曖昧さ回避
植物の「蕎麦」
ソバ
農作物として栽培され、種を穀物として利用する。冷涼で乾燥した気候を好み、痩せた土地でも育つ。
夏から秋にかけて茎先に総状花序を出し、白やピンク、赤などの小さな花を多数咲かせる。ソバの花には肥料のような悪臭があるが、ソバを蜜源とする蜂蜜は色が黒く独特の風味があり、フラボノイドやミネラルを豊富に含み、珍重される。
実は三角錐状で黒褐色ないし銀灰色。脱穀した殻(蕎麦殻)は枕の詰め物などに使用される。
脱穀しただけのソバの種は蕎麦米と呼ばれ、炊いて食べる他、蕎麦茶、蒸留酒(焼酎)の原料にも用いられる。海外では蕎麦米を利用した蕎麦粥(ロシアのカーシャなど)も見られる。
高知県南国市にある縄文時代後期の遺跡から花粉が出土しており、早い時代から日本に渡来していたと思われる。主産地は北海道だが、自給率は20%程度。
ダッタンソバ
ソバ同様、種を穀物として利用する。ソバより更に厳しい気候の下や荒れ地でも栽培できる。
種には大量にルチンを含む(100倍)が、製麵する過程で大部分は加水分解されてクェルセチンとなり、その薬効が注目されている。ダッタンソバの麺は苦くて食味も良くない。
シャクチリソバ
宿根性のシャクチリソバ(赤地利蕎麦)は葉を漢方薬として利用する。
蕎麦粉
蕎麦の種を挽いた粉は蕎麦粉と呼ばれる。
●一番粉:胚乳の中心部分のみを利用した粉。
●二番粉:胚乳と子葉の一部を利用した粉。
●三番粉:胚乳の一部と子葉、甘皮の一部を利用した粉。
●末粉:子葉と甘皮を利用した粉。
一番粉は味と食感が優れ、末粉は栄養価が優れる。
玄そばを直接ひいた全粒粉は「ひきぐるみ」と呼ばれる。
中世以前の日本では、水かお湯を加えて加熱した蕎麦掻きとして食べていたが、現在は「蕎麦」と言うと通常は「蕎麦切り」の事である。
海外では蕎麦粉で薄いパンケーキ(ガレットなど)を焼いたりする他、小麦粉と混ぜてパンを焼いたりといった利用法が見られる。
麺類の「蕎麦」
蕎麦粉を調理して細長い麺にした「蕎麦切り」は一般に蕎麦と呼ばれ、茹でて食べる。
蕎麦粉の生地は粘りに乏しく、蕎麦粉100%の十割蕎麦を長い麺にするには技術が必要で、高級品として扱われる。
多くの蕎麦にはつなぎとして小麦粉を混ぜられており、ヤマイモや布海苔などもつなぎとして用いられる。蕎麦専門店の蕎麦は小麦粉2割蕎麦粉8割の「二八蕎麦」が標準。つなぎを使わない十割蕎麦はつながりにくいことから麺もつなぎを使ったそばより太めなことが多く、蕎麦粉の特徴が良くも悪くもはっきりと表れる。蕎麦本来の風味を最も味わえることから、薬味を使わないというこだわりを持つ人もいる。つなぎを使った蕎麦が十割蕎麦に比べて質が落ちるとは必ずしも言えず、十割より喉越しがよく滑らかだとして二八の方を好む人も多い。十割と二八の中間の「九割蕎麦」を売りにする蕎麦店もある。
しかし、安い蕎麦だと往々にして小麦粉の方を多く使っており、立ち食いそば店などの安い外食店などでは蕎麦粉の使用量が極端に少ない(蕎麦粉2割の「逆二八蕎麦」と言われる)業務用の蕎麦が使われ「茶色いうどん」だと揶揄されることも。酷い場合は蕎麦粉を一割しか使わず、水増しと喉越しをよくするためのリン酸ナトリウムなどが混ぜられていることもあり、このような粗悪な品は蕎麦らしい香りは到底望めない。
しかし、小売店で流通する乾麺はJISの規定で蕎麦粉の割合が決まっており、「そば」を名乗るには蕎麦粉を3割は入れなくてはいけない。この規定はカップ麺などにも適用され、蕎麦粉の割合が極端に低い商品は無い。
蕎麦切りは茹でた後、冷水でぬめりを取る。蒸篭や笊に盛り、蕎麦猪口のつゆに漬けて食べる盛蕎麦(もりそば)や笊蕎麦(ざるそば)、熱湯で温め直してから丼に入った熱いつゆの中に入れた掛蕎麦(かけそば)などが一般的な食べ方である。
薬味としてネギや紫蘇やみょうがを合わせたり、種物として汁に卵やかまぼこ、天ぷら、鶏肉などの具材を入れたものもある。
大阪城築城工事を機に関西圏を中心に広まり、営業形態を整えたそば店として日本最古とされる「砂場いづみや」が難波の名物として大繁盛していた記録が「摂津名所図会(1794年)」に詳細なイラスト入りで残る。
江戸時代には江戸(東京)に進出して根を下ろし、現在も東京では蕎麦の人気が高い。
江戸時代末期には蕎麦粉の仕入れ値が小麦粉に比べ割高となり、関西圏では安価なうどんを好む人が増えたため、明治に入ると大阪の麺類市場から蕎麦はほとんど姿を消した。
うどんが主流の地域でも、京都など蕎麦の産地が近い所では、専門の「蕎麦屋」が時々見られる。懐石、料亭や高級割烹では供される事もある。
蕎麦を専門とする蕎麦屋が存在したり、大晦日に年越し蕎麦を食べる風習を持つ地方もあったりなど、日本人にとって存在感ある食べ物である。そのため、蕎麦粉を使っていない小麦粉の麺もソバと呼ぶことがある(例:支那そば、沖縄そば)が、上述のJISの規定との兼ね合いで問題になったことも。
世界的にも珍しい音を立てて食べるマナーがある料理である。
軽快に音を立てて啜るのが「粋」とされ、ぼそぼそと食べるのは好まれない(個人差はあるが、音を立てて啜ることで蕎麦の風味をより感じられるようになる効果もある)。
落語の時そばでは、いかに蕎麦を美味そうにたぐっているように見せるか、が落語家の腕の見せ所である。
そば料理一覧
ざるそば | もりそば | かけそば |
---|---|---|
天ぷらそば | 月見そば | たぬきそば |
きつねそば | とろろそば | かしわそば |
カレーそば | コロッケそば | にしんそば(京都府) |
おかめそば | 茶そば | へぎそば(新潟県) |
わんこそば(岩手県) | 出雲そば(割子そば、島根県) | ねぎそば/高遠そば(長野県・福島県) |
瓦そば(山口県) | おろしそば※ | おろしそば※(福井県) |
※「おろしそば」は大根おろしに出汁を加えてつけツユにして食べる方と、主に福井県で食べられる大根おろしを乗せて出汁をかける食べ方(ぶっかけ)がある。
関連イラスト
表記揺れ
関連タグ
『ギャグマンガ日和』に登場する曽良と芭蕉のコンビ⇒(曽芭→そば→蕎麦)