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概要

土星衛星のうち最大のもの。太陽系の衛星全体でも、木星の衛星ガニメデに次ぐ第2位の大きさであり、地球の衛星であるはもとより、準惑星冥王星惑星である水星より大きい(ただし質量は水星の方が大きい)。

1655年、最初に発見された土星の衛星である。後述する探査機ホイヘンスは、このとき発見したオランダ天文学者の名にちなんでいる。衛星の名はギリシャ神話ティーターンに由来。日本で一般的な「タイタン」は英語読みに準じている(より語源の原音に近い「ティタン」が用いられる場合もあるが、同じくティーターンに由来する金属名チタンと紛らわしいせいか、「タイタン」ほど一般的ではない)。

 

太陽系の天体の中では、金星、地球、火星とならんで一定量・濃度(気圧)の大気におおわれているという特徴があり、この点衛星としては唯一の存在(後述)。

寒い、しかしどこか地球に似た星

極低温の世界

土星の太陽からの距離が約10天文単位(1天文単位=約1億5000万㎞)、すなわち地球と太陽の距離の10倍ほど離れているため、タイタンも-180℃前後の極低温の世界であり、)は固い岩盤の層となって地表面をおおっている。

惑星並みに濃い大気

タイタンの大気は大半が窒素(90%以上)、残りがメタン水素その他から成る。気圧は地球の大気より高く、約1.5気圧。衛星としては最大級とはいえ火星よりも小さく(したがって重力も小さい)、太陽風をガードする磁気圏も持たないこの星がこれほど濃い大気を保てる理由は、まだ完全には解明されていない(低温により気体分子の動きが抑えられ、大気の拡散を防いでいる要因も考えられている)。

タイタンでは地球と同様、落下してきた隕石の多くがこの濃い大気との摩擦熱により、地表への衝突の前に消滅してしまう。したがってタイタンには、水星、月その他の衛星や小惑星などの定番風景ともいうべきクレーターの数が比較的少ない。加えて、後述する液体メタンの侵食作用や内部エネルギーによる地殻変動で、衝突でできた地形もその後変形し、クレーターの存在をいっそう目立たなくしている。

メタンの循環が作り出す風景

メタンの1気圧での融点は-183℃、沸点は-162℃である(別の言い方をすれば、メタンは-162℃で液化し、-183℃で凝固してとなる)。タイタンの高緯度地帯(主に北極付近)では大量のメタンが液体となり、地球ののように、地表の低い部分に溜まっている。このように、タイタンは地表にまとまった量の液体が安定的に存在する、太陽系では数少ない天体でもある(他には地球があるのみ)。真空あるいは希薄な大気(低い気圧)のもとでは、融点に達した物質は液体の状態を保てず直接気化する(昇華。地球大気中でのドライアイスと同じ状況)ので、これもタイタンの濃い大気の恩恵といえる。

タイタンでは、ちょうど地球での水の循環のように、蒸発したメタンが上空でとなり、として再び地上に降り注ぐ。2004年にタイタンを観測したカッシーニと、これから分離してタイタンに着陸したホイヘンスは、液体のメタンが氷の岩盤を侵食してできた三角州、海、湖などの地形、丸みをおびた氷の岩石が並ぶ河原のような風景を撮影した。極低温の世界ではあるものの、太陽系の天体では火星とならんで、地球人にはなじみのある風景が広がる星のようである(火星にもかつて液体の水が地表にあったと推測され、その名残の涸れ川、谷などの地形がある)。

生命・生物の可能性

2020年現在、タイタンに生命生物の存在は確認されていない。しかし、タイタンの地表に大量に存在する液体メタンが地球の海にあたる役割を果たし、その中で有機物が複雑に合成されて、地球の生物とは別の構造、独自の代謝呼吸システムをもつ生命・生物が生成している可能性も指摘されている。

また、水は低温により氷の層となっているが、その地下の深い場所では内部の熱エネルギーにより融解し(地球のマグマに相当)、海になっていると推測されている。この内部海が地球の海と同様、生命を誕生させるゆりかごとなっている可能性もある(木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドゥスなどにも同様の状況が期待されている)。

これら2つの仮説の双方が的中すれば、タイタンは成立の基盤が異なる2通りの生命・生態系をもつ、おそらく太陽系で唯一の天体という事になる。

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本記事のメイン画像は、画像タイトルにあるようにどちらかというと古典的なイメージで、実際には、昼間のタイタンの空は黄色あるいはオレンジ色がかっていると思われる。また太陽の光度と雲の厚さからして、昼間の明るさは地球の天気の悪い日の夕方くらいと推測される。

関連タグ

太陽系 土星 衛星

他の土星の衛星 レア ミマス エンケラドゥス

語源 ティーターン 名称が同一語源の事物 タイタン(曖昧さ回避のページ) チタン

地球外生命

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  • タイタンの宇宙女子K

    【ウソ番組】衛星タイタンの教育番組「初歩からの太陽系~第3惑星の世界」

     土星の衛星タイタンは、太陽系の衛星では唯一濃い大気を持ち、マイナス180℃前後の酷寒の世界ながら、メタンを中心に炭化水素の海・雲・雨が存在して、その海の中に生命が存在する可能性も指摘されています。  この文章は、そのタイタンに地球の人類と同様の知的生命体が存在し、Eテレや放送大学にあたる教育番組のなかで、太陽系第3惑星すなわち地球が紹介されている、という想定で、担当講師と、地球(日本)の黒田有彩嬢に似たアシスタント、仮名K嬢とのやり取りを想像したものです。  文中「地球」とはタイタン人が自らの住む星=タイタンに対して使っている呼び名で、私たちの地球は彼らの神話にちなみ「水神星(すいじんせい)」と呼ばれています。「人間」「人類」という表現も原則として同様ですが、彼らタイタン人が、水神星の知的生命体(つまり私たち地球人)を、比喩的にそう呼んでいる箇所もあります。  太陽はそのまま「太陽」としましたが、タイタンの主星である土星は、地球(漢字文化圏)での月の別称である「太陰」を用いました。水星は地球の呼び名「水神星」とかぶるので「銀星」としましたが、それ以上オリジナルの名前を考えるのもめんどくさいので(苦笑)、その他の天体は地球での呼称を流用しています(そこだけ地球語への翻訳機能が作動したと考えてください!)。またタイタン人は惑星のことを、「自分たちの星タイタンのように他の星を周回せず、単独で太陽の周りを公転している天体」という意味で、「自走星」と呼んでいます。  またタイタン人は、自分たちの生命のゆりかごであるメタンの融点(-183℃)を「0度」としていると設定しました。よって文中の温度は、摂氏温度に183足したものです。実を言うとメタンの沸点が-162℃ですので、これを100度として間の21度を100分割したほうが、タイタン人の温度目盛りとしてはよりリアルかとも思いましたし、気圧によって物質の融点・沸点も変わってきますが(タイタンは地球に比べて若干気圧が高い)、計算がややこしいのでやめました(苦笑)。いずれにせよ、タイタン人から見れば地球は、気温200度を超える灼熱地獄ということになります。  同様の流れで、文中2人のタイタン人が言う「氷」「水」「水蒸気」も、それぞれメタンの固体・液体・気体状態を指します。地球人にとっての「水」は、オリジナルの元素名を考えるのがめんどくさかったので(苦笑)、便宜上「H²O」としました。  長さと重量はメートル・キログラム法に、年代は西暦に換算して表しました。また時間の長さ(秒~日~年)も、タイタンないし土星の自転・公転周期に準じて作るとややこしいので、地球の単位をそのまま用いています。
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