概要
自動車に、他の車種のフロント周りのボディパーツ(フェンダー・ボンネット・バンパー・ヘッドライトなど)を取り付けること。オーナーの遊び心から派生したものであるが、大幅に見た目が変わることから目立つことや、後継車種のパーツを利用し古臭さを拭い去ることを目的にしたものが多い。
またメーカーでは諸々の規制や消費者の趣向への対応、販売車種数の拡大を狙い同様の手段が執られることがある。この例としてはS13系日産・240SXやトヨタ・カレンがある。240SXの場合は北米の規制に合わせるためノッチバッククーペ(日本で言うシルビア)の顔面が180SXの顔面に変更され、いわゆるワンビア状態になっている。またカレンの場合、北米ではセリカとして扱われた車両をベースに、顔面のみを変更することで日本ではセリカとは別個の車種として設定されていた。
例外として、リトラクタブルヘッドライトから固定式ヘッドライトに交換した場合は、ライト駆動モーターユニットが取り外されるためにフロントオーバーハングの軽量化ができるなど、見た目以外のメリットを有する場合がある。
また同型車種でもフェイスリフトが行われた場合、その前後でそのスタイリングの変更が理由となって著しく中古車価格が変わったりする場合、あるいはグレード見直しや保安基準、販売時期など諸般の事情で特定の仕様が特定の市場で販売されない場合、どうしてもその仕様が欲しい場合の手段として顔面スワップが行われる可能性がある。
顔面スワップにより車体の寸法が変わることがあり、その場合は車検証の書き換えをしないと違法改造に当たる。車幅や全長が大幅に変わる場合は5ナンバーから3ナンバーへの変更を伴う場合もある(車体寸法の再計測で済むため大きな手間ではない)。
プラットフォームが共通化されている姉妹車ならばパーツの換装だけで済む場合が多いが、異なる場合には大幅に車体を加工する必要がある。しかし、エアロパーツメーカーから発売されている変換用フェンダーなどのパーツを使えば大概ボルトオンで装着できる。
スポーツコンパクトなどのカスタマイズに見られる、他車種のヘッドライト単体を移植しベースの車種のボディパーツをパテや板金などで成型しなおす物は、顔面スワップではなくフェイスリフトと呼ばれている。その他の呼称として顔面移植とも言われている。
また、「本来は外観から言えばA車が理想であるが、中身はB車である必要がある」という変わった理由から顔面スワップが行われる事例がある。かつての霊柩車の場合はその車両の性質上、高荷重に耐えうるシャーシが必要であったためピックアップトラックをベースに製作して高級車の顔面を移植するという例が見られた。また、D1ストリートリーガル競技車両の場合エンジンスワップ禁止というレギュレーションの関係から、元々そのエンジンを持っている車種をベースにマシンを制作し、外観を他の車種にかえてしまうと言う事例が存在する。(顔面スワップの範疇を超えてしまうが、この実例としてはストリームZ GT Jr.がある。)
主な改造例
トヨタ
10系セルシオに20系後期セルシオもしくは30系セルシオのフロントを装着。いわゆる10系セルシオの成金仕様。
70系スープラに20系ソアラのフロントを装着。通称ソープラ。
セプターに10系ウィンダムのフロントを装着。セダン及びクーペの場合は通称ウィンプター。ワゴンの場合はウィンダムワゴン。
コロナクーペにST16#系セリカのフロントを装着。通称セリカクーペ。ST180系カリーナEDおよびコロナEXiVに180系セリカの顔面を移植した例も実在する。
カレンにST20#系セリカのフロントを装着。通称セリカレン。
マークⅡ系の場合
マークⅡにチェイサーのフロントを装着。通称チェイクⅡ。逆はマーサー。
X71系マークⅡワゴンにX71系クレスタのヘッドライトおよびグリルを装着。通称クレスタワゴンもしくはクレシダワゴン。
カローラ系の場合
スプリンタートレノにカローラレビンのフロントを装着。通称トレビンもしくはレビノ。
スプリンターマリノにカローラセレスのフロントを装着。通称セレノもしくはカロリンター・セレノ。逆はマリスもしくはスプーラ・マリス。
カローラにスプリンターカリブのフロントを装着。通称カリーブ。
日産
G50型インフィニティQ45にJG50型プレジデントのフロントを装着。通称プレフィニティQ45。
スカイライン系の場合
BNR32型・BCNR33型スカイラインGT-RにBNR34型スカイラインGT-Rのフロントを装着。Bee☆RからB324Rの名称で「34顔R32」として移植キットが発売されている。Bee☆Rの手塚強選手のD1グランプリ出場マシンが有名。
WC34型ステージアにBNR34型スカイラインGT-Rのフロントを装着。通称スカージアもしくはスカイジア。
M35型ステージアにGT-Rのフロントを装着。きっずはあとの手により制作され、名古屋オートサロン2009に展示。
A31型セフィーロにC33型ローレルのフロントを装着。通称ロフィーロもしくはローロ(ろうろ)。逆はセフィーレル。
シルビア系の場合
RPS13型180SXにS13型シルビアのフロントを装着。通称シルエイティ。逆にシルビアに180SXのフロントを装着した場合はワンビアもしくはエイシル。
S13型のシルビアもしくは180SXにS30もしくはS130型フェアレディZの顔面を移植。180SXの場合はZ80SX、シルビアの場合はフェアビアZ。
シルエイティにはS14型シルビア・S15型シルビアのフロントを装着するものもある。この場合車体の寸法が異なるため加工及び変換パーツが必要で、特にS14型の顔面を装着する場合は車幅が3ナンバーサイズになるため構造変更申請が必要になる。
S14型シルビアにS15型シルビアの顔面を装着。この場合加工及び変換パーツが必要になる。
ホンダ
インスパイアにビガーのフロントを装着。通称ビガスパイア。逆はインスパイガー。
CR-XデルソルにEGシビックのフロントを装着。通称シビソル。
オルティアにEKシビックのフロントを装着。通称シビティアもしくはビックティア。
アコードワゴンにトルネオのフロントを装着。通称トルネードワゴン。
三菱
ランサー系
CE系ミラージュ・CA系ミラージュアスティにCD9A型・CE9A型ランサーエボリューション(I~III)のフロントを装着。
CJ系ミラージュ(アスティを含む)にCN9A型・CP9A型ランサーエボリューション(IV~VI T.M.E)のフロントを装着。以上、通称ミラージュエボリューション略してミラエボ。
リベロにCD9A型・CE9A型ランサーエボリューション(I~III)のフロントを装着。通称リベロエボリューションもしくはランベロ(なお、リベロGTの後期型は最初からランサーエボリューションIのフロントバンパーが装着されていた)。
N1x/N2x系RVR及びN3x/N4x系シャリオにN23WG型RVRハイパースポーツギアのフロントを装着。通称ハイパー顔。
スズキ
アルトハッスルにアルトワークスのフロントを装着。通称アルトマッスル。一時期、自動車整備工場の営業車などで使用されているのが見かけられた。
ダイハツ
プジョー/シトロエン
プジョー・106にシトロエン・サクソのフロントを装着。もしくはその逆。
フォルクスワーゲン
タイプ1(初代ビートル)にロールス・ロイスのグリルを装着。1970年代に北米などで流行した。
ジェッタ/ヴェント/ボーラにゴルフのフロントを装着。もしくはその逆。
大型車
トラックの場合、バンパーだけを移植する場合とライト周りを移植する場合がある。
前者の例は三菱ふそう・ザ・グレートやいすゞ・ギガに三菱ふそう・スーパーグレート(前期型)のバンパーを移植する場合。
後者の例は日野・スーパードルフィンに日野・KF系のライト周りを移植する場合。
他にも様々なケースが存在する。デコトラを参照。
バスの場合、他車種のフロントマスクを装着する場合と、ライト・バンパー周りを移植する場合がある。
前者の例:日野・ブルーリボンおよびブルーリボンシティ(路線バス・自家用バス)に日野・セレガおよびブルーリボンRU6系(観光バス)のフロントマスクとフロントドアを装着。一部の自家用バスや特定バス、短距離高速バスなどに採用例が見られる。
1980年代には古い車両に新しい車両や他メーカー製ボディのフロントマスクを移植した車両が存在した(バケルトンも参照)。
後者の例:三菱ふそう・MS7系エアロクィーンKおよびエアロクィーンMVにMS8系エアロバスのヘッドライトユニットとフロントバンパーを装着。NOx・PM法規制対象外地域の貸切バス事業者に採用例が見られる。