「我こそ、宇宙最強の格闘チャンピオン……鋼の魔人、グレース!
絶望へのスリーカウントを始めろ!」
データ
概要
第9話「誰がための勇姿」に登場。
「宇宙最強の格闘チャンピオン」、「鋼の魔人」の異名を持つ格闘家。
別次元ではあるが、かつて『ウルトラマンダイナ』に登場したグレゴール人の同族。ミカという娘がいる。
『宇宙最強の格闘チャンピオン』の異名は伊達ではなく、格闘でレッドキングを翻弄し、1度は退散させるほどの高い実力を持っている。
……が、最近は高齢化に加えてあまり闘う機会が無かったため体が鈍ってしまい、更に若い頃の無茶が祟って体調も悪化しており、度々古傷がある胸の部分を押さえていた。
そのため全盛期ほどの実力は出せない模様で、それは本人も自覚しているらしく「私はもう長くない」と語っていた。
第5話に登場したピット星人ユウコと同様、彼らもまたスフィアの被害を受けた難民である。
彼曰く「超古代の光の巨人に決闘を申し込むために地球に来訪したが、地球がすっかり平和になっていたため諦めて故郷に帰ろうとしたところ、今度はスフィアの侵略によって故郷に帰れなくなってしまった」との事。
やむを得ず地球で働きながらの生活となるが、元々格闘技1本の人生を歩んできた半生もあってか、どの仕事も上手く行かなかった(劇中、ミカはどこからか貰ってきた大量のパンの耳を夕飯として食べようとしており、満足な食事も摂れないほどに困窮した生活を送っていたようである)。
人物像
地球では主に人間態となっているが、どこか危険な雰囲気と不穏な空気を纏っていた『ダイナ』版のグレゴール人の人間態とは違い、温和な雰囲気でありふれた壮年の男性の姿となっている。
また、ミカがカナタがデッカーに変身する瞬間の写真を餌に、カナタを連れてきた事情を知ると「人の弱みを握るような子に育てた覚えはないぞ」と諌め、写真を破り捨ててカナタに謝罪する卑怯や他人への迷惑を好まない誠実さや、新生GUTS-SELECTメンバーの連携を「素晴らしいチームワークだ」と称賛するなど、高潔なスポーツマンシップの持ち主である。
更に自分が住んでいる町でレッドキングが暴れた時は、町を守るために自ら姿を現して闘いを挑む、後述のGUTS-SELECTとの試合でもスフィアレッドキングが乱入し苦戦するデッカーを見るや勝ちを譲ってデッカーに加勢するのみならず、自らの危険と引き換えに怪獣を羽交締めにして押さえ込み、自分ごと攻撃するように伝えるなど、困っている人を放っておけず、そのためなら自己犠牲も厭わない強い正義感を持ち合わせている。
こうした人物像は、自分の力を示すマッチポンプのために他人の迷惑を考えず、怪獣を暴れさせて町を壊すなどの害を及ぼしていた先代のグレゴール人とは対照的である(しかし、あちらもグレースと同様根っからの悪人ではなく、潔く負けを認めて去っていく誠実さを持ってはいた)。
町の住人達も、最初こそウルトラマンとは違う別の宇宙人が現れた事態に戸惑いを見せていたが、自分達に一切危害を与えずレッドキングを追い払ったその勇姿を見て、彼に感謝してグレースの名をコールしており、地球人からは「侵略目的の宇宙人ではない」と見なされ、素直に受け入れられていた。
劇中での活躍
娘の想いもあってGUTS-SELECTとの試合に臨み、ムラホシ隊長もミカの願いとグレースの熱意を受けて、『訓練への協力』の形で試合を受諾する。
そして試合当日……GUTS-SELECTの全勢力を用いた攻撃にも怯まず真っ向から奮戦するが、試合中に乱入してきたスフィアレッドキングとの戦闘では、更に体調が悪化して苦戦を強いられる。
最終的にデッカーを庇うために突き飛ばしつつスフィアレッドキングを羽交締めにして押さえ込み、GUTSグリフォンに自分ごと攻撃するよう懇願するが、爆発に巻き込まれる寸前でデッカーが召喚したディメンションカード怪獣3体により救出され、一命を取り留めた。
しかし、激戦によりとうとう体が限界を迎えて倒れてしまい、ムラホシが手続きしたTPUの医療施設に入院となった。
それでも、ミカは「元気になったらまた試合をして欲しい」と願っており、グレース本人も口先では「困った子だ」と呆れつつも、まだ諦めてはいない様子だった。
※以下、ネタバレ注意
『ウルトラマンデッカー最終章 旅立ちの彼方へ…』にて、メトロン星人ナイゲルと共にまさかの再登場。
人間態としての登場はなかったが、声は本編と同様に中村氏が演じており、前情報やクレジットにもなかった完全サプライズ出演である(グレースとナイゲルの再登場は「もう一度見たい!」と思ってくれていたファン達へのサプライズとして用意されたものであり、公開まで情報は一切伏せられていた)。
TPU本部がナースデッセイ号諸共ギベルスの軍団に占拠され、カナタ達が敵と戦っていた場面にナイゲルと共に駆け付ける。
どうやらナイゲルの呼びかけに応じ、本編第9話でムラホシに食事や病院の手配など、色々と助けてもらった恩を返すために協力を受け入れた模様。
本部を奪還するためにTPU本部に向かっていたディナスに近づいたペダン星人を倒した後、グレゴール人の能力である変装能力を使ってペダン星人になりすまし、カナタとディナスと共に2人を捕らえた演技をする。そして、ギベルスの前でバド星人がディナスを処刑しようと銃を突き付けた瞬間にバド星人を殴打、反旗を翻しカナタ達の手錠を解く。その後、自身の変装が解けたところでGUTS-SELECTメンバーやナイゲルと合流、カナタに奪い返したセレクトハイパーガンを渡し、ナースデッセイ号の奪還とギベルスの元へ向かわせた。
自身はその後ナイゲルと共にギベルス一味の相手を引き受け、本部を奪還した後はゴース星人とバド星人の2人を拘束しながら、本部の外でナイゲルと共にカナタ達の戦いの結末を見届けた。
今回は戦闘中に古傷を押さえていなかった様子から、古傷の根治と普通に戦えるくらいには体調が回復できている状態が窺える。そのおかげか、武器を持って武装したギベルスの配下数人を相手に生身で応戦し、それでいて臆さずに圧倒するなど、まさに『宇宙最強の格闘チャンピオン』の呼び名に相応しい実力の高さを披露していた。
また、今回はかつて『ダイナ』の世界で同胞が行っていた変装能力をフルに活かしている。しかも、変装がバレるシーンも『ダイナ』の個体と同様に顔がヒビ割れる仕様であり、ファンにはたまらない演出となっている。なお、当の本人は変装能力について「あまり得意ではない」と戦闘中のムラホシとの会話で語っているが、実際にはギベルス達は疎か劇場版を観にきた観客すら途中まで完全に騙し切っていたため、自ら「得意ではない」と卑下する割にはなかなかの芸達者である。
グレゴール人ミカ
演:榎本遥菜
グレースの一人娘。
劇中では終始人間態の姿で活動しており、その見た目は地球人の女子中学生くらいの少女で、宇宙人としての姿は見せなかった。それでも、父の特訓のサポーターをする程の運動能力を持っている。
『宇宙一の格闘家』である父親を誇りに思っており、ウルトラマンとの試合を望んでいた父親の願いを叶えようとしている。
そのために、カナタの正体がデッカーである証拠写真を餌にカナタを父親の所へ連れて行く強引な部分もあったが、自分達が暮らしていた町がレッドキングに襲われた時は父親に「レッドキングと戦って町を守って欲しい」と頼むなど、根は父親同様平和を愛する心優しい性格の持ち主である。
尚、彼女の母親=グレースの妻の存在については語られていない。
上記の通り、作中では父親のためながらも写真を使ってカナタに脅迫まがいな行動を取っていたが、『ダイナ』本編のグレゴール人の回でも、ゲストキャラのカメラマン志望の少女クドウ・ナツミが登場しており、あちらも昼寝をしていたアスカ・シンの姿を写真に収めて脅迫まがいな行動を取っている。
ただし、ナツミはミカと違い宇宙人ではなく地球人であり、グレゴール人ではなくダイナ寄りの行動を取っていた。
余談
- グレースの人間態を演じた中村氏は、『デッカー』のリスペクト元である『ダイナ』でフラッシュタイプとストロングタイプのスーツアクターを務めていた。それ以外にもTDG三部作においては、『ウルトラマンティガ』でマルチタイプとパワータイプ、『ティガ』劇場版でダーラム、『ウルトラマンガイア』でスプリーム・ヴァージョンなどを担当していた。また、グレースのスーツアクターである桑原氏は前作『ウルトラマントリガー』でダーゴン、『ウルトラマンタイガ』でウルトラマンタイタスなどの中の人であり、人間態とスーツアクター両方ともゴリゴリな筋肉系担当のチョイスである。
- 娘のミカを演じた榎本女史は、坂本監督が5年前メインを務めた『ウルトラマンジード』第1話にもゲスト出演している。また、当人は幼い頃からウルトラマンが好きであり、Twitterにも子供時代のウルトラマンのポーズをする写真やウルトラマンとの記念写真を上げている。
- スーツは『ダイナ』当時に使用された物。坂本監督によると「スタッフから『ダイナ』当時に使用されたものが残っており、少し修理をすれば使えるような状態だった旨を伝えられたため採用した」。マントはメフィラス星人ノストラのマントの流用であり、そのためマント着用時のシルエットは『ダイナ』版と異なる。また、リング用に使用している剣は、ジュダ・スペクターの武器であるバットキャリバーの流用である。
- なお、当時のグレゴール人はニセダイナの姿でいる場面がほとんどであり、姿の全容が映される場面があまりなかったため、本作で初めてその全容が明かされた。
- 当時発売された『ウルトラモンスター超全集』で全身像を知った人も居ると思われるため、その意味でもグレゴール人の姿でのアクションシーンは貴重である。
- なお、当時のグレゴール人はニセダイナの姿でいる場面がほとんどであり、姿の全容が映される場面があまりなかったため、本作で初めてその全容が明かされた。
- ウルトラ戦士ではないにもかかわらず専用の変身バンクが存在し、ぐんぐんカットに剣のリングが並べられた派手な演出となっている。また、SEはニセウルトラマンダイナの変身時の物が使われている。更にぐんぐんカットのポーズも、スーツアクターの桑原氏がかつて担当したウルトラマンタイタスの変身バンクと同じポーズとなっている。
- これまでのシリーズでは、善良な宇宙人であっても『侵略者』と見なされて一方的に地球人から攻撃を受ける(時にはウルトラマンでさえその被害に遭ったケースもある)パターンが多かったが、グレースは自らの意志で地球人達の前に宇宙人として姿を見せ、怪獣の脅威から町を守ったお陰で割とすぐに地球人から信頼を得られた珍しい宇宙人である(この世界の地球ではメトロン星人マルゥルのように、防衛組織に所属して力を貸している友好的な宇宙人が存在しているのも、大きな要因となっているのかもしれない)。
- この時、一部の人間には当初「あれって、ウルトラマン……?」と一瞬勘違いされており、一部の視聴者からは「トリガー、デッカー、グレースの3人で(それぞれのローマ字の頭文字を取って)TDGが成立する!」とネタにされている。
- グレースが最初にレッドキングと交戦したナツミシティは、上記の『ダイナ』に登場したナツミに由来していると思われる。
- 『デッカー』での登場に合わせて、グレース名義のグレゴール人のソフビが発売。また『デッカー』本編には登場しなかったものの、かつて『ダイナ』でグレゴール人が変身したニセウルトラマンダイナ(ミラクルタイプ)のソフビも同日に発売されている。
- 『タイガ』でウルトラマントレギアの人間体・霧崎役を演じた七瀬公氏は「この回を見ていた」と語っており、チビスケやナックル星人オデッサとの顛末に差があり過ぎる事に触れている。
- 第19話の放送後に行われた公式の座談会で、グレースが登場した第9話のカナタ達の特訓シーンをムラホシ役の黄川田氏が『思い入れのあるシーン』として選んでおり、中村氏の特訓シーンと筋肉を見て一同は興奮しており、監督の武居氏も特訓シーンを見て「こういうの大好きなんですよ!」とレギュラーキャストと一緒に盛り上がり、「坂本さんらしいなあ」と評価していた。
関連タグ
ダーゴン、バリガイラー:前作に登場した、正々堂々とした戦いを好む戦士系のキャラクター。特に前者とはスーツアクター以外にも、主人公達との決闘の果てに、命を賭した自己犠牲も厭わなかった点などが共通している。
ナックル星人オデッサ:戦いから離れ、地球人として平穏に暮らしていた元戦士の宇宙人。彼の最期はかつて失った誇りを取り戻すために、自らの意志でウルトラマンに戦いを挑み命を落とす壮絶なものだった。類似点の多さに対し、その顛末の差を上記の通り視聴者からツッコまれてもいる。
ババルウ星人ババリュー:地球の子供達を守ろうとした行動により、彼らからヒーローとして認められ信頼を得た宇宙人。
ジャグラスジャグラー:『ウルトラマンオーブ』最終回にて、敵の怪獣を押さえ込みながらウルトラマンに自分ごと攻撃するよう指示した構図がグレースと似ている。また、怪獣への変身時にはぐんぐんカットが存在する。
トライスクワッド:上記のタイタス以外のメンバーも、フーマは宣言した秒数内で相手にトドメを刺す決めゼリフが似ているウルトラマンである。一方でタイガは、宇宙で名の知れた父親を持つ点が娘のミカと似ている。