正式名称は「北海道旅客鉄道株式会社」。コーポレートカラーは萌黄色。
JRグループの一社で、北海道の路線網を一手に引き受けた。ただし、会社境界の設定上、青森県内にもJR北海道管轄の駅(津軽海峡線・津軽今別駅⇒北海道新幹線・奥津軽いまべつ駅)が存在している。
寒冷対策のため、保有する車両には素人目にも分かるレベルで独特な構造が多く見られる。
それを実現する苗穂工場はこの業界ではよく知られた存在となっているほか、デンマーク国鉄と連携するなど、国外の寒冷地に範を求める傾向がある事も他のJRには無い特徴である。
管轄する路線
※国鉄分割民営化以降の管轄路線を掲載。
新幹線
在来線
函館本線 (函館駅-旭川駅)
札沼線 (桑園駅-北海道医療大学駅)
千歳線 ({本線} 白石駅-南千歳駅-沼ノ端駅、{支線} 南千歳駅-新千歳空港駅)
石勝線 (南千歳駅-新得駅)
室蘭本線 ({本線} 長万部駅-東室蘭駅-沼ノ端駅-岩見沢駅、{支線} 室蘭駅-東室蘭駅)
日高本線 (苫小牧駅-様似駅)
留萌本線 (深川駅-留萌駅)
根室本線 (滝川駅-根室駅)
富良野線 (富良野駅-旭川駅)
宗谷本線 (旭川駅-稚内駅)
石北本線 (新旭川駅-網走駅)
釧網本線 (東釧路駅-網走駅)
海峡線(津軽海峡線の一部) (中小国駅-木古内駅)2016年3月21日旅客列車最終運行
転換路線
池北線 ⇒北海道ちほく高原鉄道(2006年に廃止)
廃止路線
函館本線(砂川駅~上砂川駅間)
江差線(木古内駅~江差駅間)
留萌本線(留萌駅~増毛駅間)
石勝線夕張支線
札沼線 (北海道医療大学駅-新十津川駅間)
相次ぐ事故と経営問題
残念ながら、現在のJR北海道は当初とはかなり異なる意味で特異な会社と認識されてしまっている。
発足当初は飛行機に対抗すべく高性能気動車を惜しげもなく投入していた。しかし残念ながら、すぐにバブル崩壊やスキー・リゾートブームの衰退、人口減なのに路線延長が長すぎるといった試練に襲われた。
1998年、北海道拓殖銀行が破綻。JR北海道自身は安定化基金で運営できていたためすぐには経営危機に襲われなかったが、道内の経済が冷え込むことで輸送量が激減し、末端線区の廃止が相次ぐこととなった。
2011年に石勝線のトンネルで特急列車が脱線火災事故を起こしたのを皮切りに、車両トラブルや不祥事などが相次ぎ、ついには国土交通省が事業改善命令を出すに至った。しかも、事態はむしろ悪化の一途を辿った。度重なる緊急点検と改修で慢性的な車両不足が生じ、団体用の臨時列車を定期便の補充に充てるなど日常的なダイヤの遵守にも事欠くようになってしまう。
線路側の保安にも綻びが続出し、2013年にはついに函館本線でJR貨物の貨物列車を脱線させてしまった。この原因究明の中でレール検査のデータ改ざんや黙殺が常態化している事が明らかとなり、再度国土交通省の特別保安監査を受けている。さらには社員の覚醒剤使用や意図的なATS破壊、失踪・自殺・不審死等も相次ぎ、定期的に全国紙を騒がせることとなってしまったのである。
こうなってしまった背景には、人件費削減のために新規採用を控えた事による技術継承の断絶、それを補うために繰り返した外部委託や臨時雇用による複雑な労使関係、そしてそれらによる従業員のモラルの低下などが挙げられている。
厳しい気象条件とそれに対応するための特殊設備も保守コストを高止まりさせており、更新サイクルが追い付いていない。JR貨物については、分割・民営化時に線路の保有会社に支払う通行料を一般的な水準よりかなり低く抑える取り決めがなされており、これが疲労の蓄積を加速させているという指摘もなされている。
しかし、それらを更に遡ると、大半が経営が芳しくないという一点に辿り着いてくる事が分かる。
JR北海道は発足以来度々窮状を訴えてきたが、2014年にはついに札幌圏を含めた全路線が赤字という衝撃的な収支報告を発表している。頼みの綱であった北海道新幹線も、函館地区までの部分開業という事もあって思うような集客に繋がらず、むしろ莫大な投資で経営の足を引っ張る状態となってしまった。まともな仕事をしたくても無い袖は振れないのである。
JR北海道が生き残るには
元々北海道は輸送密度が低く、単独で鉄道事業を成り立たせるには無理のある環境だった。
経営の基盤たる札幌圏でさえも札幌市民はもっぱら札幌市営地下鉄を利用する傾向にあり、主たる利用客は新千歳空港の利用者と札幌近郊の住民の通勤に限られているという状況である。このため輸送量は都市圏の人口の割にさほど多いというわけでもなく(人口が半分の仙台や広島とほぼ同等である)全線の収支が赤字となる原因にもなっている。
そのため国鉄時代は都市圏からの内部補助が行われていたのだが、分割民営化でこれも不可能になってしまった。 国もこれを予測していなかったわけではなく、経営安定基金の交付を始めとした各種支援を講じてきたのだが、バブル崩壊後の不況と地方の過疎化が予想以上に進行してしまい、十分に支えきることができなかった。
一連の問題は、こうした積み重ねがついに限界に達した表れと捉えた方が良いだろう。JR北海道は最初から破綻していたのだ。
では、どうしてこんな鉄道会社を発足させてしまったのかと言うと、国鉄の分割・民営化には東海道新幹線を始めとする「高収益路線の保護」と、国と対立し続けた「労働組合潰し」という2つの目的が込められていたからである。 国鉄は、解体を前にして素行不良の職員や中核派や革マル派といった組織との関係が疑われる職員を相次いで移動させる弱体化を図っており、北海道は房総半島と並んで流刑地的な役割が期待されていたと言われている。
そういう輩が不採算路線と一緒に消えてくれるならば、それはそれで構わないという腹積もりが無かったと言えば嘘であろう。明言はされていないものの、各種の状況証拠を繋ぎ合わせてゆくと、それらの粛清無くして公的資本注入はありえないという回答が見えてくる。
ちなみに同じく元炭鉱輸送用でほぼ役目を終えてしまった路線を多く抱え込んでしまっていた上、やはり一大都市である福岡市内の運輸を福岡市交通局と西日本鉄道に牛耳られてしまっていたJR九州とどうして差がついたかもここに集約されている。JR九州は国鉄内に複数存在した労組の中でも比較的労使協調路線の労組の勢力が強かったため、発足当初から鉄道本業だけにこだわることなく事業展開し、更にそのための人員再配置もスムースに進んだためである。この為JR九州は後述するように鉄道事業は赤字だが、企業体としては連結黒字に持ち込むことができた。
こうした状況では、道以下地方自治体が中心となってJR北海道の存続に乗り出すべきであるが、こちらも期待できそうにはない。 北海道では、いわゆる「道路族」の存在によって地方自治体自身が道路への投資を優先する傾向が強いのである。その充実ぶりは、とある政治家の「人間よりも熊の通行量の方が多い道があるくらいだ」という発言が全てを物語っている。 お隣青森県は県下赤字3社(青い森鉄道、津軽鉄道、弘南鉄道)に対して自ら身銭を切る形で支援を行っているが、北海道ではそこに至るまでの議論すらままならない。
この構図が続く限り、
赤字→減便→利便性の低下→自動車利用への移行→赤字
という負のスパイラルを続けながら、需要が底を尽きた路線より順次廃線としていく以外にJR北海道が生き残る術は無いのである。
2016年11月に、当社単独では維持することが困難な線区についての具体的な発表がされ、輸送密度が200人/日を切る5路線5線区は廃止の方向へ(このうち夕張支線・札沼線非電化区間は廃止日が既に決定)、200人/日以上2000人/未満で北海道高速鉄道が絡んでいない線区については存続を念頭に置いた上で経費削減や財政支援、利用促進策の推進や上下分離方式の導入など、あらゆる手段を模索する方向へ動き始めている。
なお、現在JRグループで安定した収入源を持つのは首都圏を持つJR東日本と東海道新幹線を持つJR東海のみである。
JR西日本は7割・JR九州は篠栗線以外(九州新幹線含む)・JR四国は全線がそれぞれ赤字であり、JR九州も上場から2年が経った2018年、在来線と新幹線の大幅減便を断行している。
主な車両(過去のものも含む)
キハ22(キハ20系) キハ40系 キハ54形 キハ130形 キハ141系 キハ160 キハ150形 キハ201系 H100形
キハ80系 キハ82系 キハ183系 キハ261系 キハ281系 キハ283系 キハ285系