『憑き物を騙り……夫の目の前で身重の妻を殺めるなど、まさに鬼畜の所業』
「生きる資格などある筈もない。この伊集院が全身の皮を捲り上げてやろう」
『貴様は霊媒師でもなければ、人間ですらない』
我妻「面白いなぁ東京は本当に。ますます愛おしくなってきたよ」
「詐欺師に騙される気分を味わったか……下衆女」
「お前が本当に悔い改めるつもりか試してやろう」
「貴様も霊媒師なら、神盟探湯は知っているだろう」
「女狐が、貴様には相応の罰をくれてやる。流川、やれ」
「お前は霊媒師じゃない。魔女だ。魔女は拷問にかけられるものだろう」
「折角温泉地にいるんだ。しっかり温まっておけ」
「お前は霊媒師だったな。ならば、亡くなった奥さんを降ろしてみろ」
「彼女に謝罪し、赦しを得たなら助けてやる」
「おい、お腹の子の名前を言ってみろ。考え抜いて旦那と決めた名前だ。忘れるわけが無いな」
水谷「のりお? いいや、ふみお、かな? こめお?」(正解は「大晴」)
「全然違う。そんなヤマカン当たるワケねぇだろうが。舐めてんのかコラ」
「クソ外道、閻魔に会う前にその温泉で汚れた心を少しでも綺麗にしていけ」
標的
霊媒師を騙って依頼人・洋一の家族(父親と弟)を洗脳し、依頼人夫婦を痛め付けさせた詐欺師「水谷千鶴子」に執行。この暴行によって臨月だった依頼人の妻は胎児共々死亡したが、実行犯である父親と弟はなぜか逮捕に留まり、"刑"の執行はされなかった。
概要
神盟探湯(クガタチ)は弥生時代の日本で行われていた裁判法であり、裁判を受ける者(罪人や他のクニから移住してきた戦士など)に熱湯の中へ手を突っ込ませるというもの(時には熱湯の中の物を掴み上げさせる場合もあった)で、火傷を負わなければ無罪、火傷を負えば有罪というもの(熱さを感じれば有罪、感じなければ無罪という場合もあった)。お察しの通り、時代背景が古代であるが故に相当理不尽な裁判法である。
雲仙地獄責めは穴吊りや蛇責めと同じくキリシタンに棄教を迫る為の拷問法で、火山地帯である長崎の雲仙地方で行われていた。方法は熱水泉に罪人を沈め、溺死寸前で引き上げた後、ふやけた身体を青竹で殴る事によって皮膚に裂傷を刻み、更にまた熱水泉に沈め、また溺死寸前で引き上げるのを繰り返すというもの。
これにかけられた罪人は熱水泉の高温と窒息の苦痛に加えて、青竹による殴打で裂けた皮膚に温泉水故の硫黄塩や金属塩が染み込む際の激痛で、文字通り地獄を味わう事になる。
その苦痛は敬虔なキリシタンが即刻棄教を決意する程だが、むしろそれほど苛烈な拷問が置かれるくらい脅威だと見なされていた証左でもある。
経過
豹変した父と弟からの暴行で身重の妻を殴り殺される様を見せつけられた洋一は瀕死で逃亡。
警察も病院も水谷に騙されており頼れず、命からがらのところで伊集院に遭遇し応急処置を受けてことの次第を激白し、水谷達の所業が知れ渡った。
水谷の元に流川が潜入し、流川は騙されたフリをして水谷の悪事を自白させ(あと自白剤も盛ってより確実にしている)、言質が取れたので捕獲して熱水泉の上に宙吊りで固定し、熱水泉の湯をぶっかけて叩き起こした。
散々人を騙してきた自分が騙し返されるという事態にピーピー喚く水谷だが、悔恨の念を問われると「出家して尼になり菩提を弔う」と述べ、所業を悔いる素振りを見せた。
しかし伊集院から盟神探湯として熱水泉の湯を顔にぶちまけられるや否や直ぐに本性を現し、「私の綺麗な顔に何すんだ! 男遊びできなくなるだろうが!!!」と激昂。最後まで他人を欺こうとするその性根に「最早矯正は不可能」と断じた伊集院達によって今度は雲仙地獄責めを執行された。化けの皮が剥がれるとはまさにこの事である。
敬虔なキリシタンすら泣き喚いて改宗を誓う程の拷問に、腐ったペテン師風情が耐えられる筈もなく、奴は厚顔無恥にも命乞いをした。なので伊集院は「本物の霊媒師なら洋一氏の妻の降霊をやってみせろ」と指示。
助かりたい一心で洋一の妻を演じたが、伊集院から「旦那と考えたろ。我が子の名前を言ってみろ」と言われて凍りつき、デタラメな名前を列挙。
依頼人の無念を汲む伊集院はブチギレ、「そんなヤマカンが当たるわけねぇだろ。舐めてんのか」と威圧。水谷は最終的に熱水泉に蹴り込まれて溺死した。
登場人物
- 水谷千鶴子(みずたに ちづこ)
今回の断罪対象。
美人だが性根は腐りきっており、まさに人面獣心を体現するような外道女。
霊能者に扮して上がり込み、村瀬家を崩壊させただけでなく、それ以前にも村単位で人々を騙してきた凶悪な詐欺師で、様々な顔を演じて金を巻き上げてきた(そしてその金を元に男遊びに現を抜かし、運気が良いと嘯いて流川になびく素振りも見せている辺りかなりの面食いらしい)。
ちなみに霊媒師を演じている間はいかにもな装束と古風な口調で雰囲気を作り、大層なご利益のあるという「神の水」なるものを飲ませることで依頼人の父親と弟を支配下においた。その上で「狐憑き」を騙り、体内から追い出すためとして暴力を肯定させ、それが今回の悲劇を生んだ。
※「神の水」はただの水に思考力や判断力を低下させる薬を盛っただけのまがい物。また腰痛持ちだった父親の腰痛もこの水によって改善させているが、単に痛み止めを溶かした薬水で誤魔化しただけなので改善などしていない。
そして依頼人の妻をなぶり殺しにさせたのも「羨ましかったから」という最低の動機。そして洋一を取り逃がした事で今回の悪事がバレ、伊集院によって文字通り「化けの皮を剥がされた」挙げ句、煮えたぎるように熱い源泉でもって禊が行われ、閻魔の下へ送られた。
- 洋一の父親と弟
本来はごく普通の農家だったが、水谷に洗脳されて豹変。
弟は水谷を止めようとする洋一を取り押さえ、父親は容赦なく棒で打ちすえ、挙げ句水谷の口車にのってリンチして腹の子諸共命を奪った。しかも逃げようとする洋一を殺害しようともした。
あくまでも水谷をターゲットと定めたためか、拷問は免れたが、警察に逮捕された。水谷に責任転嫁を続けていた。
- 村瀬洋一(むらせ よういち)
今回の依頼人(正式な依頼人ではないが)。
水谷に洗脳された親弟の手で妻子を殺害され、更には自分も命の危機に陥り、命からがら逃げ出してきたところを伊集院に保護された。
- 村瀬夏美(むらせ なつみ)
洋一氏の妻。臨月でもうじき「大晴」と名付けた我が子が生まれる筈だったが、水谷によって洗脳された義父弟の手で大晴共々撲殺されてしまった。
- 村瀬大晴(むらせ たいせい)
村瀬夫妻の息子。胎児だった頃に水谷に洗脳された祖父と叔父に撲殺された。
晴れ渡る空のように、という意味を込めての名付けだが、当然何も知らない水谷は「のりお」「ふみお」「こめお」とデタラメな名前を列挙していた。
- 東北のサツ
駐在は水谷に騙されて洋一の訴えを曖昧な返事で濁していたが、事件が発覚した後は真っ当な対応を行っていた。
今回のゲストキャラ。
東北最大の半グレ「戒炎」の創設者でありトップ。
事件とは無関係だったが、今回動いた伊集院を密かに監視しており、半グレに襲われていたエマを助けた。
モデル
事件内容からモデルは「尼崎連続変死事件」と思われる。
この事件は犯人の女がとある家に乗り込んで家庭をマインドコントロールで乗っ取ったという事件で、犯人の女は自殺という形で裁きを逃れ、「勝ち逃げ」と言える結末になっている。また相談に乗って「腰痛が治った」などで信者を集めてる様子や「狐が取り憑いている」と称して暴行を加えている様子から「福島悪魔払い殺人事件」もモデルにしてると思われる。こちらの犯人は死刑に処され、戦後4人目の女性死刑囚となった。
伏線?
今回は、働き詰めの伊集院と流川を休ませようと、エマが提案した東北への温泉旅行の最中に唐突に舞い込んだ依頼だった。その結果、伊集院と流川はエマを独りにさせてしまい、その埋め合わせを東京に帰ってからする事になった。
また、温泉街に繰り出した際にエマは半グレに絡まれ、そこを戒炎の我妻京也に救われるという事態が発生した。因みにエマは一目で我妻の危険性を見抜いており、更にその場に現れた伊集院を見て、我妻は「関わりたくない」と一目散に退散した。我妻も武術の達人故、伊集院のヤバさを肌で感じたのだろう。
またこの一件で我妻は伊集院に興味を持った模様。よって伊集院が京炎戦争に関わる事は確定と考えてよいと見られていた。
しかし戒炎のトップ我妻やNo.2の麻生成凪は京極組との抗争の最中に敵を増やすのは好ましくないと考えていること、伊集院も極道や半グレの抗争には距離を置くスタンスゆえに戒炎と拷問ソムリエが衝突する兆候はないと思われる。
ちなみに京羅戦争において伊集院は羅威刃の幹部にして最凶のシリアルキラーである小湊圭一に家族を奪われた少女の依頼を請け負い、最終的には拷問の末に彼を屠っている。このことは設楽紀明や高城蓮太郎らを既に失っていた羅威刃側にとってはさらなる手痛い戦力ダウンを招いてしまい京極組に勝利をもたらす一因になった。
余談
前々回と同じく、椅子に座った状態ではなく、屋外で歩いている状態で始まった。また、最初は旅行だったので、流川とエマも一緒である。
冒頭で流川が登場するのは、流川が伊集院の助手になるきっかけとなった事件の拷問回以来である。
なお、今回は依頼者の告白が依頼では無いと伊集院が解釈しており、そのためか依頼者の慟哭の怒りの場面が鬼相へと変化していない。この回以降鬼相に変化しない回がチラホラと出るようになり、逆頭寒足熱食糞刑の回以降は鬼相を浮かべなくなった。
洋一の父と弟は事件後逮捕されたが、あくまで水谷のせいにして自分たちの罪を認めず、反省や悔恨の念を見せる気配がないという、何とも後味の悪い結末となった。元々事件現場となった村は昔ながらの価値観が残っていたことや、それにつけ入った水谷の演技と仕込んだ薬で正常な判断力や理性を奪われていたことも考えれば多少は弁解の余地もあろうが、視聴者の間では共犯者・実行犯である以上拷問対象にすべきだったのではないかという意見が続出した。
おおかた、自分達家族の問題だから法の裁きで片付けるとしたのだろう。
悪質な宗教に関しては瓜生シリーズや紅林シリーズでも扱われており、依頼者と同じ村瀬という苗字も天羽組シリーズにて登場している。
偶々出会ったエマを半グレから助けた我妻だったが、実はその背景には過去に敵対組織によって恥辱された上で無惨に殺された恋人の存在があり、エマを助けたのもその恋人に似ていた為である。実際、ボコボコにした半グレ達に対してドスの籠った声で脅したり、エマが止めなければそのまま半グレを殺そうとするほどであった。
また、この約1年前は宮沢永徳が登場した因果なのか、丁度1年前も熱湯で処刑する拷問という偶然が起こった。
なお、女性の外道のみが拷問処刑にかけられて惨死するのはこれが三回目である(一回目はユダのゆりかご、二回目は蓑踊り)。しかもなんの因果か、二回目である蓑踊りと同じく西海道(九州)で行われたキリシタンに対する弾圧行為であった。
なお、フランシスコ・ザビエル達イエスズ会の宣教師の本性を知っている方ならお分かりかもしれないが、キリスト教とその信徒は当時の日本政府(江戸幕府)から「国家転覆の恐れあり」と看做されていた。
そして男性の依頼人が女性外道のみを裁く依頼を持ちかけるのはおそらくこれが初である(前例では鉄の処女回、牛裂き刑回があるがその女どもは飽くまで金目的での共犯で伊集院が標的と同罪と捉えて同じく裁いただけであり、依頼人も「義理の息子を裁いてくれ」という依頼を持ち込んだ体だったので直接「共犯の女も裁いてほしい」と直接言ったわけではない)。正確には事務所の中ではなく旅行先の温泉宿で依頼人を手当した後に事情を聞いたので、依頼人が直接伊集院のことを知って訪れたわけではないが……
関連タグ
伊集院茂夫による蓑踊り:同じく、断罪対象が女詐欺師であり、九州でキリシタンに対し行われた拷問法を用いている。
伊集院茂夫による釜茹で:拷問内容が熱湯繋がり。
伊集院茂夫による改良版股裂き刑:主犯が女、実行犯が男2人、被害者が身重の女性、流川が逆ハニトラで罪人を捕縛するなど共通点の多い回。
ただしこちらはちゃんと実行犯2人を拷問した。
成り行き的に仕事になった回
焼き土下座からのうんこ直食い→じゃぱにーず魔女裁判→カワウソの餌食