四天王レヴィアタン様一の子分、このブリザック・スタグロフ様がここにいる限りー、脱出する事は無理だ!あきらめな。
概要
異名:絶対零度鹿王
妖将レヴィアタンに仕えるヘラジカ型ミュートスレプリロイド。
モデルとなった神話はウェンディゴ(wendigo。伝承や言語による表記揺れでウィティコ/ウェチュゲ(wihtikow / wechuge))。
「むふー」という鼻息混じりの言葉が口癖で、粗暴な性格。捕らえたレジスタンスメンバーを尋問と称して死に至らすなど、冷酷な性格でもある。
海水を永久氷壁に変えてしまうほどの超低温の冷気を生成できる。
戦闘では強力な冷気を用いた遠距離攻撃や踏み潰し攻撃をしかけてくる。
氷属性なので、炎属性の攻撃が弱点。
ゼロ3ではドクターバイルによって「ブリザック・スタグロフR」として復活させられ、再びゼロ達レジスタンスに襲いかかる。※リンク先にネタバレあり。
獲得能力
ブリザートアロー(ゼロ3)
バスターショットのEXスキル。
アイスチップ装備中、チャージショットが3本の氷の刃に変化する。
モデルおよび名称の考察
※ロックマンゼロシリーズおよびロックマンシリーズ(総称)の内容(ストーリーやキャラクター)には、直接的に全く関係ないことを断っておく。
モデル
ウェンディゴ
モデルとなった神話のウェンディゴについては、アルゴンキン族やクリー族に伝わるカナダの妖怪あるいはアメリカの妖怪、イヌイットおよびエスキモーに伝わるイヌイット神話、アサバスカンの伝説、また、彼らとは別のカナダインディアンやアメリカインディアン、あるいはアメリカ先住民に伝わる、寒冷地において人をおかしくさせて食人を行わせる精霊(と、それに憑かれた人)の伝承というよりかは、
どちらか言えば、西洋の小説家であるアルジャーノン・ブラックウッドの小説「The Wendigo」に端を発した怪物のイメージがより近いモチーフだと思われる(この小説の描写を元にして、クトゥルフ神話(クトゥルー神話)のイタカ(イタクァ)が生まれたらしい。が、イタカはウェンディゴとは混ざりつつも異なる伝承となる)。
ウェンディゴのイメージ(姿形)として、前者(精霊)の伝承のひとつでは主に人間的な人型で伝わっていて(精霊に取り憑かれた人そのものも、ウェンディゴであるとされるため)、後者(怪物)では二足歩行と四足歩行を問わず、雄鹿の角が生えていて頭部もその頭蓋できている。
とはいえ、前者の伝承とスタグロフに共通している要素として、スタグロフはゼロと戦う際に飢餓や狂気に暴食(つまるところ食人・アントロポファジー・カニバリズム)を操り戦うことこそないが、ウェンディゴには寒冷地の猛吹雪や栄養失調による体温の異常など、冷気を司る精霊というイメージがあるため、スタグロフはそれを踏襲している。
白鹿
白を基調としたデザインであるため(サブカラーの青も目を引くものの)、フン族とマジャール人(ハンガリー神話)の伝承から、ニムロッド(ニムロド)という戦士の王様の息子たちである兄弟の王子、フノールとマゴールが狩りへとでかけ、そのふたりに追われるものの随分と遠くへ逃げ続けた後、ついには美しく肥沃な土地(加えて、未来の妻への縁)へと導いたとされる白鹿(white stag)のイメージも、スタグロフのモデルとなった神話であるかもしれない。
白鹿はアルビノによる実在する生物でもある。
その毎年生え変わる周期性から鹿の角は季節、加えて、太陽を表すとされ、フィン・ウゴル系民族(フィンランド神話)とフン族との伝承では、鹿の角が冬の間抱えていた太陽が、その鹿を狩ることによって抜け出し、春を告げるという。これは巡りつつも新たに始まることの象徴とされる。
ロックマンゼロにおいてそれは、氷雪を操る鹿を狩る、つまりはスタグロフを倒すことと重なる。とも言える。
ヘラジカ
ヘラジカ型とあるように、神話的生物としてだけではなく、実在の生物としてヘラジカをモデルとした要素もある。
ヘラジカのその分厚い吻(鼻先)による可愛らしくもゆったりとした顔つきや人を悠々と超える体躯は、創作物において優しくもとぼけたキャラクターになりやすいようで、かといってスタグロフは非情なキャラクターであるのに加えて、きびきびと動けることから、そこは語尾に長音記号を付けたり(語尾の母音を伸ばして発音)、「むふー」「むふむふーっ!!」といった口調として踏襲したようだ。
後述するようにヘラジカというモチーフは命名にも関わっていると思われる。
名称
ブリザック Blizzack
名称について、ブリザックの部分は、ブリザード(英語: blizzard, “猛吹雪”)と、英語圏の人名である正式名アイザック Isaac の短縮形であるザック Zack を元にしているかもしれない。アイザックはギリシャ語でイサキオス Isaakios とされ、ここから東ローマ帝国の皇帝であるイサキオス1世コムネノスが元ネタと思われる(他のモチーフと比べて個人的に、あまり確証はない)。
ハンガリー王国との戦いに勝ち、平和条約を結べたものの、狩りの最中に傷を負い病に倒れたとあり、上述の白鹿の伝承でも縁が深い、ハンガリーや狩猟といった名前や事象がちらほらとあるため、ひとつの可能性として書いておく。
blizzard + zack の複合語・複合名詞(および、かばん語)の形が、ブリザック Blizzack であると思われる。
だが、ブリヂストンのスタッドレスタイヤである BLIZZAK(英語: blizzard, “猛吹雪” + ドイツ語: zacke, “ギザギザした歯など尖った先端”)を元にして捩っている可能性もある。
また、リュックサック(ドイツ語: rucksack, 発音記号: 'ʀʊkzak, [ルックザック] “背負い鞄”)も取り扱うアウトドアブランドのキャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG 。その名の通りキャプテンの牡鹿という社名)を元にして捩っている可能性もある。
ドイツ語ではザック sack は袋を意味するのみだが、日本語ではリュックサックのことをザックとも呼ぶため、 zack と英訳することになる。ざじずぜぞ、はヘボン式ローマ字で za ji zu ze zo とされる。
スタグロフ Staggroff
スタグロフの部分は、古代ギリシャ語(以下、希)のイッペラポス/ヒッペラポス hippelaphos(希: hippos, “馬” + elaphos, “雄鹿”)と同一視され『博物誌』において語られる、山羊の様でも鹿の様でもある幻獣だという『トラゲノフ』また、『トラゲラフ Tragelaph』 が元ネタと思われる。
ブッシュバック属(Tragelaphus)やブッシュバック族/亜科(Tragelaphini / Tragelaphinae)として実在生物の学名の由来にもなっている。
希:トラゲラフ Tragelaph(希: tragos, 英語: billy goat, “雄山羊” + elaphos, stag, “雄鹿”)、ここから、 stag(雄鹿、厳密にはアカシカの雄) + tragelaph(半山羊半鹿の幻獣)となり、スタグ stag(stag と trag を掛けているため、スタッグから転訛して促音“ッ”が抜けている) + ゲラフ gelaph から、スタグラフおよびスタゲラフと複合語・複合名詞となり、加えて、ヘラジカの分布域でもあることから、スラブ系の人名として馴染みのある接尾辞の -オフ(ロシア語のモスクワ方言の -ov に基づいたフランス語 -off)と合わせた複合語・複合名詞の形が、スタグロフ Staggroff であると思われる。
trage“la”ph の la の子音 l から来るはずのスタグ“ロ”フのロの英語表記が stagg“lo”ff ではなく stagg“ro”ff と、 l から r へと変わっているのはおそらく、もちろん元になった言葉を踏襲しつつも、あくまで日本語表記のスタグロフを英訳しているためだと思われる。らりるれろ、はヘボン式ローマ字で ra ri ru re ro とされる。接尾辞 -オフ / -ov / -off には、 r(キリル文字: р)も l(キリル文字: л)もどちらも使われるためだ。
staggroff という音には一見 tragelaph という綴りが残ってないように見えるが、直通でスタッグ stag になるのでもエラポス elaphos になるのでもなく、日本語表記によるトラゲラフ(ヘボン式ローマ字: “To” “ra” “ge” “ra” “fu”)の、5文字(母音がそれぞれ5拍、5音節)と、ある程度沿った子音や韻を踏まえてのスタグロフという音であると思われる。
以上のことから、ブリザック・スタグロフ Blizzack Staggroff という綴りであると思われる。
おまけ
スタグロフとおなじく、鹿をモチーフとしたロックマンのキャラを挙げていく。
スキタイ神話(Scythian myth)では、上述のその角の性質(太陽を抱えるという伝承)により、
雄鹿の角は炎の様に描かれる。
これはフレイム・スタッガーの元ネタであるかもしれない。
加えて、スタグロフは彼を元にリバイバルしたキャラクターでもあるかもしれない。
アメリカインディアンの伝承では、白鹿(アルビノによる珍しい鹿)を巡る、恋人の伝説や、村の人々と西洋人の伝説などがあり、さまざまな国や場所で伝承があるように、
アメリカインディアンにとっても鹿は象徴的な存在とされる。
これはディアバーン・ザ・ガゼロイドの元ネタであるかもしれない。
姿のモチーフはガゼルではあるが、名称としてディア(deer, “鹿”)が使われている。