概要
東アジア〜タイにかけて広く分布する鞘翅目(コウチュウ目)・コガネムシ科・カブトムシ亜科・真性カブトムシ族・カブトムシ属の昆虫。今森光彦著の『世界のカブトムシ』ではツノカブトと表記されている(日本産は後述)。
学名は「Trypoxylus dichotomus」。
山奥よりもある程度人の手が入った里山の雑木林などを好み、密林の奥地などを好む世界のカブトムシ類と比べても珍しい生態とされ、最も北に生息しているカブトムシである。
雄は大きな二又の頭角を有する。他の多くのカブトムシと同様、角は雄のみに存在し、雌は普通のコガネムシのような姿をしている。この立派な角の付いた頭部と丸い胸部を合わせて見ると兜のように見えることからこの名が付いた。ちなみに外側に枝分かれした角を持つカブトムシは実は世界的に見ても珍しい。
雄は餌場や繁殖相手の雌を巡る喧嘩の際にこの頭角で押し合ったり、相手の懐に潜り込ませて投げ飛ばしたりする。投げ飛ばす際は前足の付節を折り曲げ、跳ね上げる時の力が伝わりやすくなるようにしている様子が見られる。
古くから日本で親しまれている昆虫で、飼育や採集も容易なため人気が高い。
野生の成虫は夜行性でクヌギやコナラなどの樹木から分泌される樹液を採餌しているため、樹液の分泌ポイントをあらかじめ把握していると効率よく採集できる。また、光に対して正の走性を持つため、夜間に街灯などへ飛来することもある。
雄は胸角を掴めば素手で容易に捕獲できるが、雌は突起が無く、掴む場所は体の側面にならざるを得ない為、やや難易度は高い。更に足には木を掴むための鉤爪がある為、手に登られると結構くすぐったい…というか痛い。流石にしっかりケージの蓋をしていれば逃げ出さないとは言え、木の幹に潜んでいる事の多いクワガタとは異なり、油断していると飛翔して逃げる事がある。
雌は脚の脛節(人間の脛に相当する箇所)に鋸状の突起物を持ち、これは腐葉土に潜る為と考えられている。
成虫は主にクヌギ・コナラ・ヤナギなどの樹液を食べている(海岸線などの松林にはいない)。口上部の突起で樹皮を削って樹液を出すこともできる。珍しいところでは熟れたトウモロコシなども食べる場合がある。
甘い果物を好み果物を食べてしまうために農家からは農業害虫として扱われていることもある(一方で、幼虫は自然生態系における分解者という重要な役割を担う益虫でもある)。果樹園の地面に落ちた果実に寄って来る事もあるという。
雌は雑木林などの腐葉土および、農家の堆肥の中に卵を産み、地中で孵化した幼虫はそれを食べて暮らす。甲虫は体が硬いため成虫になってしまうと大きさは変わらない、そのため幼虫の間にたくさん餌を食べれば食べるほど成虫になった時の体長が大きくなる事となる。
幼虫飼育の際にも高栄養の昆虫マットを与えることで大型の成虫が羽化しやすくなる。終齢幼虫は春季に蛹室を作って蛹になるため、この時期は昆虫マットをケース内にキツめに詰めると蛹化〜羽化時の事故が起こりにくい。
野生下では80mmを超える雄の個体が採取されることは稀だが、飼育下では80mm〜85mm台までは比較的容易に羽化させることができる。
なお、かつて昭和中期までの東北地方山間部などでは、木材が主食のカミキリムシやクワガタムシの幼虫を冬場の蛋白源として食用としていたが、カブトムシの幼虫は堆肥や腐葉土が主食のため食用に耐える代物ではなかったようだ。
天敵として、成虫はカラスなどの鳥類やタヌキなど、幼虫と蛹はモグラ、寄生バチ、ケラ、ダニなどが挙げられる。
亜種
9亜種に分類される(イラストはツノボソカブト)。
原名亜種(ssp.dichotomus)
ヤマトカブト(ssp.septentrionalis)
日本に分布。一般的は国産カブト、日本のカブトムシ等とも呼ばれ。英語版の甲虫王者ムシキングでも「Japanese beetle」という名称になっていたが、後述の亜種やサイカブト、コカブトといった日本に分布する他種カブトムシと区別するため当記事ではこの名称を用いる。
北海道及び沖縄本島は本来の分布域では無いが、国内外来種として帰化しており問題となっている。
ヤクシマカブト(ssp.shizuae)
オキナワカブト(ssp.takarai)
沖縄本島に分布。
詳細は当該記事参照。
クメジマカブト(ssp.inchachina)
久米島に分布。
ツチヤカブト(ssp.tuchiyai)
口永良部島に分布。
亜種名は昆虫雑誌『ビー・クワ』の編集長土屋利行氏にちなむ。
ツノボソカブト(ssp.tunobosonis)
台湾に分布。
ツヤカブト(ssp.politus)
インドカブト(ssp.xizangensis)
メディアでの扱い
カブトムシを参照。
当項目では昆虫(主にカブトムシ・クワガタ)を題材にしたエンタメ作品での本種について記述する。
トリビアの泉
世界最強のカブトムシを決めるトーナメント企画にて参戦。決勝ではヘラクレスオオカブトとの3本勝負中1本取り、準優勝する。
世界最強虫王決定戦
肩書は「日本最強のカブト界のラストサムライ」。
頭角を相手の下に潜り込ませて一気に投げ飛ばす一撃必殺の跳ね上げ技を得意とする。
体格差や気性の荒さなどから外国産の大型カブトムシ・クワガタにはしばしば苦戦を強いられる。
…が、前述の投げ技は成功率こそ低いものの決まりさえすればほぼ確実に相手を土俵から落とすことができるため、予想外のジャイアントキリングを果たすことも少なくない。
なんとコーカサスオオカブトやギラファノコギリクワガタといった強豪達に勝利したことも。
甲虫王者ムシキング
2亜種及びゲームオリジナルの個体が登場している。
当時はサビイロカブトと同属とされており、学名もAllomyrina dichotoma表記であった。
カブトムシ
初期シリーズから登場。つよさ120、アタックタイプ。必殺わざはパー。肩書きは「甲虫の王者」。超必殺わざは「(スーパー)トルネードスロー」。
- ムシカード無しでプレイする際に使えるカブトムシはつよさ100、性格なし。
超必殺わざの「トルネードスロー」は、体の小さいカブトムシがムシキングの「キングトルネードスロー」をお手本に編み出したらしい。
その割にはグラントシロカブトも使えた。もっとも、2004ファーストプラスまでに登場していた甲虫は他の甲虫と超必殺わざを共有していたのもあるが。「新甲虫王者ムシキング」では超必殺わざの共有は全種撤廃された。
サビイロカブトとはタッグマッチで同時に使うとタッグチーム「甲錆砲(こうせいほう)」が発動し、固有合体わざ「ブーメランインパクト」ならびに合体超必殺わざ「トルネード・ダイシャリン」が使えた他、アダー完結編ではカブトムシにサビイロカブトをカスタマイズすると専用の合体わざが使えた。
なおカブトムシがサビイロカブト属から独立したのはムシキング稼動期のことだが、ムシキングでは(属がステータスとして機能するためか)オオクワガタとは違い最後まで旧学名で通した。なお、このアロミリナ属は唯一「固有名詞付き甲虫」でタッグ相性◎にできる属である。
- ただし、途中で学名を変更しても唯一「固有名詞付き甲虫」でタッグ相性◎にできる属である点は変わらなかった。
新甲虫王者ムシキングでは2015 1stから登場。ノコギリクワガタなどと並んで1st、2nd両方に登場する数少ないムシである。階級はR。
とあるカップで優勝するとSRに覚醒し、肩書きが「王者覚醒」、技も「スーパートルネードスロー」になる。
残念ながらわざのシステムが旧版と異なるため究極必殺わざという括りではないが。
超神化編では1弾よりストーリーの鍵を握るムシとして赤目のゴッドフォームのカブトムシが登場し、カナトにテレパシーを使って呼びかけた。
その後4弾メインシナリオ5章最終戦のチャレンジボーナスとして(赤目ではなくなっているが)GRとしてカード化可能(1記録1枚のみ。要は激闘編の彼のようなもの)。肩書きは「覚醒の刻(読み方:かくせいのとき)をまつゼウス」、必殺わざは「シャイニングトルネード」。紋章の文字は「MYSTIC」でパートナーもカナトだがガイアの2匹と異なり色は金色。
また7月中旬よりこのGRカブトムシを肩書きのとおりSGRに覚醒できるようになった。覚醒後の肩書きは「絆の王者ゼウス」、必殺わざは「キングトライアングル」。
オキナワカブト
2007ファーストにて登場した沖縄固有の亜種。詳細は当該記事参照。
ムシキング
詳細は当該記事参照。
キング
詳細は当該記事参照。
カブト丸
コロコロコミック版コミカライズ「ザックの冒険編」のムシとしての主人公。
詳細は当該記事参照。
ムシキング研究所スペシャルカブトムシ
「グレイテストチャンピオンへの道2」限定で登場するカブトムシ。
パスワードで入手できる。
タケゾー
新甲虫王者ムシキングのマスコットキャラクター
CV:小野坂昌也。
激闘6弾、超進化3弾にてカード化。レアリティはN。
余談
英語版では「Japanese beetle」という名称になっていたが、実際に英語圏ではその呼び名は農作物の害虫であるコガネムシ科のマメコガネを指し、ヤマトカブトのことは「Japanese rinoceros beetle(アニマルカイザーの英語版ではこちらの名称が使われた。)」と呼ぶ。
- 「甲虫王者ムシキング」では生物学上は同一種でもゲーム上の名称さえ異なれば別の虫として扱われるため「カブトムシ」と「オキナワカブト」「ムシキング」「キング」「カブト丸」はそれぞれ別種として扱われる。また「ムシキング研究所スペシャル」も同様。
どうぶつの森
第一作から登場している。