概要
Wizardryシナリオ#3。
原題は"Legacy of Llylgamyn"。
日本国内ではプラットフォームによって『リルガミンの遺産』が『ウィザードリィⅡ』、『ダイヤモンドの騎士』が『ウィザードリィⅢ』となっており(詳細はこちら)、混乱を避けるため、それぞれのサブタイトルから『KOD』『LOL』と表記するのが一般的。
1994年にはノベライズ版『風よ。龍に届いているか』が刊行されている(後述)。
プラットフォーム
日本語PC (1987年)
PCエンジン(『3&4』収録) (1994年)
プレイステーション / セガサターン / windows(『リルガミンサーガ』収録) (1998年)
スーパーファミコン(『ストーリーオブリルガミン』収録) (1999年)
ストーリー
世界全土を襲う謎の天変地異。
大地の精霊に守られたリルガミンも例外ではなく、アルビシアの植民島は津波により崩壊、加護の象徴たる神器「ニルダの杖」の光も翳りを見せた。
その原因を究明するためには、世界の調和と均衡の守護者たる龍神L'kbrethが持つという、神秘の宝珠を探し出さなければならない…
リルガミン女王ベイキ(QUEEN BEYKI)の勅令の元、国内外より冒険者たちが結集する。その中には、かのワードナの迷宮や、ダバルプスの呪い穴を攻略した、英雄たちの子孫の姿もあった…
これが『LOL』の始まりである。
ちなみに、LOLの舞台となるのはKODの百年後の世界であり、ベイキ女王はKODのマルグダ王女の曾孫とされている。
冒険者に関しても、#1やKODのキャラクターを転送した場合、名前と称号を継承した子孫という扱いになり、能力等は(#1→KODのように)完全には受け継がれない。
またこの時代設定は#4の展開と矛盾するため、ウィザードリィ二都説の根拠の一つにもなっている(KODの記事を参照)。
このシナリオのクリアアイテムである「イアリシンのほうじゅ(Orb of Earithin)」は、後に「リルガミンのほうじゅ(Orb of Llylgamyn)」と呼ばれ、#5や外伝Ⅰの重要なキーアイテムとなる。
L'kbrethのカタカナ表記は、本邦移植版の出始めぐらいから長らく「ル’ケブレス」とされていたが、原作者ロバート・ウッドヘッドの指摘により、1999年SFC版、2001年GBC版では「エル’ケブレス」となった。
なお、国産パソコン版では「レ.ケブレス」となっている(戦闘は英語表記な為、イベントの表記のみ)。
ダンジョン
本作のダンジョンは山の中の洞窟であり、1F(かなりの面積を入り江が占めている)からスタートして、L'kbreth(メイン画像参照)が待つ6Fを目指し昇っていく。
最大の特徴はキャラクターの「性格(戒律)」によって侵入できないフロアが存在すること。
2Fと4Fに立ち入れるのは「善」と「中立」のキャラクターのみ、3Fと5Fは「中立」と「悪」のみで、善悪混成のパーティは1Fにしか入れない(6Fへのルートは1F→2F→4F→6Fか、1F→3F→5F→6F)。
クリアのための必須アイテムを入手するためには、二つのパーティを同時進行で育てながらダンジョンを攻略しなければならない。
モンスター
全体的に獲得できる経験値が低く、レベルを上げにくいため、序盤は難易度が高い。一方で、敵の強さに関しては終盤まで控えめになっている。
中でも強敵を挙げるなら、ポレ(Po'le)、デルフ(Delf)、エンジェル(Angel)もしくはソウルトラッパー(Soul Trapper)、プリーストオブファング(Priest of Fung)、ミフネ(Mifune)、アークデーモン(Archdemon)、アークエンジェル(Archangel)もしくはフェイトスピナー(Fate Spinner)、ヒドラ(Hydra)等々。
ラスボスに相当する立場の L'kbreth は絶対に倒せない仕様になっており、逆に戦闘で勝つことは考えなくてもいいので、「クリアアイテムの入手手順がほぼノーヒントである」ことと、上述のダンジョン構造が最大の難関であるといえる。
プラットフォームによって一部のモンスターが別のものに変化している。天使の類が対象になっていることから宗教的な理由による配慮とも言われているが、実際にはモンスターグラフィックの種類が少なかったためだとか。
固定出現の「がいこつのようなすがた(Skeletal Figure)」ポレ(Po'le)と「いけるでんせつ(Living Legend)」デルフ(Delf)は開発に携わったスタッフの姓名をもじったもの。
初期の版のデルフは巨大な顔面や、1Fに陣取るコルセア軍団と同じグラフィックが流用されていたが、FC版で「デルフト焼の魔神像に邪悪な魂が宿った魔物」の姿が描き起こされた。
なおデルフト焼はオランダの古都デルフト(Delft)の名産品である染め焼きの陶器。
外伝Ⅱで入手できる「やきもののゆびわ」には魔神デルフの石化の呪力が込められており、使用でロクドの呪文が発動するが当然呪われている。
アイテム
入手できるアイテムも他のシナリオに比べかなり地味。
武器は「BLADE CUISINART」、鎧は「PLATE ARMOR +2」あたりが最上で、#1のレアアイテムのような強力なものは最初から登場しない。
例外として「BUTTERFLY KNIFE」と、#6で最強の篭手として復活する「MANTIS GLOVES」がある。
FC版ではいわゆる三種の神器「むらまさ(Muramasa Blade)」「しゅりけん(Shuriken)」「せいなるよろい(Garb of Lords)」を含む数種が追加されている。中には「きいろいみみせん(Yellow Earplug)」という用途不明のシロモノも…
風よ。龍に届いているか
ベニー松山による小説版。前作『隣り合わせの灰と青春』の続編にあたる。
このタイトル自体もpixiv上のタグとして使用されている。つうか、『リルガミンの遺産』より用例が多いのだが…
初出は宝島社『ファミコン必勝本』連載。1994年加筆修正され、高橋政輝のイラストと共に単行本化。
2002年、創土社より上下巻で復刊。下巻には本作と連動する短編『不死王』が収録されている(『不死王』の初出はJICC出版局『ウィザードリィ小説アンソロジー』(1991年)。)
作中では舞台となる迷宮を内包する山のことを、「鱗(scale)ある龍の護る」「善悪のバランスを量る天秤(balance scale)」および「巨大な梯子(scale)でもなければ、外からは登れない」という三つの意味を込め、「梯子山(scale)」と呼んでいる。
物語は「悪」のニンジャ・ジヴラシアの視点を中心に進行。リルガミンに在籍するいくつかのパーティーによって4F・5Fまでの探索が終了し、ゲーム上の最終目的が目前という状況からスタートしているため、ゲームそのもののノベライズとは微妙に異なる。
宝珠入手の直後、それを成し遂げた「善」のパーティが壊滅、生還を果たしたと思われたメンバーが悪夢のごとき変異を遂げ、街で待機していた冒険者たちがほぼ全滅。
さらに梯子山迷宮の様相も激変。大規模な落盤によって出入り口が塞がれ、救助に向かったパーティは閉じ込められたまま、百年前の「ダバルプスの呪い穴」でしか出現が確認されていない魔物が続々と召喚され始める。
持ち帰られた宝珠が天変地異の原因として映し出したのは、生物とも非生物ともつかぬ正体不明の構造物。そして迫り来る回避不能の大破壊(catastrophe)…
6Fに出現する「妖獣」ゼノ(Xeno)が※※※※能力を有する「侵略生物」とされており、その能力が「本作の黒幕」の復活を実現させた。
ゲーム中でのゼノたちのやや控えめな振る舞い(それでも充分脅威だったが)は、ル’ケブレスの支配下にある守護者たちを欺くための擬態であったことになっており、本性を現したゼノによって冒険者たちが次々と犠牲になっていく様は完全にSFホラー。
また百年前の出来事であるKODの内容についても補完されており、KODに出現したバンパイアロード(Vampire Lord)が(末弥純による美形モンスターとしてではなく)オルロック伯爵を連想させる異相の持ち主として登場する。
ファールヴァルト公国よりの来訪者・アドリアンも、従者・リフラフを伴い登場。「手裏剣」「エクスカリバー」「聖なる鎧」等のレア武具を持ち込んでいるほか、#5からの新呪文である"TZALIK"や"LITOFEIT"を使用できる。
(作中では「千年前の超魔法文明壊滅と共に失われ、以来誰一人再現できていない古代呪文」という扱いになっている。)
荒業
本作を含む初期タイトルでは、「戒律が中立のキャラクターは回復・治癒の呪文を習得できない」という制約がある。厳密にはそれらを含む僧侶系呪文を習得できる職業に就けない、また中立の戒律は途中で変化することもないということ。
一部アイテムのスペシャルパワーで転職することは可能だが、それらのアイテムは最終フロア付近で強力な敵と戦い続ければ稀に入手できると言う代物であり、基本的にはパーティ内に最低でもひとりは善か悪のキャラクターを参加させるのが定石である。
本作ではフロアごとの戒律制限があるため、善悪二組のパーティを育てなければならないのは既に述べた通りなのだが、実は「メンバー全員が中立のパーティ」ならば1Fから6Fまでのすべてのフロアに侵入可能。必須アイテム生成のために善か悪のキャラクター一名が必要になるが、これも酒場待機で事足りてしまう。
必然的に回復呪文無しの高度な縛りプレイとなるのだが、本作に限っては「使用すると回復呪文の効果があり壊れにくい」アイテムを安定して増産できる(裏技・バグ技の類ではない)手段があり、クリアまでの時間を短縮する手段としては現実的なものになっている。
GBC版エクストラダンジョン
GBC版では 20×20 で統一されていたフロアが 16×16 に縮小されている反面、追加シナリオ『勝者の証~剣と魔法の調和~』の舞台となる完全新規のエクストラダンジョンが地下方向に設けられている。
B1は1Fと同じく善悪共通、B2とB4は善・中立のみ、B3とB5は中立・悪のみが侵入可能。
モンスターは#1やKOD、さらには#5のものが数多く起用されており、B4では巨人系、B5ではドラゴン系の強者たちが固定出現で配置されている。なおこの追加シナリオのラスボスはB1にいる。
モンスターリスト
モートモンスター / ハイコルセア / ガリアンレイダー / ガリアンガード / ガリアンキャプテン
ガリアンプリースト / ガリアンメイジ / ポルターガイスト / ダスター / ジャイアントスラッグ
アナコンダ / クローリングケルプ / マンアットアームズ / フライアー / ウィッチ
ルーター / ローニン / アッシャー / ワーヴァルチャー(ワーラット) / マミー
ヴァルチャー / ベンガルタイガー / ゴブリン / ホブゴブリン / ダークスティード(ライオンオブヘル)
ハーピー / ニンジャ / レプラコーン / ユニコーン(ノーコーン) / クルセイダー
ピクシー / ケンタウロス / ドワーフファイター / アコライト / ネクロマンサー
ジャイアントアント(ドゥームビートル) / ストラングラーバイン / バンシー / ワータイガー(プロージフロッグ) / コモドドラゴン
ジャイアントリーチ / 2-ヘッデッドスネーク / ゴブリンプリンス / ゴブリンシャーマン / ダークライダー
コカトリス(ストーンフライ) / マスターニンジャ / クルセイダーロード / フェアリー / セラフ
ティエンルン / ロック / バーサーカー / ノームプリースト / エルフメイジ
バーグラー / サムライ / ゴースト / ワイト(ダムド) / ドッペルゲンガー
フィーンド / ジャイアントゴリラ(コディアックベア) / ガスト / ファイアードレイク / ビーナスマントラップ
ミフネ / アークデーモン / サイクロプス / ジャイアントマンティス(オーガキング) / アークエンジェル(フェイトスピナー)
ゼノ / ヒドラ / ファングプリースト / エンジェル(ソウルトラッパー) / デルフ
デルフズミニオン / ポレ / L'kbreth
GBC版Ⅱ追加
FC版で出現したモンスターと名称・外見が同一で、生息域・戦利品と能力のデータが異なるものが数多く追加されているが、このリストでは除外としている。
マーフィーズゴースト / コボルドヒーロー / ブッシュワッカー / プリーステス / ハイウェイマン
ワーベア / ビショップ / ワーウルフ / Lv16ニンジャ / ソードマン
マッドドッグ / キラーウルフ / Lv20ニンジャ / ブレードベア / Lv16サムライ
Lv19ニンジャ / ワイバーン / ワーライオン / チャンプサムライ / ハイニンジャ
マイナーダイミョウ / ハタモト / ニンジャショーグン / ハイプリースト / メジャーダイミョウ
ダークデーモン / ドラゴンフライ / デーモンドッグ / メデューサ / キメラ
ロッティングコープス / スモークデーモン / アンデッドコボルド / ゾンビ / ドラゴンゾンビ
ヘルマスター / はかいそう / バンパイア / スクライル / スペクター
レッサーデーモン / グレーターデーモン / ナイトストーカー / ナイトメア / ウィルオーウィスプ
ジャイアントゾンビ / Lv30メイジ / バンパイアロード / エアージャイアント / ポイゾンジャイアント
フロストジャイアント / アースジャイアント / ファイアージャイアント / アイアンゴーレム / ドラゴンパピー
ガスドラゴン / ゴールドドラゴン / ファイアードラゴン / ブラックドラゴン / ハヤテ
ヴァスク / ハイウィザード / シヴリム / ミノタウロス / Lv6ニンジャ
ソーサリス / ジャイアントスパイダー / クリーピングコイン / オークファイター / マスターシーフ
シーフ / Lv12プリースト / Lv9メイジ / ボーリングビートル / コヨーテ
Lv5プリースト / Lv7メイジ / Lv7ニンジャ / メデューサリザード / スピリット
ガーゴイル / ジャイアントバット / ワーバット / バンパイアバット / Lv25プリースト
グレイブミスト / アークメイジ / Lv14メイジ / Lv25ビショップ / ライフスティーラー
ゲイズハウンド / トロール / ワーラット