概要
ユーロピア共和国連合は、コードギアスシリーズに登場する国家でありヨーロッパとアフリカを領土としている。神聖ブリタニア帝国、中華連邦に並ぶ列強であり、国力はブリタニアに次ぐ第二位。略称はE.U.。
首都はパリでフランス革命期に建国された。共和国の領土は頽廃と官僚主義に圧迫され、シリーズの始まった時点で神聖ブリタニア帝国との交戦状態にある。戦争の後半で、ブリタニア軍はヨーロッパ領のほぼ半分を征服している。これは連合構成員の脱退と中立化、あるいは超合集国への参加を促すことになった。
亡国のアキトはここを舞台としている。
余談だが、反逆のルルーシュ時代はユーロ・ユニバースの略称だとされていた。
略図
地理的に、シリーズ開始時点の三大国の中では最大の版図を擁しているが、E.U.は大きな注目を集めていない。2018年、シュナイゼルはE.U.に挙兵し、その領土をいくつかのエリアに組み込んでいる。敗北後、EU構成国のいくつかが超合集国に参加し、ブリタニア軍はブリタニア皇帝がもはやEUを脅威とみなさなくなったために撤兵している。ルルーシュの戴冠までに、EU構成国は中立化するか、超合集国憲章に批准している。
歴史
約230年前のフランス革命を基点に市民革命を欧州諸国に続発させ、旧王政府を叩き潰して成立した共和制新政府の統合体として設立された経緯を持つ。設立経緯もあり、かつての王侯貴族が亡命しているブリタニアとは激しく対立している。
恐らく19世紀の産業革命時代、ナポレオンのブリテン島への侵攻・占領が成功した後に成立したと思われる。彼はワーテルローにおいて大敗し、ロシア侵攻と属国化の望みを失っていた(ロシアは劇中の最初の時点ではE.U.領だったが、『亡国のアキト』開始時点ではユーロ・ブリタニアになっている)。史実とは異なり、ナポレオンが皇帝として君臨することに危機感を覚えた共和主義勢力によって暗殺されたことによって、欧州が共和国の連合体になっていくことになったという。
E.U.は革命歴(現実にも存在した)を採用しており、皇歴2017年は革命歴228年である。
19世紀の後半から20世紀初期、EU内で戦乱があったことがC.C.の回想で見うけれる(1期、第25話)。塹壕戦、複葉機、戦車、そしておそらくドイツ軍と思しき兵がボルトアクションライフルを携えている。それがどのようなもので、いかに始まったかは明らかになっていない。ロシアが何かを行ったように推測されている。
E.U.は現実と同じようにアフリカの分割を行ったと見え、全アフリカがEU領になっている。現実と同様、彼らはほとんど植民地で、19世紀末に行われたのと同様、3大国が競い合ったように見える。これらの地域は全体にはほとんど関連を持たない。
本編ではブリタニアの侵攻になす術もなく押し切られ、領土の半分以上を奪われた挙句に新たな反ブリタニア国家連合の超合集国が設立すると大部分の自治州もE.U.を見捨てて超合集国に参集したため、文字通りの崩壊状態となる。ルルーシュの世界支配確立後はブリタニアに乗っ取られた超合集国憲章の批准を強要され、E.U.は世界から消滅した。
地理
保有領土は欧州全域、一部シベリアを除くロシア全域とアフリカ全域であり、ブリタニアや中華連邦を上回る領域を保持していた。第1期では、E.U.領は一般にアジアの一部とみなされるシベリア、中東の一部にも広がっている。ブリタニアのE.U.からの撤退後、彼らは西アフリカ、北アフリカ、南アフリカ、フランス、低地諸国、イベリア半島、ロシアを失っている。構成国の多くが超合集国憲章に批准する一方、ブリテン諸島、ドイツ、スカンディナヴィア、デンマーク、コラ半島、中央アフリカの一部と中東は独立を保っている。アフリカ全土がE.U.に加盟するのはありえないことだが、仮にそうなっているとするならば、それらはE.U.列強の植民地と思われる。
大都市
パリがE.U.の首都としての機能を果たしている。E.U.軍の司令部であり、また四十人委員会の所在地でもある。ブリタニアの迫害を逃れた日本人の難民は、シテ島のゲットーに集められている。
政府
3大国の中では最も民主的だが、国家全体にわたって衆愚政治化が進んでおり、E.U.ロシア州や東欧諸州がユーロ・ブリタニアによって制圧されているにもかかわらず、大衆から多くの政治家まで危機感に欠けており、それによる弊害が著しい国家として描写されている。
おそらく各国からの四十人委員会への代表派遣に基づいた、連邦式の統治スタイルが採用されていると思われる。社会不安と政府に関わる、深刻な頽廃と官僚主義の蔓延が示唆されるが、E.U.の政治に関して明らかになっている情報は少ない。
第1期では、ガンドルフィという人物が外交部門を担っていることが明らかになっている。彼の名はシュナイゼル・エル・ブリタニアに、京都事変の際に言及される。
亡国のアキトでは旧日本人のイレヴンのみを政治的な理由で隔離収容する等、民主国家とは思えない程人権無視の姿勢を見せている(小説版より。他のナンバーズにはこの様な措置は取られていない)。
政治腐敗と事なかれ主義の市民の実情で改革派が陰謀による軍事クーデターを実施し、一時はE.U.全域を掌握したが、首謀者と主要将校の戦死で頓挫してしまった。
軍事
E.U.共同軍は各国の軍である“州軍”に分かれ、それらの正確な実態は明らかになっていない。開始時点から、最も多用されるナイトメアフレームはパンツァー・フンメルで、サザーランドやグロースターに対しても効果的に戦果を挙げているようだが、技術的なレベルは中華連邦の鋼髏と、ブリタニアの標準的なナイトメアフレームの中間のように見える。鋼髏は強度で劣るものの大量生産によって集中攻撃に用いられ、ブリタニアとE.U.は「量より質」を設計思想に採用している。戦場では、比較的少数のエリートや精鋭が、その量的差にも関わらず指揮権を揮っている。ブリタニアとE.U.の設計哲学の間の大きな差異は、ブリタニアのナイトメアフレームが対ナイトメアフレーム戦においては近距離兵器、特に白兵戦のための装備を整えている点にある。対照的に、E.U.の哲学は、仮に十分に接近できずとも接近戦を行う必要がないというものに見える。E.U.のパンツァー・フンメルは近接戦闘のための剣を振るう腕を持たないが、十分な長距離砲を装備している。総じてE.U.軍は戦場においてブリタニアにも比肩するようだが、これら設計思想の差異という力学が、個々のパイロットや指揮官たちに降りかかることになる。E.U.地上軍が原作において重要な存在感を示したのは第2期第3話の一度だけになっている。「ブリタニアの白い悪魔」の評判にもかかわらず、E.U.パイロットは枢木スザクへの攻撃を敢行し、剛毅を示している。
『コードギアス亡国のアキト』ではE.U.地上軍の役目は大きく広がり、主要な登場人物はE.U.の特殊部隊であるwZERO部隊に所属している。
E.U.の職員、士官は灰色の軍服に、金のダイヤモンド型の徽章をつけている。金のダイヤ型徽章は、E.U.の紋章のように見える。しかしEU軍が実際にはいくつかの軍が共同したものであることから、金のダイヤモンドのロゴは、EU軍全体のものというより、むしろ各“州軍”のものにも見える。別の例として挙げられるのはフランス正規軍の兵士たちで、彼らは青い軍服、青いヘルメット、黒い防弾ジャケットを用いている。
E.U.は、「インドシナ事変」において、海軍力によって中華連邦と共同でブリタニア軍を包囲したように描かれている。しかし純粋な海軍力によるものではなく、外交による経済封鎖のことのようにも示される。
日向アキトの存在から、E.U.が日本人の亡命者を(徴募兵もしくは義勇兵として)従軍させていることが示唆される。彼らは、第2期で描かれた軍服とは著しく異なるものを着用している。彼らの軍服は、クラウス・ウォリックの服装から考慮して、第二次世界大戦中のドイツ軍をモデルとしている。これらの日本人兵士たちは、現実のフランス外人部隊のように「外人部隊」の一種として扱われている。
コードギアス双貌のオズでは崩壊寸前のE.U.で敗残兵が避難民に略奪を行うなど全く統制が取れていない一面が掛かれている。
全体として
ブリタニアは当初、少なくとも超合集国の成立以前には、E.U.を敵対勢力として重視している。コーネリア・リ・ブリタニアは1期の第9話において、E.U.軍の進出を聞き、(おそらくエジプトの)エル・アラメイン戦線への復帰を望んでおり、またオデュッセウス・ウ・ブリタニアはE.U.との交戦中であることを理由に、中華連邦への攻撃に反対している。2期第3話で描かれた経緯では、E.U.の戦力はブリタニアにも匹敵するようにも聞こえるが、E.U.全体とではなく構成各国との個別の交渉を行い、彼らを撃破ではなく自発的に降伏させるという、シュナイゼルの独創的な思考の結果として敗北する。これは征服した諸国民が尊重され、いくらか希望を許されねばならないという、シュナイゼルが度々用いる信念にも合致している。
国旗
E.U.の旗は銀色の鷲のような鳥の紋章を戴く暗い青地の旗で、中央には小さな白いマークがある。鳥の左右には「EU」のマークが浮かび上がり、トライデントが中心に据え置かれている。
トリビア
- ヨーロッパの超大国をEUと略すことは、明確に現実の欧州連合に触れている。
- すべてではないにせよ、E.U.構成国の国境線の多くは現実世界と同じで、今日のヨーロッパの国境線が、第二次世界大戦(ドイツのポーランドとの東部国境であるオーデル=ナイセ線)、ソ連の解体(独立国家としてのウクライナ)のような、コードギアスの世界では起こらなかった出来事の結果として引かれていることからすると、やや興味深い。
- 地理的に、E.U.はジョージ・オーウェルの小説『1984年』の、オセアニア(ブリタニアに類似している)およびイースタシア(中華連邦に極めて似通っている)との永久戦争を行い、そして自身の利益のため一方、そしてまた一方と同盟を組むこともある、ユーラシアに合致している。時折ユーラシアは、コードギアスにおけるE.U.のように、北アフリカ、中東の一部を、オセアニアもしくはイースタシアのいずれかに再び占領される前に奪取している。最も大きな違いは、ユーラシアはソ連によって作られた、オセアニアとほぼ似通った全体主義的な国家ということにある。実際には、ブリタニアはE.U.もしくは中華連邦がユーラシアやイースタシアに対する以上に、その政治的な配置でオセアニアに似通っている。
- イギリスが超合集国と(フランス降伏後の)ブリタニアの双方に加わっていないことは、イギリスがナポレオンによる征服の後も独立を維持し、同盟国か従属国であったように見える。仮にナポレオンが彼の普段の政策に従ったとするならば、ブリテン島は新たな君主を戴き、(自発的か命令されてか)エリザベス3世の血縁者か、ナポレオン自身の血縁か、あるいは彼の元帥たちがその候補に挙がっていたことになる。興味深いことに、イギリスはスカンディナヴィア諸国やドイツと並んで超合集国を拒否しており、彼らとのつながりを示唆している。イギリスがドイツ系のウィンザー家やハノーファー、ブルボンやハプスブルクのような大陸ヨーロッパの家系に属している可能性がある。
- しかし一方で、E.U.の反君主制のイデオロギーを考慮すると、首相の権限を拡大したのでなければ、ナポレオンが完全に君主制を撤廃し、新たな行政機関を設立したことも考えられる(実際の歴史で起こったように)。別の可能性として、コモンウェルスの再建、国務会議や護国卿の再制定が考えられる。多くの可能性がある。
- その規模と、伴う資源を考えると、E.U.がブリタニアに敗北を続ける理由ははっきりしない。ブリタニアの無慈悲で圧倒的な軍事力は都合のいい説明だが、E.U.は彼ら自身の、実体のある戦力を編成する能力があるようにも示されている。E.U.の軍が単に臆病で弱兵という訳ではないように見える。『亡国のアキト』のプレリリース情報は、ブリタニアとE.U.の紛争が、日本の征服時には既に長年続いているように言及している。これが説明するのは、彼らがすでに戦い続けており、皇暦2017年の時点で7年以上戦時中であることを意味している。これは、想定される敗因をより限定するように思われる。
- 可能性として、E.U.がブリタニアに敗退を続ける原因には、国内の社会不安が挙げられる。それは、E.U.戦力が各国の「州軍」であり、単一の統一された「常備軍」でないことが説明している。これはE.U.構成国が各自の軍を保有し、勝利のため他の州軍と協力せねばならないことを示している。ブリタニアを打倒するための協調より、個々の州軍がプライドや愛国主義のゆえに単独行動を好むという状況が考えられる。それぞれの州軍の間に協力関係がないことは、仮に彼らが協力してことにあたったよりも有効な働きを見せないことを意味している。将兵は全体としての中央議会やE.U.への忠誠心よりも、地元に対してより強く固執したかもしれない。それはまた、E.U.が分裂状態であることも説明している。E.U.議会の代表たちはE.U.に対し何が最良で、いかに運営すべきか各自の思想を持っている。彼らはE.U.州軍が各地で敗退している間も互いに争い、政治議論に終始したかもしれない。E.U.の規模も没落の一因になりうる。E.U.は全ヨーロッパ、ロシア、アフリカ、中東の一部を支配している。おそらく、分離主義の動きがE.U.のほぼ全域に存在していた。構成諸国は、ナショナリズムや、E.U.がブリタニアに敗北しているという事実や、中央議会が反乱鎮圧のため州軍を派遣していることから、脱退という案に誘惑されたかもしれない。アフリカはほとんど構成諸国の植民地で、各地が分離主義者のグループが活動する場だったように思われる。個々の構成国とその軍の、協力に対する無気力は、ブリタニアの前にE.U.が没落し、敗北を喫した主要な原因のように見える。シュナイゼルは構成国と個別に交渉を行うことで一国ずつE.U.を脱退させ、この脆弱性を利用している。すなわち、E.U.が分裂状態にあることが彼らを没落させ、敗北を招いたことになる。また一方で、シュナイゼル、ジュリアス・キングスレイ、ユーロ・ブリタニアの四大騎士団、ナイトオブラウンズといった才能ある人々がこの原因に貢献した。ジィーン・スマイラスの死後、E.U.は二つの派閥、一方は現行の政府を支持する勢力、もう一方はE.U.崩壊に寄与したスマイラスを支持する勢力に分裂している。