概要
半正多面体の双対として知られる多面体であり、アルキメデス双対とも呼ばれる。
以下の13種(鏡像を含めれば15種)がある。
名称 | 頂数 | 辺数 | 面数 | 面形 | 頂形 | 双対 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
菱形十二面体 | 14 | 24 | 12 | 4(菱形) | 3と4 | 立方八面体 | 等面菱形多面体。単独で空間充填可能。 |
菱形三十面体 | 32 | 60 | 30 | 4(菱形) | 3と5 | 二十・十二面体 | 等面菱形多面体。 |
凧形二十四面体 | 26 | 48 | 24 | 4(凧形) | 3と4 | 斜方立方八面体 | |
凧形六十面体 | 62 | 120 | 60 | 4(凧形) | 3と4と5 | 斜方二十・十二面体 | |
三方四面体 | 8 | 18 | 12 | 3(二等辺三角形) | 3と6 | 切頂四面体 | |
四方立方体 | 14 | 36 | 24 | 3(二等辺三角形) | 4と6 | 切頂八面体 | 別名:四方六面体、六方四面体 |
三方八面体 | 14 | 36 | 24 | 3(二等辺三角形) | 3と8 | 切頂立方体 | |
五方十二面体 | 32 | 90 | 60 | 3(二等辺三角形) | 5と6 | 切頂二十面体 | |
三方二十面体 | 32 | 90 | 60 | 3(二等辺三角形) | 3と10 | 切頂十二面体 | |
二重二方十二面体 | 26 | 72 | 48 | 3(三角形) | 4と6と8 | 切頂立方八面体 | 実質的には四方菱形十二面体。別名:六方八面体 |
二重二方三十面体 | 62 | 180 | 120 | 3(三角形) | 4と6と10 | 切頂二十・十二面体 | 実質的には四方菱形三十面体。別名:六方二十面体 |
五角二十四面体 | 38 | 60 | 24 | 5(五角形) | 3と4 | 変形立方八面体 | 鏡像の別有り。 |
五角六十面体 | 92 | 150 | 60 | 5(五角形) | 3と5 | 変形二十・十二面体 | 鏡像の別有り。 |
正多面体と半正多面体が紀元前から語られていたのに対し、この立体について初めて記述されたのは1865年との事。
パッと見では解り辛いが、正多面体や半正多面体同様、長さ比も角度もキチッと決まっている(トポロジー的な自由度は無い)。
例えば凧形二十四面体や凧形六十面体は、全ての面が合同な凧形であるというだけならば未だ伸び縮みできるが、二面角の条件を考慮する事で一つに定まる。
考慮しなかった場合の呼び名は定かではないが、結晶学の分野で使われる「六・四面体」「四辺三・四面体(中:四角三四面体)」という表現は、そういうものに対しても使われている。
そういう場合、凧形六十面体なら、面が菱形になるよう変形すると菱形六十面体となり、○方○面体なら、面が正三角形になるよう変形するとダ・ヴィンチの星となる。
全ての面が完全に同じ条件であるため、サイコロ向きである。
サイコロとしては、二面角条件を満たさない亜種でも凸型であれば不足は無い。
面の数は、二重二方三十面体が一番多く120枚だが、面がちと細長い。
次点は60枚で、五方十二面体、三方二十面体、凧形六十面体、五角六十面体がこれに当たる。
この内、三方二十面体はまた面が細長いが、他はそうでもない。
カタランの立体同士の関係などについては「半正多面体」を参照。
半正多面体との対比
カタランの立体は、半正多面体に受け継がれなかった正多面体の性質の片割れを受け継いでおり、半正多面体が、全ての頂点形状が合同で正多角形で構成されるのに対し、こちらは全ての面が合同で正角錐状の頂点で構成されている。
これにより、イメージ的には半正多面体に対して「半正多角体」とでも呼べそうな立体である(ただ、この呼称には難点が多いかもしれない)。
このような見方では、半正多面体と並んで正多面体の次点に来る立体であるが、一様多面体には含まれないが、一様多面体の双対の一種ではある。
更に、半正多面体が球に内接する(=外心を持つ)が外接はしないのに対し、こちらは球に外接する(=内心を持つ)が内接はしない。
構成面もまた内心を持っており、これは内接球との接点でもある。そしてそれを結ぶと双対の半正多面体になる(重心は結んでもダメ)。
まとめると以下の通り。
正多面体 | 半正多面体 | カタランの立体 | |
---|---|---|---|
頂点形状が全て合同 | ○ | ○ | × |
面が全て合同 | ○ | × | ○ |
頂点形状が全て正 | ○ | × | ○ |
面が全て正 | ○ | ○ | × |
内心有り(球に外接) | ○ | × | ○ |
外心有り(球に内接) | ○ | ○ | × |
辺周り形状が全て合同 | ○ | △(準正多面体のみ) | △(菱形系のみ) |
辺の長さが全て同じ | ○ | ○ | △(菱形系のみ) |
二面角が全て同じ | ○ | △(準正多面体のみ) | ○ |
全ての辺に対し、沿う方向に対称 | ○ | △(変形系除く) | × |
全ての辺に対し、横切る方向に対称 | ○ | × | △(五角系除く) |
一様多面体の「その他」は、凸型でない事以外は半正多面体の性質を持つが、それらの双対もまた凸型でない事以外はカタランの立体の性質を持ち、例として小三角六辺形二十面体がある。
ただこの場合、「二面角が等しい」は曲がる方向は問わないようであり、正角錐状ではなく鞍型のような頂点を持つものも見られる?
また、7種は無限遠に頂点を持つ特殊なものである(面が立体の中心を通るタイプのものの双対がこれとなる)。
名称について
切頂○面体は全て接頭辞が「切頂」であるのに対し、その双対は三方だったり四方だったり二重二方だったりと一定しておらず微妙に面倒臭いが、これは恐らく英語由来。英語でも切頂がTruncatedなのに対し、三方、四方、五方、二重二方はそれぞれTriakis、Tetrakis、Pentakis、Disdyakisとなっている。
しかしこれらは全て「各面の中心を持ち上げる操作」と見ることができ、呼び分けは本来不要なものである。実際に英語では2008年になってようやく、これらをKis-に統一した名前が「Symmetries of Things」という書籍で記述された模様。
二重二方は主に六方~と呼ばれているが、二重二方の方が色々と理に叶っている。本当は四方菱形と呼ぶのが恐らく現状では最も妥当であり、これはKisrhombicという表現や、中国語では四角化菱形と呼ばれている事からも間違いでは無いはずなのだが、正式名称としては未だ無い模様。
六方という呼び方は、正多面体をベースとしているぶん解り易い名前ではあるが、三角形に六角錐を張り付けるというイレギュラーな見方をしており、Kis-には該当しない。同じ方法では八方立方体(八方六面体)、十方十二面体とも呼ぶ事ができ、それに対してあえて六方を採る理由にも乏しい。
「五角~」については、「菱形~」「凧形~」という乗りで「五角形~」と呼んでしまいがちだが、「形」は入っていない点に注意。なぜ「形」を入れないのかについては不明。
菱形十二面体と菱形三十面体
これらは準正多面体の双対であるだけあって、カタランの立体の中でも特に美しい性質が見られる。準正多面体と同様、実は辺周りの形状が合同であり、また、二面角を考慮せずともだいたい一つに決まる。
しかし、この2種だけをまとめた呼び名は不明。この2種は共に等面菱形多面体にも分類されているが、等面菱形多面体はこの2種が全てではない。残りの2種は菱形十二面体第2種と菱形二十面体であり、これらは菱形三十面体から一部を取り除く事で作る事が出来る。菱形三十面体→菱形二十面体→菱形十二面体第2種という二段変身をする。
カタランの立体の性質を満たす他の立体
アルキメデスの角柱・反角柱が、半正多面体の条件を満たしつつ無数に存在しているのと同様に、カタランの立体の条件を満たす双角錐・反双角錐も無数に存在する。呼び名は不明だが、「アルキメデスの立体の性質を持つ角柱→アルキメデスの角柱」という解釈ならば、「カタランの双角錐」「カタランの反双角錐」と呼ぶ事ができる。どちらも角数が多くなると細長くなるため、サイコロとしては普通の正双角錐や正反双角錐の方が向く。
ミラーの立体が半正多面体の性質を満たすのと同様、その双対である擬凧形二十四面体もカタランの立体の条件を満たす。ただ、ミラーの立体の頂点の場合と同様、全ての面が合同ではあっても、多面体の中での立ち位置としては2種類あるため、サイコロとして正確に機能するかが心配になる所(重心の位置が変化しない点に注意すると、真空中では大丈夫かもしれないが、空気抵抗の影響はどうだろうか…)。