“Table Talk Role-Playing Game(テーブル・トーク・ロール・プレイング・ゲーム)” の略称。まれに「TTRPG」とも略す。別名、会話型RPG。
概要
ゲーム機などのコンピューター(つまり電源)を使わずに、紙や鉛筆、サイコロなどの道具とプレイヤー同士の会話のみを用いて、ルールブックに記載されたルールに従って遊ぶ “対話型” のロールプレイングゲーム。
通常はTRPGそのものをひとつのジャンルと考えるが、広義には戦略シミュレーションゲームや、「人生ゲーム」の様に盤上でサイコロを振って遊ぶタイプの「ボードゲーム(Board Game)」の範疇に含まれる事もある。
主としてゲームの進行役である「ゲームマスター(GM)」と、ゲームに参加する「プレイヤー(PL)」との会話で成り立つゲームの事を指す。
ただし、本当に会話だけでゲームが完結はしない。それに加えてダイスやカードを使った手に汗握る戦略バトルが楽しめたり、ゲームのコマとして作られた精巧なミニチュアをコレクションする楽しみなどもある、多様な楽しみ方ができるゲームである。
また日本で単に「RPG」と言ったら、一般的にはコンピュータゲームの一ジャンルを指すが、欧米で単に “RPG” もしくは “Role-Playing Game” 言ったら、人間同士でTalk(会話)して遊ぶアナログなRPG(ボードゲーム)の事を指す。
従って「Table Talk Role-Playing Game」とは、「ブラックオニキス」や「ドラクエ」等のコンピューターRPGのヒット後に、その元ネタとしてアナログRPGが紹介された日本において、コンピューターRPGと区別するために生まれた和製英語である事に注意。
オンラインにおけるTRPG
インターネットの普及に伴い、チャットやwebツールを利用してTPRGをオンラインででプレイする遊び方が生まれた。これをオンラインセッションと呼ぶ。「オンセ」と略称で呼ばれることも多い。
TPRGのオンラインセッションは2000年前後はシンプルなダイスロール機能を加えたテキストチャットという原始的なものであったが、2021年現在ではボイスチャットでの会話のやりとり・ゲームシステムごとの判定の自動化・MAPとコマの立体的な表示機能・ノベルゲームのようなキャラクターの立ち絵グラフィックの表示(表情差分あり)・BGMやカットインムービーの挿入など、デジタルだからこそ可能なプレイスタイルを実現するツールが有志によって開発されている(どどんとふ、ココフォリア、ユドナリウム等)。
TRPGのルールシステム面においてもオンラインで遊ぶことに限定したものが現れてきた。
オンラインセッションは「一箇所に複数の人間が集まらないと遊べない」というTRPGの欠点を克服でき、SNSで気軽にメンバー募集ができることから、現在ではオンラインセッションがTRPGの新規参入者の代表的な入り口となっている。
そしてオンラインセッションの普及はTRPGシーンに動画配信という文化を生み出すことになった。(詳細は後述の「リプレイと動画」の解説にて)
「オンラインセッション」という言葉は、日本国内ではTRPGをプレイすることをジャズにちなんで「セッション」と呼ぶ文化が昔からあるため、それをオンラインでやるという意味で自然に名付けられた。
ちなみになぜTRPGのプレイがジャズにちなんだ名前で呼ばれるようになったかというと、TRPGが日本に紹介された黎明期の頃、TRPGが持つ即興性・アドリブ性の比喩としてジャズが取り上げられることが多かったからである。今の時代では考えにくいかも知れないが、当時はコンピュータRPGもほとんど知られていなかったため、既存の「ゲーム」の文脈ではTRPGが持つ即興性・アドリブ性をわかりやすく説明することができなかったのだ。
なお、オンラインセッションはテーブルを使わないのでTRPGと呼ぶのはおかしいという意見もあるのだが、日本で単に「オンラインRPG」というとMMORPGとみなす人が大半になってしまうので、「オンラインでTRPGをプレイする」という矛盾に満ちた表現が普通にまかり通っている。
TRPGの遊び方
TRPGには様々なタイトルがあり、ゲームのルールも舞台となる世界観もタイトルによって全く違う。
なのでここではTRPGと呼ばれている作品の多くに共通する要素をざっくりと解説する。
会話で進行する遊び
TRPGは、会話を通じて行う遊びである。
ほとんどのTRPGでは、ゲーム参加者のうち一人が、ゲームの進行役であるゲームマスター(GM)を務めることが求められる。GM以外のゲーム参加者は一般的にはプレイヤー(PL)と呼ばれる。
そしてTRPGとは、GMが「語り部」となって物語を語る中で、プレイヤーたちがその物語の主人公となってGMの物語を追体験する、または改変していく、というゲームである。
TRPGにはゲームごとにジャンルが存在する。それはファンタジーやSFやホラーだったりする。
GMはまずはゲームのジャンルにマッチした「今回のゲームの舞台設定」を用意する。これは一般的にシナリオと呼ばれる。
シナリオには市販されているものも数多く、近年では有志がネット上で公開しているものもある。大抵のルールブックには初心者向けのシナリオが1〜2本は付属しているのでまずはそれを試してみるとよい。
TRPGのシナリオに何が必要かは、そのシナリオのテーマ(物語)によって異なるので十把一絡げにはできない。「ダンジョンを潜って財宝を探し出せ」というテーマのシナリオであればGMはダンジョンの設定が必要だし、「殺人事件の犯人を探し出せ」というゲームをやりたいなら、GMは容疑者となる人物たちの設定が必要になる。
GMがシナリオを準備できたら、遊ぶ仲間を集める。そしてGM以外のものは「プレイヤー」と呼ばれる。プレイヤーはゲーム開始前にまずは自分が演じるプレイヤーキャラクター(PC)を作成する
ルールに則っているならばどんなキャラクターを作ってもいいのだが、大前提としてGMが作ったシナリオや世界観とマッチするキャラであることが望まれる。
GMがシナリオを作り、プレイヤーが自分が操るキャラクターを作成できれば、TRPGのプレイは始められる。
GMはまずはプレイヤーキャラクターたちが今いる状況を説明する。それを聞いたプレイヤーは、自分が操るキャラクターにさせたい行動を宣言する。GMはその行動によって何が起こったかを答える。それを聞いたプレイヤーはまた新たな行動を宣言する。
基本的にはこの繰り返しでゲームは進行する。
ここで重要な点として、「このキャラクターの性格や立場であれば、こういう状況ではこういう行動が相応しい」という視点から行動を宣言することが望まれる。
これをロールプレイングと呼ぶ。日本語でわかりやすく言うとキャラクターの役割を演じるという意味である。
これは誤解されやすいがなりきりをしろというわけではない。「俺のキャラクターは○○をします」という淡泊な宣言だけでも十分である。重要なのはその行動の内容がキャラクターらしいかどうか、ということであり、いちいちキャラの口調を真似たセリフで行動宣言する必要はない。
(もちろん、なりきりをやりたければやってもいいし、キャラの口調を真似たければ真似てもいい。別にやってもやらなくてもそれは個人のプレイスタイルだから、他人を不快にさせない限りはどっちでも良いという話である)
行為判定
TRPGの特徴は、プレイヤーはどんな行動であろうがキャラクターにさせても構わないということがある。
その行動の結果で何が起こるかについてはルールブックに記載された方法で決定する。
ほとんどのTRPGでは、プレイヤーキャラクターが行った行動について「成功」か「失敗」かという二択で判断するためのルールが整備されている。それは俗に行為判定と呼ばれることが多い。
行為判定を行うには、何らかの乱数発生装置を使うのがスタンダードである。多くの場合はサイコロ(ダイス)を使用する。
ダイスの出目によって行為判定の成否を判断するのだ。
ただし、単なる運勝負にならないように、プレイヤーキャラクターにはどのような行動が得意かが数値的なデータとして設定されており、それが行為判定の出目に対して有利な影響を与えるようになっている。
TRPGで使用するダイスは一般的な6面体サイコロだけではなく、「20面体ダイス」や「12面体ダイス」などと言った特殊な形状の多面体サイコロを(時に複数個で)用いるゲームも数多くある。
多面体ダイスを使うメリットは乱数が偏らないことであり、デメリットは大きめの玩具店やアナログゲームの専門店でないと入手がしにくいことである。ただし現在ではネット通販で簡単に買えるようになっているし、そもそもオンラインセッションならアプリにダイス機能が搭載されているので、このあたりのハードルは昔に比べると大きく下がっている。
行為判定は「成否」を決めるためのルールであるが、その成否が物語をどう変化させるかを考えるのはGM(ゲームマスター)に委ねられる。
行動自体は「失敗」であっても、物語としてはハッピーエンドへのフラグとなる、みたいなこともGMの裁量で仕込んでも構わない。
逆に、行動が「成功」であっても、物語の進行に影響が起こらなくても良い。「その行動は特に意味がなかった」なんてことは普通にありうる。
ただし、行為判定を成功しようが失敗しようが物語の進行に変化がないようにプレイヤーに思われないようにするのはGMにとって大切なことである。
TRPGにおけるプレイヤーとゲームマスターの関係性を言い表すなら
プレイヤーは何をしても良いが、何でも出来る訳では無い。
ゲームマスターは何でも出来るが、何をしても良い訳では無い。
と言ったところだろうか。
この様なTRPGの体裁を端的に現した言葉として、「ルールのあるごっこ遊び」などと呼ばれることもある。
(ただし、この言い方はTRPGはキモい遊びだと馬鹿にする文脈として長年使われてきた歴史があるので、界隈でこの言い方をする時には留意が必要である)
戦闘
多くのTRPGでは、行為判定のルールの延長として、敵と戦闘するための専用のルールが細かく整備されている。
TRPGの多くに戦闘ルールが専用に用意されているのは、TRPGの元祖である『ダンジョンズ&ドラゴンズ』がミニチュアを使ったSLGである『CHAN MALE』の派生から生まれたという歴史的経緯も大きいが、とりあえず戦闘を入れておけばゲームが簡単に盛り上がるからというのが一番大きい。
(このあたりはTRPGに限らずコンピュータRPGでも同じことである。戦闘要素なしにプレイヤーを盛り上がらせられるには、GMにプロの小説家並みの才能が必要。それでも吟遊詩人と呼ばれてしまう事もあるが…)
必要なもの
TRPGに必要なものは、まずは「ルールブック」である。
世の中には数多くのルールブックが存在しているが、それらの多くはゲームのルールだけではなく、ゲームの舞台となる世界観もセットで提供する。
TRPGゲーマーの多くはルールの好みだけでなく、その世界観ならどんなキャラクターが再現しやすいかという部分で自らの推しゲーを決める。
しかしルールブックだけではTRPGは遊べない。遊ぶための仲間と、ゲームをプレイするための場所を確保する必要がある。
仲間についてはリアルな家族や友達を誘えればそれで良し、身近につきあってくれる人がいないならばネットでサークルを検索したり、SNSでプレイ仲間を募集すると良いだろう。
場所については気が置けない仲間同士や家族であればホームパーティー感覚で自宅でプレイすればよいが、それがやりにくいというのであれば、公民館やレンタルスペースを使用するのが一般的。
近年はボードゲームカフェの派生で、TRPGのプレイスペースを併設しているショップも結構増えているので、ネットで情報を検索するといいだろう。そういうショップではルールブックやダイス、ミニチュアなどの貸し出しも行っていることもある。
なお、上述したオンラインセッションであればこのあたりのハードルは劇的に下がるので(特に場所の確保の必要がなくなる)、初心者の方はまずはオンラインで体験してみることもお勧めする。
また、TRPGの多くは戦闘を行うものが多いので、プレイヤーキャラクターと敵との位置関係や数を表すためにコマやマップを用意しておくとわかりやすくなる。
将棋やチェスの駒を使うだけでも十分なのだが、ダンジョンの通路を描いたマップの上にガシャポンのフィギュアを載せたするだけでゲームへの没入感は大きく変わる。
もっと贅沢な遊び方をしたいなら、TRPGのために使える美麗なマップや、TRPGのためのミニチュアも市販されている。ほとんどが海外製であるが現在ではネット通販で簡単に入手できる。
TRPGの勝敗
一般にコンピュータRPGを始めとして、通常のゲームは「勝者になる事」が目的であるが、TRPGというジャンルに関しては必ずしも「勝者になる事が目的ではない」。この点に関して多くの初心者は戸惑いを覚えるだろうが、TRPGはロールプレイによってゲーム中の雰囲気を楽しめれば勝ちという考え方が主流であり、キャラクターになりきったプレイヤーたちやGMとのコミュニケーション自体を目的としたゲームであると言える。
特にロールプレイ(プレイヤーが自分の操作するキャラクターを演じること)を重視するプレイヤーの場合、あえて不利な選択をしてみたり、無意味な消耗を伴う行動に出てみたりすることも多く、「負けロール(失敗時の演技)を楽しめるようになったら一人前」という言葉もあるほど。かといって、勝利を目指し効率のみを追求するプレイが間違いという訳でもない。
肝に銘じるべきは、他の参加者に不快感を与えるようなプレイをしないということ(一人でやるにはなかなか難しい形式なので)。
このことはプレイヤー同士のことだけではなく、GMとプレイヤーの間でも同じ事である。
GMはプレイヤーを楽しませようという事をもちろんだが、GMも参加者である以上は楽しむ権利がある。プレイヤーはそれを忘れてはいけない。GMはプレイヤーに奉仕するゲーム機ではなく、感情のある人間である。
そこさえ守れば、すべてのアイデアが物語になり得る、非常に魅力的なゲーム体験を得られることだろう。
TRPGは自由な遊び。でも…
昭和の頃から令和の現在に至るまで、TRPGについて解説する書籍なりサイトなりを見てみると「TRPGは自由度が高い」とする宣伝文句がいろんなところで見受けられる。
なぜ自由度が高いかというと、「TRPGはプレイヤーがどんな想定外な行動をとってもGMがアドリブで咄嗟に対応してくれるから」と説明していることがほとんどである。
だが、これは実情に即しておらず、その自由度幻想を信じてしまった者と周囲の卓を大量に地獄に突き落としてきた罪深いキャッチコピーである。
まず大前提として、あなたのテーブルにいるゲームマスターが、どんなアドリブも華麗にこなせる能力の持ち主とは限らない。プレイヤーがあまりにシナリオから外れた奇矯な行動をとり続けると、ゲームマスターが白旗をあげてギブアップ。ゲームが途中終了…という誰も幸福にならない結果が訪れることもある。
ゲームマスターが本当に対処できない行動は、無理に押し通そうとしないことが大切である。
特にMinecraftやGTAのようなコンピュータゲームが「どんなプレイスタイルで遊んでも許される」作品が「自由が高い作品」と認識されている現代においては、無責任に「TRPGが自由度が高い」と表現することは、嘘ではないがかなり誤解を招く表現なので、言葉の扱いには気を付けた方がいいだろう。
上記のようなコンピュータゲームで好き勝手できるのは、どんなことをやっても他人に迷惑をかけることがなく自己責任で終われるからである。だが、TRPGの場合はあなたではない他人と一緒にプレイすることを忘れてはならない。
昔からよくある小話として、冒険者の酒場に集まっているキャラクターたちに冒険の依頼が舞い込んできたという導入において、「冒険とか面倒くさい」とか言って酒場から全く出ようとせずに、ただただ「マイキャラになりきって独り言をつぶやく」だけで一日のゲームを終わらせるというものがある。
何が楽しいのか理解できないかも知れないが、これを揶揄する「酒場プレイ」という言葉が生まれたくらいに、しばしば見られる光景である。
GMも含めた参加者全員がそれで楽しめるならいいが、普通はそうではない。大抵の場合、GMは楽しくない。そして冒険を楽しみたいプレイヤーも面白くはないだろう。酒場に留まるキャラクターを放っておいてゲームを進めるくらいしか手はないが、そうするとパーティーから戦力が抜けて結局不利になってしまう。
だが酒場プレイをするプレイヤーは悪気があってやってるのではなく、「TRPGは無限の自由がある」という言説を信じ込んだための不幸なのである。自由なことをしなくちゃ損だという謎のプレッシャーから、シナリオに参加すること自体を否定してみるというのは実は初心者あるあるである。
しかし、TRPGにおける自由とは、GMがシナリオの目的として設定したことを無視することではない。シナリオの目的のために動きつつも、どういう形で解決しようとするかは自由、というのがTRPGに求められる自由度である。
ダンジョンで宝を探せというシナリオで、ダンジョンに潜らないことや、特に意味なく銀行強盗をすることを、自由度という錦の御旗で強行するなら「それは本当にシナリオの目的を無視していないのか」は意識するべきである。
TRPGとリプレイ文化
リプレイとライトノベル
日本のTRPGシーンで切っても切り離せないのが、リプレイという文化である。
これはプレイの結果を戯曲のようなスタイルで書き写したもので、元々はゲームのルール紹介を目的に書かれたものだったが、コンプティーク誌で連載されたダンジョンズ&ドラゴンズのリプレイ『ロードス島戦記』が人気を博したことで、「読み物」として注目されるようになった。
1980年代後半から1990年代前半は数多くのリプレイが文庫本としてライトノベルのレーベルで発売されていた。当時はファンタジー小説はまだまだ重厚なものが多かったため、プレイヤーたちの素の発言やツッコミもあるリプレイというのは、ポップな雰囲気で気軽に楽しめるライトファンタジーとしてTRPGを知らない層にも消費されていったのである。
その結果、リプレイ本からTRPGを知ったという層も数多く現れるようになる。
このリプレイ本ブームは、当時の日本におけるTRPG界に「ライトノベルのレーベルの出版社が、リプレイを出すことを前提にルールブックを出版する」という流れを定着させることに繋がった。
ルールブックもライトノベルの一種として文庫形態で販売されることが多く、1000円未満で書店でルールブックが入手できることは若い世代のTRPG参入に貢献した。
元々、最初期の日本TRPG市場は1980年代のゲームブック人気にのっかっていたところがあるため、ゲームブックのブームが沈静化しつつあった当時、ライトノベル市場とタッグを組むことは渡りに船であった。
だが、1990年代後半になるとライトノベル市場のジャンルが多様化。ライトノベル側からするとリプレイは「古くさいジャンル」となってしまい、リプレイ出版が次第に減っていく。
それに引きずられる形で、ライトノベルのレーベルの出版社複数が出していたTRPGサポート雑誌も次々に休刊に追い込まれた。これによりTRPGに関する情報が手に入りにくくなり、コミュニティの閉塞化を引き起こすことになった。
この時期は俗に「TRPG冬の時代」と呼ばれている。
TRPGのコミュニティが再び活性化するのは、インターネットが徐々に普及していった2000年前後となる。
国内外の様々なゲームの情報・プレイテクニックの交換・コンベンションやサークルの情報などが、雑誌や書籍などを通さずともファン同士で行えるようになり、コミュニティの再構築と可視化がなされたのである。
リプレイと動画
2010年前後、ニコニコ動画において『這いよれ!ニャル子さん』の影響で『クトゥルフ神話TRPG』リプレイ動画がニコニコ動画に多数上がるという、小さなブームが起こった。
だが、これが『ニャル子さん』とは無関係に一定の評価を得て、ニコニコ動画内で「TRPGのリプレイ動画」というものが一つのジャンルとして定着するようになる。
ここで言うリプレイ動画というのは、ノベルゲームのように立ち絵と背景絵とセリフを表示するという仕組みのものである。
初期の頃は東方やアイマスなどのキャラクターがTRPGの世界で活躍するような形式のスタイルが人気を博した。それらの多くは実際にゲームプレイした結果を書き起こしたものではなく「リプレイの形式を取った、二次創作ストーリー」としての体でつくられていた。
だがそれゆえに物語としての完成度は普通のリプレイよりも高く、ニコ動の定番ジャンルの一つとして成長するまでに至るのである。
2015年あたりからは状況が変化し、実際にゲームプレイした結果を元にした動画にも人気が集まるようになる。
この変化については、創作型リプレイの人気をきっかけにして実際のゲームプレイが活発化していったことを示してもいるが、この時期からは(TRPGに限らず)動画の「配信者」というもの自体がタレント化する流れが出来たことが大きい。いわゆるYouTuberの爆発的ブームが発生した時期である。
つまり、「配信者」であるプレイヤーやゲームマスターの個性を楽しむという需要が高まったのである。だからTRPGを実際に「やってみた」という形のリプレイ動画が増量したと考えられる。
現在ではオンラインセッションの様子をリアルタイムで「生配信」するタイプのものもあらわれている。
2010年頃から現在までの10年以上、ファンが作った動画とコミュニティこそが、新しいTRPGファンを作り出す入り口になってきた。日本国内のTRPGシーンの最先端は動画周辺にあり、それを無視して語ることはできない。
だが、「リプレイ」という形式のものがシーンを牽引するという状況は、時代を超えて共通しているのは興味深いところである。
国内のTRPG動画シーンにおいては、『クトゥルフ神話TRPG』が一大勢力となっている。
これについては最初のきっかけが『ニャル子さん』だったから……だけで説明できるものではない。
『クトゥルフ神話TRPG』はあまりルールに縛られないタイプのゲームなためにTRPGの魅力の一つであるアドリブ性を動画で強調しやすく、様々なキャラクターを再現可能なシステムなのでロールプレイを阻害する要素が少ない。これらの特徴はゲームに興味がない人にもとっつきやすいドラマ重視のリプレイが作りやすいことを意味している。それが『クトゥルフ神話TRPG』が動画界隈で人気を博している大きな理由であろう。
(ただ、実際のところ『クトゥルフ神話TRPG』はルールが曖昧な分、マスタリングやロールプレイにテクニックが必要な比較的上級者向けのゲームであることは留意が必要である。動画を制作するようなクリエイターたちはそういう上級者も多いであろうが、誰もがそれを真似できるわけではない)
外部リンク
TRPGオンラインセッションSNS(オンラインセッション総合SNS)
関連タグ
PC1, PC2, PC3, PC4, キャラクターシート, イラスト欄
PBW, PBM, オンラインセッション, どどんとふ
グループSNE, F.E.A.R., 冒険企画局, 富士見ドラゴンブック
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