「今こそ1000個目の星――地球を滅ぼし、銀河の神とならん!」(最終話)
「おのれメドーが、私のメドーが…」(〃)
概要
銀帝軍ゾーンを影から操ってきた真の支配者にして、本作のラスボスである巨大生命体。一人称は「私」。
「1000個もの星を滅ぼすことにより、神にも等しい力を得ることができる」という特性を持ち、これを目的として銀河皇帝メドーという存在を隠れ蓑とし、彼女への忠誠を誓った数多くの宇宙人達を束ねて銀帝軍ゾーンを組織、後述の通り迂遠ながらも着実な信頼関係を構築することで、彼等を自身の悲願成就のために利用してきた。
メドーという「偶像」を巧みに利用し、自らはあくまでも銀河戦艦に徹して表に現れぬようにするなど、その正体は長きに亘り極めて巧妙に秘匿され続けてきたが、物語終盤で学がシュバリエ等によって連行されてきた際、彼が艦内からの脱出を図ろうとする過程で偶然にも、単なる戦艦ではなく巨大な生命体であることが露見(第45話)。
さらに直後の市街地への攻撃の際、ニュータウン小学校で育てられていたシドンの花の影響により、隠れ蓑としていたメドーもまた消滅したのを機にゾーンの真の支配者として幹部達の前にその存在を現すこととなった(第46話)。
ゾーンはあくまでメドーという存在を中心に回っていた組織であったため、バルガイヤーという黒幕の登場は組織そのものの根幹を大いに揺るがす事態にも繋がった。
ドルドラとザザを筆頭にバルガイヤーが真の支配者だったという現実を受け入れられない者が多数であったが、バルガイヤーはそれを意に介することなく、前出の二人を合身銀河闘士・バラドルギンへと改造。
さらに後述の大脱皮の過程でシュバリエすらも利用し切り捨てるなど、メドーを隠れ蓑としていた頃にはおくびにも出さなかった「部下達はあくまで自分の目的達成のための捨て駒である」という姿勢を、ここに来て露骨に見せるようにもなった。
超獣大脱皮
そして物語が最終局面を迎え、第47話でバルガイヤーも銀河戦艦の姿からの大脱皮により、真の姿である銀河超獣へと変貌を遂げるべく、最後の行動を開始する。
大脱皮を果たすためには、バルガイヤー自身が繭に包まれる等4つの段階を踏み、同時に脱皮の際に必要なエネルギーとして、「この世で最高極上の死のエキス」を用意する必要がある。バルガイヤーはガロアとシュバリエの対抗心を巧みに煽り、彼等をファイブマンにけしかけて倒させることで、シュバリエという「この世で最高極上の死のエキス」の入手に成功。満を持して銀河超獣への大脱皮を果たすに至った。
最終話で遂に銀河超獣へと変貌を遂げたバルガイヤーは、醜悪な顔面にも見える胴体と6枚の巨大な翼、それに植物の根のような下半身を備えた禍々しい姿をしており、長いムチ状の触手と翼を羽ばたかせての突風、それに火球や光線等といった攻撃手段を有する。またマックスマグマの必殺技であるダイヤモンドマックスさえものともしない、異常なまでの耐久力も併せ持っている。
大脱皮を完了した後、1000個目の星たる地球を滅ぼし神となるべく地上を蹂躙し、それを阻もうとしたスーパーファイブロボを一蹴、さらにはファイブマンの最強戦力であるマックスマグマをも容易く大破に追い込む等猛威を振るった。最早万事休すかと思われたファイブマンであったが、ここで銀河系P16惑星からの星川博士の通信が奇跡的に入り、「バルガイヤーの唯一の弱点が他ならぬシドンの花である」という事実が、星川兄妹の元にもたらされる。
度重なるゾーンの執拗な企みで、地球に持ち込まれていたシドンの花のほとんどが失われていたが、教え子の一人であるタツヤが懸命に守り抜いた1株のみが奇跡的に生き残っており、タツヤからその1株を受け取ったファイブマンは、一か八かの賭けとしてシドンの花と共にバルガイヤーの体内へ突入を試みる。
そしてそこで彼等を待ち受けていたのは、バルガイヤーに秘められていたさらなる秘密であった。
狂愛の末路
バルガイヤーの体内へ突入したファイブマンと、これを迎え撃ったガロア艦長との乱戦の最中、両者はとある一室へと迷い込んでしまう。その一室に安置されていた棺にシドンの花が反応したその時、中に眠っていたメドーと瓜二つの顔を持つ女の亡骸から、霊魂が立ち上がり一つの「真実」を語り始めた。
元々彼女はとある星の王女であったが、バルガイヤーからの執拗な求愛を拒んで逃げる内に崖から落ちて死亡し、死した後もなお長い歳月をバルガイヤーの体内に閉じ込められたまま過ごすという憂き目に遭っていた。そうした状況を厭い、バルガイヤーの体内から出してくれるよう懇願するメドーに再度シドンの花が呼応し、彼女の魂はここにようやく解放の時を迎えた。
メドーの魂が解放された際に被った深刻なダメージや、残された亡骸までも消滅したことでバルガイヤーが混乱と恐慌を来たす中、脱出を果たしたファイブマンは止めを刺すべくスーパーファイブロボで捨て身の特攻を敢行。これによりその身を貫かれたバルガイヤーは、体内に取り残されたガロア艦長やドンゴロス共々、狂乱の中で爆発四散した。
一人の王女への盲目的な愛を抱えた、一体の超獣の死をもってゾーンもまた崩壊し、長きに亘る戦いにも終止符が打たれたのである。
評価
バルガイヤーが支配者として、表立った活動を見せたのは最終盤のみであり、また目的のためなら部下の命すら平然と利用し尽くすその姿勢をあからさまにしたがゆえに、自らが築き上げたと言ってもいいゾーンという組織を自らの手によって事実上崩壊に追いやってもいることから、そこだけを見ればあまり評価は高いものではない。
しかし裏を返せば、不測の事態によって正体が露見するまでの、「裏方」に徹しての組織のプロデュース力、そしてギリギリまでその正体を部下達に悟らせず、その信頼を集め続けた手腕については、非凡な物があるのもまた事実である。
その組織運営は大まかに、「功績を出した者への最大限の優遇や便宜を徹底して信頼関係を構築する」、即ち手間こそ掛かるが確実な成果を出すことを重視したものであり、その信頼や成果が積み上がった結果、ゾーンは独自の通貨経済が成り立つ小国家レベルの組織へと成長している。
また、第26話で行われた部下の組織内での立場を入れ替える「さかさまデー」は、その実「自身が直に命令を下す幹部達がどれだけ下からの信用や忠誠があるかを観察するためのものだった」可能性もある。度重なる失敗故に部下に処刑されかかったガロアは言わずもがなだった一方、さかさまデー中でもいつもの接し方でいたドルドラとザザの2人はそれと好対照である。
そしてこの組織運営下で最も得をし、同時に最も利用し尽くされたのが、他ならぬ初代艦長のシュバリエである。彼は多大な功績を出した後に一線を引き、報酬を支給されての悠々自適な境遇を許されたが、裏を返せばその処遇は「有事の時は絶対戻って来い」と圧力を掛けられていたに等しいものと言えよう。
ゾーンへの復帰後は往時の実力の高さを発揮しながらも、その実力と過去の実績に胡坐を掻いた詰めの甘さを露呈して失敗を重ねる醜態を晒し、前述の通りバルガイヤーの正体露見のきっかけまで生む格好となったシュバリエだったが、それでもメドー(バルガイヤー)は最後まで手元に置き続け、大脱皮を果たすために必要な「この世で最高極上の死のエキス」を絞り出す糧とした。
「この世で最高極上の死のエキス」が如何なる物なのか、作中では具体的には言及されていないが、シュバリエが斃れた際のバルガイヤーの台詞から推測するに、「バルガイヤー≒ゾーンに命を奪われた者達が発したマイナス思念」だと考えられる。故にゾーンの手先として数多くの星を滅ぼし、そこに生きていた者達のマイナス思念を大量に浴びたシュバリエは、極上の「死のエキス」を出す素材に成り得たのである。
以上の事から、シュバリエはゾーンにとって最強の助っ人であると同時に、バルガイヤーの大脱皮のために前々から仕込んでいた、一種の「保険」としての側面を有していたと考えられる。
備考
デザインは大畑晃一が担当。巨大クリーチャーを得意としていた大畑なだけに、自身が制作に関わったOVA『大魔獣激闘 鋼の鬼』のデザインラインにも通ずる、巨大な頭部型の怪物に見えつつも根のような両足や鳥獣的な頭部で人型を成す、騙し絵的なデザインとなっているのが特徴である。
戦艦が怪物化するという事で、その本体が先端から割れて羽を広げる事により、怪物としての中身が出てきたというイメージでデザインが起こされているが、他方でこうしたスタイルは通常は吊り(操演)となってしまうため、内臓が下にこぼれて引きずっているイメージで、スーツを立たせる際の足と尻尾が配されている。
某匿名掲示板の「スーパー戦隊シリーズ歴代のラスボスで最強は誰か」というスレッドでは、戦隊側の最強戦力ですら太刀打ち出来ないほどの強さを示したことから、ラゲム(鳥人戦隊ジェットマン)やエグゾス・スーパーストロング(激走戦隊カーレンジャー)等と並んでトップクラスに位置づけられることが多い。特に後者は「身近な物がスーパー戦隊の逆転勝利に繋がった」という共通項も有している。
関連タグ
星王バズー:『電撃戦隊チェンジマン』の登場キャラクターの一人。バルガイヤーと同様に幹部達よりはるかに大きな体躯を持ち、姿を現す際には立体映像を用いた、敵組織の首領。
地帝王ゼーバ/リサールドグラー2世:『光戦隊マスクマン』の登場キャラクターの一人。自らの正体を隠して組織の頂点に上り詰め、側近達の人事に試行錯誤を重ねていた独裁者。
また以上の両名とも、CVがバルガイヤーと同じ加藤精三であるという共通項を有する。
クエルボ/ドン・クエルボ:『宇宙戦隊キュウレンジャー』の登場キャラクターの一人。自らが率いていた組織を、持ち前のの頭脳を活かしてメドーとほぼ同じ組織運営を実践した結果、組織を全宇宙を支配する超巨大国家へと成長させたという共通項を持つ。他方で彼自身は自分と一体化した首領に唆され誘導される形で、その地位と組織を拝借していたに過ぎず、最終決戦の直前に死亡した点も含め、作劇上の立ち位置としてはむしろメドーのそれに近似している
力ずくで愛を奪うなんざ、モテねぇ野郎のすることだぜ!:次年度の戦隊の戦隊ブラックの名言で、バルガイヤーのメドーへの求愛行為はまさにこれである。
ヤプール:ウルトラシリーズに登場する異次元人の一種族。彼らも「超獣」を自らの目的のために使役しているが・・・多分関係はない
蛇遣い座のプリンセス:『スター☆トゥインクルプリキュア』の登場キャラクターの一人。表向きの顔を用い、様々な星の住人を欺く形で巨大組織を結成したという点で共通項を有する。彼女の場合はマッチポンプを用いて構成員を集めることまで行っており、ある意味ではバルガイヤー以上の悪辣さを持ち合わせている
シン:『北斗の拳』の登場人物の一人。作中でのとある行動がバルガイヤーに近似している