概要
"Raver" は「自由奔放に楽しく生活する人」、「はめをはずして楽しむ人」の他「熱狂者」「狂人」などの意味がある。
レイバーロードは君主(Lord)として一国を統治するだけの教養と品位を具えながらその規律を放棄して狂気に陥り、魔物と同種の存在となり果てた恐るべき狂君主である。
その落差の激しさゆえか、豪華な甲冑とマントを纏いながらも全身に殺意をみなぎらせた立ち姿は血に飢えた野獣にも似た気配を漂わせている。
もっとも現実の歴史においても、名君として尊敬されていた人物が豹変した(あるいは馬脚を晒した)例は数多く、勇者や冒険者の前に魔物として現れ直接挑んでくるレイバーロードはまだマシな部類なのかもしれない。
pixivではゲーム『wizardry』シリーズのモンスターとしてのレイバーロードを描いた作品が多いが、他作品にも同名の魔物やNPCが出現する例がある。
wizardryのレイバーロード
魔術師と僧侶の両系統の呪文を使いこなし、剣技の冴えも最強クラスの戦士に匹敵する。
和製wizでは常連扱いだが、実は本家Sir-Techの初期シリーズではシナリオ#1『狂王の試練場』でしか遭えない。
シナリオ#2『ダイヤモンドの騎士』ではFC版追加要素の一つとしてB6に出現、シナリオ#4『ワードナの逆襲』ではこれもアレンジ版追加要素としてLv9召喚モンスターにその名を連ねている。
黄金の甲冑を着込み大型の盾を構えているにもかかわらず、#1のレイバーロードは防御力と回避力を示すAC(アーマークラス)がなんと10。この数値は低ければ低いほど優れており(『裸忍者』の記事参照)、AC10は防具の類を一切装備していない、一般市民の普段着レベルである。何らかの呪いがかかっているのか、殺戮衝動のまま防御や回避を考慮せず斬りかかってくるが故のAC10かは不明。
FC版Ⅲや和製wizではもう少しまともなACになっているが、#4アレンジ版で喚べるのはAC10のレイバーロード。そんなところに拘らなくても…
またApple版#1では盾を持った戦士のグラフィックだったのだが、その後の各種PC版では骸骨のグラフィックに変えられており、現在のゴツい兜と鎧を纏ったロードのイメージになったのはFC版の末弥純氏のデザイン以降である。
更に種族は何故か「動物」であり、地味にフラック並に正体がはっきりしないモンスターであった。
これを踏まえてか、外伝II以降の不確定名は「よろいをきたけもの」となっている。
実はFC版#1には近年まで知られていなかった「ACに関する重大なバグ」が存在し、これによってレイバーロードの「防御や回避を考慮しない攻撃」が「冒険者の防御力・回避力を無効化して大ダメージを与える攻撃」になってしまっている。
もはやレイバーロードのために仕組まれたバグだったのでは?とさえ思える、狙いすましたかのようなハマり方で、FC版の経験があるプレイヤーが(バグが修正された)移植版でレイバーロードと戦い、盛大な肩透かしに拍子抜けしたという話もある。
シナリオ#5『災禍の中心』B5には、マンフレッティの店を巡回する警備兵・ロイヤルガードの指揮官としてロイヤルロードというモンスターが出現する。
合衆国のAppleⅡ版とコモドール64版、末弥純が担当したPC-8801版とPC-9801版、および幡池裕行によるFM-TOWNS版では同フロアに出現するブラックナイトと同一のグラフィックが流用されているが、PCエンジン版で別個のグラフィックが用意され、SFC版・SNES版と『ニューエイジオブリルガミン』ではレイバーロードと同じデザインになっている。
そしてこの迷宮のB7には三か所のシュートがあり、地獄(B777)に通じている。
独立した三つのエリアからなるこのフロアはシナリオクリアとは全く関係ないが、最強装備を所持している強敵(ダークロード、ネザーデーモン、アークデビル)と戦えたり、『wizardry』の製作者たちの幽霊が能力値を上昇させるアンク系のアイテムを売ってくれたりするボーナスフロア。
中でも「森の精の弓(SYLVAN BOW)」は戦士と盗賊の最強武器で、隠しボス以外でこれを持っているのはダークロードのみ。SFC版・SNES版と『ニューエイジオブリルガミン』ではレイバーロードの色違いになっている。
『BUSIN』では寺田克也による新解釈のデザインが為され(メイン画像参照)、色違いの上位種としてデスブリンガー(死をもたらす者)が出現する。
RPGにおけるモンスターの名称には、早い段階で登場した特定の種に対し、後から登場する上位種に「~ロード」ないし「ロード~」と名付けられるパターンがある(例:『ドラゴンクエスト』のガメゴンロード 『サンサーラ・ナーガ』のみじんこロード、なまずロードなど)。
『狂王の試練場』ではオーガに対するオーガロードやバンパイアに対するバンパイアロードがこれに当たるが、レイバーロードの場合は(後述の『Oubliette』における "Raver" も含め)むしろ「ロードのモンスター版」と考えられる。
冒険者のクラスのうちファイター・メイジ・プリースト・シーフ・ビショップ・サムライ・ニンジャはモンスターとしてもそれぞれ複数種が出現するが、モンスターとしてのロードはレイバーロードただ一種しか出現しない。
シナリオ#3『リルガミンの遺産』にはクルセイダーロードが出現するが、これはクルセイダーの上位種に相当する。
竹内誠の手による連作短編小説『リルガミン冒険奇譚』では、ロード専用のレア防具「君主の法衣」を手に入れたロードが慢心して仲間の損害も鑑みず力に酔いしれた結果、法衣が血のような深紅に染まりそのロードは呪われてしまったという物語が描かれている。直接的にレイバーロードが登場するわけではないが、FC版のレイバーロードは深紅のマントを纏っているため、レイバーロードの誕生する経緯を示唆した内容となっている。
その他の登場作品
『ヴァルキリープロファイル』ではアークダインの遺跡にトリオで出現。
『Wizardry』の先駆者であり多大な影響を及ぼした(明確に「元ネタ」と言われることさえある)『Oubliette』ではプレイヤーキャラクターが選べる種族とクラスの種類が『Wizardry』より多く、「善」の戒律の僧侶は "Cleric" 、「悪」の戒律の僧侶は "Demondim" と区別されていた。そして "Cleric" の上位職 "Paladin" と対を成すのが、 "Demondim" の上位職である "Raver" だった。
余談
pixivでのタグ用例はないが、一部の版では「レーバーロード」と表記されている。
カタカナで「レイバー」とした場合は『機動警察パトレイバー』シリーズに登場する作業用機械が多くヒットする。
こちらは "Labor" と綴り、「労働」「労働者」を意味する(ある意味 "Raver" とは真逆)。