ゴ・ベミウ・ギ
ごべみうぎ
「グスパギ ブギゾ ババゼス ザベザ(麗しく死を奏でるだけだ)」
「ギンボンザブダダ ゴ・ベミウ・ギ レ(死のコンダクター、ゴ・ベミウ・ギよ)」
未確認生命体(グロンギ)のうち、ゴ集団に属するウミヘビ種(※1)の怪人。警察からは未確認生命体第38号と呼称されている。作中でも数少ない女性のグロンギであり、「ギンボンザブダダ(死のコンダクター)」を自称している。
妖艶な雰囲気を持つ、黒髪ロングの女性の姿をした人間態と、ドレッドヘアの如き髪と紫の肌が特徴の怪人態の2つの姿を持ち、ウミヘビをモチーフとしていることからも窺えるように水中での戦いを得意とする。また、人間態では普段は鳳凰の刺繍があしらわれた黒いチャイナドレスをまとっているが、ゲゲルに挑戦する際にはプールという場に紛れるため、やはり黒い水着に都度都度装いを変えている。
その人となりについての描写は限定的ではあるものの、前述の二つ名や記事冒頭に示した台詞からも窺えるように、芸術家肌な側面を持ち合わせているらしく、音楽に興味を持ち自らのゲゲルにもこれを取り入れている他、興味を示した曲の楽譜を理解し、これをごく短期間で弾きこなしてみせるなど、上位集団ゆえの人間社会に対する高い習熟ぶりも存分に発揮している。
一方で、後にゴ・ザザル・バのゲゲルが行き詰まった際、ドルドから「リントも無能ではない。ベミウはやつらの知恵に負けた」と忠告を受けたのに対し、「一緒にするな」と返しており、このことからベミウはザザルから嫌われていた、もしくは対抗意識を向けられていたのではないかと推察する向きもある。
(※1 ウミヘビは厳密には魚ではなく爬虫類に属するが、名前の末尾は本来爬虫類系に付される「レ」ではなく、水棲系の「ギ」とされている)
足首に巻き付けてあるアンクレットを変化させたムチを得物としており、零下150度の極低温状態としたこれを自在に振るうことで、打ち付けた対象を凍結せしめる能力を持つ。この極低温による打撃はクウガの生体鎧にもダメージを与える他、その武器さえも凍結・粉砕させるなど威力も侮れないものがある。
このムチの振るいようにも芸術家肌な面が表れており、ゲゲルの際にはその場にいる誰にも感付かれることなく、水中にいる標的の胸にムチの先端をほんの一瞬だけ接触させる、という離れ業を、都度都度寸分の狂いもなくやってのけてみせてもいる。この一瞬の接触によって生じた、急激な温度変化により標的に急性心臓麻痺を引き起こさせ、死に至らしめるのがベミウの常套手段である。
この見事なムチ捌きは、ドルドからも「ゴラゲン ルヂパ ガバダサ ダブドゾ(お前のムチはさながらタクトよ)」と評されてもいる。
ゲゲルの開始に先駆け、目黒区内の倉庫でダンスグループに襲いかかった際(※2)、彼等の持っていたラジカセから流れる「音楽」に興味を持ち、そこからゲゲルの着想を得たものと見られる。
こうして、作中における2000年7月27日にベミウはゲゲルを開始し、都内各所のプールで次々と犠牲者(※3)が続発することとなる。また、事件現場の一つとなった文京区の「みずさわウォーターパーク」には、偶然にもみのりやおやっさん達が居合わせており、後からその事実を知ったみのり達は、未確認生命体の脅威がごく身近なところにまで忍び寄っているという事実と、一つ間違えば自分達が犠牲者となっていたかも知れないという危険性とを痛感させられる格好となった。
先にゲゲルに臨んだブウロと同様に、難解極まるベミウの行動の法則性に頭を悩ます警察を尻目に、着々とゲゲルを進行していくベミウであったが・・・思わぬところからその法則性を解明する糸口を掴まれることとなる。
それは4件目の事件現場となった、港区内の「ミラージュホテル」にて殺害を完了した際、たまたま見かけたピアノを弾いていた様を、現場検証に駆けつけた一条に目撃されたことに端を発する。事件発生から間もない状況で、平然とピアノを弾き続けるという行為に違和感を覚えていた一条は、後から合流した五代がふと口にした「なにかの順番になってるとか」との一言から、一連の犯行における効率の悪い移動とまるでまちまちな被害者の数が、ある一つの法則性に則ったものであることに思い至ったのである。
その法則性とは、「ショパンの『革命のエチュード』の譜面に記された音階と同じ頭文字の、それも水に関係した場所にて、音符の長さに合わせた人数を、記された音符に合わせた人数だけ殺す」(※4)というものであった。これにより次の事件現場となり得るのが、「『革命のエチュード』の5番目の音階に当たる「ソ」が頭文字に付く場所」であると推測した一条からの提言を受け、合同捜査本部も都内全域のプールや、首都圏近郊の海水浴場の一時的な営業停止を呼びかけるに至った。
結果、次の現場として目星を付けていた世田谷の「祖師谷センタープール」には既に標的足り得るリントは一人もおらず、苛立つベミウは「外浦海岸」に目的地を変更。居合わせた海水浴客に矛先を向けるも、ここでも五代と一条の邪魔が入りそのままクウガとの戦闘にもつれ込むこととなる。
そのクウガとの直接対決では、ドラゴンフォームで立ち向かう相手の肩をムチの一撃で凍結せしめ、さらにドラゴンロッドにムチを巻き付けてこれを粉砕してみせると、その後もムチをかわしながらの戦闘を余儀なくされるクウガを波打ち際まで追い込んでみせた。
しかし止めの一撃を叩き込もうとしたその瞬間、足元に流木が流れ着いたのを見て取ったクウガは回避と同時にこれを拾い上げつつ、ライジングドラゴンへと変身。新たな力を発現させたクウガにはさらなる追撃も意味をなさず、ジャンプから繰り出したライジングスプラッシュドラゴンで腹を貫かれた末、投げ飛ばされて沖合で大爆発した。
(※2 ゲゲルの対象外であるどころか、そもそもゲゲル開始前のタイミングで彼等を襲った理由や、本来ならばルール違反ともなり得るこの行為がなぜ見逃されたか、いずれも作中では特に言及されていない。そもそもこの時点では飽くまで暴力を振るっただけで、殺人までには至っていない可能性もあるが)
(※3 目標人数は明言されていないが、目標殺害数を示すバグンダダの黄色い球の数の百の位が4個移動していたことから、10進法に直して「324人」ではないかと推測される)
(※4 より詳しく説明すると、ベミウの弾いていた『革命のエチュード』の10小節目は「ドレミミソソソラ」の音階から始まるが、作中における事件現場も「ドルフィンプール」→「レクサススイミングスクール」→「みずさわウォーターパーク」→「ミラージュホテル」と、いずれもこの音階と頭文字が符合するものばかりである。さらに各犯行現場での被害者の数も、それぞれ音符の種類に符合しており、加えて付点音符の場合は子供を付点扱いとする(例えば16分音符だったら16人、二分音符は2人、八分音符は8人、付点八分音符は大人8人と子供16人)という、芸術家肌なベミウらしい凝りようとなっている)
同作では、第2・3話で描かれた「クウガの世界」に登場。
メ・ビラン・ギとタッグを組み、婦人警官をターゲットにしたゲゲルを行っていたが、「未確認生命体第10号」こと門矢士/ディケイドによって失敗し、2人がかりでディケイドと戦うも逆に返り討ちに遭う(ビランは小野寺ユウスケが変身したクウガに倒された)。その後ン・ガミオ・ゼダが起こした「究極の闇」によって他のグロンギと同様に複数の個体が登場する。
原典と異なり怪人態のみが登場し、戦闘においてもムチや冷気を操る能力ではなく、ゴ・ガドル・バが俊敏体で使用した槍を振るっている。
「私がダグバを倒し 『ン』の座に就いた時 私は この世界に革命をもたらす…」
「 ──この曲はその象徴です 」
同作におけるベミウは、外見こそもっともオリジナルに似た若い黒髪美人であり、怪人態のデザインもTVシリーズのそれを踏襲しつつも、海蛇が口を開けた様をイメージしたデザインになっており、額には蛇の目を模した意匠が確認できる。
基本的には語り口も含めて穏やかな物腰が目立つが、一方ではベ集団を虐げるゴ集団の筆頭的存在として描かれてもおり、その際には一転して口調も高圧的なものとなり、ゲゲルの順番待ちのストレス発散としてなぶり殺しにする暴虐的な一面を持っている。
また、「お互いを求めることを愛」だと認識しており、以前から戦ってみたいと感じていたクウガに対して「愛している」というあたり、グロンギらしく「愛」に対する価値観が根本的に異なっていることが窺える。
作中では物語中盤から人間態として登場しており、第79話から本格的にゲゲルに参加。TVシリーズとは異なり変身前から頭巾を被っているのが特徴。
ピアノの演奏会に乱入し、高等な演奏テクニックを披露してから、冷気を纏った手を相手の胸に押し当て殺害するという衝撃的なゲゲルデビューを果たす。その後もプールに現れては前述した方法で殺害を重ねていった。こちらもルールはどうやら『革命のエチュード』が流れている場所を狙ったもののようであり、TVシリーズでの描写を意識したものとなっている。
凍結能力は人間態でも行使可能であり、自分を口説いてきた不良グループの手足や耳を砕いてみせた。さらにTVシリーズと同様にムチから冷気を放つこともでき、駆けつけたG3の「GS-03デストロイヤー」の刃を破壊しているが、雷切は表面が凍結するだけで砕くことは出来ず、ムチを鞘で受け止められた所にマイティキックを浴びて退散した。
ミラージュ・パークにてG3と再戦に及んだ際には、相手が引っ提げてきた耐低温シールド「タルカス」を、ムチの先に氷塊を纏わせて砕こうとしただけでなく、身体から発した冷気でG3の放った神経断裂弾を凍結させたが、ここでクウガがピアノの支柱を引き抜いてライジングドラゴンに変身。タルカスを貸し与えられたクウガと一進一退の攻防を繰り広げるも、躱した先にいた駿河の雷切で目を潰されてしまう。
無論、この程度の攻撃でやられるベミウではなく、手から放つ冷気でステージ一帯を凍結させ、氷の音と振動で相手の攻撃を読もうとするも、今度はそこへ乱入してきたヤマイに一撃食らわされ、再度撤退を余儀なくされてしまう。
その後は未確認対策本部から危険な存在とみなされ、雄介と離れ離れになったヤマイを、自身のゲゲルを邪魔したことへの報復で殺害しようとする。
しかし禁忌の力を得たヤマイとは相打ちとなり、ヤマイのベアハッグにより身体を粉砕されて死亡した。その死体はなぜか爆発せず、瀕死のヤマイの周りに散乱していた。最後にクウガと戦うこともなく、見下していたベ集団の手で殺されるという皮肉な最期だった。
デザインはPLEXが担当し、青木哲也が素材を描いている他、仕上げは竹内一恵が手掛けている。当初のデザイン段階では、海蛇男(『仮面ライダー』)を原点と位置づける形で体色も薄緑色と指定されており、後にインパクトや悪くて強そうな感に欠けるとの判断から紫系に変更されているが、放送当時刊行された一部のムック本においては色変更前のバージョンの画稿が収録されたものもある。
人間態と怪人態の統一性をとるため、演者の伊藤の髪型に合わせる形で怪人態の頭部デザインが起こされており、またモチーフとなったウミヘビ自体にはデザイン上の特徴的な部位がないことから、牙や舌、それに蛇腹を組み合わせるなど苦肉の構成となっている(参考リンク)。
強敵揃いのゴ集団所属にしては珍しく、クウガが仕留め損なった事は一度もなく、初見で倒すことができた個体となっている。これはライジング化の兆候で動きが鈍ったブウロ戦とは異なり、咄嗟の機転でライジングドラゴンに変身出来た上に、青の金らしく速攻で必殺技を繰り出せた点が大きいとも考えられている。
その反動からか、後の漫画版では技巧派として登場し、幾度となくクウガと激突するなど、TVシリーズ以上の強キャラとして描かれている。
EPISODE 28にて一条と五代がゲゲルの法則に気付いた際、両名ともクラシックの知識があるような素振りを見せたが、実際に2人ともピアノが弾けるという裏設定がある。五代の場合、周囲を喜ばせるために有名な曲を自己流でマスターしたようで、それぞれの曲が○○番目の技に数えられており、『革命のエチュード』も914番目の技という位置付けである。一条は子供の頃にピアノを習っており、将来を期待されるほどの才能も発揮していたようだが、父の死を受けて警察官になると決めてからは本格的なレッスンは止めたらしく、現在では音楽は趣味として楽しんでいるようである(参考リンク)。
EPISODE 27の次回予告には、ベミウとバダーが共闘するという、設定とは些か矛盾するカットも存在するが、これはクウガでは半ばお馴染みとなっていた「嘘予告」の一つであり、制作の遅れをカバーする目的で撮影された予告編のみのカットである。当時助監督として、次回予告を手掛けていた鈴村展弘の語るところによれば、このカットは「2大怪人VSクウガ」だけでなく「とにかくバダーにライダーキックをさせたかった」という意図があったという(参考リンク)
福沢博文:本作において、ベミウも含めた大半のグロンギのスーツアクターを務めている他、EPISODE 27ではベミウによって殺害された青年も演じている
関連・類似項目
海蛇男 サーペントアンデッド ウミヘビアマゾン:いずれも仮面ライダーシリーズの他作品に登場する、ウミヘビをモチーフとした怪人達。中でも海蛇男は前述の通り、デザイン上でもその存在が意識されている
未確認生命体第○号
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