由来
古代中国の道教思想に基づいて北斗七星が意匠された直刀のことを総称して、七星剣と呼ぶ。国家鎮護・破邪滅敵を目的として造られ、その剣に刻み込まれた北斗七星は宇宙の中心である北極星(天帝)を守ることを表し、儀式などに用いられた。
複数の剣がそれとして語り継がれており、中国だけでなく日本にも数点の七星剣が歴史的価値を持つ物として現存している。その内の1本は聖徳太子の愛刀で幼少時の守り刀だったとされている。四天王寺に所蔵。平安時代の平安京内裏にも皇族の守り刀として献上され、安倍晴明がこれの修復に関与し、出世のきっかけとしたという。
創作物でも『三国志演義』『西遊記』『ONEPIECE 呪われた聖剣』『大怪獣ラッシュ』など様々な作品に登場している。
聖徳太子の愛刀にはもう1本「丙子椒林剣(へいししょうりんけん)」がありこちらも四天王寺に所蔵されている。
そのため後述する神子のイラストにはそちらも使用した二刀流神子も描かれる事があるが数は少ない。神子の立ち絵には剣は1本しか存在しないうえ、神子が持っている杓のほうが装備アイテムとしての主張が強く、杓と七星剣との二刀(?)流が主流であるせいかもしれない。
作品における七星剣
古典作品
- 『西遊記』では妖怪の金角・銀角が太上老君のもとから持ち出した五つの宝貝の一つとして登場。
- 歴史書『三国志』には言及されないエピソードであるが『三国志演義』では王允が曹操に七星剣を譲るシーンがある。曹操はこれを使って董卓を暗殺しようとしたが、事が露見しそうになったため、献上という形で場を収めた。
現代の作品
- 『グランディアエクストリーム』では北斗七星を構成する星々の名を冠した七振りの七星剣が登場する。
- 『グランブルーファンタジー』では作中最強クラスの戦力「十天衆」の取りまとめ役シエテにまつわる武器として登場。
- Sa・Gaシリーズでは『ロマンシング サ・ガ3』『サガフロンティア2』に登場。
- 『しんけん!!』の登場人物七星とみみが縁を結んだ刀剣として登場。四天王寺所蔵の聖徳太子佩刀をモデルとする。
- 『大怪獣ラッシュ』では武器としての剣ではなく、かつて英雄達による一種のチーム名として登場。七人はそれぞれ妖剣を持ち、一~七の剣、と番号が割り振られている。
- 『天華百剣』では少女の姿を持つ剣「巫剣」の一人として登場。→七星剣(天華百剣)
- 『刀剣乱舞』では「剣男士」の付喪神として登場→七星剣(刀剣乱舞)
- 東方Projectの登場キャラクター豊聡耳神子は聖徳太子をモチーフとし、七星剣に相当する剣を所有する。後述の節で詳述する。
- 女神転生シリーズでは『真・女神転生 デビルサマナー』とペルソナシリーズに登場。
- 『ONEPIECE 呪われた聖剣』では「世界で最も美しい刀」と呼ばれる一方で魔性を持つ剣として登場。
- 『七星闘神ガイファード』では、地軸変動装置「ガイア・ネット」を作動させるための、日本神話の三種の神器をモチーフとしたキーアイテムの一つとして登場。あくまでキーアイテムであり、武器としてのちゃんとした活躍は無かった。
- 『Wizardry Ⅰ』ではGBC版移植に伴い、新規に追加された武器の一つ。カシナートの剣を上回る攻撃力、不死族に対しては与ダメ倍加の効果があるが、「善」戒律の戦士専用となっている。
東方Projectの七星剣
七星剣とは、東方Projectの登場キャラクター豊聡耳神子が持つ剣の通称。公式での名称ではない。
この剣は、東方Project作品中では「七星剣」という名どころか一切名前を付けられて呼ばれていないが、聖徳太子の説話や剣のデザインを元に、ファンからは主にこの名で呼ばれている。
東方神霊廟の立ち絵を始めとした公式イラストにて、神子が腰のベルトから伸びた紐を鞘の金具部分に繋ぎぶら下げた状態で、携えている剣のことを指す。この剣のデザインは豊聡耳神子のモチーフとなった人物、聖徳太子の肖像画(外部リンク)に描かれている腰の刀の絵を、細部は違うがベルトごとほぼ描き映したものであると推測できる。
考察
武器か否か
劇中では戦闘に使用する事も、まず抜く事すらも無いが、二次創作のイラストでは普通に戦闘時に使用できる刀として描かれているものがある。ちなみに東方求聞口授の裏表紙には、刀身を剥き出しにしたこの剣を握る神子の姿が描写されている。
尸解時の体
東方求聞口授の追加設定によると、神子が尸解仙になる際に使用したのは「宝剣」だとされている。(「物部布都」項)地味に剣が公式で触れられた唯一の記述である。だが、実はその「宝剣」という物が、あの立ち絵の剣を指しているのかは語られていない。
神子たちが行った尸解仙の秘術は「今の人間の肉体を完全に捨てて何かの物品に魂のみを宿らせ、時が来たらその物品が自分の肉体に変化するので、その身体で仙人として復活する」という方法であった。その事から神子は一時、ただの宝剣に自身の魂を宿しただけの存在だった時期があると推測できるため、尸解仙として眠っていた間の神子の肉体そのものをこの剣として扱うイラストも存在する。
ちなみに尸解した際に滅ぼした元の人間の体は、尸解仙として人間化した物品の代わりに、その身替わりの物品そのものに変化する。これは後で尸解仙の道具として使うことが出来るという説があるので、今神子が所持している剣は元が神子の人間の肉体であったとも考えられる(が、そうとも限らないので注意)。
余談
1017年の中国(北宋代)で道教について纏めた書『雲笈七籤』によると、
尸解の術は、身替わりの物品のランクによって尸解仙になった時の位が決まると言われている。その例として「刀を使えば上位の尸解仙になり、竹の棒を使えば下位の尸解仙になる」と挙げられている。そういえば人間の時に竹の棒で死んだ振りをした仙人が居たような……?