概要
原作となる小説、漫画、ゲームなどでは描写されていなかったエピソードや設定の事。
一般的にオリジナルエピソードは原作のネタ切れや引き延ばしのための手段(特に日常系の作品やものすごく遠大な目的のために戦う人達を題材とした作品、所謂国民的枠)として使用されることが多い。
中には『鉄腕アトム(白黒版)』『かいけつゾロリ』などのように早々にネタを使い切り後半がほぼオリジナルであるアニメや、原作がアニメ放送中に現在進行形で続いているため、それから乖離する「一応の最終回」を作らねばならず完全に原作と違う筋書きをたどる作品(『鋼の錬金術師』、『ソウルイーター』、『トリコ』他)、設定を借りてストーリーの最初から大半か全部がオリジナル(『真剣で私に恋しなさい!!』、『薬師寺涼子の怪奇事件簿』)もある。
そこまで極端な例でなくても、時間稼ぎのために無理矢理オリジナルの過去描写を使ったり(『BLEACH』など)や原作の数ページの内容を1話かけて描写する(『ドラゴンボールZ』など)してしのぎ切る、人気が高すぎて原作終了後もアニメを放送するためにオリジナルストーリーで制作(『ドラゴンボールGT』)、最終回のために原作の展開を一部変更 (TV版『頭文字D』のFifth Stage以外の各シーズン)、こういった内容は賛否両論となることが多い。
その一方で、人気の戦闘面、または生活面を重視して挿話を1エピソード丸々飛ばす、放送コード的に原作と同じ展開が出来ない物はすり合わせや、結末が全く正反対、後日談等を行った上でアニメオリジナル展開になるケースが多い。
エロゲ原作のアニメ作品、一騎当千やハイスクールD×Dや魔装学園H×Hのようなエロシーンが多い物、ベルセルクやされど罪人は竜と踊るのようなグロシーン等が該当する。
そうならずとも、原作者から挿話を好き勝手に改編させても容認するレアケースも多少なりとも存在する。監督の采配で物語そのものが凡庸さから、いきなりケレン味溢れるアニメに様変わりするか、原作レイプと揶揄されるかはその人の器量次第である。
しかしながら、原作媒体では語られなかったエピソードを補完する(『ONEPIECE』のTVSP「3D2Y」や『THELAST NARUTO THE MOVIE』、『頭文字D Final Stage』最終話の結末など)ことや、原作でのツッコミどころとなっているシーンを修正しているような場合(『北斗の拳』『金田一少年の事件簿』)、原作のストーリー性が薄い(『劇場版どうぶつの森』)、原作の発表時期から年月が経過しており、制作にあたって現代を舞台にしているなどそもそも一概に良い悪いとは言えないものもある。
原作者に気に入られれば、そういった描写が原作に逆輸入される場合も存在し、『ドラゴンボールZ』における主人公の亡父バーダック、『食戟のソーマ』における一部エピソード等の事例もある。
また、TVアニメの劇場版は多くがオリジナル展開であることが多いが、中には原作者書き下ろしのストーリー(上述のNARUTOやSAO劇場版のオーディナル・スケールなど)も存在する。
アニメオリジナルといえるかどうかはわからないが設定に変更のある部分も存在する。
例えば『鋼の錬金術師』のキング・ブラッドレイは原作及び2009年版ではラース、2004年ではプライドとして扱われたり、『頭文字D』の藤原文太のインプレッサは原作ではクールグレーメタリックなのに対しアニメではソニックブルーマイカに※、さらに星野好造のスカイラインGT-Rも原作ではグレードはV-SpecIIでカラーもベイサイドブルーだったがアニメではグレードは生産終了記念モデルであるV-spec II nurでカラーもそのグレード限定のミレニアムジェイドメタリックに変えられるなどが有名なものである。
アニメオリジナルは原作でも回収されていることも多々あったり、原作の追加要素として描いているシーンもあるため、「原作以外は全く無関係」という軽薄な考え方は誤解を生んでしまう一つの原因となることがある。つまり、原作以外のものも本編と繋がっていることも多々あるため、全ての作品は注意して見るべきなのである。
また、必ず漫画が先にあったとも限らず、企画時点からアニメと漫画がタイアップで放映される例もある為、この場合は両方オリジナルであると言える。
例:ゲッターロボ、デビルマン、パトレイバー、リューナイトなど
また、大なり小なりアニメと原作は尺の違いや放送出来るライン等もある為、完全に同じには出来ない事が多い。
原作を尊重し、忠実に作った作品でも時系列を入れ替えた構成にしていたり、細かいシーンが省かれていたり、逆に追加されていたり、アニメならではの要素が入る事も多い。
(例えば、原作に忠実なOVA版ヘルシングでは、少佐の演説とリップヴァーン・ウィンクル戦が入れ替わっている為、原作では演説の場にいるリップヴァーンがアニメ版ではいない)
最近は大幅な路線変更やキャラやストーリーの追加は不評を買う事が多い為か、近年のアニメは原作に忠実に描かれる事が多くなっている。
ただしその場合でも、古い作品をアニメ化する際は現代的な物を取り入れたりする事が多い。
例を挙げれば、スマホを持っていたり、インターネットを行っているなど。
細かい部分だと、最新兵器にアップデートしていたり、戦闘スタイルを最新式にしたり、など。
概ね忌避感を感じる場合は、原作にそぐわない要素やキャラが大きく入っている場合が多い物の、重箱の隅をつつくような指摘は野暮になりかねない事は注意しておきたい。
※インプレッサの登場するエピソードのアニメ化以前に発売された各種グッズやゲームではグレーだったが原作で直接色に言及された事は無く、原作35巻のカラーイラストではブルーに近い色で着色されておりゲームでも現在はソニックブルーマイカで統一されている。なお、変更後のボディカラーは本来限定車専用であり現実では文太搭乗車と同グレードの車には設定されておらずオールペンしたものと思われる。
代表的なアニメオリジナル展開・描写
タイトル | 内容 |
---|---|
EAT-MAN | 主人公のボルト・クランクの描写に大きな差異があり、原作では物静かで何を考えているのかはわからないが、非道な事はせず理不尽な依頼は契約を反故にしない形で裏切ったり、敵対者も徹底した悪人でも無ければ見逃し、ほぼ喜怒哀楽を表さない男である。しかしアニメ版は、まさに悪役と言った有様で、理不尽な依頼での殺しを容赦なく行い、冷徹な目を持ち、不気味に笑ったり、イカれた様に笑い声をあげる奇行が多い。後に原作に忠実に作られた「EAT-MAN'98」が存在する |
うる星やつら(1981年/TV版・劇場版) | 原作とは全く違うストーリーで「暴走」とも言える程にアニメスタッフが好き勝手やった結果大好評を得た。押井守の出世作であり、数多くの名アニメーターを生み出した上で、アニメブームを巻き起こしたが、原作者の高橋留美子氏は劇場版の「ビューティフルドリーマー」を「押井さんの『うる星やつら』です。」と言っている。(なお喧嘩している訳では無いとの事)2021年に原作を基調としたアニメ版が放映された |
エクセル・サーガ | アニメスタッフが好き勝手やった結果、何故か監督がキャラとして登場したりする始末だが、意外と好評。原作に取り入れられた物も多少ある |
ガンスリンガーガール | 1期のアニメは漫画でのエピソードを基に順番を入れ替えた上で、オリジナルエピソードや原作で描写されなかった細かい表現を追加。全体的なクオリティは高く評価が高い。ただし、原作者は不満だったようで、2期は原作者が監修した上で作成されたが、1期に比べると全体的なクオリティは低く低評価となってしまった。 |
神無月の巫女 | 概ねは原作である漫画に沿っているが、アニメではオロチ衆に関するエピソードが掘り下げられている他、苗字がついたりするキャラもいた。また、ヒロインが迎える結末も原作とは違う物となっている。 |
寄生獣 セイの格率 | ストーリーの流れは概ね原作通りだが、主人公の泉新一は原作と違い眼鏡をかけており、他の登場人物も原作とキャラデザは大幅に変わる為に物議を醸した。他、スマホや不良の表現も現代的な表現も増えた。TV放映の為か、残虐な描写もマイルドになっている。 |
血界戦線 | アニメオリジナルキャラである「ブラック」と「ホワイト」が登場。原作の漫画はエピソード毎に区切られた方式であるが、それらの話を繋げていく役割を担っていた。 |
サザエさん | 長年続いているシリーズの為、オリジナル展開が多いのは勿論の事、オリジナルキャラも多い。花沢さん、中島くんや、堀川くん、もアニメオリジナルキャラ。マスオの同僚のアナゴさんもオリジナルキャラである。また原作は結構バイオレンスな事をやっていたり、放送禁止用語がバンバン出てきたり、毒のあるオチも多い。また、キャラクターの性格も大幅に異なる。ただ、ブラックユーモアを取り除いたのは原作者のアニメ化に際する条件との事。 |
スレイヤーズ | 大筋や作風は原作に沿っているが、オリジナルキャラやオリジナル展開が多い。小説では陰惨や悲惨だった結末や表現などがコミカルにアレンジされている事も多い。 |
聖闘士星矢 | 作風や大筋は原作に沿っているが、聖衣の形が違う等、差異も多い。また玩具を売る為のキャラと言えるオリジナルの鋼鉄聖闘士が登場した。この鋼鉄聖闘士は非常に不評で、黒歴史扱いとなっていたが、後年聖闘士星矢Ωでまさかの復活を遂げた。 |
ダイの大冒険(1991年) | 原作に忠実であり、好評で数クールの延長が予定されていたが、番組再編成に巻き込まれて中途半端な位置で放送終了。この際、原作者である三条陸が関わった上でバランとの戦いの結末を変更して終了している。尚、劇場版はジャンプ映画によくある完全オリジナル展開である。2020年に原作基調のアニメ版が放映された |
ダーティペア | 人物設定等は同じ物の、オリジナルロボのナンモが登場している他、ムギも原作とはイメージが一新している。キャライメージも原作の小説版を全体的には踏襲しつつも違う物となっている他、二人が起こす災害も比較的マイルドである。 |
デビルマンレディー | 原作では主人公不動ジュンは活発で男勝りな体育教師だったが、アニメ版では気弱なファッションモデルとして登場する。また全体的に漫画版と同じ人物は登場する事はあるが、当然ながらストーリー的には全くの別物。 |
トライガン | アニメ版や劇場版等が存在する物の、設定やデザイン以外は、違う部分が多い。ただし、1998年版の後半に関しては作品が未完結の為、作者が考えていた当初の展開を基にして執筆されている。アニメオリジナルのGUNG-HO-GUNSなども登場する。2022年に放映されたTRIGUN STAMPEDEはデザインから新規になっている。 |
ドラゴンボール | 基本的には原作踏襲だが、序盤でピラフ一味が亀仙人の家に侵入したりする展開がある他、偽悟空やクリリンに彼女が出来るアニオリ回等多数存在。 |
ドラゴンボールZ | 原作踏襲が基本だが、長期シリーズの為、蛇の道での出来事など多数のオリジナル展開がある。特にピッコロと悟空が免許を取りに行く回は有名。 |
ハーメルンのバイオリン弾き(TVアニメ版) | 設定と人物を借りた別物と言える作品。原作の様なギャグ描写は皆無。映画版も存在し、話自体はオリジナル展開だが、作風は原作に似ている |
HELLSING(TVアニメ版) | 最初だけは原作展開だったが、後半は全くの別物になった。一説には海外展開を行う為にナチス表現をバッサリ切ったとされる。この改変は概ね不評であり、作者の平野耕太氏はサイトで不満を表明した他、『進め!!聖学電脳研究部』ではDVDを全部「まんだらけ」に叩き売ったとも。後年に原作に忠実なOVA版が登場し、好評を博した。 |
北斗の拳 | 大筋は同じだが、アニメオリジナルの敵や技が存在多数し、特に南斗人間砲弾は語り草。しかし、原作者の武論尊と担当編集が激怒した為、以降は原作者の監修が入る事となった。 |
ぼくらの | 後半時点で原作が終わっていなかった為か、後半は完全にアニメオリジナル。(「阿野万記」編までは概ね原作準拠)。また、それまでに戦う相手の能力や形状が違う事も多い。全体的にスローな動きになった事については、原作者からは不評。 |
みなみけ〜おかわり〜 | 1期は原作ベースで好評を博したが、2期である「みなみけ ~おかわり~」がオリジナル要素を入れた為に話題に上がる。オリジナルキャラである冬木真澄の登場や、暗いシーンも多く原作の「ゆるさ」が消えてしまっており、鬱っぽさを全体的に取り入れたのか、モブの顔も黒く表現されている上に、天気も曇り空だったりする事が多い。でも何故か保坂はいつも通りと言うきもちわるさである。大不評だった為か、3期以降は元に戻る為、「おかわり」だけが非常に異質である。なお当時の大規模掲示板のアニメ板で炎上している。 |
無責任艦長タイラー | 全体的な設定が違う他、ストーリー展開等も違う。この方向性の違いには原作者の吉岡平氏は非常に不満が残っていた様だが、広く受け入れられたのは間違いがないとの事で、アニメ版を基調としたリライト版が出されている。反面、「代表作とされる作品が原作ではなく他人が大幅に手を入れ根幹テーマを全否定されたアニメである現状」と晩年Twitterでこぼしていた。(ただし、氏はアニメ版はアニメ版で傑作であると認めている) |
るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- | アニメ後半で展開した「風水編」やOVAの「星霜編」等が存在する。特に星霜編のクオリティは高い物の、陰鬱な作風と共にキャライメージが完全に違う為に異彩を放つ作品であり、ファンからも賛否両論となっている作品である。 |
ルパン三世 | 漫画の原作では悪漢の大泥棒のルパンだが、アニメでは心優しい面を付与され「義賊」的な性格を帯びている事が多い、TVアニメSPでは、都度ヒロインが設定されロマンスが描かれる事も。原作者のモンキー・パンチ氏がアニメのストーリーを手掛けた際「ルパンが後ろから人を刺し殺す」展開を入れようとした所、「ルパンはそんなキャラでは無い!」と原作者であるにも関わらず却下されてしまった事もある。モンキー・パンチ氏は、ルパンを「ポリシーなど無い男」とバッサリ切っている。 |