概要
『ウルトラマンデッカー』第5話「湖の食いしん坊」に登場した、エレキングの一個体。
宇宙旅行の最中に、地球に不時着したピット星人・ユウコが旅のお供として連れていた宇宙怪獣。
名付け親はユウコで、生物種名のエレキングを捩ったものと思われる。
これまでのエレキングと違い侵略用の生物兵器ではなく、純粋なペットとして描写されている。
知能が高く、ユウコやウルトラマンデッカーの動きを真似するなど、(夜間の戦闘シーンも相まって)再生エレキングに似た特徴を持つ。
本来は大人しく人懐っこい性格で、民家付近に現れた際には進んで人を襲う事はなく、巨大化して以降も元々の性格が垣間見える場面があった。
一方で、一時的に大人しくなった際にデッカーが頭を撫でようとした際には手を振り払うなど、ユウコ以外の相手には多少の警戒心を抱いているのか、不用意に触れられるのは好まない模様。
性格に反して戦闘力は高く、従来の「放電光線」や「エレクトリックテール」の他、『ジード』の個体も使用していた角からの放電(エリーはこの攻撃を多用している)や、全身の黒い模様に蓄電してからの放電も可能。
更にその高い知能も戦闘に活かされており、「尻尾を湖に付けて放電し、デッカーを感電させる」「尻尾をこっそり近付け、ミクラスの足に巻き付けて放電する」といった戦法も取っている。
詳細は後述するがかなりの大食いであり、戦闘中にはデッカーのエネルギーすら吸収していた(何気にエレキングがウルトラマンのエネルギーを吸収するのは初)。
なお、電気は角で吸収しているが、デッカーのエネルギーは口で吸収していた。
活躍
宇宙旅行に来ていたユウコに連れられ地球に飛来したが、その最中に彼女共々スフィアの影響で地球に取り残されてしまい、地球での生活を余儀なくされている。
大量の乾電池に含まれている電気エネルギーを食料としていたが、本来ではありえない速度で成長(ユウコ曰く、我が子可愛さ故の電気の与え過ぎと地球の環境の影響が原因との事)、幼体クラスからリムエレキングクラス、そして等身大サイズまで一気に大きくなる。
それに伴い、借りていたマンションで世話をする事が出来なくなり、近隣の湖に移動。
ユウコも時々電気エネルギーを与えに来たがそれでも足りなかったのか、近隣の民家から電気を失敬するという盗電同然の事件を起こす。
そこから巨大サイズにまで成長し、発電所を襲撃する事態にまで発展する。
事情を知ったキリノ・イチカは、旧式ではあるものの1台シティ3日分の電力を持つ災害用発電バッテリー「メガアース」を持ち出そうとするが、カナタとリュウモンに見つかってしまう(この時、2人にはエレベーター内で何をしているのか問い詰められたのだが、イチカがそれを答える前にエレベーターの扉が閉まるという、非常にシュールなシーンとなっている)。
その後、事情を知ったムラホシ隊長から叱責されつつも了承を得た事で、メガアースを使ったエネルギー補給作戦が実行に移される。
しかし、シティ3日分の電力は過剰摂取であったのか、ユウコの制止も聞かず突如として暴走。
デッカーと交戦しエネルギーを吸収、更に援護役として呼び出したディメンションカード怪獣ミクラスも撃破。
一気に勢い付くが、ミラクルタイプの力が覚醒したデッカーが黒雲を発生させ、エレキングから電気エネルギーを吸収した事で元の幼体サイズにまで縮小、事件は無事に解決した。
その後、ユウコとエリーはTPUの保護下に置かれる事が決定した他、今後再度の暴走を起こさないためにカイザキ副隊長によって食生活を改善するための講座動画がユウコの元に送られる事となった。
余談
今回のエリーの登場エピソードは、災害や戦争の影響で飼い主と共に避難を余儀なくされ、飼い主の見知らぬ土地の避難先において引き起こされるペット問題を警鐘する要素が含まれている。
とはいえ、この手の”性格は悪くないのだが状況によってはあらぬ誤解を招き地球の環境や人々に被害を与えかねないシチュエーション”としては珍しく防衛隊側に状況を正しく理解してもらえ援護を受けられ、人里離れた湖でひと騒動はあったものの無事に解決し最終的に元の生活に戻れたため、全体的に該当回は『それまで謎だったエレキングの生態の説明も兼ねた癒やし回』という雰囲気で進行していった。
また、ミラクルタイプのお披露目回にエレキングが選ばれたのは、ダイナのミラクルタイプがギアクーダや姑獲鳥など電気に関係する怪獣との対決で活躍しているため、それを意識していると思われる。
プールのセットは『ウルトラマンタイガ』第22話のタッコング戦に続き4作連続であり、歴代のエレキングでは初めてウルトラ戦士とのプール対決が繰り広げられた。
夜の戦闘シーンは『ウルトラマンマックス』第27話以来17年ぶり、更にミクラスとの対決は初代以来55年ぶりとなった。
今回使われたスーツは新造で、『マックス』当時に作られたスーツの損傷が激しく、アンテナの回転ギミックも上手く動かなくなっていることから新たに作り直された。『ジード』まで使われた物と比べると、首が真っ直ぐ伸びて長くなっているなど、細部がより初代のエレキングに近い造形になっている。
今作の幼体は、『マックス』で登場した放電竜エレキングの幼体パペットが使用されている。
等身大のエレキングが登場するのは、『ウルトラセブンTVスペシャル 太陽エネルギー作戦』以来である。
エレキングが倒されなかったのは『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』以来となる。
あちらは続編で敵に殺されてしまったが、今作ではウルトラマンに倒される事なく最後まで生き残り、主人であるピット星人と共に再び平和な生活を送れる事となった。
一方で、『ウルトラヒーローズEXPO2022』ライブステージにおいてスフィアに同化されたスフィア合成獣スフィアエレキングが登場していたため、本編でもスフィアエレキングに変貌してしまうのではないかと心配する声もあった。
そうでなくとも、過去には怪獣の脅威に怯えた地球人が悪意のない異星人を手にかけた結果、本来なら抑えられるはずだった怪獣が暴れるという後味の悪い話や、最近のシリーズでもハッピーエンドクラッシャー的な存在の悪役が悪さをして、悪意のない怪獣が死亡するというショッキングなパターンも存在していたため、尚更エリーの生存について不安視されていた。
結果的にそうした事態は避けられたものの、状況によってはエリーもスフィアエレキングとして同化され、スフィアゴモラのように駆逐されていた可能性も充分にあった。
なお、『デッカー』は『トリガー』の続編であるが、実は『トリガー』時代にTPUは既に別の友好的なピット星人と接触しているなど、全体的に良識のある異星人との交流は積極的な一面もある。
その結果、自分達が知っている友好的な異星人の同族がスフィアのせいで難民になってしまったという事情を知った隊員達から、エリーを討伐するのではなく餌を与えて保護するという寛大な処置を取ってもらえ、更には地球環境におけるエレキングの正しい餌付け方法も伝授されるなど十全なアフターケアまでフォローしてもらえている。
エリーとユウコはつくづく運が良かったと言えよう。
ちなみに、ムラホシ隊長の演者も過去にユウコのような宇宙からの難民を演じた事がある。
関連タグ
ギアクーダ:『ウルトラマンダイナ』に登場した怪獣で、こちらも電気を吸い取る効果を持ち強大な電力を利用した作戦を展開、最終的にミラクルタイプの力で電力を吸い取られ電気を取り込む形で弱体化するなど、おそらく本作におけるオマージュ元と考えられる。
エリー(ウルトラマンマックス):ウルトラシリーズで「エリー」と聞くと彼女を思い浮かんだファンも居ただろう。ちなみに、『マックス』にもエレキングとピット星人が登場している。
ブラックピジョン:第5話の2日前に放送50周年を迎え、同じくプールセットで戦った超獣。ちなみに、こちらは港(お台場晴海埠頭)のセットである。
アーストロン:『ジード』に登場した個体は、エリーと「第5話に登場」「登場回は青い形態の初登場回」「倒されずに生存する」といった共通点がある。なお、前話には地球で暮らしているピット星人のトリィ=ティプと彼女が連れてきたエレキングが登場しているが、こちらのエレキングはトリィ=ティプに発生したリトルスターを狙って暴走しており、最後は彼女の「楽にしてあげて」という願いを聞いたウルトラマンによって倒されている。
パンドン:エレキングと同じ『ウルトラセブン』初出の怪獣であり、『タイガ』ではエリーとユウコ同様に侵略の意思のない宇宙人によって密かに地球で飼育されていた個体が登場。しかし、こちらは悪党の手によって救われない結末を迎える事となった。