概要
特撮番組『仮面ライダー555』の並行世界を描いた物語。正式名称は『仮面ライダーファイズ正伝 異形の花々』。
筆者は『555』全話の脚本を担当した井上敏樹。
もともと平成でも一・二を争うほど暗いノリの『555』をより陰鬱にした作品で、暴力描写、性描写(エロくない)などが苛烈。子供向け特撮番組としての映像化はまず不可能で、ハードなVシネマのレベルにまで一気に突っ走ってしまっている。
pixivでも投稿数は記事作成時点でたったの2枚、それもうち1枚がR-18Gという始末。
「正伝」と付けているあたり、子供向けという制限を逃れ、実現できなかった構想を詰め込んだ、より井上が考える本来の形に近い『555』であると言ってよいかもしれない。
スマートブレインという巨大企業の下で、オルフェノクによる人類支配の実現という壮大な思惑がうごめいていた本編と違い、メインキャラクターの周辺に限った規模の物語に終始している。
戦闘描写も多くはなく、オルフェノクという存在の異常性に翻弄されるそれぞれの人間模様がメインに描かれる。
長らく絶版になっていたが、講談社キャラクター文庫にて後日談の「五年後」が追加された文庫本『小説 仮面ライダーファイズ』として復刊された。
特徴ならびに原作との差異
- ライダーズギア
本来はスマートブレインが「王」の護衛のために作り出した鎧だが、本作では逆にオルフェノクを狩るために人間が開発したという、G3やイクサのような設定。
仮面ライダーデルタは一切登場しない。アクセルフォームもブラスターフォームも出ない。
また、終盤では仮面ライダーカイザが量産され、対オルフェノク組織によって運用される。ライオトルーパーじゃないんだから。
全く登場しない。
原作とは異なる人物が変身する場合がある。
登場人物
乾巧 / 仮面ライダーファイズ / ウルフオルフェノク
我らが猫舌たっくん。「人類史上稀に見るほどの猫舌」と地の文に書かれた。とにかくムキになりやすい。
本作のヒロイン。面倒見がいいがちょっと口が悪い。草加に片思いされているが……。
愛すべき馬鹿。結花と恋に落ちるが……。
原作以上に陰湿・残忍・非道な人物として描かれており、「母親になってくれるかもしれない存在」である真理に対して暴力に及び、思いを遂げようとする。
その末路は因果応報というにはあまりに凄惨なものだった。加筆された後日談でもそれは変わらない。
友人に裏切られて殺され、オルフェノクになったのは原作と同じ。人間不信だったが、真理に思いを寄せ、巧らとの交流により心を開く。
一応、本作のラスボス。でもそんなに悪い怪人ではない。むしろ草加の方がよっぽど……。
父親には生まれる前に逃げられ、母親は出産の際にショック死、陶芸家の義父からは存在しない者として扱われ、その娘からは散々に迫害された結果、自殺。オルフェノクとなって復讐を遂げて以降、急速に暴力の渦に身を落としていった。真理曰く「ものすごい美人」。
失語症であり、普段は手話や筆談で会話している。啓太郎と恋に落ち、その子供を身ごもる。
ムードメーカー。バス事故で命を落としオルフェノクに覚醒した。「いいオルフェノク」の鑑のような人物。
作中の台詞「もちろんその友達ってのは女なんだろうな?美人でスタイルも良くてすぐやらせてくれる女だったら付き合ってもいいぞ」は伝説。
真理や草加と同じ施設出身の女性。健康的な美人。真理とは親友だが……。
カイザ兵団
終盤に登場する、オルフェノクに敵対する組織の兵隊たち。血液をエネルギー溶液に変えており、その血は真っ黒。
勇介
オリジナルキャラ。後日談の事実上の主役。
オルフェノク
オルフェノクのほとんどは湧き上がる殺人衝動に抗いきれず、頭がおかしくなっている。
海堂や木場などは例外中の例外であり、多くのオルフェノクはケダモノ同然の叫び声をあげて暴れる単なるモンスターと化していることが多い。まあ、原作もそんなもんだが。
スラッグオルフェノク
ナメクジのオルフェノク。真理に変質的な視線を向ける肥満体の変態親父が変身。
長い舌と溶解液が武器。ファイズのクリムゾンスマッシュで吹き飛ばされた。
オックスオルフェノク
公園で真理と木場を襲った牛のオルフェノク。鉄球を振り回して暴れるが、ファイズに滅多切りにされて倒された。
スカラベオルフェノク
全身を岩のような装甲で覆ったコガネムシのオルフェノク。
タックルと猛毒の唾液でオックスオルフェノクを倒したばかりのファイズを痛めつけるが、突然現れたカイザにハチの巣にされた。
マンティスオルフェノク
女性を襲おうとしていたカマキリのオルフェノク。ホースオルフェノクに倒される。
スコーピオンオルフェノク
木の上から突然現れ、結花を襲撃したサソリのオルフェノク。
エレファントオルフェノク
後日談に登場した象のオルフェノク。歩き回るだけでバイクを横転させるほどの巨体の持ち主だが、何者かによりアッサリ殺害されてしまう。
スパイダーオルフェノク
蜘蛛のオルフェノクで、後日談のラスボス。果たしてその正体は?
関連項目
ノベライズ どうしてこうなった 俺の知ってるのと違う お茶の間の良い子号泣シリーズ 鬼畜ヒーロー
講談社キャラクター文庫:前述通り、このシリーズから出版された『小説 仮面ライダーファイズ』はこの作品に後日談を追加したもの。このシリーズの他の仮面ライダー小説作品もこのリンク先を参照されたし。