ゴ・ジャラジ・ダ
さいていさいあくのかいじん
「亀戸3丁目、ボンブバグザ(この区画だ)」
「君たちが苦しむほど、楽しいから」
「ゲゲルの邪魔するなんて……!」
データ
概要
ゴ集団に属するヤマアラシの能力を持ったグロンギ。ヤマアラシのトゲが体毛状に伸びた白髪が特徴的。
警察による公式発表では未確認生命体第42号。B群としての呼称は無し。
人間体は暗い陰鬱な雰囲気を醸す無口な青年で、青いくちびるが特徴。フィンガースナップを鳴らす他、爪を噛む癖があり、精神的に未成熟な子供の様なイメージを与える。当初は派手な柄の扇子を持っていたが、ザザルに取り上げられたきり返してもらえなかった模様。
ザザルやガメゴとはそれなりに仲良しだったようで、劇中でポーカーやルーレットに興じていた。
そんなジャラジだが、ファンからは「数あるグロンギ……ひいてはライダー怪人の中でも、3本の指に入る程の外道にして邪悪な怪人」と称される極悪怪人であり、子供などの弱者を嬲り殺す行為を快楽と捉える極めて残忍な性格。
その狂気じみたゲゲル
彼が参加したゲゲルの内容は『緑川高校2年生男子を定めに従い12日間で90人殺す』もの。
この"定め"、つまりジャラジが設定したゲゲルの条件とは
1.怪人体の胸に下げている鉤針状のアクセサリを、モーフィングパワーで極小の針に変形させる
2.それを標的の脳に刺し込む
3.内部で膨張・変形させて元の鉤針に戻して脳を内部から傷つけ、脳内出血による虚血性脳梗塞にて殺す(これを90人分行う)
- なお、針は撃ち込みから4日後に変形する。撃ちこまれた針はレントゲンやMRIにも認識されず、手術による摘出も不可能
つまり撃ち込まれれば最後、ターゲットが助かる術はなく標的は4日間、死の恐怖に脅えなければならない(その前にジャラジを倒せば助かる可能性もあったのかも知れないが、撃ち込まれたターゲットは既に全員死亡していて助けられず、最後の1人である生田には撃ち込まれなかったので詳細は不明)。
その残忍な殺害方法故、標的となった男子生徒の中には恐怖のあまり自殺した者まで出たほど。
皮肉にもそのお陰でジャラジのゲゲルは失敗しかけているが、その時点でジャラジは既に王手をかけており、ターゲットのほとんどが犠牲となってしまっていた。
これでも一般怪人なのだが、その手口から「ラスボスのン・ダグバ・ゼバより極悪」と評するファンも少なくなく、ヴィランである以上「ラスボスより邪悪」なのは(一応は)名誉であろう。
しかも、同じ陰険な怪人のギャリドとは違い、針状の装飾品はダーツのような武器への変化が可能でクウガ・ドラゴンフォームの装甲を突き破る程の威力がある。更にヤマアラシの特質上、悪路であってもかなりの速度で移動できる健脚を持つ。
劇中では健脚を活かした瞬間移動のごとき身のこなしと、フィンガースナップにより、クウガや警官たちを翻弄している。
また、「ただ死ぬまで待つのもつまらない」とばかりに、死が確定する4日目にターゲットの視界に出現。宣告通りに死ぬ絶望感を与え、恐怖に怯える姿を見て楽しんだ上、死んだターゲットの葬式にまで現れ、参列していた同級生全員をパニックに陥れる非道さを見せると、ターゲットのみならず周囲の人物の精神状態までズタズタにしながらゲゲルを行っていった(上記の通りゲゲルには一切関係しない行為なので、純粋に趣味で行っている模様)。
ただし、健脚こそ持つものの本人の戦闘力は、他の「ゴ」と比較するとかなり貧弱で、作中のグロンギの中で最も低身長、低体重。武器のダーツもドラゴンフォームの装甲こそ貫いたが、タイタンフォームにはライジングフォームを発現していない状態でも完全に無力化されており(鎧に覆われていない黒い皮膚部分が弱いので貫けられた可能性があるが、ジャラジは冷静さを欠いていたので、仮に貫けたとしてもあの状態のクウガが止められたかはどうかは疑問が残る)単体の戦闘力で見ればゴ集団では最弱レベル。
ジャラジ本人もそれを自覚しているのか用心深く、他の「ゴ」よりもゲゲルの期間を長めの時間に設定している(尤も、半分以上は自身の快楽のためではあるのだろうが)。
ゲゲルの顛末
ターゲットである高校生達の元に現れ、針のようなものを刺して「4日後に死ぬ」と宣告。
能力の隠密性を有効に活用し、実際に犠牲者が出るまでは大規模な事件に発展せずにゲゲルを敢行。合同捜査本部が気付いた時には、既にゲゲルに王手がかけられていた状態だった。
ジャラジもゲゲル成功を確信していただろうが、事態に気づいた緑川学園の男子生徒が、死の恐怖に耐えかねて発狂し、病室の窓から飛び降りて命を絶つと非常事態が起こってしまう。ターゲットが「自殺」するのは自らの設定した条件に含まれない上、90人丁度をターゲットにしたため、このままではゲゲルが失敗するアクシデントに見回れるジャラジ。
しかし、緑川学園の2年には転校して来たばかりの新入生・生田和也がいた。そこでジャラジは生田を新たなターゲットにし、生田家がいる箱根町の別荘を襲撃。
無言電話、指パッチンと共に何度も繰り返す瞬間移動で生田家をパニックに陥れ、生田少年を手にかけようとするも乱入した五代雄介=クウガに阻まれる。ビートチェイサー2000で山中を追われるも、バイクから降りたクウガドラゴンフォームに針を刺して足止めし、「今はゲゲルの時間だ。邪魔したら……殺すよ?」と捨て台詞を吐いてその場から撤退した。
その後生田少年は警察により箱根内の分駐所に保護される。
「なんで俺達殺されなきゃなんないんですか……!?」
「理由なんてないよね……だから……殺させない!……皆そう思って警備してくれてるから」
生田少年は錯乱状態にあったが、五代や一条たちの説得を受けて少し落ち着き、(自殺防止も兼ねてか)安定剤と睡眠剤を交ぜた栄養剤を同意の元に投与され、眠りに就いた。
ゲゲルの制限時間が迫ったところでジャラジは箱根分駐所に現れ、フィンガースナップや神出鬼没な動きで警護していた一条達を煙に巻くと、生田少年の眠る部屋に侵入して警護の警察官を殺害。今度こそ針を撃ち込もうと生田少年に近づいた。
しかし、寸前で五代がフィンガースナップの音を辿って間一髪で乱入。変身したクウガ共々窓を突き破って分駐所の中庭に落下する。
五代はその直前に生田少年から聞かされていたジャラジの卑劣ぶり、それによる被害を伝える悲痛なニュースで怒りを募らせていた。そしてジャラジの姿を再び直視したのが起爆剤となり、怒りが爆発。
そしてジャラジは、「心優しき戦士 クウガ」の逆鱗に触れた。
マウントポジションを取ったマイティフォームのクウガに吐血するまで何度も顔面を殴られ、凄まじい憎悪のこもった拳に怖気づいたジャラジは、逃走を図るも更に顔面を殴打される。
足元もおぼつかない中、ビートゴウラムで真正面からの激突で足を骨折させられ、カウルの上に載せられたまま移動。針で反撃したがクウガは瞬時にノーモーションでタイタンフォームに変身してガード。更に顔面を殴られた後、急ブレーキで跳ね飛ばされて湖に落下。
追い詰めるクウガに対して針を投げて攻撃するも全く効果はなく、クウガはライジングタイタンとなって声もなく静かにジャラジに迫る。
唯一の武器も効かず、ライジング化までされた上に、クウガの昏い怒りに気圧され完全に戦意を喪失したジャラジ。足を負傷した上に身がすくんで逃げるのも叶わず、来るなと言わんばかりに必死に目の前を手で払うしかできなくなる。
皮肉にも、今まで自分が殺害してきた高校生達が味わった「逃れられない死の恐怖」を今度は自分が身をもって知るに至った。
一閃・一突きでも必殺技となる威力のライジングタイタンソードで6回も斬りつけられた上、倒れたところを突き刺され、そこから斬り抉る形で、体ごとゲドルード(腰のバックル)を引き裂かれ爆発四散し絶命した。
なお、マウントで22発、逃げようとした時に12発、ビートゴウラム上で反撃した時に1発殴られ、湖では6度斬られた上でとどめを刺されており、劇中は疎か平成ライダーシリーズでも類を見ない程に、痛めつけられ凄惨な最期を迎えた怪人。
この時の五代=クウガの荒れっぷりは相当な物で、おどろおどろしいBGMをバックに怒りと悲しみの入り混じった凄まじい声を上げながら、ジャラジを一方的に殴り続けており、これまでクウガの戦いを見続けてきた一条達ですら、あまりの剣幕に驚愕していた。
また、五代は「殴る」行為にすら不快感を覚え、殴るたびに拳を握り直している逸話は有名だが、同じように「斬る」動作も好まないため一撃で仕留められる突きを多用する。
だが、この時のマウントパンチでは一切握り直す動作を行っておらず、普段なら絶対にやらない斬撃を複数回浴びせており、暴力を躊躇わない程に激怒している実態が分かる。
特にジャラジにトドメの一撃を振るうシーンの「ウォリァア゛ア゛ア゛!!!」の叫び声は、もはや別の何かに変身しそうな気迫だった。
EPISODE40にて、五代は(周囲の被害を考えずに)ライジングマイティで倒そうとまで思ったと告白していた様子から、普段穏やかな彼がいかに激怒していたかが察せられるだろう。それを裏付けるかのようにこの回のラストは、戦いを終えて立ち尽くす五代の後ろ姿で締めくくられ、表情がはっきり映らないどころか、グロンギを倒した後に向けるサムズアップもされなかった。
また「それまで助けられなかった人への無念が蓄積したのも一因だったかも知れない」とも分析している。
一応、クウガは激怒しながらも冷静さは欠いておらず、マウントパンチもドラゴンフォーム以上のスピードを誇るジャラジの機動力を封じるためであり、爆破ポイントへの輸送も忘れず、途中でタイタンフォームを選んだのも針を防ぐためであった。
しかし、クウガがジャラジに彼自身が与えた以上の恐怖を味わせる為に、拳=暴力を振るったのもまた事実。
グロンギは封印エネルギーによる魔石ゲブロンの起爆で倒されている(封印マークからひび割れが伝わって、バックルが割れると同時に爆発するいつものパターン)が、ジャラジはライジングタイタンソードによる魔石ゲブロンの直接破壊により死亡しており、この時のクウガは(義憤によるものの)心優しき戦士にあるまじき残虐性を垣間見せている(お腹に突き刺すのではなく、そこから股下辺りまで引き裂いている)。
また、冷静であった=単なる怒り以上にジャラジへの純粋な憎悪から湧き上がる殺意に身を任せていた事実でもあり、上記で記されているような嬲り殺し同然の痛めつけ方もそれを象徴している。
ジャラジ戦は、「五代雄介も(良い意味でも悪い意味でも)只の人間である」と証明するシーンの1つでもあるのだ。
そしてジャラジが爆死した直後、五代の脳裏にはまだ見ぬ"闇の凄まじき戦士"の姿が浮かんでいた……。
また、ターゲットの1人の遺体の脳から摘出された鉤針は、ガメゴの鉄球と共に科学警察研究所に回収され、モーフィングパワーの研究に使われることとなった。
余談
EPISODE35のドラマパートでは喧嘩した保育園児が仲直りしていく様が描かれており、サブタイトルの「愛憎」に恥じない対極的な流れになっている。
後に発売されたアクションゲーム『ライダージェネレーション2』では、仮面ライダーコアに対して、クウガが「憎しみの心だけで戦っても、虚しさしか残んないだろ? どんなに相手が憎くても、闇に囚われちゃいけないんだ!!」と敢然と立ち向かっている。
特に印象的なクウガに馬乗りで殴られるシーンだが、このシーンではスーツアクターが本当にぶん殴られている。
クウガのスーツアクターである富永氏が『十年祭』のトークショーで語ったところによると、「迫力を出そうとカメラの位置を調整した結果、カメラの距離とアングルの都合で殴るフリでは拳が当たっていないのがバレバレになってしまうことが判明し、仕方なく本当に殴って撮影した」とのこと。そのためジャラジのスーツアクターであるおぐら氏は口の中を切ってしまい、撮影後に血を吐いていたとか。
更に言えば、前述の問題点に悩む皆に「本当に殴ればいい」と言い出したのは当のおぐら氏である。
また、ビートゴウラムから吹っ飛ばされた時も、おぐら氏を支えありとはいえぶっ飛ばしたようだが、おぐら氏が骨がきしむ音がしたと語っているのが、鈴村監督のツイートで語られている。
つまりあの迫真の演技は彼の殊勝な役者魂の賜物なのだ。お疲れ様でした!!
食堂のシーンに登場した3人組の釣り人は、メ・ビラン・ギとメ・ギノガ・デのEPISODEにも登場したキャラクターである。
「ジャニーズみたいな怪人」とのオーダーの元、今までの怪人がオジサンなら今度は少年から、小さい頭、狭い肩幅、細い手足、ヤマアラシのような白黒要素やツンツンした白髪などの要素を盛り込んでデザインされた。
なお、髙寺成紀Pのツイートによれば、口の形は齧歯類の門歯をモチーフにしつつ、サイギャングやアルマジロングに見られた口部パターンも参考にしているとの事。
派生作品
『仮面ライダーディケイド』ではクウガの世界でモブ怪人として登場した他、「アマゾンの世界」ではアマゾン本編で登場した獣人ヤマアラシのオマージュ怪人として登場。
この世界はとうに大ショッカーに支配されていたため、原典ではあれほど恐れられていたにもかかわらず人々から応援され、彼を殴った仮面ライダーにブーイングが起こる皮肉な事態に陥っていた。光写真館を襲撃した際にはドカドカ鍼を投げまくっている。
クウガ、アマゾン、ディケイドの三大ライダーと闘った末、アマゾンのジャガーショックで肩の大動脈を食いちぎられ爆死した。
原典のアマゾンではほとんど怪人は爆発しなかったし、封印エネルギーによって魔石ゲブロンが破壊されなければグロンギの死体はそのまま残るはずである矛盾もあるが。
また映画『MOVIE大戦2010』ではスーパーショッカーの一員として姿を見せている。