機体データ
型式番号 | MS-14 |
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全高 | 19.2m |
本体重量 | 42.1t |
全備重量 | 73.3t |
ジェネレーター出力 | 1,440kw |
スラスター推力 | 61,500kg |
センサー有効半径 | 6,300m |
装甲材質 | 超硬スチール合金 |
概要
リック・ドムとのコンペで敗れた高機動型ザクⅡの後期型をベースに開発された機体であり、ジオン軍の主力MSとしては初めてビーム兵器を搭載した機体でもある。
基本設計はザクⅡを開発したジオニック社、バーニア系統はヅダやドムで実績のあるツィマッド社、標準装備であるビーム兵器2種はズゴックを手掛けたMIP社が担当しており、本機には公国の工業力全てがつぎ込まれていると言っても過言ではなく、カタログスペックは装甲強度を除けばガンダムをも上回る性能を有し、更にザクⅡの生産ラインを転用可能と言う高い生産性を併せ持つ。加えて各部パーツやモジュールを分散して生産し、基本的な規格にさえ適合すれば独自の工法で生産したものも使用できる設計になっていたため、戦争末期の機体でありながら多数のバリエーションが誕生した。
同軍の主力機であるザクⅡの後継機種として開発が始められたが、ビーム兵器の開発が難航した事に加え、提携3社の確執等もあり、正式な量産化の開始は一年戦争終盤となってしまった。配備された機体も、ほとんどが本国の防衛や一部の特務部隊へ優先的に回され温存されていたため、戦線へ大量投入されたのは戦争終結日のア・バオア・クー戦が最初にして最後だった。一説には、量産型は738機とかなりの数が生産されたものの、ア・バオア・クー戦に参戦したのはわずか67機だったという。
また、これを効果的に扱う事が出来るエースパイロットや熟練パイロットの多くが戦死し絶対数として不足していた上に、生き残りも機種転換が遅れた事で慣れ親しんだザクⅡやリック・ドムに搭乗し続けた者が多かった。よって配備された機体の多くは学徒動員によって連れてこられた練度の低いパイロット(その中でもザクⅡやリック・ドムに乗るベテランパイロットについて行けるほどの素質がないと判定された者)が搭乗する事となり、性能を十分に引き出せなかった事がジオン公国の敗因の一つになったとも言われている。
もし本機の量産が数カ月早ければ、一年戦争の結果はどうなっていたかは分からないとされており、遅すぎた名機という不名誉な称号を持つ。
その高性能さから、戦後もジオン残党軍などで長く使用され続けている。
主なパイロットはシャア・アズナブル、アナベル・ガトー、ヘルベルト・フォン・カスペン、エリク・ブランケ、マサイ・ンガバ、ディドー・カルトハ、エロ・メロエなど。
なお、シャアが搭乗した機体は先行量産型のYMS-14(MS-14S)であり、これら先行量産型の大半はキシリア・ザビ傘下のエース部隊「キマイラ」に配備されている。
特徴
ザクよりも構造の高密度化・小型化が進められ、格闘戦での耐久性を考慮し動力パイプが内装式となった結果、従来のジオンMSよりもかなり精悍なデザインになっている。
ジェネレーターは水陸両用MSなどで使用されたものをベースに、新型の冷却機関を採用した事でビーム兵器の運用に対応した。
スラスターは腰部スカート内、脚部フレア内に設けられており、バックパックは装備しないという珍しい設計となっている。バックパックはオプション装備となっており、任務に応じて換装可能。
前腕部には大気圏内での運用を想定したジェットエンジン補助推進システムが内蔵されているが、宇宙ではデッドウェイトとなったため、追加武装や防御装備に換装される事も多かった。
武装
ビームライフル
ゲルググのメイン兵装にしてジオン軍初の携行ビーム兵器。性能はガンダムのライフルよりも高いとされる。
ガンダムのビームライフルに比べると銃身が長く、ストックもあるため取り回しはよくないが、その分安定性があり命中率が向上している。
また、従来のジオンのMS用火器はスコープを頭部のカメラで覗きこみ照準を合わせるタイプが主流であった。しかしこのビームライフルは独立したスコープが設置されており、これも命中率向上に一役買っている。
しかし完成はゲルググ本体よりも3ヶ月ほど遅く、ビーム射撃兵器を標準装備することが目標だったためか、ゲルググの戦地配備も遅れる原因となってしまった。
本格的な配備が始まってからもビームライフルの生産は追い付かず、繋ぎの武装として後述する実体弾兵装も使用された。
またこのビームライフルをゲルググのジェネレーターを直接繋げたバックパックウェポンの試作品があり、ジョニー・ライデンがパーフェクト・ザク撃破の為に高機動型ザクⅡに搭載して使用した。
ビームナギナタ
シャフト(柄)の左右先端から刀身が発生する、双頭のビーム剣。刀身形状が湾刀型のためか、「ナギナタ」と呼ばれる。両端から発振した状態での取り回しはエースパイロットといえど難しく、専ら片方のみで使う者が多かった。
また一部の先行量産機には一般的なビームサーベルが装備されていたとされる設定や描写がある。
通常は背中にマウントするが、バックパックを装備する場合は腰にマウントする。
シールド
ガンダムと同様、手持ちまたは背部のラッチで背負って使用する。ビグ・ザムなどの技術流用による耐ビームコーティングが施されている。
実弾兵装
『Ζ』に登場した機体はジャイアントバズを携行していた。他にも、媒体によってザクマシンガン、MMP-80マシンガンなどが使用されている。
劇中での活躍
地上を転戦し宇宙へ上がったホワイトベースを追撃するシャア・アズナブルが搭乗する新型MSとして登場し、テキサスコロニーにてガンダムと交戦。地の利を生かした戦法でガンダムを追い込むが、ガンダムの反応速度が追い付かないまでに覚醒していたアムロ・レイのニュータイプ能力の前に退却する。
その後はエルメスを護衛し、ララァ・スンへの攻撃を食い止め、ビットのコントロールに集中させることで彼女のニュータイプ能力を陰で支える役割を担う。宇宙でのガンダムとの交戦ではララァに「邪魔」と言われるなど、終始ガンダムが優勢であり、ア・バオア・クーでの決戦には修理が間に合わずに試作機ジオングに役目を譲ることになる。
あまり活躍している印象がないようだが、これには二度目の交戦時までの間にもアムロのニュータイプ能力が覚醒し続けていたこと、ガンダムがマグネットコーティングによってアムロのニュータイプ能力に見合う反応速度を持つに至ったこと、二度目の交戦時にはシャアがGファイターを操縦していたセイラ・マスに一瞬気をとられたことなどが要因にあり、決してゲルググの性能が低いわけではない。
ア・バオア・クー戦には量産型が登場するが、上述したように学徒動員兵が主に搭乗していたため目立った活躍はなく、キシリアに「もろすぎる」と酷評されてしまった。
グリプス戦役に於いてはネモのパーツを用いてレストアされた機体をレコア・ロンド、カツ・コバヤシらが使用している他、第一次ネオ・ジオン戦争でも内部構造を改修され青く塗装された機体(レプリカともされている)が「青の部隊」の主力として使用されている。
ラプラス事変でも旧式機ながら袖付きで運用されているのが確認されている。
関連動画
バリエーション
高機動型ザクⅡゲルググ先行試作型
型式番号MS-06R-3/MS-06R-3S。
高機動型ザクⅡのR-2型をベースに開発されたゲルググの試作機。
詳細は高機動型ザクⅡゲルググ先行試作型を参照。
先行量産型ゲルググ
型式番号YMS-14(MS-14S)。
初期生産型。合計25機生産され、1機がシャア・アズナブルに、残りの24機はエースパイロット部隊「キマイラ」に納入された。
詳細は先行量産型ゲルググを参照。
シャア専用ゲルググ
型式番号YMS-14/MS-14S。
シャア・アズナブル専用に赤く塗装された先行量産型ゲルググ。
詳細はシャア専用ゲルググを参照。
アナベル・ガトー専用ゲルググ
アナベル・ガトー専用機。カラーリングは青でザクⅠに準じた物になっている。
ソロモン撤退時に受領した時点では試作段階の大型ビームライフルを装備。
ア・バオア・クーにおいてはライフルが通常型に換装されている他、ビームナギナタが片刃のビームサーベルに変更されている。
追加生産されたYMS-14(MS-14S)であるとする説もあるが、一部資資料ではMS-14Aとされている事が多く、MS-14HとMS-14Aの二種類の型式番号が設定されている。
ヘルベルト・フォン・カスペン専用ゲルググ
ヘルベルト・フォン・カスペン専用機。カラーリングは白で高機動型ゲルググのバックパックを簡略化した物を装備している。
なお、カスペン機以外にも数機同仕様の機体も存在する。
高機動型ゲルググ
型式番号MS-14B。
ゲルググの高機動型モデル。
ゲルググキャノン
型式番号MS-14C。
ゲルググの砲撃戦仕様。
陸戦型ゲルググ
型式番号MS-14G。
ゲルググの陸戦型モデル。少数生産されたものがオデッサの戦い直後に地上に降ろされている。
主なパイロットはヴィッシュ・ドナヒュー他。
ゲルググM(ゲルググ・マリーネ)
型式番号MS-14F/MS-14FS。
ゲルググの海兵隊仕様。隊長機はJG型と共通する意匠を持つ。
ゲルググJ(ゲルググ・イェーガー)
型式番号MS-14JG。
ゲルググを統合整備計画によって再設計した性能向上機。
ゲルググ[シュトゥッツァー]
ジオン残党軍が運用したゲルググの改造機。ジャンクパーツをベースとした増加兵装を追加している為、独自の型式番号は持たない。パイロットはカザック・ラーソン。
正確にはゲルググM系の改修機で、上半身を中心に主に推力と火力を増強している。
また、背部にはこの部隊特有の装備である通称「ウインチユニット」と呼ばれる有線誘導式の遠隔操作アームが2基設置されている。他にはビームライフル、ワイヤーカッター、シールドなどの武装を持つ。
ザクⅡ[シュトゥッツァー]、リック・ドム[シュトゥッツァー]らとの連携でガンダムTR-1[ヘイズル]を大破させる活躍を見せるも、その後の戦闘でTR-3[キハール]によって撃墜された。
デザート・ゲルググ
型式番号MS-14D。
砂漠・熱帯地帯での運用を主眼に開発されたゲルググ。
ゲルググ(レストア機)
エゥーゴのアーガマ隊がジュピトリス潜入任務のために用意した機体。損傷し漂流していたゲルググにネモのパーツを流用して修理・改修を施したもの。レコア・ロンドがジュピトリスに潜入する際に使用した。
外見こそ普通のゲルググだが、使われたパーツの品質上性能は向上している。
関連動画
リゲルグ
型式番号MS-14J。ネオ・ジオンによってリファインされたゲルググ。
詳細はリゲルグを参照。
ゲルググ(U.C.0096年仕様)
ネオ・ジオンの残党軍「袖付き」に配備された機体。型式番号MS-14A。
様々な時代の機体が混在する組織の中でも特に旧式化した機種の一つだが、その腕に巻かれた真新しい袖は単なる数合わせの機体ではないということを感じさせる風貌を醸し出す。武装はギラ・ドーガ用のビームマシンガンを携行している。
ゲルググIII(ジオンマーズ仕様)
火星独立ジオン軍「ジオンマーズ」に配備された機体。型式番号MS-14J.zm。
リゲルグのデータを基にした新設計で開發されたリゲルグのリファイン機。
詳細はゲルググⅢを参照。
RFゲルググ
火星独立ジオン軍「オールズモビル」が使用した量産型MS。型式番号OMS-14RF。
旧ジオン軍が使用していたゲルググにそっくりな外観となっている。
連邦製ゲルググ
機動戦士ガンダムサンダーボルトに登場。
型式番号はオリジナルと同じMS-14。
一年戦争後連邦軍が接収した開発データを基に新規製造されたゲルググ。基本的な外観はオリジナルと大差ないが、頭部センサーはモノアイではなく連邦系MSの特徴であるバイザーに覆われ、腕部も連邦系の直線的なデザインのものに変更されている。
パイロットは新たにトラスト部隊に所属となったアリシア。
ちなみに0083のラストでチャック・キースが乗っているのはただの量産型ゲルググ(連邦カラーに塗装)であり本機ではない。
黒い三連星専用ゲルググ
ゲーム『機動戦士ガンダム 戦士達の軌跡』のガイア編で登場する黒いゲルググで、デフォルトの武装はビームライフルとジャイアントバズとなっている。
本作のガイア編では黒い三連星がオデッサ作戦を生き抜いており、連邦軍のルナツーを攻撃する最終シナリオで操作する。
また、ギレンの野望シリーズにおいてゲルググの量産化を決定し尚且黒い三連星が生存していると開発プランが提示される。
THE・ORIGINでは
ソロモン攻略戦で登場。リック・ドムやザクⅡと共に連邦のジムやボールを迎撃していく。シャア・アズナブル専用機はテキサスコロニーから登場し、ア・バオア・クー攻略戦にも登場した。
アムロ・レイの駆るガンダムとの戦闘時にビームナギナタの二刀流をお披露目し、激闘を繰り広げるがライフルが破壊され、片腕を斬り落とされたうえ 僚機のエルメスが撃破されてしまい 後退した。
余談
地味にガンダムシリーズのTVアニメ作品中で富野監督が関わった初代・Ζガンダム・ガンダムΖΖの全てに稼働機として何らかの形で登場している。(ついでに逆襲のシャアでは回想シーンながらシャア専用機が稼働していた)
関連項目
ヅダ:こちらは生まれてくるのが早すぎた機体
類似する敵勢力のMS