ウルトラマン(一峰大二版)
ぼくらのうるとらまん
特撮TV番組『ウルトラマン』のコミカライズ。講談社の児童誌『ぼくら』に1966年8月から1967年9月まで掲載された。作者は一峰大二。
『週刊少年マガジン』で連載されていた楳図かずお版がホラーテイストだったのと比べ、こちらはヒロイックな正統派SFになっている。
楳図版や『ウルトラマンTheFirst』とは異なり、没脚本の怪獣が数多く登場しているのが特徴。
現在は秋田文庫から全1巻が刊行されている(初単行本であるサンデーコミックス全2巻が底本)であるが、第1話を始めとして4話が欠落している。作品が古すぎて原稿が散逸していたため、全話を読むためには、1995年に翔泳社から発売された全2巻の完全版を買う必要がある。こちらでは、散逸した原稿を新たにリメイクする形で全話収録された。
2018年には秋田書店から最終決定版全2巻が刊行され、無事に完結した。
なお、一峰氏は他にも『ウルトラセブン』や『ウルトラマンレオ』、他社作品であれば『スペクトルマン』のコミカライズも執筆している。一峰版セブンは2007年に実相寺昭雄一周忌として寄稿された『宇宙獣神ゴード』においてこのマンガの続編であることが明かされ、一峰版マンにしか出てこない没怪獣がバルタン星人とイカルス星人に率いられ大暴れした。
一峰版初代マン
ウルトラマンのデザインは金属然とした楳図版よりもTV版の着ぐるみに近くなっている。瞳はないが、口は動くので割りと表情豊か。
必殺技はなぜか稲妻状に飛ぶスペシウム光線と、真ん丸な八つ裂き光輪。どうも一峰氏は八つ裂き光輪がやたらと好きだったようで、奇抜な発想で次々と怪獣たちを打ち破っている。
怪獣が比較的強いのもあり、苦戦することも多く、火炎で身体が溶けることもしばしば。怪獣にも二回(グリーンモンス、ヤマトンの回)飲み込まれている。エネルギーの切れたベーターカプセルに太陽光線を充填するハヤタの姿にはやきもきさせられるだろう。
連載当時の最終回ではゼットンが登場しないため生きたままM78星雲に還っており、「ハヤタはもう二度と姿を現すことは無い」とナレーションが言っているため、恐らくは分離もしていない。(ただし地球人としての姿を取っているだけなのかTV版同様合体しているのかは特に明言されてはいない)
…という尻切れトンボの終わり方の為、2018年に刊行された最終決定版においてはエピローグとしてゼットンとの最終決戦を描いた『さらばウルトラマン』が書き下ろされた。
深海人:第1話に登場する最初の漫画オリジナル怪獣。すぐにウルトラマンにやられる。後年何も知らずに読んだ読者を驚かせるが、戦闘後のウルトラマンからの巨大な手紙が腹筋へ与えたダメージと共にインパクトを奪われる。
ネロンガ:当時映像では再現できなかっただろう「屈折する透明怪獣」という表現は必見。意外な正体を持つ。
グリーンモンス:ウルトラマンのスペシウムエネルギーを吸収して強化され、科学特捜隊が猛毒を盛ってやっと倒すことが出来た。同エピソードの科特隊隊員をよく数えると何故が一人増えている。
ギャンゴ:鬼田が極悪なマッドサイエンティストに変更されている。ホシノ少年が想像して具現化された宇宙人がとてもキモい。
ペスター:原作ではすぐ焼死してしまったが、こちらではウルトラマンを締め上げて奮戦した。この回のウルトラマンは、水中でも陸上でも油まみれにされる。同作は後々まで続くウルトラマンの回れば何とかなる伝説の全メディアを通しての第一号と考えられている。
バルタン星人:原作におけるバルタン星人二代目だが外見は初代と同一。ハサミから分解光線を放ち東京を砂漠にした。こっちでは投身自殺ではなく命綱着用。背中に反射鏡を付け忘れる。
アボラス:サンデーコミックス表紙だと何故かこいつが赤に、バニラが青に塗られている。コマの中では「青い怪獣アボラス」ってセリフがあるのに…。
バニラ:ウルトラマンを丸焼きにして撤退に追い込むなど、原作より優遇されている。
ゴモラ:やっぱり大阪城は崩される。尾は切られても活動可能で、ウルトラマンを締め上げた。
ピグモン:助けようとしたのかは定かではないが、ホシノ君を捕えたスフランを食いちぎるも相打ちとなる。『ゴード』ではセブンに味方した。「地球人ノ言葉デ言エバ…セブン…オマエハ…馬鹿ダ…」
レッドキング:多々良島は巨大な海藻の群衆体と言う設定になり、東京湾から東京都に上陸して人間を餌にしようと暴れ回る。
チャンドラー&マグラー:レッドキングの子分。三匹で東京の町を破壊し尽し、ウルトラマンと対決する。
ケムラー:尻尾がない。毒ガスを好んで食べる習性を持つ。軽いガスを散布することでビルなどを浮かせることができる。
スカイドン:TV版ではただ重いだけだったが、口から火を噴くわアルマジロのように転げ回るわ八つ裂き光輪も弾くわ手に負えない強敵。四足歩行のくせしてウルトラマンに勝ってガッツポーズした。
タンギラー:没怪獣。なんらかの理由で南極に放置されていた、宇宙人によりサイボーグ化された雷竜。
ヤマトン:没怪獣。戦艦大和の残骸から生まれた超巨大磁力怪獣。磁力でホシノ君の10円玉を巨大化し、100円の価値をもたらす。
ゴルダー:没怪獣。悪の組織「サン=ダスト団」の用心棒の有翼怪獣。最終決定版で二代目が登場した。
ウェットン:没怪獣で(連載での)ラスボス。水を吸って無限に膨れ上がり、復活する。
ゼットン:真のラスボス。原作よりも明らかにフィジカル面が強化されており、バリアを張らずに生身で八つ裂き光輪2発を粉砕し、カラータイマーをキックで破壊した(本編で没になった展開の流用だろう)。
最期はやっぱり無重力弾。