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九太の編集履歴

2021-02-13 00:28:18 バージョン

九太

きゅうた

アニメ映画『バケモノの子』の登場人物。

「もし、あんたといて本当に強くなるなら…俺、あんたの弟子になってやってもいいぜ」

「俺は行きます!あいつのこと、よろしく頼んます!」


概要

CV:宮﨑あおい(幼少期)/染谷将太(青年期)


アニメーション映画『バケモノの子』の主人公の一人。


齢9歳にして天涯孤独の身となり、ひょんなことから人間とは対を成した存在であるバケモノ熊徹と出会い、彼と切磋琢磨し合いながら武芸の修行に励む。


バケモノと人間の狭間で自分の有るべき姿についてを思い悩みつつも、囲のたちの支えによってその弱さを克服し、渋天街で過ごす9年を通して熊徹と共に一人前の武人として成長して行く。


物語開始時の年齢は9歳と、監督の過去三作の主人公の中では事実上の最年少だったが、次作『未来のミライ』にてこれを更に下回る4歳に更新された。


本名、及び人間界に於ける名前は「」であり、本項では彼の意識がバケモノ界に向いている際は「九太」、人間界に向いている際は「蓮」と使い分けながら記述する。


人物像

バケモノの子 見てきました!

幼少より壮絶な不幸に見舞われた挙句孤児になった影響から自暴自棄となって人格が荒んでしまい、些細なことで癇癪を起こし他者に対して暴言を吐いたり威圧的な態度を取るなど、年齢に見合わない乱暴な振る舞いをして誰に対しても心を開こうとはしなかった。


しかし熊徹という異種族でありながら自身と同じ「独りぼっち」である境遇を持つ者と出会い共に暮らすようになってからは次第に他者に心を開くようになり、上記の乱暴な態度も熊徹と日頃からいがみ合いをして互いの想いをぶつけ合うことで信頼を育むという形でプラスに働くことになった。最も、乱暴な態度は飽くまで熊徹に対してのみしか確認されず、それ以外の他者には比較的穏和で礼儀正しく謙虚に振舞っている。恐らくこちらが彼の本来の性格である節があり、粗暴さは幼少時のトラウマによって生じた後天的な側面であると考えられ、熊徹にしかそれを出さないのもそのためであろう。この温厚な一面は実父を彷彿とさせる他、高い能力を持ちながらも、それを誇示せず周囲には物腰柔らかに接するその姿勢は、関係上はライバルではあるものの奇しくも猪王山に共通する。


また不良に因縁をつけられ袋叩きに遭っていたを、彼女がそれまで一切面識がなかったにもかかわらずその不良たちを成敗して扶けるなど、正義感が強い一面もある。


卯月以外の宗師たちの「己の強さ」に関する話を熱心に聞いたり、自らの知らない分野を積極的に知ろうとするなど、好奇心、向上心も高い。青年に成長してからは年相応に自尊心が芽生えたことで自主的な行動が目立ち、人間界を知る第一人者である楓と出会うと、彼女を介して人間界の知識を博し自主性を確立させていく。しかしそれが裏目に出て熊徹と実父との間に不和が生じてしまい、自分の在り方に思い悩むことになる。


潜在能力や物事の呑み込みも早く、熊徹の動作を真似することで武芸を身に付けたり(ただし彼の武術を継承したというよりは、熊徹のものを参考に独自の武術を確立したと見られる)、青年期では小3程度の学力から数ヶ月の勉強で大学受験に挑戦出来るほどの急成長ぶりを見せた。最も、9歳の時点で誰の助けも借りずに数日間屋外で一人放浪生活をしていたことから、元来ずば抜けた才覚の持ち主だったのかも知れない。


好物はハム入りオムレツで、幼少期は生卵が苦手だったが、青年に成長した際には卵かけご飯を難なく食べるシーンがあることから克服したと思われる。


バケモノと人間という対極にある存在同士の元で育てられるという特殊な境遇にあるが、双方に於いて己の存在意義を見出しており、どちらに対してもそれなりの慕情を抱いている。現に楓に名前を問われた際は本名にして人間としての名である「蓮」と答えており、このことからバケモノ界で長く暮らして尚も内心では人間界に対する想いを多かれ少なかれ抱いていた可能性がある。また決死の闘いに出向く際には、その見送りに来た多々良と百秋坊に対して自身を成長を今まで見守ってくれたことに感謝の念を述べた他、最終的に渋天街を旅立ち人間界で暮らすことになった際は、とある事情から自身と一体化した熊徹を一切疎ましく思っておらず、彼を自らの「心の剣」として受け入れ、共に過ごすことを決意している。


総括すると、自身をバケモノ、人間、いずれかの概念に一方的に括り付けようとせず、あくまでも「自分は自分」として自らの意志で考え行動し、あらゆる方面から己の可能性を探究しつつも、それまで世話になった者たちに対しての感謝を忘れない姿勢が、渋天街で9年間熊徹と切磋琢磨した末に至った人間性である。


彼が人間界を離れバケモノ界に住み着いた動機は「逃げ」だったが、バケモノ界を離れ人間界に住む際は「旅立ち」として対照的に描写されており、これもまた九太/蓮の成長ぶりを表していると言えよう。


そうしたところが、同じ境遇を持ちながらも、それを恥じ、恐れるあまり見栄と体面に縋り付き、それが喪失した途端無意味な凶行を犯した挙句、遂には恐るべき怪物と化した者と対照的であると言える。


容姿

バケモノの子【蓮】【一郎彦】

物語開始時の服装は、薄汚れた半袖シャツに緑色のハーフパンツと、如何にも孤児や浮浪者を思わせる形であった。


武芸修行を始めてからは、バケモノ界の慣習に倣い、襟が肩の手前まで開いた七分袖Tシャツに、股下の低いサルエルパンツ(色は幼少期はミントグリーン、青年期は紺鼠色)、腰には赤帯を巻いており、パーカーを羽織ることもある。他地域の宗師たちに謁見する旅の際には黄色いポンチョのような羽織を着ていた。


青年に成長し楓との交流で人間界に傾倒してからは、熊徹からの親離れもあって半袖の白Tシャツ、紺色のジーンズ、スニーカーというシンプルながらも人間界に準じた服装をするようにもなった。


髪型は一貫して癖っ毛気味のミディアムヘアであり、劇中を通して髪型を変えた様子は一切ない。尚、両親は二人ともストレートヘアである。髪色はやや茶髪であり、これは両親と共通している。他二人の人間キャラクターはいずれも黒髪であることから、この二者とは対比された色合いである。


正確な身長は他のキャラクターと同じく幼少時、青年時共に不明。9歳の時点では、一郎彦や二郎丸といった同年代の子供らと同程度で、渋天街に住んで1年前後経つと多々良の身長を追い抜いている。17歳では、百秋坊や実父、二郎丸や楓を虐めていた同年代の不良男子高校生らと比較するとかなり長身にまで成長した(アートブックでの登場キャラクターたちの身長対比図では、この頃の身長は180cm程度と記載されているが、制作スタッフ曰く飽くまで目安であるという)。ただし小説版の多々良の台詞曰く、青年時の一郎彦よりは若干低いらしい。


熊徹との関係性

親子の特訓

熊徹はバケモノという、本来人間とは根本的に思想や文化等が全く異なる故に人間とは分かり合えぬ存在であるが、彼が自分と同じ境遇にある「独りぼっち」で、尚且つお互い住む世界の常識に影響されていない質であるために、対極に位置する種族同士ながら何処か相性が良く気持ちが通じ合い、張り合いを繰り広げながらも師弟、果ては親子として強い信頼関係を育んでいく。


熊徹をあしらえる程の足捌きを身に付けてからは逆に彼の指導を行うようにもなり、そうして互いに切磋琢磨し合いながら実力をつけ共に成長を遂げていき、その様を見た卯月は「どちらが師匠だか分からん」と評された。


言い争いをしながらも常日頃から接しあっているために、親子の距離が離れてしまっている者たちからはその関係性を羨望されている。


一方で、熊徹は九太に依存しがちなところがあるために彼が青年に成長し自律をする年頃になってなおも子離れが出来なかったため、九太の自主行動を許そうとせず、それが原因となり二人の関係性に亀裂が生じてしまった。


しかしそれでもなお熊徹に対する慕情を棄てることはなく、楓の慰めと励ましの言葉に押されたこともあって彼のその心情と向き合うことを決意し、熊徹もそれに応えるかの如く九太の自尊感情を受け入れ、それによって関係を修復した末に多大な功績を残すこととなった。


関連作品の主人公たちとの比較

前後の作品の主人公らと概ね共通していることは、自らの意思で考え行動し、苦難を目の前にしても臆することはなく立ち向かい、出逢った人々らとの交流を通して成長していく様であろう。


劇中での立ち回りとしては、周囲に影響を与えることが多い傾向があることから、特に『時をかける少女』の紺野真琴の色が強い。


おおかみこどもの雨と雪』のに関しては、彼女の場合親目線故に子供との向き合い方に悩んでいることから九太とは対照的な立場ではあるが、上記の通り逆境に負けないタフネスさと、自らの意思で考え行動する様は共通していると言えよう。ついでに花の担当CVは、九太の幼少時の中の人だったりする。


サマーウォーズ』の小磯健二や『未来のミライ』のくんちゃんとは、前者は計算という特技こそあれ何処か自分に自信が持てず周囲にリードされっぱなしなヘタレの印象が強く、後者は我がままで気に入らないことがあると泣き喚き周囲に当たり散らす正に年相応の駄々っ子であることから、九太とは最も相対したキャラクター性をしている。しかし一方、苦楽を共にした面々に後押しされながら自らの何にも負けない武器で強大な敵を打ち倒したことや、他者から様々なことを教えられ意識を改めるなどといった共通点もある。特に健二とは、本質が温厚という性格面に於いて共通した部分がある。


主人公以外では、周囲をリードするキャラクター性は篠原夏希に共通する他、元々はひ弱な子供だったが武道を嗜んだのを機に強く成長したという境遇は池沢佳主馬、成長の末に親元を離れ自分が生きると決めた世界で生きていくと決断したラストはに通ずると言える。


来歴

幼少期

幼い頃、都心に複数の不動産を所有する母親の実家である名家の人間たちによって両親を強引に離婚させられ、以降は母親と二人で暮らしていたが、9歳のときにその母親が交通事故によって他界。その後は母親の実家に引き取られることになるも、彼らの余りに冷淡かつ無神経な態度や、自分が苦境に立たされているにも拘らず一向に自分の前に現れようとしない父親に反発し出奔。その際に持ち出した数枚の万札と小銭を頼りに食い繋ぎながら以降渋谷を彷徨う放浪児となる。


その最中に謎の生き物・チコと出会い、行動をともにすることにしたチコと一緒に高架下の駐輪場で夜を明かそうとしたところ、謎の二人組が通りかかりそのうちの一人である大柄で屈強な男が彼の前に立ち止まる。そしてその男から「おめぇ…俺と一緒に来るか?」と声をかけられ、それが気になり彼らの後を付いて行った結果、人間とは対を成す存在であるバケモノの街・『渋天街』へ迷い込んでしまう。


そしてのバケモノ3人に捕まってしまい彼らから蛮行を受けそうになるが、のバケモノである僧侶の百秋坊の介入によって事なきを得た直後、素顔を露わにした例の二人組の男、熊のバケモノ・熊徹とのバケモノ・多々良と再会。そして熊徹から彼の自宅(熊徹庵)を案内され、彼から名前を尋ねられるも、個人情報を理由に教えるのを渋った結果、その時の年齢(9歳)に因んで新たに『九太』と名付けられる。


その翌日の朝、熊徹から朝食に誘われるも苦手な食材を食べるよう強要されたことから言い争いとなり、その場から逃走する。しかし広場で彼を弟子に取るか否かで熊徹が同じ次期宗師候補の一人・猪王山と対決になると、周囲が熊徹を応援しない様子を見て彼が自分と同じ「一人ぼっち」であることを悟る。熊徹はその対決に敗北するも、自らと同じ境遇を持つ彼にシンパシーを持ち、弟子入りを決意。こうして彼はバケモノの子・「九太」として生まれ変わり、渋天街での新たな生活が始まった。


しかし熊徹は師事や指導の経験が皆無であるために、その教えは非常に大雑把かつ漠然としたものであり、また商店街に買い出しに行った際に彼が猪王山と比べると余りに威厳や品格がなさすぎるのを悟ったり、さらに猪王山の息子である一郎彦二郎丸からは弱い者呼ばわりされるなど、当初は周囲から全く期待の念を持たれていなかった。


しかし宗師の手引きによって強さとは何かを知るための渋天街以外の各地の宗師を訪ねる旅によって強さは人それぞれで違うことを見出し、帰省後には母親(の幻影)から「なりきる、なったつもりで」というアドバイスを受け、熊徹の動作を日常的に観察し真似をし続けた結果、足捌き程度なら熊徹をあしらえる程の身のこなしが身に付く。さらにその後の修行によって剣技や格闘技も習得し、街の子供達と互角に渡り合えるほどの実力が身に付く。それを機に二郎丸を始めとした子供達と親しくなり、やがて彼と熊徹の驚異的な成長ぶりは周囲を驚かせ、次第に期待の目を向けられるようになる。


かくして九太は「熊徹の一番弟子」として渋天街で名の知れた存在となり、また最初は次期宗師として全く期待されていなかった熊徹も、九太と共に成長することによって猪王山と肩を並べ、彼を次期宗師に支持する声も次第に現れ始めた。


青年期

熊徹と共に修行すること8年、すっかり真っ当な次期宗師候補者の一人として世間から期待されるようになっていた熊徹は猪王山に匹敵するほどの弟子を抱えるようになり、彼の一番弟子である九太も渋天街のバケモノの間では憧れの的となっていた。


しかし成長するに従って自尊心が芽生え、「自分の稽古は自分で決める」と熊徹に自主トレを希望するも、未だに九太を半端者扱いする彼はそれを全く聞き入れなかった。


そんなある日、いつものように些細な張り合いから熊徹と追いかけっこになった際に、逃げ込んだ路地裏を通じて意図せずして8年ぶりに人間界の街・渋谷に舞い戻る。


そしてふと立ち寄った図書館で手に取った白鯨を読んでいた際、「鯨(くじら)」という文字の読み方が分からず、偶然隣にいた進学校に通う自分と同い年の女子高生・にそれを尋ねたことで彼女と出会う。


その後、楓を図書館でのマナーの悪さを指摘されたことを逆恨みしリンチしようとした不良達から救い出したことを機に彼女から慕われるようになり、楓に自身が小3以降一切教養を受けていないことを打ち明けると、彼女から勉強を教わることを提案され、それに同意する。その際自らの名前を名乗ることになり、少々悩んだのち本名である「」を名乗ったことから、彼女からは「蓮くん」と呼ばれるようになる。


以降、渋天街で武芸修行に励む傍、熊徹には内緒にしながら渋谷で楓に勉強を教わるという生活を送る。結果蓮は自分の知らない分野を学びたいという好奇心や持ち前の物分かりの良さ、楓の卓越した指導力によって楓が驚くほど短期間で着々と学力を身につけていく。これによって人間界で初めて触れた本である「白鯨」の内容を理解するうちに、鯨を自らの心の闇を表した存在として認識する様になる


やがて学力が年相応のレベルにまで達した際、楓から大学進学を勧められ、そのために新たな住民票が必要になり、それを取得する過程でそれまで行方知れずであった父親の居場所を知る。そしてその住所を辿って実父の住むマンションの付近を訪れた結果、念願の実父との再会を果たす。


しかしそれによって今後人間界とバケモノ界、どちらで暮らせばよいか悩むことになり、それを熊徹に相談しに熊徹庵へ帰宅するも、一向に自分を一人前と認めようとしない彼に失望してしまい、一方的に熊徹に別れを告げて渋天街を出奔してしまう。


その後、人間界に戻ると父親と鉢合わせ、彼から「お世話になった人」に挨拶をして二人で暮らすことを持ち掛けられるも、それまでの自身の身の上を一切知らなかったにも関わらず一方的に話を切り出された上、自身の心境を決め付けられたと感じたためにこれを拒絶してしまう。


結果として不本意のまま二人の父と決別し行き場を失ってしまった彼。ふと渋谷の繁華街に立ち寄った際、幼少期に見かけた自身の不穏な影を目にし、それが自らの後ろに回り込むと自分の胸に巨大な得体の知れない”穴”が空いているのを知り、恐怖に駆られ一目散にその場から逃走する。


その後、事前に図書館で待ち合わせしていた楓と落ち合うと、彼女に「俺は一体、何なんだ?」と威圧しながら詰め寄る。自らが何者なのか、どこで生きればいいのか、そして今後どうすればいいのか完全に分からなくなってしまった彼は情緒不安定となり、その鬱憤を楓にぶつけてしまうも、彼女の意を決した渾身の平手打ちと慰めによって平常心を取り戻す。そして楓から励ましとして右の手首に付けていた御守りを手渡されると、改めて熊徹と話を付けるべく渋天街へ向かう。


そして渋天街へ戻ると、街の様子がいつもより華やかで慌ただしくなっており、偶然出くわした二郎丸から自宅に招かれたのち、漸く宗師が神への転生を決意しもうじき次期宗師を正式に決定するための闘技試合が行われることを聞かされる。唐突な報せに動揺するも、二郎丸から「どちらになってもおいら達は友達だ」と激励され、彼と握手を交わす。その時、一郎彦が九太の見送りに表れ、彼に案内されるまま玄関近くの庭に着くと、突然一郎彦が豹変し彼から暴行を受け、去り際に一郎彦の胸から自身と同じ不審な”穴”が空いているのを目にする。


その後、熊徹を見守るために密かに試合会場である闘技場へ訪れるも、九太と喧嘩別れしたことに対する動揺から自暴自棄になっていた熊徹は、試合開始早々から無茶な攻撃を繰り返した結果、形勢は徐々に猪王山に傾いていき遂にはダウンを奪われてしまう。それを見て居ても立ってもいられなくなった九太は試合に乱入して熊徹を喝破し、それによって戦意を取り戻した熊徹は猪王山に怒涛のラッシュを仕掛ける。それに合わせるかのように九太は熊徹に掛け声をかけ続け、遂に隙を突いた熊徹の渾身の右ストレートが猪王山の顔面に直撃。そのまま猪王山は倒れ立ち上がらず、勝負は熊徹の勝利。かくして、次期宗師は熊徹に決まったのであった。


試合終了後、熊徹は一目散に九太の元に駆け寄り喜びのハイタッチを交わし、周囲はその光景を暖かく見つめる。


しかしその時、試合の結果に納得のいかなかった一郎彦が、謎の念動力を用いて鞘の抜かれた猪王山の剣を熊徹に突き刺し重傷を負わせ昏倒させてしまう。それによって激しく激昂した九太は、あの不穏な”穴”を再び解放させ自らも念動力によって自身の剣の鞘を引き抜き、そのまま一郎彦目掛けて剣を突進させる。だが、その時チコが自身の頭に噛み付きふと楓の御守りが目に入ったことによって間一髪のところで我に帰り穴が収束し、剣も一郎彦に突き刺さる寸前で静止したため彼を殺さずに済む。殺し合いという最悪の事態は免れたものの、激しい疲労に駆られた九太はその場に倒れ込んでしまい、一郎彦も九太に対する怨嗟の念を唱えながらその場から姿を消してしまった。


その後、瀕死の熊徹と共に身柄を宗師庵に移されそこで目を覚ますと、虫の息となっていた熊徹を目にし激しい動揺と哀しみの念に駆られる。そして猪王山の口から、一郎彦が自分と同じ”バケモノに育てられた人間の子供”であることと、自身と一郎彦に宿っていた不穏な力の正体が人間の”闇”から生み出されるものということを知ると、彼を"闇"から助けられるのは同じくバケモノに育てられた人間である自分しかいないと悟り、”闇”に侵された一郎彦と闘うことを決心。


出立の際、一郎彦に復讐すると思い込んだ百秋坊から叱責されるも、自身の心情を確りと多々良と百秋坊に伝えると、それまでの感謝の念を二人に述べ、それに感激した多々良に激励されながらその場を後にした。


その後、闘いに備えるために楓に白鯨を預けようと渋谷に赴き、待ち合わせ場所であるセンター街で彼女と落ち合うと、白鯨を手渡したのち決着を付けなければならない相手がいること、そして一緒に勉強できて嬉しかったとを伝え、楓にも感謝の念を述べる。


するとその時、自身を追って人間界に襲来した一郎彦と期せずして対峙しその場で彼と交戦になる。一郎彦の凄まじい狂気に翻弄されつつも一時は善戦するが、”闇”の力によって自らの身体を増強させた彼のとてつもないパワーに押され止むなくその場から撤退する。さらに一郎彦は交戦中の際に楓が落とした白鯨を読んだことによって巨大なに姿を変え、各所を破壊しながら街中を暴走する。


その後、楓に誘導される形で逃げ込んだ地下鉄の車内で一郎彦への対抗策を考えていた際、楓から蓮と一緒にいると勇気が出ること、そして自分たちは一人で戦っているわけではないことを打ち明けられると、自らがかつてと違い一人ぼっちではないことを悟り、改めて一郎彦と闘う決意を頑として固める。


やがて地下鉄を降り、対決の場所を例の闘技場と似ていた代々木体育館に定めると、再び二人の前に一郎彦が現れる。そして一郎彦が彼を叱責した楓を命の危機に晒したことから、覚悟を決め一郎彦の前に立つ。そして自らの"穴”を解放させると、そこに一郎彦を取り込み自らの剣で突き刺すという作戦を実行。それは言うまでもなく、自らの命を犠牲にした自殺行為の作戦であった。


しかしその時、目の前に突然炎を滾らせた大太刀が現れる。それは宗師の特権を利用して付喪神転生した熊徹であった。そして熊徹は、九太の”穴”を埋めるかの如く彼の胸の中へと吸い込まれていく。


するとふと頭の中で熊徹と過ごした日々がよぎり、もう二度と彼と一緒に過ごせないと思い込み号泣する。だがその時、熊徹が胸の中から「何泣いてんだバカ野郎!メソメソしてる奴は嫌いなんだよ!!!」と諭され、それに対し九太も「うるせぇ!泣いてねぇよ!!!」と反論するという、いつもと変わらぬ茶番をその場で繰り広げる。


熊徹と一体化した九太は一郎彦と決着を付けるべく、多々良、百秋坊、楓、チコなど、それまで自身を支えてきた皆が見つめる中態勢を立て直し、剣を構える。そして再び一郎彦が向かってくると、鯨が出現する度に彼本人が姿を現わすことを知り、タイミング良く斬りかかれば鯨を倒すことが出来ると悟りその時を伺う。


そしてその時が来ると、一郎彦の”闇”に狙いを定め熊徹と共に剣を抜き彼目掛けて突進。そのまま一郎彦の闇を斬り裂くと、鯨は悲鳴の咆哮を挙げながら消滅し、見事一郎彦を”闇”から救ったのであった。同時にこれは九太が楓との交流を通じて抱いた「鯨」という自身にとっての心の闇の象徴を倒したことによって、彼が自らの闇を完全に乗り越えたことを意味する


直後九太は気を失っている一郎彦に、自分たちはバケモノにはなれず、自らを呪い胸の闇に藻掻くひ弱な人間に過ぎないが、それでも共にバケモノに育てられた「バケモノの子」であることを諭し、楓の御守りを彼の右手首に付けた。


夜が明けると、熊徹が宿った胸に手を当てながら何気ない会話をした後に、「俺のやることを、そこで黙って見てろ」と彼に告げ、熊徹はそれに笑って応えた。


渋天街へ帰ると、街ではバケモノ界を救った英雄となった九太を祝う祝宴が催されていた。住民たちから盛大な歓迎を受けると、多々良の計らいによって渋天街に訪れ祝宴会に参加していた楓から白鯨を返されたのち、高認の願書を提示され受験するか否かを問われる。バケモノ界での目標を達成した彼は、新たな目標を目指すためにそれに「受ける」と答え、その回答に喜んだ楓と手を握り合ったのち、皆と祝宴会を楽しむのであった。


その後九太は渋天街を去り、剣を手放して人間界で父親と共に暮らし受験勉強に明け暮れる日々を送るのであった。しかし彼は剣がなくとも胸の中に"熊徹"という何よりも強い剣を携えているのである。そのため彼が、何があっても挫けることなく成し遂げ乗り越えられる最強の剣士であることは言うまでもない。


関連イラスト

幼少期

きゅうきゅうたとチコ


青年期

九太バケモノの子 九太


余談

名前の意味

「九太」という名前は一見すると熊徹が思い付きで名付けたように思えるが、その二つの漢字の意味を伺うとその意味が見えてくる。


まず「九」は、その成り立ちとして一の位の最後の数字にあたることから、数が極まった様を表した象形文字という説がある。また熊徹が転生した神である付喪神は「九十九神」とも記すことから、これにも掛けていると思われる。


そして「太」は「泰」の字を省略した字であり、雄大さや崇高さ、誇り高さなどを意味する際に使用され、その一例が太陽である。


これに基づき、「九」を「極まる」、「剣(付喪神と化した熊徹が剣の姿をしていたことを踏んで)」、「太」を「太陽」、「誇り高い」とすると、「九太」は左から読むと「極まりし太陽」、右から読むと「誇り高き剣」、若しくは「太陽の剣」という解釈が出来る。


劇中の彼は正に「太陽」の如く出会った全ての人々の闇を照らして導いた「誇り高さ」を示し、自身もまた己の闇にその者達との交流によって得た「心の剣」で打ち勝ったことから、正に「九太」という名は彼を冠するのに相応しいと言えよう。


一方もう一つの名である「蓮」は、言うまでもなく実在する花であるハスの花が由来である。


この花は泥水の上に咲く習性があることから、仏教を象徴とする花であり、様々な仏教用語で活用されており、その一つに「一蓮托生」がある。意味は、良い行いをした者は極楽浄土に往生して、同じ蓮の花の上に身を託し生まれ変わること。そこから転じて、行動、運命をともにすること。即ち九太と熊徹、そして二人を取り巻いた者たちの関係性は正に「一蓮托生」という言葉に当てはまり、「蓮」という名前はそのメタファーと言える


花言葉はいくつかあるが、本作に於いて当てはまるのは「雄弁」、「清らかな心」、「離れゆく愛」。「雄弁」、「清らかな心」は言うまでもなく彼の「心の剣」、「離れゆく愛」は彼が一度人間界を去りバケモノの元で暮らし、暫くすると自尊心故からバケモノの元を離れ再び人間界に居着いたことを指していると考えられる。


名は体を表す宜しく、彼の二つの名はそれぞれで誇り高く、そして清き剣士へと大成した様を表していると言えよう。


異能について

九太は最終盤での熊徹との融合で本作の善や正義の力と言える「心の剣」を会得し闇の怪物である「鯨」を打ち倒したが、同時に彼は悪の力である「闇」の異能力も宿しているという善悪両有の能力を併せ持った存在でもある。この闇の異能は如何にして発現するかは劇中では語られていないが、描写から察するに九太は元から宿していた可能性がある。


尚、彼の母方の親戚たちは表向きは御家存続のために蓮を引き取ろうとしていたが、上記の闇の力を宿していたという事情を鑑みると実は彼の闇の異能を我が物にしようと目論んでいた可能性もある。これを事実とした場合、彼らは闇の異能で他者を威圧するなどして繁栄した一族といえるだろう。


また彼らは蓮を引き取ろうとした際に、伯父とされる人物は彼に向かって「交通事故だから仕方ない」という、蓮の母の死を然も当然のように言い放っていることから、彼女は事故と見せかけてこいつらに抹殺された可能性もある。その手法として闇の異能力を用いたのであれば、当然ながら確たる証拠が現れる筈もなく、その所業が罪に問われることはないため、蓮を引き取るのも容易であっただろう。


更に一郎彦の実の親が彼を手放した理由も蓮の母方の親戚たちが彼を狙っていた可能性がある。故に一郎彦が遺棄されたのは彼らの脅威から守るためであったのだろう。


しかしながら蓮は熊徹と一体化したことで、一郎彦はその二人によって祓われたことでそれぞれ実質闇は消失してしまったことから、親戚たちは彼らを狙うことはもうないばかりか家系が断絶する可能性もある。


最もこれらは飽くまで憶測に過ぎないことを留意されたし。


関連タグ

バケモノの子 熊徹 多々良(バケモノの子) 百秋坊 楓(バケモノの子) 一郎彦 二郎丸


心の剣


熊九九一蓮楓…熊徹、一郎彦、楓とのコンビ兼カップリングタグ。


類似性のあるキャラクター

サン(もののけ姫)…獣に育てられた人間という境遇が共通したキャラクター。


荻野千尋…異世界に迷い込み、そこで様々な出会いや経験を経て成長していったキャラクター繋がり。異世界に於ける名があるという点でも共通する。


ハリー・ポッター両親を失い、人間界とは対を成す異世界で様々な出会いや経験を経て成長していくキャラクター繋がり。


竈門炭治郎家族を失ったことで武の道へと歩み出したキャラクター繋がり。に対する慈悲深さや、後に会得した能力が太陽をイメージしていることも共通する。


アナキン・スカイウォーカールーク・スカイウォーカーレイ(STARWARS)カイロ・レン…物語を通じて、自らの光と闇に葛藤する点が共通する。内二人は完全に闇堕ちするも、それとは対を成した人物の存在によって最終的に光明面へと帰還出来た


蒼月潮人外のバケモノとふとしたことで出逢い、彼と信頼関係を築いて闘うキャラクター繋がり。


ジョン・コナー…同じく人外の怪物と出逢い、信頼関係を築いて強大なを倒した人物繋がり。

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