との連絡、急行・快速急行が各駅停車との緩急接続と、役割を上手く棲み分けられている為、尼崎停車は所要時間増加や乗客集中の原因にはなっていない。
- 甲子園:混雑バランス悪化の最筆頭。直通特急(特急)を絶対に停車させてはいけない駅と言っても過言ではない。野球輸送でも乗客集中が容赦なく発生し、特に高校野球では臨時特急が運転されない事が多いので更にタチが悪い。休日夜間は急行が甲子園止まりとなり、それも追い討ちとなって野球の有無に関係なく積み残しが発生し、連鎖的に西宮で接続する各停に乗換出来なくなるデメリットも負わされる。
- 魚崎:姫路方面は快速急行が先行する為、混雑バランスが取れている。問題は梅田方面で、直通特急が快速急行よりも2分先行するが、近年は三宮始発の利点が注目され、着席目的の客が快速急行に移行する傾向となっている。しかし快速急行が御影手前から西宮にかけて延々と信号待ちさせられるタイムロスが目立つ。
- 舞子公園:2009年より開始された昼間の各駅停車を霞ヶ丘~東二見を強引に逃げ切らせる危険ダイヤの元凶。この区間の各駅停車のダイヤに余裕が無く、駅到着前(=走行中)に扉を開ける、降りる客をドアで挟むといった停車時間の短さに起因する危険な事象が多発している。当然直通特急も信号待ちによる遅れが多発している上に、明石での緩急接続が廃止され、結果的に安全性と利便性の両方低下。更に、明石駅及び東二見駅から霞ヶ丘駅へ急ぐ場合、直通特急で垂水へ乗り越して各駅停車へ折返し乗車した方が速くなる不正乗車パターンまで出来上がってしまった。(時刻表で確認)
鉄道ピクトリアル2017年12月臨時増刊号の特集では、停車駅の増加に対する批判は公式も認知している模様。
運賃面も、阪神神戸高速線内の運賃が加算されるため、区間によっては割高になる(神戸三宮-山陽明石間は590円に対し、JRの三ノ宮-明石間は390円)など、もとから不利な状況であった。ちなみに梅田-山陽姫路間の運賃はJRの大阪-姫路間の普通運賃より安い(阪神・山陽は1,280円。JRは1,490円で、三ノ宮までの乗車券を買って姫路まで乗り越しても1,380円)が、JRを利用する場合でも、2018年まで発売されていた昼間特割きっぷを元町まで使用し、元町から乗り越し精算した場合は、JRのほうが若干安かった(大阪-三ノ宮・元町間の昼得は1枚あたり270円で、元町-姫路間の普通運賃970円と合わせて1,240円)。
直通特急が設定されても不利な要因が変わっていないことから、直通特急停車駅のうち、山陽須磨、山陽垂水、舞子公園、山陽明石などJR神戸線に隣接する駅(JR神戸線はそれぞれ須磨、垂水、舞子、明石)では、三宮、大阪に向かう場合はJRの利便性が勝るが、それ以外の停車駅や緩急接続で利用する駅の利用者からは利便性が向上しており、阪神甲子園球場に向かう場合は明石・姫路方面から甲子園まで乗り換えなしで利用できるので、直通特急の方が利便性が高い。2009年3月20日の阪神なんば線開業以降、尼崎駅で同線とドア・ツー・ドアで接続するようになったため、近鉄線からの利便性も上がっている。
年表
- 1998年2月15日
- 運行開始。発車式は阪神梅田駅と山陽姫路駅を10時00分に発車する列車で行った。子供が一日駅長となり、くす玉を割った。
- 当時梅田発の特急電車は山陽姫路行き、高速神戸行き、須磨浦公園行きが30分ごとに運行されていた。阪神の三宮(現在の神戸三宮) - 山陽姫路間でも山陽特急が運行されていた。
- これにより梅田から山陽姫路への利便性が向上したが、梅田 - 三宮間を走る快速急行が廃止され、特急の停車しない尼崎から芦屋・神戸方面に向かうには西宮で乗り換えなければならなかった。しかし2001年3月11日に特急と直通特急が尼崎に停車、2009年3月20日の阪神なんば線開業により同線直通の快速急行が登場し、尼崎からの利便性が向上した。
- 2000年
- 淡路花博の開催に伴い、「高速舞子バス停留所」最寄り駅の舞子公園駅に臨時停車開始。花博終了後も2001年3月10日まで土・休日の日中のみ臨時停車を継続。
- 2001年3月11日:増発と運行形態見直し
- 日中の運行本数を2本から4本に増発。
- すべての電車が尼崎と魚崎に停車。一部は神戸高速の西元町・大開停車も開始し、黄色い表示で区別。
- 土・休日に限り舞子公園にすべての電車が停車するようになった。
- 朝の梅田行きと夕方以降の姫路行きが新たに滝の茶屋に停車するようになった。
- 2006年10月28日:ダイヤ改正
- 平日にも舞子公園に停車するようになる。
- 平日の東二見行きをすべて山陽姫路まで運転区間を延伸。梅田発山陽姫路行きの最終が22時36分発から23時00分に繰り下げ。
- 2008年4月14日:ダイヤ修正
- 朝ラッシュ時、荒井に停車するようになる。
- 2009年3月20日:ダイヤ改正
- 平日昼間にも甲子園に停車するようになった。これにより平日朝の梅田行きを除きすべての電車が甲子園に停車する。
- 月見山を停車駅に加え、B直特は新たに西代・東須磨・須磨寺にも停車するようになった。
- 荒井駅の停車時間帯を拡大し、朝夕ラッシュ時間帯には白浜の宮にも停車開始。
- これにより、直通特急の途中停車駅が運行開始当初の16駅(最速所要時間87分)から最大29駅に増え、JR神戸線との所要時間差が拡大している。阪神本線内では、1995年頃の急行とほぼ同じ水準の停車駅数、山陽電車本線内では、滝の茶屋・荒井・白浜の宮に停車するB直特については1980年代前半の急行とほぼ同じ水準の停車駅数となっている。
- 阪神なんば線が開業。尼崎駅ではほぼ終日にわたり同駅終着・始発の阪神なんば線電車とドア・ツー・ドアで接続するようになった。
- 2016年3月19日:ダイヤ改正
- 神戸三宮 - 山陽須磨間各駅停車のB直特が東須磨と須磨寺の停車を取りやめ、各駅停車区間は神戸三宮 - 板宿間に短縮された。
- 山陽姫路発の最終を御影行きから尼崎行きに変更し、朝ラッシュ時に数本増発した。
使用車両
全列車6両編成。
- 阪神からは赤胴車の8000系(8523Fを除く)、9000系、9300系、1000系が使用される。
- 山陽電鉄からは5000系、5030系、6000系が使用される。相互直通運転に伴う車両使用料の関係で、山陽電鉄車両の運用本数が阪神車両の運用本数よりも多い。
停車駅
- ここでは便宜上、通常の特急列車(阪神特急、山陽特急)も掲載。
- 山陽特急は早朝深夜のみの運転。
- 全列車通過の途中駅は省略。
- ◎は停車、△は一部停車、レは通過、▲は臨時停車あり。
駅番号・駅名 | 阪神特急 | 山陽特急 | 直通特急(黄) | 直通特急(赤) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
HS01 梅田 | ◎ | ◎ | ◎ | JR・地下鉄・阪急の各路線乗り換え | |
HS09 尼崎 | ◎ | ◎ | ◎ | 阪神なんば線(近鉄奈良線方面)乗り換え | |
HS14 甲子園 | ◎ | △ | △ | 直通特急は平日朝ラッシュ時の上り列車が通過 | |
HS17 西宮 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
HS20 芦屋 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
HS23 魚崎 | ◎ | ◎ | ◎ | 六甲ライナー乗り換え | |
HS25 御影 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
HS32 (阪神)神戸三宮 | ◎ | ◎ | ◎ | JR・地下鉄各線、ポートライナー乗り換え | |
HS33 元町 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
HS34 西元町 | ◎ | ◎ | レ | ||
HS35 高速神戸 | ◎ | ◎ | ◎ | 阪急電鉄(阪急神戸線方面)乗り換え | |
HS36 新開地 | ◎ | ◎ | ◎ | 神戸電鉄(有馬線方面)乗り換え | |
HS37 大開 | ◎ | ◎ | レ | ||
HS38 高速長田 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
HS39・SY01 西代 | ◎ | ◎ | レ | ||
SY02 板宿 | ◎ | ◎ | ◎ | 地下鉄西神・山手線乗り換え | |
SY03 東須磨 | ◎ | レ | レ | ||
SY04 月見山 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
SY05 須磨寺 | ◎ | レ | レ | ||
SY06 山陽須磨 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
SY07 須磨浦公園 | ◎ | ▲ | ▲ | 直通特急は春と秋の行楽期の土休日ダイヤ設定日に臨時停車あり | |
SY09 滝の茶屋 | △ | △ | 朝ラッシュ時の上り・夕ラッシュ時以降の下りが停車 | ||
SY11 山陽垂水 | ◎ | ◎ | |||
SY13 舞子公園 | ◎ | ◎ | |||
SY17 山陽明石 | ◎ | ◎ | JR神戸線(山陽本線)乗り換え | ||
SY25 東二見 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
SY31 高砂 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
SY32 荒井 | レ | △ | △ | 直通特急は朝夕ラッシュ時に停車 | |
SY35 大塩 | ◎ | ◎ | ◎ | 上り列車は最後尾の車両がドアカット | |
SY38 白浜の宮 | レ | △ | △ |
| |
SY40 飾磨 | ◎ | ◎ | ◎ | 山陽電鉄網干線乗り換え | |
SY43 山陽姫路 | ◎ | ◎ | ◎ | JR山陽新幹線・在来線各線乗り換え |
阪急電鉄・Osaka Metro
阪急各路線およびOsaka Metro堺筋線から阪急嵐山線方面へ運転されている直通特急はすべて臨時列車。春・秋の行楽シーズンに運行されている。なお、ホームの容量の関係で8両編成ではなく6両編成での運行となる。
2019年4月には7000系を改装した『京とれいん 雅洛』を使用した列車が西宮北口-嵐山間で運行された。
停車駅
「あたご」(神戸線⇔京都線⇔嵐山線)
高速神戸駅-六甲駅-岡本駅-夙川駅-西宮北口駅-塚口駅-十三駅-淡路駅-桂駅~嵐山駅間各駅
「とげつ」(今津北線⇔神戸線⇔京都線⇔嵐山線)
宝塚駅~門戸厄神駅間各駅-塚口駅-十三駅-淡路駅-桂駅~嵐山駅間各駅
「ほづ」(地下鉄堺筋線⇔千里線⇔京都線⇔嵐山線)
天下茶屋駅-日本橋駅-天神橋筋六丁目駅-淡路駅-桂駅~嵐山駅間各駅