「俺は俺のやり方でやります」
「タロウー!!」
演:篠田三郎
概要
年齢22歳。ウルトラマンタロウと一体化し、ウルトラバッジを掲げて変身するZAT隊員。
明るく子供好きで子供相手の約束を軽く見ていない一面、喧嘩っ早い一面、目先の出来事にとらわれて脊髄反射で行動する一面、怪獣に生身で飛びかかる破天荒さを見せるほか、やりかけたことを最後までやり遂げようとする強い信念を持つ。
ZAT隊員の任務に当たる際は、白いスカーフを首に巻く。
身寄りはなく天涯孤独の身。普段は恩人でもある白鳥船長の家に下宿しており、白鳥姉弟とは実の家族同然の間柄で白鳥健一から兄のように慕われている。
ZAT入隊前は、世界中を旅しながらボクサー修行をしており、ZAT入隊後もジムに通いながら朝のロードワークを行うなどボクサーへの夢は忘れていなかった。ボクシングは最後の最後まで戦うと同時に、自分のためにやっている。ボクサーこそ男らしい職業と考えている。第10話では減量に耐えながら日本アマチュア新人王戦に臨んでKO勝ちしたが、以降もボクシングを続けていたのかは不明。
白鳥船長のタンカーに乗って帰国した際、超獣オイルドリンカーを港湾作業用のクレーンで撃退し、朝日奈隊長から勇敢な男と評された。白鳥船長から下宿を勧められるが断っている(「俺のやり方」云々の台詞はこのとき発した)。チグリスフラワーを植えて野宿するが、チグリスフラワーがZATのラビットパンダを襲撃したため、チグリスフラワーを怪しんだZATのスーパーナパームで焼き払われてしまう。近くで眠っていた光太郎の寝袋に火が燃え移り、激昂して北島隊員に殴りかかるなどの行動に出る。このとき、後のスワローキックの前身となる動きを披露し、さらには側にいた南原隊員まで殴り掛かった。
そこに登場したアストロモンスの正体を知り責任を感じて生身で挑み、飛び去るアストロモンスの足に飛びつきナイフを刺したり噛み付くなどの攻撃をするが、怒ったアストロモンスに振り落とされる。落ちた先がバッティングセンターだったのでネットに引っかかり、「いてえなあ」で助かった(普通助かりません)。翌日、通りかかった白鳥姉弟と子供たちに発見され、緑のおばさん(正体はウルトラの母)を紹介してもらって治療してもらい、変身アイテムであるウルトラバッジを授かる。
やがてZATに入隊し、アストロモンスとの交戦中に乗機が撃墜されて瀕死の重傷を負うが、ウルトラの母とウルトラ5兄弟に導かれてタロウと一体化して復活。以後、タロウとしてZAT隊員として地球防衛のために戦っていくことになる。アストロモンスの撃破後に朝日奈から白鳥家を紹介してもらい、白鳥姉弟と3人で暮らすことになる。
第1話ではトンデモないことをいっぱいやらかしているが、第2話以降の性格はウルトラシリーズ歴代主人公の中でも品行方正で真面目である。しかし、ジレンマ(ナメクジ)が光を吸収するのを知らずにZATガンで撃ち巨大化させてしまう、大輔少年に植物ラジオを渡してマシュラ誕生の原因を作るなど、後先考えない行動を取って本来出現せずに済んだ怪獣を出現させたり、その遠因となったこともあるが、とがめられた形跡はない(出現した怪獣は当然被害を出している)。
第6話でのジレンマの発生原因が宝石を持ち帰った光太郎にあることになってしまうため、さおりは頑なにZATへの協力を拒み宝石を所持し続けた。説得するためとはいえ、この話ではさおりにビンタをくれている。
第33話・第34話でテンペラー星人が襲来した際、機転を利かせて独力で倒したことから思い上がり、ウルトラ兄弟から諫められるも聞く耳を持たず、再度現れたテンペラー星人を追い返すなど成果は出したものの、チームワークを完全に無視した行動をとっていた。テンペラー星人の逆襲に遭い、さおりに憑依したテンペラー星人により捕縛され人質にされてしまい、光線を浴びせられて死の苦しみを味わったことから改心した。
劇中で各話に登場する少年少女たちと交流を深める機会が多く、励まして立ち直らせるという面が強く出ている。しかし、第40話で自転車に乗れずバカにされていた少年を励まして協力するあまり、タイラントの接近を知らせるウルトラサインやZATの連絡に気づかないなど大きなミスを犯している(最終的にタイラントはあっさり倒されるのだが)。
最終回(第53話)ではサメクジラによって白鳥船長が命を落とし、失意の健一に真の勇気を示すため、人間として生きることを決意。
「君はお父さんやタロウのことを忘れて、自分の力だけで生きていこうとするのは大変なことだ。だが、そんな苦労を君ひとりにさせない。僕もひとりの人間として生きてみせる。僕はウルトラのバッジをもう頼りにはしない!」
ウルトラバッジをウルトラの母に返し、タロウに変身せず巨大化したバルキー星人を見事に倒すと、ZATを除隊してひとり雑踏に消えていった(タロウと一体化したまま)。
その後
『ウルトラマンメビウス』以降の作品にタロウが登場しているが、篠田三郎氏が出演していないがゆえに光太郎は登場していない。
最終回でウルトラバッジを返す際に、第1話でタロウと光太郎が一体化する映像が回想として流用されているが、その旨のナレーションなどがないこともあって光太郎とタロウが分離する瞬間と誤解するファンが、リアタイ視聴世代・再放送世代問わず多い。しかし、「ウルトラマン超ひみつ100」(小学館・1993年)には、光太郎とタロウが一体化したまま地球に留まっていることを示唆する文章が存在していると同時に、分離したとはないものの『タロウ』最終回以降の十数年間は一体化したままなのは公式でも言及されている。
『メビウス』の前史「ザ・ウルトラマンメビウス」では、Uキラーザウルスとの戦闘でウルトラ4兄弟が変身不能となったために、タロウとして光の国に帰還している。
没映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟2』では、例の4兄弟に代わってタロウが帰還する際、光太郎はタロウと分離して横浜で親のいない子供たちを集めて児童養護施設ウルトラの家を経営し、失語症の少年を特に目をかけていた。さらに、メビウスたちの危機にタロウと再び一体化して戦った。
光太郎とタロウが分離したことが、「ウルトラマンの愛した日本」(著:タロウ、2013年)や『ギンガ』のDVD第3巻封入の作品解説書にてタロウ本人の口から言及されている。しかし、前者は円谷プロから出された著書ではなく、ゆえに正史に持ち込まれた設定ではない。後者でタロウは「彼(光太郎)は地球人として生きる道を選んだ」と言っているが、それが『タロウ』最終回を指しているとしても、その際に分離したと言っていない。
その超人ぶり
アストロモンスに生身で挑む他にも、普通なら死んでいるような現象や、前述のように何度も怪獣相手に飛びかかっていくという無謀な暴挙を繰り返している。
- ライブキングの鼻の穴からクシャミで吹き飛ばされて数十メートル飛ばされるが、木に引っかかり「おーい」で済ませる。しかも健一の愛犬ポチまで助かっている(普通死にます)
- ジレンマの舌に捕まり振り回される。
- 高層ビルの屋上から数十メートル離れた位置にいるアリンドウの触覚に飛び乗り、ゼロ距離射撃を食らわし、再度高層ビルに戻っている(普通できません)
- 棒高跳びで54メートルもあるボルケラーの角に飛び乗る。さらに、ZATの攻撃の流れ弾が頭部周辺に命中しまくっている(普通死にます)
- 空中よりコンドル1号から脱出し、数十メートル下にいるフライングライドロンの腹に飛び乗りゼロ距離射撃。怒ったフライングライドロンに振り落とされて、川に叩き落とされる(普通死(ry)
- 竹の反動で48メートルもあるロードラの鼻先に飛び乗り、竹槍で攻撃。怒ったロードラに叩き落とされる(普通死(ry)
- ヘルツの肉片を採取するために、足に飛び乗ってナイフで攻撃。怒ったヘルツに跳ね飛ばされ踏まれるが、土踏まずだったので助かる(普通死(ry)
- 生身でバルキー星人に挑み、コンビナートの油を被ったバルキー星人を銃撃して倒す(代償にコンビナートは壊滅しました)
なお、光太郎のみならず、この世界では一般市民ですら生身で槍やらロープやらバレーボールで怪獣に挑むことがザラにある。お前ら人間じゃねぇ!!
変身シーンも他のウルトラマンに比べて奇妙な展開になることが多く、病院の移動式ベッドに乗って変身したり、某仮面のヒーローのごとくバイクに乗りながら変身したり、またあるときはなぜか飛んできた大根を掴みながら変身したりと字面だけ見ると目を疑いたくなるシーンが多いが、これが『タロウ』という作品のフリーダムさなのだろう…多分!
ULTRAMAN
「今の俺に『光』の文字を拝する資格はない…
だから ただのタロウと呼び捨ててください」
CV:前野智昭
ここでも、東光太郎という人物が登場する。ただ、この作品は『ウルトラマン』最終回後にウルトラ戦士がやってこなかったというIF展開を描いたものであるため、本編の光太郎とはパラレル世界の別人の関係にあると思われる。
詳細はこちらの記事を参照。
その他
内山まもる漫画版『ウルトラマンレオ』
きみたち、おぼえているかい。ウルトラマンTの最終回で、東光太郎がバッヂをすてて人ごみにまぎれていったのを。
第6話「ウルトラキラーゴルゴ」は、『タロウ』の後日碑である。
ウルトラキラーゴルゴへの対抗策としてウルトラマンレオ=おおとりゲンのために、光太郎の協力を得たいと考えたモロボシ・ダンによって、TV放送を通して協力を求められる。しかし、地球人として生きることを決めた光太郎は応じなかった。TVではMAC基地に連絡するようにとしか言っていなかったため、ダンが自分を呼んだ理由が気になってMAC基地に向かおうと車を走らせていた最中、レオとゴルゴの戦いを目撃。レオではゴルゴに勝てないために自分が呼ばれたと理解した光太郎は、ストリウム光線で倒せずともレオと協力すれば勝てるかもしれないと決断した瞬間、ウルトラバッジを使用せず全身が光に包まれ、直接タロウに変身。
レオとの協力技ダブルストリウム光線でゴルゴを倒し、MAC基地にてダンやゲンと対面。もう一度一緒に戦ってほしいというダンの頼みを辞退し、それを理解したダンやゲンに分かれを告げ再び去っていった。
「ダン、ゲンくん。二度ともう会えないだろう、さよなら」
タロウ、ほんとうにありがとう。でも、あんまりかたいこといわないでたまには、出てきてね。
余談
他の第2期ウルトラシリーズの主人公とは違い、ZAT内部で孤立したり謹慎処分になったことは一度もない。
企画時は姓の読みがあずまで、最初からZAT(企画時は宇宙科学警備隊とのみ呼称)の隊員だった。
俳優の松平健氏は光太郎役のオーディションを受けていたが、最終選考で落選した。
西田次郎役の三ツ木清隆氏も光太郎役の候補だった。
演じる篠田氏は、『タロウ』に出演する以前に『ウルトラマンA』第20話で篠田一郎役でゲスト出演している。これは、ウルトラマンシリーズの新たな主役に篠田がふさわしいと考えた橋本洋二プロデューサーが、篠田氏に撮影現場の雰囲気を知ってもらうためだった。
篠田氏が東光太郎は自分の中での青春の良き思い出としてとっておきたいがゆえ、平成ウルトラシリーズでは昭和ウルトラマン=ウルトラ兄弟の人間体として唯一再登場していない。本編後に主人公が一切客演していないのは他世界を含め、テレビシリーズに限定しても昭和だと世界観の異なる『ザ☆マン』のヒカリ超一郎、平成以降でも『ネクサス』の孤門一輝(他のデュナミストも同様)、『マックス』のトウマ・カイト、そして奇遇にもタロウの息子とともに戦った工藤ヒロユキがいて、全体的に見ても少数派(ただし孤門役の川久保拓司氏、カイト役の青山草太氏は別役で『ウルトラマンX』に客演している。青山氏の場合はカイトに擬態したマックスを演じたため、カイト本人は再演していない)。
だが篠田氏は当然嫌っているわけではなく、篠田氏はインタビューなどで『タロウ』にまつわるエピソードを披露することが多いので、むしろ思い入れが強いと言える。
とはいえ、本人が健在のうちに一度ぐらいはタロウに変身してほしいという声も多く、あるいは顔出しで光太郎を演じるのは難しくとも、タロウの声だけでも演じてほしいというファンの声も多くある。
また、上記の通り、一体化した人間と分離したウルトラマンがその人間に擬態して客演した例もあり、他会社ではあるもののタロウも本編とは無縁の番外編に出演した作品の主人公が10年ぶりに客演した時、本編当時のイメージを壊さないために敢えて本人の人格を出さなかったという例の客演もあるため、設定と篠田氏の意思とスケジュールが合えば、可能性はゼロではない。もっとも、光太郎が現在どうなっているのか、タロウと分離したのかしていないのかすらも公式では2023年現在も一切言及も説明もなされていないが。
ウルトラシリーズで共演こそしていないが、次作の主役とはまさに兄弟と呼べるほど仲が良い。
タロウの息子が登場する作品が発表された際、そちらでの出演も実現しなかったものの、タロウも息子を持ったことについて篠田氏は非常に喜びに満ちたコメントを発表しており、そちらの主演である井上祐貴氏と対面も果たしている。
2020年12月に発売された『ウルトラ特撮PERFECT MOOK』第11号でも篠田氏はスペシャルインタビューに応えている。
『タロウ』でメインライターを務めた田口成光氏は、『タロウ』放送中に生まれたご子息に光太郎と名づけようとしたが、親戚の子に偶然同じ名が名づけられた。しかし、孫息子に光太郎と名づけた。名前の由来は東光太郎である。
篠田氏は、荒垣修平役を演じた東野英心氏と『シルバー仮面』第5話でも共演しており、初代さおり役を演じた朝加真由美女史とは、1995年に放送されたドラマ『ダブルマザー』では夫婦役で共演している。
関連イラスト
関連タグ
ZAT 朝日奈勇太郎 荒垣修平 二谷一美 北島哲也 南原忠男 西田次郎 上野孝 森山いずみ
歴代ウルトラマンの主人公系譜