「揺り籠から墓場まで、ピノキオは皆さんのお役に立ちたいと思っています!」(演技)
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「えーい、将来総理大臣になって人間を支配しようと思ったのに!オーレンジャーに邪魔されたからには、工場もろともお前達を爆破してやる!」(本性)
登場話数:第14話「大好きピノキオ」
概要
マシン帝国バラノイアが開発したマシン獣の一体。
『ピノキオ』を思わせるユーモラスな出で立ちだが、そうした出で立ちとは裏腹に両肩には爆弾ともなる歯車、右手には鉤爪、そして左手には機銃と、全身の至る所に武装が施された戦闘兵器でもある。前述した鼻もやはり武装の一つであり、ここからは拡散光線を放つことができる。
しかしそれ以上に厄介なのが、前述した武装や凶悪な本性(※1)を隠し、人当たりの良いお手伝いロボットに扮することができるという点にある。
その秘匿ぶりたるや、オーレンジャーでさえ初動の調査では武装の数々を発見できなかったほどであり、人当たりの良さや勤勉さ、そして高性能ぶりで人間達の心を掴み、人間社会へとその存在を浸透させることこそが、バラノイアの真の狙いでもある。
それゆえに、バラピノキラーは「21世紀電脳工業」(※2)なる民間企業が開発中の、テスト第1号のロボットという触れ込みで社会に潜り込み、「ピノキオブーム」を作り市民権を得るべく活動している。彼のみならず、ベビーシッター、保母さん、家庭教師、果てはペットなど様々な「ピノキオ」達が開発されていることがPRされており、このうちペットピノキオは実際に作中でも、バラピノキラーと並行して活動を行っていた。
(※1 そうした本性を示すかのように、正体を現した後は武装が露出するだけに留まらず、顔にギザギザとした逆ハの字の眉毛が追加されるなど、ボディ各部の形状も微妙に変化する)
(※2 後述の経緯などから、恐らくは元から存在していた会社にバラノイアが技術供与を行っていたものと見られるが、この会社がどのような形でバラノイアと接点を持ったかなどについては、作中でも特に言及されていない)
作中での動向
バッカスフンド達が考案した「ピノキオ作戦」。それは多数のピノキオ達を人間社会へと送り込んで信頼を集めることで、やがては彼等が市民権を得て選挙でピノキオの代議士が選ばれ、ついにはピノキオの総理大臣までも誕生させるというところまで見越した遠大な構想であった。この作戦が成功した暁には、文字通りの傀儡政権によってバラノイアの息のかかったマシンによる、間接的な人間社会の支配が実現することとなる。
その作戦の第1段階として、バラピノキラーは「ピノキオのテスト第1号」に扮して「ランチショップ名将」の店員として潜り込み、その高性能ぶりと勤勉さで店主一家の信頼を獲得。店の常連であった昌平、それに裕司も注文した「チャーシュー特製スペシャル」の提供の速さと旨さが、ピノキオの高性能ぶりによるものであると知るや驚きを隠せなかった。
しかしこれが、バラノイアが水面下で進めていたピノキオ作戦に思わぬ綻びを生じさせることとなる。
先の一件でピノキオに関心を持った2人が、開発元からデモテープを借りて他のメンバーにも見せたところ、三浦参謀長がそこからバラノイアの陰謀を感じ取り、その指示でオーレンジャーも21世紀電脳工業の調査に着手。前述の通り武器の仕込まれている形跡は見られなかったものの、民間企業のロボットとしてはあまりにも優秀過ぎる頭脳回路の存在が、吾郎にもまた一抹の疑念を抱かせる結果となった。一方で、工場内にいたペットピノキオが樹里に懐き、そのまま彼女と行動を共にするようになる。
樹里がペットピノキオの可愛さにすっかり心奪われ、対して吾郎がピノキオに対する疑念を強めつつある中、2人は操車場にて何者かによる銃撃に遭遇。幸いにして難を逃れたものの、他の3人と共にその犯人を追った先で見た物は、犯人と思しきロボットの抜け殻のみであった。
折しもこれと前後して、現場付近ではピノキオが出前のため自転車を走らせており、オーレンジャーはピノキオから出前の帰りに誰か目撃していないかを尋ねるが、対するピノキオの反応には明らかな動揺の色が窺え、彼等からの疑念はますます強まる格好となった(彼等が去った後、ピノキオは「これから気をつけなければ…」とつぶやいていた)。
この事態の推移を前に、アチャとコチャは呼び寄せたペットピノキオに爆弾を仕掛け、何も知らない樹里と共に超力基地へと潜入させることで、これを内部から壊滅させようと画策。しかしこの作戦はモニター越しにペットピノキオの存在に気づいた吾郎が、ギリギリのところで基地の外へと放擲したために未遂に終わってしまう。
作戦失敗により、いよいよ進退窮まったアチャによってスイッチを切り替えられたピノキオは、ドスの効いた声に変化して本性を表し店主一家の息子のツトムを拉致するのみならず、21世紀電脳工業の従業員もろとも工場を爆破すべく、内部に爆弾を仕掛けていった。そこにオーレンジャーが駆けつけたため、バラピノキラーとしての正体を現しバーロ兵をけしかけ、さらにツトム達を助けようとした昌平までも捕らえて爆弾を起爆させ、屋内にいた全員まとめて吹き飛ばしたかに思われた。
しかし、間一髪のところでオーレンジャーやツトム達は辛くも脱出に成功しており、これによりオーレンジャーとの直接対決を余儀なくされたバラピノキラーは、持ち前の武装の数々で彼等を苦戦せしめるものの、ジャイアントローラー相手には敵わず大ダメージを受けてしまう。
直後の巨大戦では、オーレンジャーロボに対して右ストレートからの肩の歯車を飛ばして果敢に攻めるも、2発目の歯車攻撃を超力ドグバルカンで撃ち落とされてからのタウラスダイブを連続で受けた上、スーパークラウンソードで鼻を斬り落とされてからのクラウンファイナルクラッシュで倒されるに至った。
備考
デザインは阿部統が担当。
「ピノキオを作るみたいな話」に即する形で、そのまま普通に可愛くデザインした一体であるという。正体を現した後の眉毛はデザインの段階では存在せず、造形の段階で追加されたものと見られる。
正体を隠した状態であるテスト第1号のピノキオ、それにペットピノキオなどの他の個体も全て阿部の手によるものであり、このうちPRビデオ内に出ていた複数の個体については、男性型の「お助けピノキオ」と女性型の「保母さんピノキオ」の2体のみがデザイン・造形され、衣装のみを変える形で複数種いるように演出されている。
詳しい経緯については明らかにされていないものの、バラピノキラーが登場した第14話は本来第13話として放送される予定であったことを、助監督として本作に携わっていた竹本昇が後に証言している(参考リンク)。
声を演じた岩永は今作がスーパー戦隊シリーズ、延いては特撮初出演。
関連タグ
上原正三:バラピノキラーの登場する第14話の脚本を担当。彼が過去に携わった東映特撮においても、やはり同話数と近似したテーマのエピソードを複数手掛けている
ヒューマギア:『仮面ライダーゼロワン』の登場キャラクターの一種。人間のサポートを目的として開発された、人工知能搭載型のロボットであり、その社会への広い浸透ぶりはある意味では、バラピノキラーによる作戦の予想図に近似したものがあるとも言える