概要
有名人をはじめ特定の対象の過去の発言や行動を蒸し返して、解任・解雇など社会から排除しようとしようとする大衆的な動きのことを指す。他者の過ちを徹底的に糾弾する「コールアウト・カルチャー」または「アウトレイジ・カルチャー」の一種でもある。
このような運動は古くからあったことだが、2017年に「#MeToo」ムーブメントに関連してアメリカ合衆国で使われ始めた。日本では東京オリンピック(2020年)で関係者らの過去の言動や不祥事による辞任・交代が相次いだことから一般に知れ渡った。
著名人本人だけでなくその創作物にまで排除の矛先が向かうので、ある種の表現規制として論じられる。
キャンセルカルチャーへの批判
2017年までアメリカ合衆国大統を務めたバラク・オバマは、自身の大統領退任後の米国左派の運動の中で目立ってきたキャンセルカルチャーについて、「過去に間違いのない人などいない」、「他人に石を投げているだけでは、変化をもたらすことはできない」、「世の中は純粋ではなく、もっと複雑なものだ」などと度々語り、キャンセルで正義感を示したがる「ウォーク」(意識高い系)なZ世代の若者に向けて警鐘を鳴らしている。
また、元妻の虚言により「DV夫」との烙印を押された過去がある俳優のジョニー・デップは、キャンセルカルチャーについて「誰も逃れられない。女性にも男性にも起こっているし、子どもたちもさまざまな不快な思いをしている」と憂慮を示している。
誤解と拡大解釈
「キャンセルカルチャー」の語義は上記の通りだが、表現へのクレームや圧力一般と混同されることがある。上記の画像は戸定梨香降板騒動を扱ったものだが、これはキャンセルカルチャーの本来の定義からは外れている。フェミニスト議連が抗議を行ったのは「性的だ」と見なしたからであり、戸定梨香やその関係者らが過去に「不適切な言動」を取ったとしているわけではないので、これを「キャンセルカルチャー」と呼ぶのは間違いである。
また、キャンセルカルチャーとして物議を醸したJ・K・ローリングやたぬかなは過去の言動が掘り起こされたわけではなく、リアルタイムの発言により炎上に至ったので、本来の意味とはズレが生じている。
ウラジーミル・プーチンは、ウクライナ侵攻への反発として西側で起こっているロシア文化を排除する動きを「キャンセルカルチャー」としており、演説の中でローリングを引き合いに出したが、ローリングはこれに反発している。
関連人物
加筆する際は記述が公平であるよう十分に注意してください。
- ジェームズ・ガン:映画監督。過去の不謹慎発言を掘り起こされ、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー監督を降板させられるが、署名により復帰。
- 小山田圭吾:東京オリンピック(2020年)開会式音楽スタッフ就任に際し、過去のいじめ加害をあけすけに語ったインタビューを掘り起こされ、降板に至った。
- 榊英雄:複数女優への性加害が報じられた映画監督。公開直前だった映画「蜜月」は性暴力を扱った作品だったが、お蔵入りとなった。
- 広河隆一:長年女性への暴力を告発する運動に関わってきた写真家だが、広河自身が複数の女性からレイプとパワハラを告発される事態になり、関係していた会社や団体の役員は軒並み解任、写真展示も中止に追い込まれた。
- たぬかな:プロゲーマーであったが露悪的な言動が多く、男性配達員の外見を侮辱した上、「(男性の身長が)170ないと、正直人権ないんで」という発言を期に、所属チームから選手契約解除を受けた。
- J・K・ローリング:トランスジェンダーに対し懐疑的な主張をしていることから、ハリー・ポッターシリーズ関連のゲームやドラマへのボイコット運動が発生。殺害予告なども受けているとして、一歩も引かない考えを示している。
- 平野綾:キス写真により降板希望署名運動が起き、その後実際にキャストが変更された(現在は削除されている内容を記録しているページ)。
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表現規制・検閲・言葉狩り:著名人本人だけでなくその創作物にまで排除の矛先が向かった場合。
外部サイト
萌え絵への非難はキャンセルカルチャーの範疇に入らないから - キャンセルカルチャーの誤用についての指摘