概要
武田五姉妹とは、甲斐の戦国大名・武田信玄の五人の娘たちのことを指す。それぞれ、政略結婚により他家の当主/嫡男や武田家臣と結婚した(末女・松姫は婚約にとどまっている)。
ちなみに、全員正室である。
一覧
黄梅院
(画像左)
生没年:1543〜1569年。
甲相駿三国同盟の証として、北条氏政(北条氏康の嫡男)と結婚した。氏政との間に嫡男・氏直などを産む。
しかし、武田軍による駿河侵攻をきっかけに武田と北条は敵対。しかし、氏政と夫婦でい続けることは出来た。
ちなみに、姉妹で実家の滅亡前に亡くなったのは彼女だけである。
見性院
生没年:1545?〜1622年。
信玄の実甥・穴山信君(梅雪)と結婚した。信君との間に嫡男・勝千代を産んだ。
しかし、信玄の後継者・武田勝頼の代で信君は勝頼を離反。信君は、甲州征伐にて織田・徳川・北条と共に見性院の実家である武田家を滅ぼした。
だが、その信君も本能寺の変による混乱の最中に落武者狩りに遭遇して死亡。
のちに穴山家は徳川家康に臣従。しかし勝千代は早逝。
見性院は家康の五男・信吉(母は信君の養女・下山殿)を養子とするも、彼も子を残さないまま死去。
徳川秀忠(家康の嫡男にして後継者)の子・保科正之を養子として養育した。
真理姫(真竜院)
生没年:1550〜1647年。
武田軍に降伏した木曽義康と武田家の関係を強化するべく、義康の嫡男・木曾義昌と結婚した。義昌との間に嫡男・義利を産んだ。
義昌は信玄の後継者・武田勝頼の代で新府城築城の協力を要請されるも、領内に負担がかかったため織田信長に降伏。甲州征伐の直接的原因を作った。
その後、本能寺の変により織田軍は旧武田領から撤退を開始。夫・義昌は織田→北条→徳川→羽柴→徳川と次々と主君を変える。
夫の死後、義利が後を継ぐ。しかし粗暴な振る舞いを理由に、徳川家康の命令で改易された。
その後(もしくは義昌による武田離反後)、木曽谷にてひっそりと暮らした(これが義昌による武田離反後の場合、義昌と離縁したと言われている)。
兄弟姉妹で最も長生きした人物である。
菊姫(大儀院)
(画像右)
生没年:1558(または1563)~1604年。
甲越同盟の証として、上杉景勝(上杉謙信の養子)と結婚した。夫婦仲は良かったものの、子供は生まれなかった。
織田・徳川・北条が武田を攻めた際、夫・景勝は内乱や織田軍による上杉領侵攻で苦戦しながらも菊姫の実家・武田家を支援。なお、武田五姉妹の夫で最後まで武田家の味方だけだった人物は景勝だけである。
織田軍は、武田を滅ぼした勢いで上杉をも滅ぼそうとする。上杉家は窮地に陥るも、本能寺の変で織田信長が横死したことにより急死に一生を得た。
その後、景勝は菊姫の異母弟・武田信清を重臣として登用(彼の子孫も米沢武田家として上杉家の重臣でい続けた)。その後、夫・景勝は豊臣秀吉に臣従して豊臣氏の天下の下存続。菊姫は臣従の証として豊臣氏の人質となり、京の上杉邸に移住した。
景勝は、豊臣政権下で五大老に任命される。しかし、秀吉死後に勃発した関ヶ原の戦いにおいて徳川家康に降伏。改易は免れたものの、減封された。そして米沢藩初代藩主となった。
菊姫の没後、普段自分の感情を見せない景勝は悲しんだという記録が現存する。さらに、他の上杉家臣も泣いたことから、上杉家中での人気は高かったようだ。
松姫(信松尼)
(画像左)
生没年:1561〜1616年。
甲尾同盟を強化するために、織田信忠(織田信長の嫡男)と婚約した。
しかし武田と織田が敵対したために、婚約は破談となった。
そして、武田勝頼の代に実家は織田・徳川・北条による侵攻を受けて滅亡。その時、武田攻めの総大将を務めた人物はなんと信忠だった。そして武田家は信忠によって滅亡した。
のちに信忠は松姫に再び求婚して松姫はそれを受けれたらしい。しかし、道中にて信忠が本能寺の変に伴い横死した事実を聞いたのだった。結局、松姫は信忠と結婚どころか会うことすらできなかった(一応、信忠の嫡男・織田秀信が松姫の子という説があり、仮にこれが本当だった場合は松姫は信忠と会えたことになる)。
信忠と松姫がお互いをどう思っていたかを書き残したを書き記した資料はないものの、婚約破談後も相思相愛だったと言われている。その理由は、
- 信忠は正室を作っていない。
- 松姫は生涯独身。
というもの。他には、法名に実家の通字でもあり信忠の一字である「信」が入っているという理由もある。
備考
- 前述した通り、姉妹の夫で最後まで武田家の味方だった人物は上杉景勝だけである。それが理由かは定かではないが、江戸時代に姉妹の嫁ぎ先で大名として唯一存続したのは上杉家のみである(一応、織田家も分家は大名として存続した)。
- この姉妹の人気が高い理由の一つに、姉妹のうちの三人が父・武田信玄のライバル(上杉謙信、北条氏康と織田信長)の後継者と結婚もしくは婚約しているという事実がある。
登場作品
おんな風林火山:松姫が主人公で、姉妹全員が登場する。
武田信玄(大河ドラマ):黄梅院と松姫が登場する。
春日局(大河ドラマ):松姫が(信松尼名義で)登場する。
葵徳川三代:見性院が登場する。
風林火山(大河ドラマ):黄梅院、見性院と真理姫が登場する。なお、当作品においてなぜか見性院の本名は菊という設定。松姫は直接は登場しなかったものの、最終回にて油川夫人が彼女を妊娠していた。菊姫は登場しなかったことから、1563年誕生説を採用したことがわかる。
天地人:菊姫が登場する。
清洲会議(映画):松姫が登場する。この映画では信忠と結婚しており、三法師(のちの織田秀信)の母として登場した。
関連タグ
桃由童女…武田信玄の娘で、武田五姉妹の姉妹。しかし早逝しており婚歴がないため、他の武田姉妹と共に語られることは少ない。
中野姉妹:漫画・五等分の花嫁及びそのアニメ版に登場する架空の姉妹。明言はされていないものの、武田五姉妹をモデルにした可能性が高い。