メ・ビラン・ギ
めびらんぎ
「ゴラゲダ ヂグボ グバギ ザバサザ(お前たちが能無しだからだ)」
未確認生命体(グロンギ)のうち、メ集団に属するピラニア種の怪人。警察からは未確認生命体第23号(人間態としては未確認生命体第23号B群7号)として扱われている。
人間態は、七色のメッシュが特徴の男性の姿を取っており、髪だけでなくピアスや首輪といったアクセサリー、それに網目状のシャツや派手な柄のズボンなど、奇抜なファッションセンスの持ち主揃いのメ集団の中でも特に派手好みな傾向が目立つ。この奇抜なファッションには「殺した人間から奪ったものを自らの美学でわざとチグハグにしている」という設定が存在することを、後にプロデューサーの髙寺成紀が明かしている(参考リンク)
性格は大変短気で、特にズ・ザイン・ダとは犬猿の仲とも言える間柄として、幾度にも亘り激しく衝突した。
EPISODE11での「ここではリントの言葉で話せ」のシーンでの、「俺ノ…番、ダナ?」とバルバに問いかけるくだりや、EPISODE14にて未確認生命体に憧れる蝶野潤一と出くわし、襲いかかろうとした際には「獲物ダ!」と口走るなど、流暢ではないものの日本語で話すことも出来るようである。
能力
水中を自在に泳ぎ回るのみならず、地上においても俊敏な動きを見せる。また鋭敏な嗅覚は、特に血の臭いに異常なまでの反応を示す。
そして最大の武器とも言えるアゴは筋肉がものすごく発達しており、1分間に約200回の速さでの咀嚼を可能とする。加えて鋭い牙はコンクリート製の壁を容易く砕き、(装甲のない箇所とはいえ)タイタンフォームの右腕にも咬み傷を負わせるほどの破壊力を発揮する。
この他、両手のブレスレットについたヒレ状のカッターも、マイティフォームやザインのボディを傷つけるほど鋭く、素早い動きから繰り出す切り裂き攻撃でクウガを追い詰めた。
弱点としてエラが設定されている(『仮面ライダークウガ超全集 上巻』p47より)が、これは作中の描写には特に反映されていない。
作中では本格的な活動に先立ち、他のメ集団のグロンギたちと共に人間態がEPISODE7より登場。記事冒頭にも示した罵倒で乱闘に及ぼうとするなど、この時点で既にザインとは険悪な間柄である事を窺わせていた。
その後EPISODE11にて、既に資格を喪失していたザインが勝手にゲゲルを始め、そのせいで自分の番が遅延したことを知ると、続くEPISODE12にてクウガと交戦中であったザインに襲い掛かる。クウガそっちのけでの乱闘の末、ザインを川に突き落とすと気が晴れたのか、そのまま川を泳いで逃げ去っていった。
ザインがクウガに倒され、ようやく自分の番が来ると嬉々としてゲゲルを開始。2000年4月17日より開始されたゲゲルは、制限時間を2日、殺害人数を180人と設定し、主に荒川を運行する水上バスを襲撃して着実に人数を稼いでいった。
メ集団によるゲゲルが始まって以降、殺害描写の凄惨さに磨きがかかった感のある『クウガ』であるが、中でもビランによる殺戮の描写は、悲鳴を挙げるも逃げ場の無い乗客を、幼い子供まで含めて一人一人噛み殺し、又は腕のカッターで斬殺して血飛沫が飛ぶ(襲撃前からかかっていた優雅な音楽が段々不協和音になっていき、妙に生々しい咀嚼音も合間合間に差し挟まれるなど、音響面での演出もまたその残酷性を際立たせている。またこのシーンは総集編で、咀嚼音がさらにエグく手直しされている)など、後のガリマやギャリドによるゲゲルと並んで、とてもニチアサで放送したとは思えない生々しいものとなっている。
さらに釣り人たち(※1)の乗っていたボートに襲いかかろうとするも、その寸前に川に落ちた血の匂いを嗅ぎつけるとそちらに標的を切り替え、川岸の工事現場でたまたま手を負傷していた作業員に100回以上齧り付いて失血死させた。
そこに駆けつけたクウガに対しては素早い動きでこれを翻弄、堅牢な装甲を持つタイタンフォームにも(五代が謎の飛行体のヴィジョンに当惑していたのもあるとはいえ)互角以上の戦いを展開するが、援護に入った一条によって新装備のプラスチック弾(※)を胸に撃ち込まれ、その悪臭に矢も盾もたまらず「ラダ・ボセバ…!(また、これか…!)」との捨て台詞を残して逃走する。
逃走後、先の戦闘で負ったダメージに苦しんでいたビランであったが、バルバやゴオマたちから嘲りを受けたことに憤激しゲゲルを再開。一方警察では、前述の工事現場での行動などからビランの特性に気付いた合同捜査本部が、荒川に人工血液を散布するという囮作戦を敢行。一条も自らモーターボートに乗って人工血液をばら撒き、皮肉にもビランが見下していたザインと同様にまんまと誘き出されてしまう。
船上の一条に襲いかかりこれを殺そうとするが、間一髪でドラゴンフォームのクウガが割って入り、3人ともまとめて川に転落。クウガと壮絶な水中戦を繰り広げつつも河川敷へ逃れ、その場に居合わせた蝶野を発見すると、彼の問いかけも意に介する事なく襲いかかろうとするが、ここでもすんでのところで追いついてきたクウガに阻まれ、しばし浅瀬にて泥仕合を繰り広げる。
しかし近くにあった鉄の杭を勢い余って切り落としてしまったのが命取りとなり、これをドラゴンロッドに変化させたクウガの猛打を浴びた末、スプラッシュドラゴンを胸に打ち込まれてあえなく爆死した。
2001年正月の新春スペシャル内で放送された番外編「初夢」では、五代の夢の中にビランそっくりの男がポレポレの客として登場。自分の腕に噛みつきながら、ザイン似の男と喧嘩していた。
この時も演者は同じだが、なぜかOPのキャストクレジットでは大橋貴展と誤植されており、以降BDのリリース時に至るまで修正されていない。
(※1 この時ビランに殺されそうになった釣り人3人組は、その後も度々ゲスト出演しており、EPISODE20では川岸で釣りに興じていた際に水面に浮かんでいたギノガの破片を手袋と見間違えたり、EPISODE35では箱根の蕎麦屋での昼食中に人間態のジャラジを目撃してもいる。撮影現場ではドラマ『踊る大捜査線』のスリーアミーゴスにちなみ、「ツリーアミーゴス」と呼ばれていたという(参考リンク))
(※2 アジト襲撃の際に使用された特殊ガス弾が効果を発揮したのを受け、その成分をさらに200倍に濃縮・充填する形で開発された特殊弾。体内で炸裂することで、特殊ガスの毒性によって細胞を破壊し、一時的ながらも活動を停止させるだけの効果を発揮すると想定されていた)
TVシリーズに比べ、怪人態がより魚に近いフォルムにリファインされている。
ラ集団の戒めを破って勝手にゲゲルを開始するも、これが風紀を乱す行いと見做されてバルバから見捨てられ、メ集団の中でも最も硬派なガドラに処刑が依頼される。
格上であるガドラに対しても、土下座して謝るふりをして襲いかかるなど、TVシリーズ以上に下劣な振る舞いが目立つも、当のガドラには魂胆を見透かされており逃走を余儀なくされてしまう。ほとぼりが冷める頃合いを見計らい、改めてとある青年を川岸から襲おうとしたが、そこに現れたガドラによって今度こそ粛清されるに至った。
TVシリーズでは散々ズ集団をバカにしていたビランであったが、漫画版ではその要素をメ・ガルメ・レに取られたのみならず、自身がルール違反により粛清されるという皮肉な結末を迎えた。
しかし、仮にTVシリーズからの要素を引き継いだとしても、そこでの全ての行動が無様な道化でしかなくなるという救いようのない結末を迎える事になるのが、何ともやるせないものがあると言えよう。
デザインは当初担当していた阿部卓也から、石森プロの飯田浩司が作業を引き継ぎ完成に至った。後に飯田は『完全超悪』にて、その際想定していた噛みつき攻撃からヒレ攻撃に変わったため、デザインを考えなおしたように思う、とコメントしている。
EPISODE13の次回予告の中では、山中にてクウガと格闘するカットも存在するが、これは撮影スケジュールの逼迫に伴い用意された予告編のみのカット、即ち「嘘予告」である。
『クウガ』において、この手の嘘予告的なカットが盛り込まれた次回予告はその後もしばしば散見されるが、当時助監督として次回予告の制作にも携わっていた鈴村展弘は、この回の次回予告から「鈴村得意技の嘘予告が本格始動です」と語っており、また前述した事情から放送の早い奇数話の次回予告が「嘘予告」になりがちとも明かしている(参考リンク)。
ちなみに一条役の葛山信吾氏は、荒川でビランに襲われたシーンでボートから落とされたあと水を飲んでしまい下痢に悩まされたという。
- ピラザウルス:『仮面ライダー』に登場する敵怪人の一体。公式な言及はなされていないものの、他のグロンギの中にはショッカー怪人を意識した者も存在することから、ファンの間ではこれになぞらえて元ネタと捉える向きも存在する
- 仮面ライダーアマゾン:同名の作品に登場する主人公ヒーロー。手足にヒレを生やしていたり、噛み付きや切断技を得意とするなど、様々に類似した点を有する
- フィッシュロード(ピスキス・セラトゥス) ピラニアメギド:いずれも仮面ライダーシリーズの他作品に登場する、ピラニアをモチーフにした敵怪人達。このうち後者は水に浮かぶ乗り物を襲ったという点でも共通している
未確認生命体第○号
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