概要
コア・ファイター(一部ではコアファイターと表記される)とは機動戦士ガンダムシリーズに登場する小型戦闘機。
コア・ファイターからコア・ブロック(機体によってはMSの胸部そのもの)へと変形し、他のパーツと合体して一機のモビルスーツを形成する。
自力での帰還が可能な脱出ポッドとしてパイロットと戦闘データ、機体によってはそれらに匹敵する重要なシステムを回収する目的で開発された。
搭乗していたモビルスーツが撃墜された際の脱出手段として、この機能により命を救われたガンダム・パイロットは数知れない(もちろん完璧ではなく、肝心な時に機能しなかった例もなくはないが)。
また、Vガンダムやインパルスガンダム、ガンダムAGE-3のコア・ファイターは単なる脱出用戦闘機としての用途にとどまらず、モビルスーツの換装用プラットフォームとして用いられることもある。その場合は手足部分が飛行形態に変形し、パーツの換装が行われる。
ドッキング方式
コア・ファイターのドッキング方式は大きく分けて、コア・ブロックに変形したコア・ファイターを上半身・下半身パーツで挟み込む「バーティカル・イン・ザ・ボディ」方式と、本体の背面にコア・ファイターが挿入される「ホリゾンタル・イン・ザ・ボディ」方式の2パターンが存在する。
バーティカル・イン・ザ・ボディ方式では、コア・ファイターが完全に装甲に格納・保護されるものの、同時にコア・ファイター用の推進剤や武装も一緒に格納されてしまうため、デッドウェイトが生じてしまう欠点がある。
対してホリゾンタル・イン・ザ・ボディ方式では、コア・ファイターのメインスラスターや一部火器をモビルスーツ形態においても使用可能となるが、推進器と推進剤も共有することになるため脱出時に燃料不足に陥ったり、露出したスラスターが戦闘中に損傷すると使用不能になってしまうリスクも伴う。ただし、ミノフスキー・ドライブやオリジナルのGNドライヴといった永久機関を搭載しているV2ガンダムやガンダムプルトーネなどに限っては、推進剤不足のリスクから解放されている。
ただしこれらの方式はあくまで宇宙世紀に当てはめた分類であり、宇宙世紀外の作品では∀ガンダムやジンクスⅣの試験機のような股間部に一体化した方式、特攻機のガガを除いたGNZ系列機やアルケーガンダムのようにコア・ファイターが背面に外付けされた方式など宇宙世紀には見られないドッキング方式も散見される。
Vガンダム系列機やガンダムAGE-3、ガンダムレギルスなどはホリゾンタル・イン・ザ・ボディ方式同様に背面の推進器を共有しているが、コア・ファイター部分は背面とコクピットブロックのみならず胸部そのものと頭部も含まれており、背面に挿入というよりは欠落した胸部に一体化するような形でドッキングしている。
デメリット
映像化された宇宙世紀ガンダム作品においては、コア・ブロック・システムと完全な全天周囲モニター・リニアシートを併せて搭載したモビルスーツは存在しない。
これは、コア・ファイターの形状およびスペース制限により、コクピット内装を球形にしたうえで、リニアシートを支持するためのフレキシブル・アームや内装を丸ごと覆う全天周囲モニターを設置する事が物理的に不可能なためである。
(なお、アナザーガンダムと呼ばれる宇宙世紀以外の作品では、球形の全天周囲モニター及びリニアシート自体が存在しない)
このためイジェクション・ポッド方式の脱出機構を採用した機体に比べ視界の面において劣る他、宇宙世紀0153年を描いた小説版『Vガンダム』(富野由悠季著)では、ウッソ・エヴィンがVガンダムの性能の感想を求められた際、『シャッコーに比べてショックアブソーバー機能が低く、パイロットを大事にしていないと感じた』と答えている。
主なコア・ブロック・システム搭載機
バーティカル・イン・ザ・ボディ方式
ホリゾンタル・イン・ザ・ボディ方式
- ガンダム試作0号機
- ガンダム試作1号機
- ガンダム試作3号機
- ガンダム[グリンブルスティ]/ガンダム[ケストレル]
- クラスターガンダム
- ネオガンダム
- クロスボーンガンダム/フリント
- Vガンダム
- V2ガンダム
- セカンドVガンダム
- ガンダムプルトーネ
- ガンダムAGE-3
- ガンダムレギルス
- ガンダムAGE-FX
- G-セルフ
その他
その他・類似した設定
機動武闘伝Gガンダム
シャイニングガンダムなどに搭載されているコアファイターに類似したホバー・カーにコアランダーがある。
戦闘機ではなくホバー・カーであるため戦闘能力は持たず(ドラゴンガンダム用のものはビームフラッグが後部に搭載されているが、そもそもコアランダー状態では使用出来ない)、主にガンダムファイターの移動手段として使われる。
他の設定が濃すぎるせいもあって、存在感は希薄である。合体シーンはごくわずか(第5話など)
劇中シャイニングガンダムのコクピットに乗り込んでいたレインにドモンがコア・ランダーでの脱出を促すシーンがあり「コア・ランダーのバーニアが使用できない」「背中の接続部の穴の分の装甲がガラ開きになる」などのデメリットを抜きにすればコア・ランダーが無くとも戦闘可能と思われる。
機動戦士ガンダム THE ORIGIN
コア・ファイターは元来は「合体・変形」という玩具展開上のスポンサーの要望に応えるためのものであったため、漫画『機動戦士ガンダムTHEORIGIN』ではこの設定はオミットされていた。
しかしこのまま話を進めた場合、コア・ファイターなしでは最終回で「脱出」できなくなってしまうことが途中で判明したため、「後付け」でコア・ポッドと呼ばれる小型脱出艇が設定され、ジャブロー編でガンダムが中期型に改装される際に搭載された(コア・ポッド設定以前はコックピットシートを射出して脱出するという案も提案されていた)。
また、このコア・ポッドはジムにも搭載されており、搭乗機を撃墜されたセイラはこれを使いア・バオア・クーにたどり着いている。
機動戦士ガンダムサンダーボルト
コア・ファイターそのものも登場しているが純粋な戦闘機として運用されており、フルアーマーガンダムにはコア・ブロック形態からの変形がスラスターの展開のみと控えめになったエマージェンシー・ポッドがジム共々採用されている。
連邦側主人公のイオ・フレミングもジムに搭載されたこの機能で命拾いしている。
機動戦士Ζガンダム他
機動戦士Ζガンダム、機動戦士ガンダムΖΖなどに登場するモビルスーツは、全天周囲モニターを構成する関係上コックピットブロックが球形をしており、それを脱出装置としたイジェクションポッドが存在する。
コア・ファイターと違い、それ自体に武装や推進力は無く、パイロットが生還するには味方機(あるいは敵機)に回収してもらう必要がある。宇宙においては、回収が不可能な場合はそのまま漂流して最悪の場合は酸欠などでパイロットが死亡する、というケースもある。
また、可変モビルスーツ、モビルアーマーなどは可変機構の関係上、それら機構を採用していない機種も存在する他、ジオングやサイコガンダムMk-Ⅱやクイン・マンサといった大型機は頭部そのものを脱出モジュールとすることも可能である。
アドバンスオブゼータ
ガンダムTR-6[ウーンドウォート]とガンダムTR-1[ヘイズル・アウスラ]、ガンダムTR-S[ヘイズル・フレア]の胸部にはプリムローズと呼ばれる脱出用ユニットが搭載されている。
これは、MSの胸部に変形し、撃墜されたら手足・頭を切り離して戦線を離脱するための装備であり、イジェクションポッドの延長線上の装備としての意味合いが強い。
オプション無しでは単体での戦闘能力は無いものの(TR-6のプリムローズⅡはガトリング砲が標準装備されている。また、分離したパーツとの戦闘中の再合体は不可能)、TRシリーズの共通規格によってMS用の武装やオプションパーツを装着可能であるため、戦闘能力を後付けできる高い拡張性を持つ。
プリムローズⅡがコアパーツとなり、オプションパーツを装着することで支援機であるフルドドⅡとなるが、更に装備を追加することでTR-6[ハンブラビⅡ]と呼ばれる形態となる。TR-6[ハイゼンスレイⅡ]のMA形態の分離時にはプリプローズ2を内蔵することで下半身を有人機化することが出来る。TR-1[ハイゼンスレイ]ではTR-6の腕部を取り付けたプリムローズⅡを追加装備の一つとして取り付けており、サブアームユニットとして機能するようになっている。
火星のレジオンで運用されているバーザムにはTR-6と同じプリムローズⅡが内蔵されている。
ガンダムビルドファイターズ
主人公機ビルドストライクガンダムのバックパック「ビルドブースター」には、ホリゾンタルインザボディ方式のコアファイターに酷似した脱出機としての機構が備わっている(ベース機のストライクガンダムには存在しない機構)。
ただし、これはストライクルージュのオオトリの改造であるため、厳密には脱出システムではなく支援機として扱われている。
ガンダムビルドダイバーズRe:RISE
主人公機のコアガンダムはガンダムをベースアイデアとしているが、ビルダーのヒロトがPFF-X7と設定した型式番号(ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクに格納されているコア・ファイターの型式番号がFF-X7)やアーマー換装機構『プラネッツシステム』、素の状態から各種アーマーを装着する際の「コアチェンジ・ドッキングゴー!」(TV版の機動戦士ガンダムでアムロがドッキング時に発していた掛け声)といった掛け声など、ガンダムのみならずコア・ファイターの要素も多分に取り入れている。
物語の後半で改良されたコアガンダムⅡは素の状態の時に『コアフライヤー』という飛行形態に変形できる機構を獲得し、コア・ファイター要素の導入に更なる拍車がかかっている。
余談
コア・ファイターに似たものは現実でも開発が試みられたことがある。
1960年代、アメリカではある程度自力移動ができる航空機の脱出装置として、オートジャイロを改造したX-25を開発。
飛行こそ成功したものの、操縦にはメイン機の分に上乗せする形で回転翼機の飛行訓練が更に必要となることや具体的にどうやって航空機に装備して脱出するかなど、実用性に疑問が出たために開発はすぐさま中止されている。やはり人類にはまだ早すぎたようだ。
また、コア・ファイターには元ネタがあるとされる。
それがガンダムシリーズのメカニックデザイン担当大河原邦夫のタツノコプロ時代の上司である中村光毅がデザインを担当した『タイムボカン』のタイムガイコッツである。
タイムボカンシリーズでお馴染みの三悪側のメカであり、ドクロ型のコクピットブロック部分を使いまわし、巨大メカを仕立てるものの ”やられては帰還用のエゼクションポッド兼タイムマシンとして使われる” を繰り返す。大河原がデザインを手がける第2作『ヤッターマン』では一旦消えた(おしおき三輪車が使われた)が、大河原デザインの下で復活し『ゼンダマン』と『逆転イッパツマン』(シャレコーベバギー シャレコーベダチョウ)で使われている。