古典TRPGの『トンネルズ&トロールズ(Tunnels & Trolls)』のこと。
通常は英語表記での正式名称である“Tunnels & Trolls”の頭文字を取って省略した言い方である、「T&T (ティー・アンド・ティー)」という表記の方が多く使われる。ただし、pixivのT&Tタグは、ほぼ全てがタッキー&翼を示す。
概要
本作は『ダンジョンズ&ドラゴンズ (Dungeones & Dragons、D&D)』と並ぶ、最古参かつ知名度の高いTRPGシステムの一つである。6面体のダイス(サイコロ)のみを大量に使う特徴的な戦闘、ソロアドベンチャー作品の多さ、シンプルで応用性の高いルール、ジョーク要素の強いデッドリーな世界観などが特徴。
日本では5版(社会思想社版)、7版(新紀元社版)を経て、現在は9版に相当する『完全版』(cosmic版、Deluxe edition)が刊行されている。その他、5.5版は2007年に再刊・修正された5版を、6版は5版後に各地で作られた「ハイパーT&T」(後述)も含む各種ハウスルールを、8版は7版刊行後にフランスで出版された版を指す。
歴史
アメリカのゲーム会社、フライング・バッファロー社(Flying Buffalo, Inc.)から1975年に発表された。元々は前年に発売された最初のRPG、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のローカルルールだったようである。しかし元となるD&Dから様々な要素を追加、あるいは省略していった事から最終的に全く別物になってしまい、独立したルールとして発売されたという経緯を持つ。
本作は「『職業』から独立した『種族』」「能力値による一般行為判定」の概念を最初に導入したゲームとされ、その後のTRPGに与えた影響も大きいとされる。
日本での展開
日本語版の最初の販売は、社会思想社によって1987年から行われた。この展開ではルールブックやシナリオ集だけではなく、同社から発刊されていたゲームブック専門誌『ウォーロック』によって様々なサポートがなされ、ルールやシステムの解説、追加ルール、シナリオなどの記事が掲載。「どこでもT&T」のようなリプレイコミックも連載され、ゲーム自体の魅力が紹介された。
また、読者欄などでも、活発にファン同士の交流も行われた。
しかし、追加ルール「ハイパーT&T」の発表と、「ウォーハンマーRPG」など他のTRPGの紹介などのため、サポート紙面は縮小。その後『ウォーロック』誌は競合雑誌の発生、及び同人誌化などの複数要因により、1992年に休刊。社会思想社自体も2002年6月に廃業している。
このため、正式なT&Tの形の日本語展開は長らく宙に浮いた形となっていた。しかしながら2006年末から新紀元社が新たに日本での展開を再開、それに呼応する形で同社から新たにゲーム専門誌『Role & Roll』が創刊、かつて『ウォーロック』誌で行われていたサポートなどが復活した。尚、『Role & Roll』誌は非常に「リプレイ記事」が多い事も特長の一つである。現在最新の完全版は、『ウォーロックマガジン』『GMウォーロック』誌(書苑新社/グループSNE)によってサポートされている。
ゲームブックとの関係
本作の特徴の一つとして、ソロアドベンチャー(ゲームブック、ソロシナリオ)が多く発表されていることが挙げられる。これらソロアドベンチャーには、世界最初のゲームブックともされる『バッファロー・キャッスル』(初版は1976年、完全版では『死の女神の口づけ』に収録)や、世界観と密接に関わる傑作『カザンの闘技場』のような作品もある。
日本における最初の販売展開は、それまで文庫で多くのファイティングファンタジーシリーズの「ゲームブック」を翻訳出版し、ヒットさせた社会思想社によって行われた。これは本作の豊富なソロアドベンチャー群に目を付けての出版だと思われる。この流れから、『トンネルズ&トロールズ』は当時のTRPGとしては異例の「書籍の形で販売」という、ゲームブックと同様の出版形態でスタートした。このため日本において先行していた『ダンジョンズ&ドラゴンズ』などに比べて安価で、ボードゲーム専門店のない地方でも一般書店で購入できるというメリットを生み出した。当時の販売価格では、D&Dはルールブックやサプリメント1冊/1セットがおおよそ3500~6000円に対し、T&Tは600~800円前後だった。
グループSNE時代にはゲームブックの販促という意味での読者参加型RPGである『ドラゴンズヘヴン』が展開された。その一方で、同作のリプレイブックもリリースされている。
(データイーストから家庭用RPGとしてのリリースも予定されていたが、こちらは発売中止となった)
このことから本作は、プレイヤーの年齢層がどちらかというと大学生を中心とした青年層に集中していた『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に比べ、10代の中高生を中心とした低年齢層のファンに広く浸透して行き、従来のゲームブックに慣れ親しんだファン層をそのまま獲得する事に成功した。その後は前述のように日本における販売元である社会思想社が解散した事もあり、文庫出版される廉価なTRPGの位置を『ソードワールドRPG』や『アリアンロッドRPG』といった後発に譲ったが、米フライング・バッファロー社は健在で、現在でも根強いファンが存在するシステムである。
基本システム
以下の記述は主に『完全版』のルールに基づく。本システムでは基幹となるルール以外は、各々のプレイグループで取捨選択や調整して採用することが推奨されている。
キャラクターメイク
職業(アーキタイプ、キャラクター・タイプ、役割、クラス)は、基本的なものが戦士(Warrior)・魔術師(Wizard)・盗賊(Rogue)の三種。加えて、選択ルールとして達人/魔法戦士(Paragon/Warrior-Wizard)、専門家(Specialist)、市民(Citizen)が存在する。聖職者に相当する職業やいわゆる僧侶魔法はハウスルール以外に存在しない。
「戦士」は能力値が満たせば全て武器・防具を扱え、慣れ親しんだ武器カテゴリの扱いにボーナスが加えられる。防御力にもボーナスが与えられるが、防具を損耗するデメリットもある。ただし、呪文は全く使えない。
「魔術師」は1レベルの魔法を全て習得した状態で始められ、さらに学ぶ機会と能力があれば全ての魔法を使うことが出来るが、武器の使用は大きく制限される(許されるのは、短剣や杖の類など。攻撃力で言えばサイコロ二個分まで。鎧の制限は無い)。
「盗賊」は所謂「盗賊(Thief)」ではなく「盗賊魔術師(Rogue-Wizard、非正規な手段で魔法を習得している魔術師)」の略とされ、戦士と魔術師の中間的な能力を持ち、タレント(後述)を多く獲得できる(5版の邦訳前の再初期には、「Rogue」を直訳したのか、『悪漢』と訳された紹介記事もあった)。武器と鎧の制限は無い。
「達人」または「魔法戦士」は、能力値決定のダイスロールで凡そ1/360の確率となる高い数値を出した場合に選択可能で、戦士と同じく武器が扱え、魔術師と同じく魔法が使える特別な職業である(こちらも、鎧の制限は無い)。
7版以降に追加された「専門家」は、基本三職業のいずれかの特性に加えて特定の能力値による行為判定が有利になる職業で、能力値決定のダイスロールでゾロ目を振ることにより選択可能となる。8つある能力値に対応して「怪力」「超敏感者」「野伏せり」「格闘家」「策謀家」「専門魔法使い」「賭博師」「指導者」の8種類(プレイグループの発想次第ではそれ以上)が存在する。更に、飛び道具の使用に長けた「野伏せり」と、特定種類の魔法に長けた「専門魔法使い」には特別なルールが設定されている。
種族は人間、エルフ、ドワーフ、ホブ(ホビット)、レプラコーン、フェアリーの6種。
ただしGMが許可を出せば上記「善の種族」以外の、ウルク(オーク)やトロールといった「モンスター種族」を選択する事もできる※。
ルールにおける種族間の差異は、主に能力値の変化によって表現される。また、種族によりなれない職業も存在しない。
ではあるが、レプラコーンのみ特殊で例外。レプラコーンは種族的な特徴として、職業は魔術師で固定される。体力的には低めになるものの、生まれた時よりレベル1の呪文を心得ており、通常ならレベル4にならないと取得できない瞬間移動の呪文「瞬き移動」も、1レベル時から用いる事が可能。武器の制限は魔術師のそれと同じ。
※なお、最初からモンスター種族となってプレイングする「モンスター!モンスター!」というヴァリアントも存在する。下記参照。
能力値は8種類あり、キャラクター作成時にそれぞれ3D6を振って、修正を加えることで決定する。セッションで得た冒険点(経験値)を消費する事で上昇し、能力値からキャラクターのレベルが決まる。
また、ヒットポイントなど、能力と技量を統合して表現する補助能力値が無いこともルールの特徴で、ダメージは能力値の一つである耐久度が減少することで表現される。いわゆるマジックポイントは、7版以降に追加された能力値の「魔力度」が対応する。
装備品
当作に収録された武器は非常に多い。完全版では武器リストが整理され、かなりの部分がリストラされたのだが、それでも多い。一方で武器をカスタマイズするルールが追加されたため、実質的にバリエーションは無限である。能力値と財布の中身さえ許せば、PCにイメージ通りの武装をさせる事が出来るだろう。
「聞いた事もない武器が多い」というプレイヤーの為、巻末に簡易ながら武器に関する資料も収録されている。日本では「カタール」や「ショーテル」、「テルビューチェ」のような奇妙な武器はT&T(5版)により知られるようになったとも言われ、その最たるものが本作を象徴する武器「アフリカ投げナイフ」三卍だろう。
他に、
「ベク・ド・コルヴァン(両手用ウォーハンマーの一種。ベク=くちばし状の突起がある事から命名)」
「エストック(両手持ちの刃の無い、刺突専用の細身の剣)」
「ヴージ(バトルアックスの一種。柄の先に両刃の短剣のような刃を装着した長柄武器)」
「マイター(棍棒の一種。先端にモーニングスターのようなトゲが装着されている)」
といった、昨今でも耳にする事はほぼ無い武器が設定され、装備が可能となっていた。
5版においてのその武器の豊富さは、剣一つをとっても
「直刀(両手用、片手用のブロードソードなど)」
「曲刀(シミター、サーベルなど)」
「珍しい剣(パタやショーテルなど、)」
「いわゆる紳士の剣(レイピアなど)」
「非常に変わった剣(テルビューチェなど)」
……と、計5種類のカテゴリが存在していた。
なお、斧やメイスは
「短い柄の武器(これもカテゴリが、「切り付ける(斧類)」「突き刺す(ウォーハンマー類)」「叩きつける(棍棒、メイス類)」の3種ある)」。
他に、
「長柄の武器(ハルバードなど)」、
「槍」
「短剣(これだけでも14種はある)」というカテゴリが存在。
飛び道具は
「石弓」
「弓(単弓と長弓の2種がある)」
「その他の飛び道具(スリング、手裏剣、吹矢、チャクラムなど。アフリカ投げナイフもこのカテゴリ)」。
さらにこれらの他、「変わった武器及び補助的な武器」が存在する。
※なお、バールも「クロウバー(かなてこ)」として、「短い柄の武器」の中に存在し、望むなら武器として装備可能(あくまでも普通のバールで、バールのようなものではないが)。他に「ピック・アックス(つるはし)」「アズ(ちょうな)」「鉄釘用ハンマー」も武器として装備できる。
ちなみに鎧や盾といった防具も同じく、様々な種類が揃っている。
プレートやチェインメイル、レザーアーマーのようなおなじみのものの他、ラメラーやスケイルアーマー、布製のキルテッドシルクなどが存在。プレートの簡易版である「リングジョイント・プレートアーマー」という変わり種もある。
鎧は全身鎧のみならず、兜、ブレストアーマー、ガントレット、グリーブ(足甲)と、部分鎧のみの装備も可能。
盾も6種が用意。スパイクシールドやマドゥといった、攻撃用の衝角や角が付いた盾は、その分が攻撃力に付加される。
また、所謂「銃ファンタジー」のさきがけ的な存在として、本作には銃器に関するルールが存在する。登場する銃器の形状はピストルおよびマスケット銃。
そのカテゴリも
「火縄銃」
「車輪式引金銃」
「スナップホーンス銃」
「すい発銃(フリントロック銃)」
の、計4カテゴリ8種。
これらに加え「ハンドキャノン(原始的で扱いづらく、3m以上離れていると必ず外れる。ただし威力は絶大)」1種が存在する。
マスケットは、銃身に溝を掘って、ライフルにしても構わないとの事(その場合、値段は3倍になり、命中率が若干高くなる)。
毒を扱うルールもあり、戦闘でPCも利用できる。
行為判定
行為判定はセービング・ロールと呼ばれ、能力値に2D6を加えた値を、GMから提示された難易度と比較する事で判定する。このロールはDARO(Doubles Add and Roll Over)と呼ばれる上方無限ロールであり、運さえ良ければ極端に困難な判定でも成功できる一方、出目が悪ければ必ず失敗することもある。また、「タレント」と呼ばれるスキルシステムがあり、特定の行為判定にボーナスを得られる。
なお、7版の刊行時に「パロディ要素」を前面に出した宣伝をされていた為に誤解されがちだが、当作には『ドラゴンハーフRPG』や『MAGIUSスレイヤーズ』のような「コメディ展開を支援するシステム」は存在しない。コメディの舞台を整えるのはダンジョンの主の役目であり、時に命がけで悲喜劇を演じるのは冒険者の役目である。
戦闘ルール
本作の戦闘ルールは集団乱戦をイメージさせる、他に類を見ない特徴的なものである。
それぞれのキャラクターが、
:ダイスロール+能力値から決まる修正値(戦闘修正)で攻撃力(ヒット)を算出。
:陣営ごとに合計して、差分を算出。
:その差分が、ヒット合計の低い敗者陣営にダメージとして分配される。
これを1戦闘ターンとして繰り返す。
その性質上、戦闘時には大量の6面体ダイス(時には100個以上)を使用する。
また、システム上「強い存在は圧倒的に強い」ため、プレイヤー側には効果的に魔法や飛び道具を使う、機転を利かせ敵を分断するなど、状況を逆転させる戦略が求められる。
優勢な陣営にも「悪意ダメージ」のルールで損害が与えられ、1戦闘ターン(基本1行動)がゲーム内で標準2分間も掛かるため、状況次第ではたとえ優位でも出来るだけ早く戦闘を終わらせる必要がある。
モンスター・レート(MR)
敵対するモンスターには、戦闘力を「モンスター・レート(MR)」と呼ばれる数字1つで表現するルールがあり、扱う数値が多くなりがちな戦闘シーンの負担を軽減できる。
これは、モンスターの攻撃力と体力とを兼ねた数字であり、戦闘のダイスロールの際、
- 『MRの十分の一の数+1』の個数のサイコロに、『MRの半分の数値』の修正を足した合計数。
これが、攻撃力(ヒット)として算出される。
そしてダメージを受けたら、MR半分の修正数値が低くなり、その分攻撃力も低くなる。ゼロになったら死亡となる。
例:MR30のオークは、サイコロ4個+修正15の攻撃力を持つ。しかし戦闘を継続しダメージを10点受けたら、MR20となり、攻撃力はサイコロ4個+修正10に減る。
※なお、社会思想社版の5版では、「MRが減るに従い、攻撃力のサイコロ数もそれに合わせて減らしていく」というルールだったが、「一度攻撃を成功させて減らせば、攻撃力もそれに従い減っていく」という欠点もあった。
例:上記のMR30のオークなら、MRが20に減ったら、攻撃力はサイコロ3個+修正10になる。
更に戦闘を継続し、MRが15に減ったら、攻撃力はサイコロ2個+修正7に、MRが10になったら攻撃力はサイコロ2個+修正5にと、徐々に減っていく。
この問題を補うという点から、一応ハウスルールで「攻撃力用と体力用の二つのMRを設定する」という提案の記述もなされていた。
新紀元社版の7版からはそれが改定され、サイコロの数を減らさず、修正値のみを減らしていく現在の形に収まった。
また、5版では『モンスターが武器を所持していた場合。その武器の分の攻撃力を、MRの攻撃力に加える』という事も時折行われていた。
例:MR30のオークが、ブロードソード(攻撃力サイコロ3個+修正4)を持っていた場合。攻撃力はMRの分の攻撃力と修正とが加わり、合計の攻撃力はサイコロ7個+修正19となる。
魔法
旧版においては体力を消費する事で魔法を使用していたが、7版以後は新設された能力値の魔力度を消費する方式に変更されている。魔法は基本的に1系統しかないが、7版以降は10の「魔術学派」に分類されている。魔術師は特定学派の魔法に精通することが可能なほか、専門魔法使いは指定した学派の魔法にのみ習熟している。
通常新たな魔法の呪文の習得には、魔術師組合に多額の金銭を納めることで習得できる。しかし「種族限定」と指定された呪文は、GMやプレイグループの判断次第だが、魔術師組合外で教えてもらう必要がある。また盗賊に魔術師組合が魔法を授けることはなく、常に欲しい魔法を教わる方法を探す必要があり、通例パーティ内の魔術師に教えてもらうことになる。
ふつくしい日本語訳
本作の重要な魅力の一つが、「けいおん!」の秋山澪にも匹敵する様な叙情豊かな言語センスである。以下にその一部を挙げる。
- <これでもくらえ!> (Take That, You Fiend! - TTYFと略されることもある)
- <小さいことはいいことだ> (Smaller is Smarter)
- <シャレたヒゲだね> (That's a Natty Beard)
…念の為に言っておくと、あくまでも「一部」である。
世界観
かつての5版では背景世界は自作が前提だったが、完全版ではソロシナリオで断片的に語られるに留まっていた背景世界「トロールワールド」の歴史と地理について詳細に語られている。
ソロシナリオ「カザンの闘技場」においては、強大な軍事国家「カザン」が登場。
かつては大魔術師カザンにより建立されたが、魔法将軍カーラ・カーンの裏切りにより、女帝レロトラーにより奪われ、現在は彼女の恐怖政治の元に支配されている。
カザンは現在「死の都市」として知られ、誰もが参加できる闘技場が存在。誰もが剣闘士として参加し、勝ち抜く事で栄光を手に入れる事も可能だが、途中で返り討ちにされることも少なくない(ただし勝ち抜けた場合、レロトラー本人から口づけを受ける栄誉に預かったりもする)。
また、カザンに敵対する国家や勢力に対しての軍事力増強のため、兵員募集も良く行われている。あるソロシナリオでは、敵対勢力との戦いで手柄を立てる事で、カザン軍の司令官から直々に、親衛隊や将軍に取り立てられる事もある。
ハイパーT&T
現在タグが少ないと推測されるため、6版に相当する日本独自の拡張ルール「ハイパーT&T(HTT、HT&T)」に関してもここに記述する。
HTT(社会思想社版)
このゲームはトンネルズ&トロールズ第5版を元に、日本にてT&Tの追加ルールと言う位置づけで発売された。このルールは『ウォーロック』誌にてサポートされた。尚この時点では独自の世界観は存在せず、僧侶の信仰する神のルールなどは作成されていなかった。また、追加された職業は「4レベルになった時点で選択して変更」であった。
追加点及び変更点
スキル制の導入
技能制度を導入することにより、難しい判定を簡単にすることができ、キャラクタの色付けが容易になった(知能戦を得意とする戦士、好戦的な盗賊など)。類似システムの「タレント」が本家T&Tにも導入されている。
ハイパーポイント
このゲームにおいては1回のセッションにつき経験レベル回数分、判定時のさいころをひとつ多く振ることができる。この回数を「ハイパーポイント」と呼び、いわゆるヒーローポイントのシステムである。
上級職業の追加
上級職業が追加され、キャラクタごとの違いがわかりやすくなった。職業は新たに追加されたものも多い。
以下、詳細。
- 戦士
T&Tの戦士とほぼ同じ。攻撃力を高める戦闘オプション「渾身の一撃」、より強力となった「ハイパー・バーサーク戦闘」が使用可能。
- 盗賊
これも、T&Tの盗賊と同様。武器も魔法も使えるが、スキル制の導入で、戦闘以外の場面での活躍の場が広がった。呪文は魔術師系と呪術師系の両方を、以前と同様に使用可能。
- 魔術師
T&Tの魔術師と同様だが、使用可能な呪文が「魔術師系」(攻撃呪文など直接的な効果のもの)に制限された。
- 魔法戦士
T&Tの魔法戦士と同様。ただし呪文は「魔術師系」のみ。
※以下が、新たに追加された職業。
- 呪術師
T&Tの魔術師と同様だが、使用可能な呪文が「呪術師系」(戦闘補助や呪いなど「怪しい」効果のもの)に制限されている。そのため、補助や探知、敵への呪いなどは行えるが、直接攻撃力は大幅に低下している。
- 魔道士
呪術師に対する魔法戦士に相当。呪文は「呪術師系」のみ。
- 僧侶
僧侶系の魔法を使う事ができる。戦士・魔法戦士ほどではないが戦闘力もあり、武器を用いての戦闘も可能。ただし宗派によって使用できる呪文や武器などが制限されている。また、神によってはその宗派の戒律も決められており、それを守らねばならない。
元はアメリカ版のハウスルール(「モンスター!モンスター!」に掲載)であり、それを発展させたもの。
なお、信仰する神および宗派・戒律に関しては、ルールブック内にいくつかサンプルとして掲載されている。
- 聖闘士
僧侶に仕える戦士。T&T版の戦士の能力に加えて、僧侶系の魔法を制限つきで使える他、戦闘後に死亡する危険と引き替えに爆発的な戦闘力を得る戦闘オプション「聖戦士宣言」が使用可能。上記ハウスルールにおける新職業「侍僧」を、HTT化にともない改良したもの。
※なお、この名称からどうしても某マンガを連想してしまうが、ウォーロック誌で発表された際には「イメージとしては西遊記の孫悟空に近い」と記載されていた。
- 武闘家
鍛えあげた肉体と精神を武器として戦う戦士。基本は素手で戦うが、武器の多くは制限されて使用不能。ただし、ヌンチャクなどの特殊な武器の他、スピアやロッドなどのいくつかの武器は使用できる。防具も制限があり、軽いものしか使用不可。
成長するに従い、素手の攻撃力が増加する。また、一時的に攻撃力増加する「気・効果」オプションが使用できる。戦士と比較すると、防具の分防御力が髙い戦士に比べ、武闘家は攻撃力に秀でている。
なお、ヌンチャクは武闘家専用の武器ではなく、戦士や盗賊の他、魔術師および呪術師も使用可能(ただし攻撃力は、使用してもサイコロ二個のみ)。
- 怪盗
盗賊と同じく、剣と呪文の両方を使用可能。ただし怪盗系魔法(縄抜けなど、盗賊の技に役立つ効果を持つ、トリック的な呪文)のみ使用可能。
各種戦闘ルールの追加
戦闘時におけるオプション動作や集団戦闘用ルールが整理された。
HTT(角川書店版)
社会思想社の卓上ゲーム撤退に伴い、このゲームは角川書店に展開元を変更した。その際、ルール等をさらに見直したものを発売し、公式のワールド「ドラゴン大陸」も展開された。これは本家T&Tの「トロールワールド」を一部導入・改変した世界設定である。
変更点
社会思想社版に比べて変更の幅は大きい。大きな点は「職業は最初から選択可能に」「守備力関連の見直し」「戦闘不能時の判定」などがある。追加ルールにおいて更に3系統の魔法が追加されたこともあり、もとは1種の魔法の系統が非常に多くなった。
ヴァリアント
シンプルかつ応用の効くシステムのため、それを流用したヴァリアント・ルールが複数存在する。『クトゥルフの呼び声』風のラヴクラフト・ヴァリアント、時代劇やスペースオペラ・ヴァリアントが発表されている。T&Tルール(5版)で行われたロードス島戦記リプレイもある。
なお、「ウォーロック」誌上で展開した際には、「スチームパンク」の他、「リアルロボットアニメ的作品」、「ポストアポカリプス的作品」のヴァリアントルールも掲載された。前者はロボットを製造するための新たな呪文や、製造されたロボットに搭乗してのルールなども定められている。
※残念ながら、これらは単行本化されていない。
モンスター!モンスター!
プレイヤーはトロールを始めとした、悪の種族やモンスター種族となってプレイングするヴァリアントルール。
キャラクターメイクは、通常のT&Tと同じ。ただし職業を決めなかったり、魅力が数値でなかったりと、ある程度の差異がある。
追加ルール集として発売。日本版は社会思想社から文庫で発売されている。
後年になって、T&T完全版とともに、こちらも9版に合わせた完全版が邦訳され発売された。
※なお、社会思想社版の同書には、
「モンスター!モンスター!」の他、
:上記HTTの職業「僧侶」の元となったハウスルール
および、
:登場モンスターのデータ集。
これらも同時に掲載されている。
ハウスルールは、新職業「僧侶」および「侍僧」に関するもので、それらの職業の解説、新たな能力値『信仰度』、使用できる呪文の一覧(奇跡と呼称。主に回復系だが、攻撃魔法も多く存在する)などのルールが掲載されていた。これらは、当時に展開していた5版のT&Tルールに合わせている。
モンスターのデータ集は、「モンスター!モンスター!」、およびT&Tのルールブックに記載されていたモンスターに加え、それまでのソロアドベンチャーに登場したモンスターを網羅し、掲載している(ただし全てではなく、結構抜けもあるが)。
これらに、日本オリジナルのモンスターなども追加。平均的なMR値、および能力値修正、反応や特徴などを記載している。
なお、登場モンスターの傾向は「何でもあり」。
オーソドックスなモンスター……ドラゴンや、トロール(数種が存在する)、オーク、ゴブリンと言った人型種族、アンデッド、デーモンなどに加え、クトゥルフ神話に登場する下位の存在(グール、ショゴス、ツァトゥグァ、ナイトゴーント)からも引用されている(邪神クトゥルフそのものではないが、「クトゥルフの申し子」として、同じ姿のモンスターもデータ化され掲載)。
更には、様々な外部作品や神話・伝説、(現実世界における)未確認生物からも引用されている。
ソロアドベンチャーには、宇宙人やロボットなど、SF的な存在すら登場している。
それらの他「T&T独自の、個性的なモンスター」も掲載(下記参照)。
例:
生ける骸骨:アンデッドではなく、皮と肉が透明で、骨が見えるヒューマノイド。人肉を食らい、都市部のスラムに集団で住み、夜に活動し人を襲う(この他にアンデッドのスケルトンも存在しており、データ集に掲載されている)。
シャドウジャック(影のジャック):真っ黒な風貌の人型生物。人間と敵対しているが高貴かつ紳士的で、女性に優しい。出典はロジャー・ゼラズニィの同名作品から。
ユーワーキー:天使(翼を背に持つ人間)の姿をしているが、本性は悪魔そのもの。
チャイニーズ・デーモン:堕天使のような外観で、コウモリの翼を持つ。
スノリゴスター:ワニの胴体に藪にらみの犬の頭部を持つ。子供を困らせる事を好み、グレムリンには誠実でその乗馬になる。
ワニ鳥:翼を持つワニ。言葉をしゃべり、失意のどん底に居る人間の元に現れ、面白半分にからかう事を好む。
関連イラスト
外部リンク
- フライングバッファロー社 :T&T関連
- 『Role & Roll :T&T関連』
- 『トンネルズ&トロールズ(Tunnels & Trolls)』 - Wikipediaによる解説
- 『ハイパートンネルズ&トロールズ』 - Wikipediaによる解説
関連タグ
ダンジョン&ドラゴンズ ロードス島戦記 ソード・ワールド wizardry
ソードワールド2.0:メインデザイナーの北沢慶が角川版HT&Tに関わっていた為か、新しく増えた冒険者技能(グラップラー、コンジャラー等)にその影響が窺える。