エイトマン
えいとまん
走れ エイトマン 弾丸よりも早く
振るえ その腕を 鋼鉄の腕を
平井和正原作、桑田次郎作画のSFバトルアクション漫画『8マン』の主人公。
原作では「8マン」だが、テレビアニメ化の際、大人の事情で「エイトマン」となった。
鉄腕アトムや鉄人28号に並ぶ、昭和30年代を代表するスーパーロボットである。『8マン』は極めてシリアスな物語で、なおかつ当時最先端のSF技術を取り入れた作品として知られており、日本で最初にティーン向けアニメ(今で言う月刊少年マガジンあたりに載ってる漫画のアニメ化みたいな感じ)として放送された作品としても知られている。
また、本来は八郎は死なず、サイボーグとして生き返る予定だったが、当時の日本では「サイボーグ」「改造人間」と言った言葉が浸透していなかったため、完全な鋼鉄の体、機械仕掛けの頭脳のロボットとして生き返らざるを得なかったと後に平井は述介している。サイボーグという言葉が市民権を得るのは、「8マン」が連載開始されてから1年後、後に同誌にも連載されることになる漫画『サイボーグ009』にて、エイトマンと同じく超スピードを持った正義の使者・島村ジョーが登場するまで待たなければならなかった。
警視庁の敏腕刑事・東八郎(某芸能人に非ず)は凶悪殺人犯「デンデン虫」の捜査中、逆襲にかかり殉職。しかし谷博士の手によりその記憶と意志が吸い出され、スーパーロボットの肉体に流し込まれる形で復活した。彼は警視庁捜査一課の「8番目の刑事」エイトマンとして、難事件や怪人に立ち向かう!
警視庁捜査一課の刑事は全部で49人。7人ずつ7つの班を作っている。
わたしはそのどれにも属さない8番目の刑事、エイトマンである!
八郎は表向きは私立探偵事務所の所長をやっているが、ひとたび事件が起こると警視庁に駆けつけ、難事件の解決に挑む。
OPにも高らかに謳われたとおりエイトマンの最大の武器はその『速さ』であり、ひとたび駆け出せば時速3000㎞(マッハ2.4!)に達し、人間の1000倍の加速度でたちまち音速を超える。外界からの刺激は30万km/sの伝達速度で瞬時に反応(体中を光の速さで確かな予感が駆け巡るのである)し、ミサイルや弾丸なども素手で受け止めて投げ返してしまうのだ。断言してもいいが、こういう「銃なんて遅いぜ」というスピード自慢をやった漫画は本作が日本初である。爆発に巻き込まれても、その爆風より速く走って無傷で生還するほどである。
エイトマンは走る際に地面と水平になるほどに前傾姿勢を取り走るという画期的な走り方をしており、白土三平の「忍者走り」、横山光輝の「十傑集走り」の始祖とも言える。
耳は超音波を、目は赤外線を感知することが可能であり、透視能力を持つ。また、顔や関節は可変型の部品なため、変装も大得意。顔の人工皮膚を動かし、関節位置を移動し、超加速して一瞬で女の服に着替えれば女性にもなってしまう。
パワーも凄まじく、車くらいなら易々持ち上げて投げ捨ててしまう。出力は10万kwで、これは馬力に換算するとあの鉄腕アトムをも凌駕する13万6千馬力に当たる。
ボディの骨格部分は、ハイマンガン・スチール。
定期的にメンテナンスを行う谷博士と相談しながら「エイトマンナイフ」等の追加武器を装備した事も多い。
追加武装には、他に「光線兵器レーザー(その名の通り、レーザー光線砲)」や、「スパイボール(搭載する事で超振動を起こし、透明化するのみならず、振動で敵ロボットの分子構造も破壊する兵器)」などが存在する。しかしそれらはあくまでも、対処した事件に対する手段として一時的に搭載しただけであり、事件解決後にはそれらはエイトマン自身の希望で除去されている。
これは、「武器を多数満載させる事で、自分自身をおそろしい殺人ロボットにしたくない」という、エイトマン=東八郎自身の希望でもある。
ボディ自体の制作者は、谷博士本人。
本来は、谷博士はアメリカ(アニメ版では「アマルコ共和国」)の研究所にて開発したアンドロイドであった。しかし、兵器に転用される事を拒み、日本に持ち込まれた。
なお、後年に原作者の平井和正氏によると、谷博士がアメリカのNASAにて開発したものらしい。更には、超古代文明に由来したオーバーテクノロジーも用いられているとの事。
体内に原子炉(!!!)を内蔵しているため、定期的な冷却が必要なのが弱点。胸の「8」の数字部分がハッチとなり、開くと内部に制御装置が出てくる。
メインの電子頭脳は、火炎や高圧電流など、高熱に弱い。
長時間戦闘になると電子頭脳が過熱して機能低下しまうので、立ち止まって煙草型冷却剤「強加剤」を吸引しなければならない。電子頭脳の過熱は、加速や戦闘などの稼働による発熱以外にも、外的要因、例えば敵犯罪者からの火炎放射器の直撃など、熱によるダメージでも同様に発生し、そのたびに機能停止する事も多かった。
そうなった際に、強加剤を一服する事で電子頭脳が冷却されると、機能が回復。冷静に作戦を考える事が出来るようになる。
つまり立ち止まって煙草を一服すると、東八郎探偵の経験による推理力が冴えるのである。
この強加剤は、人間にとってはひどくまずい煙草であり、吸えたものではない。また、エイトマン以外の別のアンドロイドにも有効で、機能停止した敵アンドロイドに強加剤を吸わせて機能回復させ、情報を得るというシチュエーションもあった。
アニメでは規制が入り水の中に顔面を突っ込むなどといった即物的な方法を取ってあの手この手で電子頭脳のオーバーヒートを回避していた。
言うまでもなく、全館禁煙の劇場で事件に遭遇した時には、目の前の犯人を追う事も出来ず倒れた事もある。
なお、メインの電子頭脳が機能停止、または機能不全に陥った時の為、両肩部に予備の電子頭脳を搭載している。しかしこちらの電子頭脳では、本来の機能を引き出す事は出来ないため、あくまでも緊急時専用である。
加速時の会話は、搭載された「フォノン・メーザー」を用いて行っている。
また、電子頭脳からは強力な電波を発信し、スーパーロボット〇〇五を遠隔操作した事もある。
漫画『8マン』
原作である漫画作品。
1963年から「週刊少年マガジン」にて連載され看板作品となったが、桑田が拳銃不法所持でエイトマンの職場のお世話になり、強制的に打ち切り。完結したのはなんと1990年になってからだった。この際、打ち切りとなった「魔人コズマ」編最終回は、桑田のアシスタントの楠高治と小畑しゅんじが代筆し、紙面に掲載された。そのため、長らく単行本には未収録だった(下記余談も参照)。
アニメ『エイトマン』
1963年11月7日~1964年12月24日に、TBS系列局(に加えて日本テレビ系列局のごく一部、放送当時はアメリカの放送局扱いだった琉球放送)にて放送。
番組のチャンネルが「8ch(フジテレビ)」ではなく「6ch(TBS)」だったため、混乱を避けるため「エイトマン」とカタカナ表記になる。走るエイトマンが新幹線を追い抜くというオープニングが時代を感じさせる。
「光る海、光る大空、光る大地」で始まる印象的なテーマソングが有名。桑野信義の父(桑野信勝)がトランペットで演奏に参加している。
実写ドラマ『帰ってきた8マン 2代目は竹下通りのハウスマヌカン』
1986年にフジテレビほかにて放送されたドラマ版。雨傘番組として企画されたため、クロスネットのため元から放送出来なかった局以外でも放送を断念した局が少なからずあった。
実写映画『すべての寂しい夜のために』
原作の1エピソード「決闘」の映画化。
制作会社、およびコミックス復刻版を出版した「リム出版」が倒産した原因。下記余談も参照。
OVA『エイトマンAFTER』
1993年作のOVA。
アニメ「エイトマン」ではなく原作の続編として作られ、非常にシリアスかつハードな作品となっている。
漫画『8マン インフィニティ』
2005年~2007年にかけて「マガジンZ」内で連載されていた、1990年の最終回の先の未来を描いた作品。シナリオは超重度の平井フリークとして超有名な七月鏡一が、平井の指名により担当した。登場キャラやその名前は「8マン」のみならず、「ウルフガイ」「エリート」「デスハンター」「幻魔大戦」といった、平井和正原作の作品の登場人物をモデルにしたものであり、「スーパーロボット大戦」ならぬ「スーパー平井&桑田大戦」だと七月は公言している。「第1部・完」の状態から早15年近く経過しているのだが、一向に続きが出ない。
幻のカラーリメイク版TVアニメ
2003年のC3で発表され、電通代理店・TBS系で放送される予定だったが、放送枠の確保が出来ずお蔵入りとなる。
北米版『Tobor the 8th Man』
エイトマンのアニメは北米に輸出され、「Tobor the 8th Man」のタイトルで1965年に放送された。
基本的な設定は日本版と同じだが、東八郎は「ピーター・ブレディ」というアメリカ人に変更されている。また、エイトマンの名称「Tobor」は、「Robot=ロボット」の逆綴りである。
SF小説『サイボーグ・ブルース』
原作者・平井和正は、1968~69年にかけて早川書房「SFマガジン」に「サイボーグ・ブルース」という小説を連載していた。
近未来に、サイボーグとして蘇った黒人警察官アーネスト・ライトの活躍を描いたもので、本作は当初、エイトマンの小説として構想されていた。
「殉職した警察官がサイボーグ化」「超スピードで加速し疾走」など、エイトマンと同様の能力を持つが、舞台が近未来のアメリカで、「性」「肉体」に関する言及がある、他に同様のサイボーグ特務官の同僚が複数存在する、アーネストも組織の一員である、警察組織内の腐敗も描かれているなど、相違点も多い。
(また、アーネストは肉体を直接改造され、頭脳は生身の人間のままであるので、エイトマンよりもケンに近い)
内容は、子供向け・商業的要素といったものを廃しているため、エイトマン以上にハードボイルド色が強い。SF作家・星新一氏によると、同作は「作者の平井和正は『8マンへの鎮魂歌』として本作を執筆した」とのこと。
ちなみに上記「8マン インフィニティ」には、黒人少年アーネスト・ライトが登場しているが、こちらは原典と異なりマシーナリー(オリジナルの記憶と自我をコピーしたアンドロイド)となっている。
漫画『8マンVSサイボーグ009』
秋田書店のチャンピオンREDにて2020年9月号より連載されている石ノ森章太郎氏の代表作『サイボーグ009』とのクロスオーバー作品。
掲載はわりと不定期気味。
009達サイボーグ戦士の宿敵であるブラックゴーストに谷博士を人質に取られたエイトマンが、009達に立ちはだかる。
連載前の予告で『二大スピードスター夢の激突!』というキャッチコピーが挙げられていた。
令和5年(2023年)7月20日、単行本上下巻が同時発売された。
- テーマソングを担当した歌手の克美しげるは1976年に殺人事件を起こし、かつてのエイトマンファンたちに衝撃を与えた。克美は仮出所後、覚醒剤不法所持で再逮捕されている。桑田の逮捕とともに、エイトマンが「呪われた作品」などと揶揄される大きな要因。
- 1989年から90年(平成元年~2年)にかけて、「リム出版」よりエイトマン完全版全7巻のコミックが発売。幻となっていた「魔人コズマ」編も収録されている。収録されたコズマ編の最終回は、桑田自身の筆によるもので、連載版のそれとは異なる内容・結末となっている(なお、代筆された連載版最終回は未収録)。この完全版コミックは50万部以上売れ、リム出版社はこの勢いに乗るべく、エイトマンのリバイバルブームを仕掛けた。
- 実写版「すべての寂しい夜のために」の製作、東京ドームでその試写会およびトークショーのイベント開催(映画上映の際には、映画の映像に合わせ光線や爆発を出すなどの演出を行った)、OVAの製作、それらのノベライズや関連書籍などを出版するが、そのことごとくは商業的に失敗。実写映画も当然ながら内容も不評、採算が取れないという結果に。この公開後、リム出版は経営破綻し、倒産の憂き目に遭っている。
- 映画監督の河崎実氏はエイトマンのファンであり、1982年に自分流のエイトマンとして、自主製作映画「エスパレイザー」を製作。桑田氏にもイラストで参加してもらっている。
- 2022年9月29日放送の『テレビ千鳥』(テレビ朝日系)の「新面白キャラを作ろう」の企画で、ななまがりの森下が本項の『エイトマン』の存在を知らずに創作キャラ『エイトマン』を作って登場した(名前被り)。全裸に黒い短パンのみのいでたちで、技は「のど測量」。のどの長さの8倍のものを見つけると必殺技「しわしわ赤ちゃんキック」を繰り出すという設定。のどの長さの8倍という設定から、『エイトマン』と名付けられた。念のために書いておくが、本項の『エイトマン』とは全くの別物である。
- 『株式会社ヌーベルバーグ』のプロダクション名に「エイトマン」が実在する。
- 『アンドロイドお雪』のヒロインであるケイ・ポーターの生い立ち、境遇、設定などが「女版東八郎」を想起させる。
- 上記『8マン インフィニティ』において、エイトマンのように『生身の生物の記憶・人格をロボットのコンピューターに移植した存在』を指してマシーナリーと呼称しており、『インフィニティ』作中、並びにインフィニティ以降に制作・発表された作品ではエイトマン自身もマシーナリーであると定義されている。
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