概要
点(頂点)と直線(辺)と平面で構成されており、球や円柱のような曲面を持つものは含まれない。
最小の多面体は四面体(三角錐)であり、4つの頂点と4つの三角形から成る。
その他の定義として、星型八面体のように複数の多面体に分解できるもの(複合多面体)は通常は含まないとされる(参考:正多面体と正多角形の多義性 - Polyhedronの日記)。
通常は更に、全ての辺にきっかり2枚の面が集まった形となっているが、大二重変形二重斜方十二面体のような特殊な例もある。
ねじれ正多面体のように、無限の面を持つタイプが含まれる場合もある。
多角形と大きく異なってる点として、(複合型を除いた場合)多角形は常に「頂点の数=辺の数」であるのに対し、多面体の場合はそうとは限らないという点がある。
また、多角形の場合はどんなn角形でもグラフ理論的な構造は同じであるのに対し、多面体の場合は、頂点・面・辺の数が全て等しくとも全く違う構造となる事がある。
そのため、多角形では頂点の数が主要的な要素になってるのに対し、多面体における面の数は多面体の性質の一要素に過ぎないと言える。
英語はポリヘドロン(Polyhedron、複数形はPolyhedra)。
3DCGにおける同様のものはポリゴン(Polygon)と呼ばれがちだが、ポリゴンは多角形の事であり、ポリヘドロンを表現するためのパーツを意味している。
多面体はポリトープの一種でもあり、三次元におけるポリトープとも表現できる。
多面体における「辺」の類義には「稜」が存在し、そう言った場合には、辺の両脇の面が成している角(二面角)を含んだ意味合いが強めになる。
稜は一方で、Wikipediaによればポリトープにおけるn-2次元要素を意味する事もある(要出典扱いされている)。
主な多面体
※定義や名称に揺れが多いため注意。
- 凸多面体(凸型多面体)…凹みも交差も無い多面体。こういう性質は「凸である」などと表現される。
- 正多面体(プラトンの立体)…正多角形の三次元版。正多角形が無限種存在するのに対し、こちらは正四面体、立方体(正六面体)、正八面体、正十二面体、正二十面体の5種しか無い。この内、立方体と正八面体、正十二面体と正二十面体は双対関係(後述)を成している。
- 半正多面体(アルキメデスの立体)…正多面体の、正多角形を複数種類使ったバージョン。全13種。サッカーボールの形としてよく見られる切頂二十面体もこの一種。ミラーの立体とアルキメデスの角柱&反角柱も条件は満たすが、通常は含まれない様子。
- カタランの立体…半正多面体の双対であり、同じく様全13種。ガーネットの結晶の形として知られる菱形十二面体と凧形二十四面体もこの一種。サイコロ向きであり、最大は120面。
- ジョンソンの立体…正多角形のみで構成されている凸多面体の内、正多面体、半正多面体、アルキメデスの角柱&反角柱を除いたものであり、全92種。ミラーの立体はこちらに属している。
- ニアミスジョンソンの立体…ジョンソンの立体っぽく見えるが、正多角形でない面が存在するもの。厳密な定義は特に無い様子。
- デルタ多面体…正三角形のみで出来ている凸多面体。正多面体の内の3種とジョンソンの立体の内の5種を合わせて全8種。
- ゾーン多面体…点対象な面で構成された点対称な凸多面体。
- 星型多面体…星型多角形の三次元版。星型八面体が馴染み深い。星型多角形と同様、厳密な定義は曖昧。
- 角錐・角柱系…詳細は後述。
- 一様多面体…正多面体、星型正多面体、半正多面体、および「半正多面体の凸型でない版」の総称的なものであり、全75種。アルキメデスの角柱&反角柱も含まれる事がある。似て非なるものとして、擬一様多面体(ミラーの立体と擬大斜方立方八面体が該当)や退化一様多面体(大二重変形二重斜方十二面体など)がある。
- 一様多面体の双対…ちゃんとした名称は不明。正多面体、星型正多面体、カタランの立体、および「半正多面体の凸型でない版の双対」の全75種が該当。
- 菱形多面体…菱形のみで構成される多面体。詳細は後述。
- ダ・ヴィンチの星…正多面体の各面に、側面が正三角形の角錐をくっつけた形。
- 穿孔多面体…ドーナツのように、穴の開いた構造を持つ多面体。
- 複合多面体…複数の多面体を複合させた形。多面体には含まれない場合も。
- ねじれ正多面体(正スポンジ)…無限に広がる多面体の一種。
- 面の数による分類…四面体、五面体、六面体、七面体、八面体、九面体、十面体、十二面体、二十面体など。詳細は後述。
角錐・角柱系
角錐や角柱は、共にどんな多角形に対しても考える事ができる。
各々、錐体・柱体の一種としての側面も大きい。
双角錐と角錐台も同様である。
一方、反角柱と反双角錐については、正多角形以外を底面とした場合の定義が不明となっている。
これらには、角錐に対する錐体のような拡張概念的なものは無く、あくまで多面体の枠組み内のものとなっている。
いずれも正多面体と密接であり、正四面体なら角錐の一種であるし、立方体は角柱と反双角錐の一種、正八面体は双角錐と反角柱の一種となっている。
立方体と正八面体が双対であるように、角柱と双角錐、反角柱と反双角錐も双対となっており、角錐は自己双対となっている。
正十二面体と正二十面体も、反双角錐・反角柱に少し手を加えたものの一種となっている。
角柱と反角柱は、底面も側面も全て正多角形である場合に特殊な呼び名が存在し、それぞれ「アルキメデスの角柱」「アルキメデスの反角柱」と言う。
これらは文字通りアルキメデスの立体(半正多面体)の性質を満たしているが、無限に種類が存在する都合によるのか、通常はこれに含まれない。
双角錐と反双角錐は、底面が正多角形で傾いていない場合はサイコロに向き、特に後者は10面ダイスでやや有名。
いずれも目の数があらゆる偶数の場合に利用できるが、面の部分が上を向くか否かの都合により、目の数が単偶数(4n+2)である場合は反双角錐の方が向き、全偶数(4n)である場合は双角錐の方が向く。
菱形多面体
この呼び方は、検索候補には挙がるものの正式名称としては見当たらない。
ここでは「菱形のみで構成される多面体」と解釈して記述する。
無数に存在しているが、代表的なものとしては以下がある。
- 菱形六面体…全ての面が菱型である平行六面体。菱面体とも。どのような菱形に対しても1~2種類存在している。
- 等面菱形多面体…1種類の菱形のみで構成される凸多面体で、菱形六面体に該当するもの以外のもの。全4種。
- 菱形六十面体…1種類の菱形で構成されているが、窪みがある。
- 菱形九十面体…凸型だが、2種類の菱形で構成されている。
この場合の「菱形~」は「りょうけい~」とされている例がネット上では多く見られるが、「ひしがた~」としている書籍も無きしも非ずとの事であり、一方で凧形二十四面体などは普通に「たこがた~」とされており、どちらが正しいか未だはっきりしない部分もある。
面の数による分類
多角形と同様、多面体にも五面体や七面体のような分類の仕方も存在しているが、先述のように面の数は多面体の一要素に過ぎないため、このような分類の意義は薄め。
頂点の数や辺の数による分類も可能であり、これに対してあえて面の数で分類する必然性も薄い。
なお、八面体と言った場合には正八面体の略という意味合いとなる事も多め。
n面体の場合、n角形の三次元版という見方ができるが、n角形の場合は(複合型を除けば)どんなものでも頂点の位置を変えれば正n角形になるのに対し、n面体の場合はそうとは限らない。
例えば、四角錐も三角柱も五面体であるが、片方の頂点の位置をどう変えても他方にはならない。
これはグラフ理論的な構造の違いによるもので、これによって四面体は1タイプ、五面体は2タイプ、六面体は10タイプに分けられており、八面体では凸型だけで257タイプとなるという。
前述ように、頂点の数と辺の数が一致してても同じタイプであるとは限らず、七面体以上になると、含まれる多角形の種類と数が同じであっても、タイプが異なるというケースも出て来る。
切頂四面体や三方八面体のように、名前にn面体と付きながらn面体では無いようなものも存在するが、そういう場合は大抵「正n面体に対して何かしらの操作を行って出来たもの」を意味している。
双対関係
立方体の各面の中心を結ぶと正八面体になり、正八面体の各面の中心を結ぶと立方体に戻る。
このように立方体と正八面体は表と裏、陰と陽のような、「まさに双対!」という関係にある。
本当に双対関係と言い、片方をもう片方の「双対多面体」と言う。
英語ではデュアル(Dual)。
同様の関係は正十二面体と正二十面体の間にもある。
正四面体の場合は自分自身が双対であり、こういう性質を自己双対と言う。
ただし、これ程綺麗な関係は双対関係の中でも特殊なものであり、通常はこのような簡単な方法では双対多面体は得られない。
あくまで最も解り易い例である。
双対多面体においては、面の数と頂点の数、構成面の角数と頂点に入る辺の数とが入れ替わっており、辺の数は同じである。
この辺りはグラフ理論や電気回路にも密接に関わっており、これらにも同様の双対の概念が存在している。
電気回路の場合、双対となる回路では、抵抗の値が逆数となる他、コンデンサ⇔コイル、電圧源⇔電流源といった反転も起こる。
ただ、グラフ理論や電気回路の場合は長さや角度の概念が無いのに対し、多面体の場合は一般的に、長さや角度なども考慮せねばならない。
ジョンソンの立体のように対称性が乏しいものになって来ると、それが困難になるためか、双対多面体の存在は語られなくなって来る。
陰陽説の時代には知られていなかったためか、どちらが闇でどちらが光なのかの定まった見解は今の所見られない。
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