概要
国と地域によって指す競走は異なるが、3つのクラシックレースを制した競走馬のこと。
競馬の三冠はイギリスが元となっており、2000ギニーステークス・ダービーステークス・セントレジャーステークスの3つのレースを制した馬、あるいはそれに相当する各国の3つのレースを勝利した馬が三冠馬となる。
日本競馬の三冠
日本の中央競馬(サラブレッド系)の場合、クラシックレースである「皐月賞」「東京優駿 (日本ダービー)」「菊花賞」の三冠(いわゆる「中央競馬クラシック三冠」)を達成した馬を指す。
なお、2000年(平成12年)より三冠を達成した内国産馬は褒賞金が交付されることとなっている。褒賞金の額は2022年現在1億円であるが、2023年からは3倍の3億円に引き上げることが発表された。
シンボリルドルフ、ディープインパクト、コントレイルの三頭は菊花賞を制するまで無敗のままだったため、「無敗の三冠馬」とも呼ばれる。
なおディープインパクトとコントレイルは親子関係にあり、親子での三冠(及び無敗三冠)達成はこれが唯一(過去にはシンボリルドルフの産駒であるトウカイテイオーが無敗のまま二冠を制したが、こちらは骨折して菊花賞を回避したことで親子での三冠達成はならなかった)。
またディープインパクトの父サンデーサイレンスは三冠牝馬のスティルインラブを輩出し、ディープインパクト自身も三冠牝馬のジェンティルドンナを輩出しているため、2代に渡って牡牝両方で三冠馬を輩出している家系となる。
日本ではセントライトが三冠馬となって以降、三冠馬のいなかった時代は存在しない。
セントライトはシンザンが三冠を取ってバトンを渡したかのように間もなく死亡、シンザンは当時の最高馬齢記録を樹立するまで生存し、一時は日本に4頭の三冠馬が同じ時代を生きていた。
牝馬三冠は桜花賞・優駿牝馬(オークス)・秋華賞(かつてはエリザベス女王杯)である。 このうちクラシック競走であるのは桜花賞と優駿牝馬のみで、秋華賞(及びエリザベス女王杯)はクラシック競走ではない。
なお、2023年から牝馬三冠を達成した馬を対象とした褒賞金制度が新設されることが発表された。これにより、もし牝馬三冠を達成した場合は褒賞金として1億円が交付されることとなる。
また、2024年から南関東S1競走の羽田盃、東京ダービーが交流重賞であるJpn1格付けを取得し、既存Jpn1のジャパンダートダービーが改称した上で7月から10月の開催に移行し、ダート三冠が設立されることとなった。
古馬にも三冠に位置づけられる競走が存在しており、春季・秋季に開催される中長距離の古馬混合戦各3レースが指定されている。春季の場合は大阪杯・天皇賞(春)・宝塚記念、秋季の場合は天皇賞(秋)・ジャパンカップ・有馬記念となる。
これらはそれぞれ春古馬三冠・秋古馬三冠と呼称されており、同一年内にこれら3レースを制せばそれぞれ達成ボーナスとして内国産馬なら2億円・外国産馬なら1億円が交付される。
一方でどちらも2000年代以降に確立した比較的新しい三冠であり(秋古馬三冠は2000年、春古馬三冠に至っては大阪杯がGⅠに昇格した2017年)、またいずれも「現役最強」を決める競走であるために三冠・牝馬三冠と比べて達成馬は非常に少ない。
現在までに秋古馬三冠を達成したのはテイエムオペラオーとゼンノロブロイの2頭のみ、春古馬三冠に至ってはゼロ(ただしキタサンブラックがあと一歩の所まで迫ってはいた)である。
国外の三冠
イギリスではセントレジャーの権威が失墜したため、1970年のニジンスキーを最後に三冠達成以前に、目指す馬もほとんどいなくなった。一方で古馬向けの長距離三冠も存在し、最近ではストラディバリウス(2019年)が達成した。
また、欧州全体では、ダービーステークス・キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス・凱旋門賞の3つの国際競走を3大レースとしており、日本では俗に「欧州三冠」と呼ばれている。達成はダービーがクラシック競走であるため3歳馬に限られ、KG6&QESと凱旋門賞は古馬との戦いとなる。達成馬は現時点ではミルリーフ(1971年)、ラムタラ(1995年)のみである。
アメリカ合衆国の三冠レースはケンタッキーダービー・プリークネスステークス・ベルモントステークス、牝馬三冠レースはエイコーンステークス・コーチングクラブアメリカンオークス(CCAオークス)・アラバマステークス(2020年より)となる。
アメリカ競馬では日欧と違いダートがメインなので芝向けの三冠は存在しなかったが、2019年に芝三冠・芝牝馬三冠がそれぞれ創設された。
芝三冠の場合はベルモントダービー・サラトガダービー・ジョッキークラブダービー、芝牝馬三冠はベルモントオークス・サラトガオークス・ジョッキークラブオークスがそれぞれ対象となる。なお、三冠レース・牝馬三冠レースと違い、これらのレースはGⅠとGⅢが混在している。
また、カナダや香港のように内国産・域内限定で行う三冠レースも存在する。これらのレースはローカルG1・リステッド競走(国際格付け)という扱いである。
三冠馬
カッコ内は達成年と鞍上。
クラシック三冠馬
- セントライト(1941年、小西喜蔵)
- シンザン(1964年、栗田勝)
- ミスターシービー(1983年、吉永正人)
- シンボリルドルフ(1984年、岡部幸雄(無敗で達成))
- ナリタブライアン(1994年、南井克巳)
- ディープインパクト(2005年、武豊(無敗で達成))
- オルフェーヴル(2011年、池添謙一)
- コントレイル(2020年、福永祐一(無敗で達成))
変則三冠馬
- クリフジ(1943年、前田長吉)
1943年の日本ダービー、阪神優駿牝馬(現・オークス)、京都農林省賞典四歳呼馬(現・菊花賞)で優勝。また前田長吉騎手は、日本ダービー優勝騎手最年少記録を樹立(20歳3か月)。
牝馬三冠
- メジロラモーヌ(1986年、河内洋)
- スティルインラブ(2003年、幸英明)
- アパパネ(2010年、蛯名正義(オークスはサンテミリオン(横山典弘)と同着))
- ジェンティルドンナ(2012年、岩田康誠(オークスのみ川田将雅))
- アーモンドアイ(2018年、クリストフ・ルメール)
- デアリングタクト(2020年、松山弘平(無敗で達成))
ダート三冠馬
- ヒカルタカイ(1967年、竹山隆)
- ゴールデンリボー(1975年、赤間清松)
- ハツシバオー(1978年、宮浦正行)
- サンオーイ(1983年、高橋三郎)
- ハナキオー(1986年、堀千亜樹)
- ロジータ(1989年、野崎武司(牝馬が初達成))
- トーシンブリザード(2001年、石崎隆之(無敗で達成))
2001年の達成までは南関東S1グレード、ないしは重賞格付け。3冠目は東京王冠賞(現在廃止)だった。トーシンブリザードはこれに加えてジャパンダートダービーも勝ったため「四冠馬」とも称される。
古馬三冠
春古馬三冠
該当馬はまだ出ていない。
秋古馬三冠
地方競馬の三冠競走
ばんえい競馬 - ばんえい大賞典、ばんえい菊花賞、ばんえいダービー
ホッカイドウ競馬 - 北斗盃、北海優駿、王冠賞
岩手競馬 - ダイヤモンドカップ、東北優駿、不来方賞
南関東競馬 - 羽田盃、東京ダービー、ジャパンダートダービー(2024年よりすべてが交流重賞化し、ダート三冠路線となった。)
金沢競馬 - 北日本新聞杯、MRO金賞、サラブレッド大賞典(2017年より石川ダービーが加わり四冠となる)
東海地区競馬 - 駿蹄賞、東海ダービー、岐阜金賞
兵庫県競馬 - 菊水賞、兵庫チャンピオンシップ、兵庫ダービー
高知競馬 - 黒潮皐月賞、高知優駿、黒潮菊花賞
佐賀競馬 - 佐賀皐月賞、九州ダービー栄城賞、ロータスクラウン賞