一般的には
- アメリカ・ジェネラル・ダイナミクス社が開発した携行式地対空ミサイルランチャー・FIM-92。
- フロムソフトウェアから発売されたロボットアクションゲーム『アーマードコア』シリーズの登場人物。面倒が嫌いなあの方。
- サバイバルホラー『バイオハザード0』に登場するB.O.W.。
- アクションゲーム『デビルメイクライ』における技の一つ。牙突みたいなもんである。
- 日本の競走馬。1998年の阪神3歳牝馬ステークス(現阪神ジュベナイルフィリーズ)を制した。
- 映画『トランスフォーマー ロストエイジ』に登場するディセプティコンの一人。
スティンガーミサイル
アメリカのジェネラル・ダイナミクス社が開発したFIM-43レッドアイ携行式地対空ミサイルの後継として1967年に開発を開始、1981年にアメリカ軍に採用された。
開発においては、どのような状況下でも使用できる全面性と、整備性の向上、敵味方識別装置(IFF)の搭載に主眼が置かれた。
主とする目標は低空を比較的低速で飛行するヘリコプター、対地攻撃機、COIN機などであるが、低空飛行中の輸送機や巡航ミサイルなどにも対応できるよう設計されている。
この為、誘導方式には高性能な赤外線・紫外線シーカーが採用され、これによって撃ちっ放し能力(発射後の操作が不要な能力)を得ている。
ミサイル本体の収納された使い捨て式発射筒、グリップ・ストックと呼ばれる再利用可能な発射装置、冷却用ガスとバッテリーが一体化したユニット(BCU)、ケーブルで接続されたIFF装置から構成される。
ミサイルは後部ブースターによって発射機から10m程度発射され、その後メインのロケットブースターに点火する二段式(コールドローンチ式)となっており、射手の安全性が確保されている。
ロックオン時に目標を一定時間捕らえ続ける事で、ミサイルに迎え角とリード角情報が送られ命中精度が上がるが、BCUの冷却持続時間は45秒である。
なお、命中しなかった場合は一定時間後に自爆するようになっている。
誘導方式は初期型のFIM-92Aでは赤外線誘導だったが、FIM-92Bからは赤外線と紫外線を用いた2色シーカーを用いており、デジタル信号処理ユニットによりフレアの欺瞞に対する耐性も非常に高くなっている。
発射前にアルゴンガスによってシーカーを冷却する為感度が高く、敵機前方(ヘッドオン)からでもロックオンする事が出来るようになった。
パッシブホーミングの撃ちっ放し式ミサイルなので、射手は発射後即座に安全な場所に退避することが出来る。
ちなみに発射訓練用の発射筒は後方から再装填することで何度でも使用可能であり、発射した訓練用弾体は発射機から発射した後は落下するだけである。
FIM-43レッドアイでは3G程度の機動性しか無く、被攻撃側は旋回するだけで容易に回避する事が出来たが、スティンガーでは飛翔コースが比例航法(目標の未来位置を予測し飛翔する)になりミサイルの機動性も上昇した為、8Gの旋回を行う敵機も撃墜可能となり、信頼性が大幅に向上している。
その後も様々な改良がなされ、1995年からは最新型のFIM-92Eが導入されている。
FIM-92Eではセンサーやソフトウェアが改良されており、より高いIRCCM(対フレア)能力や命中精度の上昇等が図られ、UAV(無人偵察機)や巡航ミサイルさえも撃墜可能となった。
バリエーションとしてハンヴィーに四連装ポッドを二基搭載したアベンジャー防空システムや、M2ブラッドレー装甲車に四連装ポッドを搭載したM6ラインバッカーなどが存在している。
その他にも空対空型スティンガー(ATAS)があり、米陸軍のOH-58D観測ヘリコプターや日本のAH-64Dアパッチなどで運用されている。
これらのシステムでは冷却ユニットの持続時間の制限がない為、非常に即応性に優れた対空システムとなっている。
かつては自衛隊でもスティンガーを運用していたが、現在の携SAMは91式携帯地対空誘導弾に交代している。(AH-64Dに搭載されるAIM-92 ATASは継続して運用)
発射機全長 | 152cm |
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重量 | 14.5kg |
ソ連・アフガン戦争での活躍
スティンガーミサイルが一躍有名になったのは、1979年に勃発したソ連・アフガン戦争である。
当時のアフガニスタン共産主義政権及び政府軍から反政府ゲリラや義勇兵を鎮圧するよう要請されたソ連軍は戦術の一つにベトナム戦争でアメリカ軍と同じく上空から攻撃し、その後地上部隊で制圧するという掃討作戦が行われ、その作戦に最適とされたのがMi-24ハインドであった。
ハインドは空対空、対戦車ミサイルや対戦車ロケット弾、12.7mm機銃などの武装に加えて頑丈な装甲を持つというまさに「空飛ぶ戦車」と呼ぶにふさわしい重武装ぶりで、兵員や物資まで輸送できるという優れものだった。
この他にもSu-25 やMig-23といった対地攻撃機が猛威をふるい、特にSu-25は命中精度の高さから恐怖と憎悪の対象となった。
当然アサルトライフルやボルトアクションライフルの弾などはハインドにとって豆鉄砲にしかすぎず、文字通りゲリラを蹴散らし、また紛争初期に各地の都市で発生した反政府蜂起を圧倒的火力で粉砕し都市奪還に貢献したので、ハインドはアフガン人からソ連政府や共産主義政権の強権的支配の象徴とみなされた。
ミサイルとロケット弾による空爆や機銃掃射を行うハインドに対抗しうる航空戦力や対空兵器を持っていない反政府ゲリラや義勇軍はバッタバッタとなぎ倒されまくり、ハインドは「悪魔の戦車」と恐れられ、畏怖の対象となった。
当時アフガンでゲリラに従軍した外国の戦場カメラマンやジャーナリストは行く先々でゲリラからヘリを墜せる武器をせがまれたと言われている。
ちょうどその頃中国との国交を回復したアメリカは、ソ連軍がアフガニスタンに侵攻したとの情報を入手し、国交を回復した中国と共にゲリラ軍に援助すべくパキスタン経由で武器・装備品を供与した。
当初は、応急処置として旧式のエリコン20mm対空機関砲を少数供給したが、運搬に難があり一度配置すると配置転換が困難なので、攻撃を受けて射手が撤退した際、放置されたエリコンをハインドがフックで釣り上げて全て鹵獲されてしまった。
その後運搬しやすい中国製のDShK38重機関銃やZPU-1対空機関砲、ZU-23-2対空機関砲が供給され一定の戦果を上げたが、射程外からのロケット弾攻撃で無効化され再び窮地に陥った。
当初イギリスのMI6から供与されたイギリス製のブローパイプ携帯地対空ミサイルは、射手がいちいち操作しなければならないというさすがイギリスクオリティと言わしめる程に実用性に劣る代物であった。
この他にもアフガン政府軍やカンボジア前線のベトナム軍から横流しされたソビエト製の9K32携帯地対空ミサイルも投入されたが、日ざしで熱された山頂に向かってしまうなど命中精度が劣悪で、更に操作性も悪くハインドに対して効果的とはいえなかった。
携帯式地対空ミサイルは当初はレッドアイが供与されたが、後にスティンガーも供与されたのである。
目標を目視で発見しなければいけない点やバッテリーの持続時間(最大45秒)などが難点だが命中率は高く、飛翔コースが比例航法(目標の未来位置を予測し飛翔する)になり、ミサイルの機動性も上昇した為に8Gの旋回を行う敵機も撃墜可能となり、信頼性が大幅に向上している。
初陣ではハインドの編隊を攻撃し、4機中3機を撃墜する圧倒的威力を見せ付けたが、一方でバイクで移動中の所を、追跡してきたハインドにムジャヒディンが3発発射したがいずれも当たらず、そのままハインドから降下してきた空挺隊員に奪われるというケースもあったので、射手の技量や状況によって命中率が左右される事もあった。
ゲリラ軍にとってスティンガーは救世主であり、これを手に入れた反政府ゲリラと義勇軍はお返しとばかりに来襲してくる多数のハインドなど軍用機をこれでもかと言わんばかりに撃墜しまくった。
中には地の利を生かして「山上からヘリを撃墜」するという戦法を編み出した強者までいた。
このスティンガーの供給によりゲリラ軍は勢いづき、遂にはソ連軍をアフガニスタンから追い出す事に成功したのである。
※ただし、ソ連崩壊後の資料によれば、スティンガー供給以前からアフガンからの段階的撤退を決定していた事が判明している。
また、同時期にアフガンだけでなくフォークランド紛争の英軍や、アンゴラ内戦でCIAが支援する反政府勢力にも供給され、使用されている。
また、アメリカ自身もソ連が北ベトナムに供給した9K32により多数のヘリや攻撃機を撃墜され、制空権を失うという苦い過去があった。
なお、供給されたスティンガーの大半はゲリラに届かず、パキスタン軍の備品になった他、少数がイラン軍に横流しされ、ソ連軍撤退後闇市場に出回ったと言われている。
一方のソ連軍のパイロットや空挺部隊員からは「ハインドキラー」と恐れられており、これに狙われたらまず助からず、奇跡的に生きていてもゲリラ軍に捕まればその場で処刑されるので、出撃を恐れるようになり、更に地上のソ連軍や政府軍兵士も航空支援が受けられないという事態に動揺し、精神的なダメージを被る程に強烈なインパクトを与えた。
また、各都市や地方への空輸も不活発になり統制が乱れ、国境監視所や軍事拠点からも撤退せざるを得なくなり、ゲリラの支配地域は拡大した。
スティンガーは戦火を逃れ脱出した難民にとっても救世主となり、多くの難民がスティンガーの保護のもとふたたび故郷へ帰還し、ゲリラの基盤をより強固な物とした。
ソ連軍もゲリラの武器庫襲撃によるスティンガーの破壊・エンジン排熱口の改良やフレアの搭載等の対策をとったが効果は上がらず、苦肉の策としてスティンガーに探知されないように超低空飛行を行うも当然今度はRPG-7や各種対空火器で簡単に撃墜されてしまうようになり、これ以降ソ連軍はゲリラの拠点に対する攻撃を高高度爆撃や地上からの多連装ロケットランチャーによる砲撃に限定する事となった。
ソ連軍撤退後、共産党政権は、南ベトナム同様に早期に崩壊すると西側政府やメディアはは予想したが、CIA要員の撤収や支援縮小によりスティンガーの運用が困難になり、更にソ連から大量の機体を供給された事でアフガン空軍は息を吹き返し、政府軍のハインドは再びゲリラを蹂躙し攻勢を押し止めた。
スティンガーの支援受けられない状況にムジャヒディンの士気は萎え、逆に政府軍兵士は航空支援の復活で士気が上がり、各都市への空輸が活発化し政府の統制が強化され、その後ソ連崩壊後の支援打ち切りで、航空機が飛ばせなくなるまで共産政権は存続した。
政権崩壊後、アフガン空軍機は軍閥の手に渡り、タリバン等の敵対勢力の拠点への空爆に使用されたが、もはやスティンガーがそれらの迎撃に使用される事は殆どなかった。
一方で闇市場に流れたスティンガーは民間旅客機に対する一大脅威と見なされ、CIAが回収作戦を行ったが、成果は上がらず闇市場への拡散を許す事となった。
その後、非合法な戦闘でスティンガーがどの程度使用されたかは不明である。
時が変わって21世紀。
米同時多発テロの首謀者(とされる)ウサマ・ビンラディン率いるアルカイダとそれらを匿うタリバン掃討作戦の為、アフガニスタンで活動していたアメリカ軍も当初はスティンガーを警戒し、高度2万フィート以上から爆撃や補給物資の空中投下を行ったので北部同盟に対して効果的な支援ができず、僅かながらアメリカ軍の戦略や計画にも影響を与えた。
しかし、上記のように30年近くバッテリーや冷却ガスの供給やメンテナンスがされていなかったので、実質稼働状態にあるものは殆ど残っていなかったと考えられる。(むしろRPG-7や9K32携帯地対空ミサイル等の方が脅威だった)
フイクションの世界ではゴルゴ13がモータボートに対して使用したり、『とある魔術の禁書目録』(原作)で木原数多が車両に対して使用、『メタルギアソリッド』シリーズでは車両や人、メタルギアといったあらゆる目標に対して使用可能など、本来の用途である航空機以外の目標に使用される場合がある。
面倒が嫌いな人
いいか、俺は面倒が嫌いなんだ
『アーマード・コア プロジェクトファンタズマに登場するレイヴン。
ウェンズデイ機関に所属するレイヴンであり、終始主人公のライバルとして関わってくる。
事あるごとに面倒面倒言うのでセリフ的には印象が濃い。
ちなみに中の人は、後のシリーズでとても面倒なプランを頑張って実行する参謀家になっていた。
生物兵器のスティンガー
いざ作ったはいいが、知能が低く有用性がない為量産されなかった。
黄鉄道列車内で突然登場するが、狭い車内にどうやって入ってきたのかわからないようなサイズであり、デカイハサミをや尻尾を振り回して攻撃してくる。
端に追い詰められたらすぐに扉を出て別の車両に移らねば腹を刺されて即死、「やぁあああうぅ…」というレベッカの断末魔を聴く羽目になる。
競走馬・スティンガー
父・サンデーサイレンス。母・レガシーオブストレングス。
1998年11月8日にデビュー戦を勝利し、続いて2戦目となる赤松賞にも勝利。
その翌週に連闘で阪神3歳牝馬ステークスに出走して勝利。
デビューから1ヶ月足らずでGI制覇という快挙を成し遂げた。
『トランスフォーマー/ロストエイジ』のスティンガー
※以下、ネタバレ注意
2014年に公開された実写映画4作目『ロストエイジ(原題:Age of Extinction)』に登場するディセプティコンの一人で、赤いカラーリングのパガーニ・ウアイラに変形。
前作『ダークサイド・ムーン』でのシカゴの惨劇により設立された反トランスフォーマー組織「KSI」(Kinetic Solutions Incorporated)が、シカゴ戦で討ち取られたディセプティコンの残骸や、その直属の実働部隊「墓場の風」が極秘に行った「オートボット狩り」で殺害したオートボット幹部の亡骸を解析して得たデータを基に、バンブルビーをモデルとして開発した人造トランスフォーマーのプロトタイプ。
当初はKSIが遠隔操作して動かしていたが、同様にして開発されたガルバトロンの叛逆と同時に人間による制御を離れ、ディセプティコン軍団へと寝返った。
ロボットモードの姿はバンブルビーに似つつも、カラーリングは赤と緑を基調としており、頭部の形状はバンブルビーが戦闘時に装着するバトルマスクそのものである。
KSIはバンブルビーと同等かそれ以上の性能を持つと主張していたが、性格は彼とは対照的に歪んでおり、自身を模した「コピー品」に対してバンブルビーは自主規制音を伴う言葉で罵る・(待機状態の)スティンガーを殴り倒すなどして露骨に怒りを剥き出しにしており、終盤の戦闘でスティンガーを討ち取った際にはラジオの音声で「コピー商品は嫌いでね」と言い放った。
関連イラスト
ミサイル
人物
技
外部リンク
・スティンガーミサイル - Wikipedia