概要
1980年代末頃、日光線や両毛線といった北関東の支線区の普通列車には、急行列車の廃止によって転用された急行形電車165系が多く使われていた。
しかし、新製後20年以上を経て老朽化が進行していた上、デッキ付片側2扉という車体構造が大きなネックであった。
特に朝夕ラッシュ時には乗客を捌き切れないばかりか、3両編成が最低単位であることで、日中閑散時には輸送力過剰となっていた。この様な非効率な状況を打破するため、国鉄分割民営化によって発足して間もないJR東日本に望まれたのは、時間帯ごとの需要に柔軟に対応できる車両開発であった。
そこで誕生したのが本系列である。クモハ107形(Mc)・クハ106形(Tc')の2両編成を基本とすることで、2・4・6両と需要に応じて輸送力を調整することができる。
また、製造コスト削減を図るため、165系廃車から発生した主電動機・台車・補助電源装置・ブレーキ制御装置・空気圧縮機・冷房装置等主要機器を再用した他、車体製造技術維持向上を兼ね、大宮工場(現・大宮総合車両センター)・大井工場(現・東京総合車両センター)・大船工場・新津車両所(現・新津車両製作所)・長野工場(現・長野総合車両センター)等、自社工場での製造となったことも特筆される。
履歴簿上は165系からの改造ではなく、新車扱いであり、同系列との車籍上の繋がりはない。
こうして非効率な状況を打破することに成功したが、ラッシュ時に合わせた3ドア・オールロングシートというアコモデーションはローカル線や閑散時には不評であり、特に日光線は観光路線ということもあり、観光客には嫌われがちな車両であった。
アニメファン的には『日常』に登場した電車(100番台)という印象が強いであろう。
装備品
主回路は119系のものをベースとしている。ローカル用であり、165系のままのギア比でも動かないことはないはずであるが、駆動力が確保できるよう別の歯車に交換、通勤電車並の1:5.6にギア比が上がっている。いわば165系電車発生品流用で製造した105系ともいえる存在であり、性能自体は1980年代後半としても低水準である(動力車としての性能からいえばキハ110系以降の気動車にすら水をあけられる)。
またこのようなロングシート車はラッシュ時の積車が重くなるため、軸ばねを交換している。
車両区分
0番台
小山電車区(現・小山車両センター)所属。日光・東北本線(宇都宮線)小金井 - 宇都宮間を走行。初期・後期車では窓配置が異なり、一部に霜取りパンタ装備の車がいた。
小山車両センター所属の0番台は205系600番台に置き換えられ、2013年3月改正をもって運行終了。
100番台
新前橋電車区(現・高崎車両センター)に所属、上越線水上以南・吾妻線・信越本線高崎口(高崎 - 横川間)・両毛線の他、東北本線(宇都宮線)小山 - 黒磯間を走行。日光線で車両不足となった際には小山に貸出され、代走に駆り出されたこともあり、北関東広範囲で活躍した。100番台第6編成(2次車)以降では戸袋窓の廃止と窓割の変更が行われた。
高崎車両センター所属100番台は211系3000番台に置換えられ、2017年9月をもって定期運行を終了。
余談であるが、信越本線碓氷峠越えでの運行計画があったのか、「横軽」対策が施されており(車両行先にも通常運行範囲・横川を越えて高崎支社管内軽井沢・中軽井沢、さらに長野支社に入り、小諸まで用意されていた)。当該区間廃止前には形式前にGマークが記入されていたが、実際には横軽越えは試験運行1回のみで終わっており、実際の営業に供されたことはない。
他社への移籍
機器流用車ではあるものの、2両編成・ロングシート車かつ昭和から平成に元号が変わる時に製造され、車齢が若いことから、100番台のうち6編成(うち1編成は部品取り車)が上信電鉄に譲渡されることになった。旧配属区との距離も近く(甲種輸送費用がほとんど掛からない)、MT54モーターなど国鉄系機器を多用する在来車と機器的にも共用出来ることもあったと思われる。
上信電鉄700形となった同車は外部塗装変更、連結器交換(密連→小型密着自連)、内装変更、LCD追加、トイレ使用停止化などを行い2019年3月より運行を開始している。カラーリングはクリーム/緑ツートン・JR色・上信コーラルピンク・広告塗装など編成ごとに異なったものを採用している。
イラスト及び実車写真の通り、この車両の窓は1枚下降窓である。かつて国鉄でこれを採用して車体自体の急速な老朽化を招いた急行グリーン車や157系と異なり、鋼製車体でも防錆に留意した作りに変わったため、車体製造後30年程経た今でも問題は起きていない。
関連タグ
105系 119系 123系 E127系 701系 E501系 上信電鉄700形
- 日常(あらゐけいいち)…前述した通り、本作に100番台が登場。