LINER FORM
「必殺技…えっと、うぅ……で、電車斬り!!!」
CV:佐藤健
スーツアクター:高岩成二他
概要
『仮面ライダー電王』の主役ライダーである仮面ライダー電王の強化フォームの1つでありTV本編での最終フォーム。
他のフォームと異なり野上良太郎が単独で変身するフォームであり、「ある事情」(詳しくは後述)によりモモタロス達が憑依できなくてもその力が使えるように創られた。
機動力や身体能力はプラットフォームより圧倒的に高く、通常の4フォームと同等以上。また、デンカメンソードを介して各フォームの戦闘スタイルをトレース可能なので戦闘能力はスペックも手伝って高い。…のだが良太郎の戦闘スキルが低いので敵イマジンとの戦いでは苦戦を強いられる。
外見
基本色は赤と白。
胸部アーマー「ライナーブレスト」はキングライナーを、頭頂部のアンテナ「デンギャザー」は電車のパンダグラフを、電仮面はデンライナー・ゴウカを模しており、複眼は翼のような形でそれぞれのイマジンの色を表している。
実は手足の装甲やアンダースーツ「オーラスキン」の形状も通常の電王とはあまり変わっておらず、カラーリングが異なる程度。
しかも「Oシグナル」、「オーラスキン」、「ライナーブレスト」、「デンギャザー」(電王各形態のアンテナに相当する)など性能が通常の電王から変わっていないパーツが多い(ここではソードフォームを基準とした)。
(※)例えばオーラスキンは「仮面ライダー図鑑」『仮面ライダー電王 ライナーフォーム』の解説によると「防御性に優れ、500万Vの電流や、ダイヤモンド製の刃先によるダメージをも軽減することができる。」(原文ママ)とある。とはいえ、「ゴウカスキャンアイ」は基本性能をそのままに視認距離は5kmから6kmにパワーアップしているなど全くグレードアップしていないわけではない。
スペック
身長 | 195cm |
---|---|
体重 | 94kg |
パンチ力 | 6t |
キック力 | 7t |
ジャンプ力 | 一跳び45m |
走力 | 100mを3.5秒 |
パンチ力はアックスフォームに次いでガンフォームと並ぶ2位タイ。
キック力はソードフォームと同じ4位タイ。ジャンプ力はウイングフォーム以外に優る2位。
走力はダントツ1位、それ以外でも特に欠点がなく総合的に見れば優れたスペックを有する(超クライマックスフォームはライナー以外の各フォームから高いスペックを集めたモノなのでこの順位は変わらない)。
頭頂部にあるパンタグラフ型アンテナ「デンギャザー」がある分、身長もガンフォームに次いで二番目に高い。体重も三番目に重い。
変身プロセス
ケータロスをデンオウベルトに装着してそこから伸びた金色のオーラのレールを伝ってデンカメンソードが召喚される。
そこからプラットフォーム、または変身前状態でデンカメンソードにライダーパスを挿入し、デンライナーのオーラに纏われてアーマー、電仮面が装備される。
話が進むごとにケータロス装着状態でベルトを装着→パスをセットするという流れが増えていった。
『劇場版 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』ではケータロスを装着したベルトに直接パスを通すというクライマックスフォーム同様の手順で変身しており、CSMデンオウベルト&ケータロスでは、その変身プロセスを再現出来る様になっている。これは変身に必要なデンカメンソードの要であるタロスズが全員実体化かつ電王に変身しているからと思われるが、その後の戦闘でデンカメンソードを使用していることから、一応武器としては使用可能なようである。
『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』でオーマフォームが召喚した電王が変身した際には基本4フォームからのクライマックスフォームの変身手順(ケータロス操作→装着)になっていた。
誕生の経緯
ライナーフォームの誕生前、良太郎やタロスズが過去に飛んだ際に変身を維持して戦うことが難しくなっていた。
重要なのは、過去の世界で憑依して戦う時にだけ症状が現れることである。
ライナーフォームが登場する前から「新しい路線」が時の砂漠内に出現している。
この新しい路線はハナの新たな未来と言われると同時にイマジンが跋扈する未来に繋がらないことも意味していた。
ここで作中のイマジンの目的を思い出してほしい。
「過去を都合の良いように改竄し、現在や未来を変えること」である。
新しい路線が発生する前は、過去の改竄を通じて現在や未来がイマジンの未来に繋がる可能性を有していた。
このためタロスズも含めたイマジンは、逆説的に言えばイマジンの居る未来に繋がる可能性があったからこそイマジンとして存在し戦い続けることができたのである。
しかし、新しい路線ではイマジンが存在しない未来に繋がるため、タロスズも含めたイマジンはその新しい未来に繋がってしまえば当然のように存在できなくなってしまう。
皮肉にもタロスズは戦い続けることで自分たちの存在さえも無くそうとしたと考えれば、良太郎に説明を渋るのも道理だろう。
しかし、タロスズは特異点である良太郎と過ごした過去を手に入れたことで、イマジンの未来には繋がらなくなったものの、最終的に消滅することが無かったばかりか、実体化も果たした。
良太郎の「強さ」と自立の証として
前述した様に最強フォーム(というか戦力)としては微妙ではないかとの意見もあるライナーフォームだが、変身者である良太郎とタロスズの関係も考慮するとまた別の捉え方が出来てくる。
そもそも、初期の良太郎は不運ゆえトラブルに遭いやすいのにそれへ対抗出来ず流されるままの自分に歯噛みしていた若者だった。そしてそれに憑いたタロスズは、他者のイメージと記憶に寄生・執着する事でしか自らを保てない存在・イマジンであった。
これを見返してみると、当初の両者はお互いの不満が見事に噛み合った関係であり、下手をしたら共依存に陥って共に最悪の状態へ落ちて行ったとしても不思議では無かった。
しかし実際の劇中ではそうならなかった。良太郎が自分に憑いたイマジン達に真っ直ぐ向き合い、その良心を動かす行動をした事で信頼を得たからだった。そしてそれを土台として良太郎と共に戦い続けたイマジン4人はいつしか「タロスズ」となっていた(クライマックスフォームの誕生はそれを証明した物とも取れる)。
そしてこの軌跡を実感したタロスズを通す形で良太郎本人も「周りの良心を引き出して繋がり、助け合える関係を作れる」自分の「強さ」を自覚。その流れの先でライナーフォームへの変身を遂げ、プラットフォームにしかなれない「弱い自分」のイメージを見事乗り越えて見せた。
その後最終決戦を乗り切り、タロスズが存在を再構築して自分から独立したのを知った良太郎はライダーパスを返却する事を決めたが、これはタロスズの独立とライナーフォームになれた=自分の強さを知った事で「電王にならなくても自分の力で歩いて行ける」との確信を得たからだろう。
TV本編終了以降、良太郎がデンライナーに乗らなくなって以降も『仮面ライダー電王』は独立して外伝作を重ね、人気は未だ衰える事を知らないが、その礎になった物の1つは良太郎がタロスズの良い所を引き出した上で彼らから自立した事だとも考えられる(※仮に良太郎が自分の力を信じられず誰かへ心理的にしがみ付く人物のままだったら、タロスズの癖の強い性格が悪い方向へ誇張される可能性もあった)。
そのためライナーフォームは「良太郎の凄さと功績を称える象徴」でもあり、単なる最強フォームとしてでは評価し切れない物も持っていると言えるだろう。
装備
デンカメンソード
モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスの4体のイマジンのオーラエネルギーを電仮面に変換し、集結させた大剣。かなりの重量があり取り回しが悪く、初使用後は良太郎も「重っ!」と投げだした程。
グリップのターンテーブル上に円陣を組むことで形成されている。
レバーを引いてターンテーブルを回転させることにより、「モモソード」・「ウラロッド」・「キンアックス」・「リュウガン」の4つのモードの選択が可能となっている。
このモード選択により、対応するイマジンとの会話・戦闘スタイル・必殺技の使用が可能。
デンガッシャーの使用も可能で『劇場版 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』で使用している。
必殺技
必殺技に共通することは、デンカメンソードのデルタレバーを引いてターンテーブルを一周させるようにして発動、そしてレール状のオーラの上を走り突撃すること。
モードごとに性能は異なるが、良太郎はこれらを総じて「電車斬り」と呼んでいる(『デンカメンソード』のTVCMでも「電車斬り」呼ばわりである)。
更にターンテーブルを複数回転させることで「フルスロットルブレイク」を発動。
待機音はソード&ロッド、アックス&ガンの待機音を混ぜたものであり、番組放送前のジャンクションだと高めの音声になっている。
また、『さらば電王』ではケータロスの必殺技ボタンを押す事でフルチャージし、デンガッシャーを用いた必殺技も見せている。
- モモソード - デンカメンスラッシュ
デンライナーゴウカを模したオーラと共に突撃し、デンカメンソード(モモソード)の刀身から伸びるオーラエネルギーの刃で相手を両断する。
TVCMでは赤いエネルギーを纏ったデンカメンソードで敵を横一文字に切り裂く技として描写。
名称の由来はソードフォームの必殺技「エクストリームスラッシュ」(俺の必殺技パート2)。
第42話ではフルスロットルブレイクと同じ手順で発動している。
- ウラロッド - デンカメンアタック
デンライナーイスルギを模したオーラと共に突撃し、刀身にオーラエネルギーを纏ったデンカメンソード(ウラロッド)で相手を刺し貫く。
TVCMでは釣竿を振るような動作で青いエネルギーを纏ったデンカメンソードで敵を切り裂く技として描写。
名称の由来はロッドフォームの必殺技「ソリッドアタック」。
- キンアックス - デンカメンチョップ
デンライナーレッコウを模したオーラとともに突撃し、オーラエネルギーを纏ったデンカメンソード(キンアックス)の刀身で相手を倒す。劇中未使用。
TVCMではデルタレバー部分を地面に叩きつけ、発生した黄色のオーラと振動で敵を攻撃する技となっていた。
名称の由来はアックスフォームの必殺技「ダイナミックチョップ」。
- リュウガン - デンカメンショット
デンライナーイカヅチを模したオーラと共に突撃し、デンカメンソード(リュウガン)に纏ったオーラエネルギーで相手を撃ち抜く(発動する際にはデンカメンソードを敵に投擲する)。
TVCMでは突き出したデンカメンソードから紫色の光弾を連射する技として描写。
名称の由来はガンフォームの必殺技「ワイルドショット」。
- フルスロットルブレイク
4台のデンライナー全てのオーラと共に突撃し、斬撃とオーラ全てを相手にぶつける。
TVCMでは火炎のようなエネルギーを纏った斬撃を浴びせる技となっている。
『ガンバライジング』ではカブトのマキシマムハイパーサイクロン、キバのファイナルザンバット斬と連続で放つ「ライジングトリプルコンビネーション」を使用した。
仮面ライダーディケイドコンプリートフォームもライナーフォームを呼び出す事でこの技を使用可能…なのだが何故か「レジェンドライダーの必殺技」として使用する場合は敵の撃破が必ず出来ないジンクスが誕生してしまった。
- エクストリームスラッシュ(便宜上の名称)
『さらば電王』で仮面ライダー幽汽に対して使用。
フルチャージはケータロスのボタンで可能でエネルギーを纏ったデンガッシャー・ソードモードで敵を斬り裂くオーソドックスな必殺技。
- ライダーキック
『仮面ライダーウィザード』や『Over_Quartzer』で使用した。
シンプルなライダーキックであり、フルチャージは行わずに発動。
テーマ曲
劇伴
- 「ライナーフォーム」
「仮面ライダー電王 オリジナルサウンドトラック Vol.2」に収録。
挿入歌
- 「Real-Action」
「野上良太郎(佐藤健)」名義のキャラソン。
ライドウォッチ
全てのイマジンと今一つに!行くぜ行くぜ行くぜ!電王 ライナーフォーム!
集まれイマジン!電王!ラーイナー! LINER FORM.
「DX電王ライナーフォームライドウォッチ」として一般販売。
必殺技は「電車」。
最強フォームか否か
総合的な戦闘能力ではクライマックスフォームに劣る為、最強フォームであるかについては、長期に渡って議論の的となっていた。
結論から言えば、現在はライナーフォームが最強で間違い無く、公式からもほぼ統一されているのだが、ここに至るまでには様々な紆余曲折があった。これはそもそも、最終フォーム・最強フォーム等の呼称がファンが発祥の非公式用語であったからである。
字面だけで見れば、「最強フォーム」=「1番強いフォーム」を想像するのが普通である。一方で少なくない仮面ライダーファンは「最強フォーム」を「劇中1番最後に出て来た強化フォーム(≒最終フォーム)」の事として考えていた。
通常の主役ライダーでは、この2つは一致するので問題は無い。だが電王の場合は「性能が最強=クライマックス」「登場が最終=ライナーフォーム」であり、この2つが一致しない。
その為、ファンの間では「どちらが最強フォームか」で意見が激突してしまう事となったのだ。「最強はクライマックス」派、「最強はライナー」派に加え、「最強フォームはクライマックス、最終フォームはライナー」と使い分ける派閥も存在し、事態は混迷を極めていた。
これを余計にややこしくしたのが、「超クライマックスフォーム」の存在である。
現在では恒例になりつつあるが、そもそも本編終了後に劇場版が作られる事自体、電王が初めての事であった(Vシネと呼ばれる事が多く、電王以外はあまり劇場版とは言われないが)。そしてその作品で本編より強いフォームが登場する等、完全に想定外の事だったのだ(一応、最強フォームの上位は前例としてキバの飛翔態が登場しているのだが、出番の少なさ故か特殊なフォルム故か、そこまで話題に上がる事はない)。
「時系列的にも最後であり、強さ的にも最強である」点で最強フォームと言うに相応しく、だが本編には一切登場しないこのフォームの存在は、「これこそ最強フォーム」「いや本編に出てないから例外だ」と、最強フォーム論争を更に混乱させる事となったのである。
この時期の公式回答の一例が、ディケイド・コンプリートフォームである。
TV版のコンプリートフォームは各ライダーの(現在で言う所の)最強フォームの力を使用するのだが、電王はライナーフォームが選出されている。
だが、MOVIE大戦で新たに登場した最強コンプリートフォームでは、電王のカードが超クライマックスフォームに更新されている(但し、クウガもライジングアルティメットフォームに更新されている)。
特に後者については最強の名を関しているので、この時期は「とにかく最後に出たフォームが最強」になっていたと考えられる。
だがその状況は翌年のダブル・サイクロンジョーカーゴールドエクストリームの登場によって変化した。このフォーム以降、「本編終了直前の夏か本編終了後の冬に劇場版をやって、そこで本編以上のフォームが登場する」事例が多発したのである(一応ディケイド激情態の方が先だが、このフォームは強化形態と言うには例外感がある)。
これにより「本編最強とそれ以外での最強は分けよう」と言う風潮がファンの間で発生し、超クライマックスフォームは最強フォームの定義から外れる事となった。
尚、これらのフォームは後にバトライド・ウォー2において「究極フォーム」の新たな呼称が設定、ビルド・ラビットドラゴン等の最終回限定フォームも究極フォーム扱いされる様になった。
公式でも『仮面ライダーウィザード』の特別編ではディケイドが再登場した際、呼び出すフォームが再びライナーフォームに戻っている。そして、ガンバライジングのガンバライジング等の公式関連商品でもこれに倣ってか、他のライダーの最強フォームと並び立つ時はライナーフォームが選出される事が多くなった。とは言え、それが「最強フォームだから」なのか「最終フォームだから」なのかは、未だ曖昧なままであった。
また、バトライド・ウォーではクライマックスフォームの方が最強フォーム扱いされている等、まだまだ完全に定義付けされたとは言い難い状況にあった。しかし、本作ではイマジンの憑依が電王の重要なシステムとして設定されているので、その関係でクライマックスフォームを最強フォーム扱いしたとも考えられ、ライナーフォームは特例で超必殺技も使用可能。
この状態が漸く解消されたのは、『仮面ライダージオウ』である。本作では最強フォームの名義を持つレジェンドライダー玩具が多数登場し、最強フォームの言葉が公式化されたのだ。
そして最強フォームライドウォッチシリーズにおいてライナーフォームが選出され、『Over Quartzer』の最強フォーム集合シーンでもライナーフォームが再度選出された事で仮面ライダー電王の最強フォームはライナーフォームであると、漸く公式に定義されたのである。
実に、放送終了から10年以上経過しての事であった。
その後も公式の商品においては、ライナーフォームが「最強フォーム」として明確に扱われている。
例えば2021年の「CSMライダーカードセット EXTRA」では中間フォームとして「フォームライド 電王クライマックスフォーム」が収録され、「カードセット DECADE」に他の最強フォームと共に収録された「カメンライド 電王ライナーフォーム」と明確に区別されており、『仮面ライダーガッチャード』のレジェンドライダーケミーカードでもライドウォッチと同様に最強フォームはライナーフォームが選出された。
現在では、もはやライナーフォームが電王の最強フォームの扱いは揺るがないだろう。
……しかし、今度は「ライナーフォームにモモタロスが変身している」問題が発生する様になってしまったが。
概要にもある通り、本来ライナーフォームは良太郎個人がイマジンに頼らず変身するフォームなのだが、一方で電王の客演では、声優枠でレジェンド出演し易いモモタロスが大いに重宝されている。
その結果、「変身者はモモタロスなのに、最強フォームなのでライナーフォームに変身する」電王としては妙な事態が起こってしまったのである。
しかもモモタロスが出演したウィザード特別編はともかく、『Over Quartzer』の集合シーンに至っては、本人キャストではないのにモモタロス風の掛け声を発している(但し、変身前のソードフォームまででライナーフォームに変身後は良太郎っぽい掛け声に変わっている)。
また、最強フォームライドウォッチにおいては、クライマックスフォームとの混同すら見て取れる。
アーマータイム音声が「集まれイマジン!電王ライナー!」なのはデンカメンソードの事としてまだ言い訳が付くが、ライダー解説音声は「全てのイマジンと今1つに!行くぜ行くぜ行くぜ!」は、完全にクライマックスフォームの説明である……(デンカメンソードに集結してある意味1つになった…とも考えれば辛うじて何とかなるだろうがモモタロスの口癖は本編の様に応援してると取るのも流石に無理がある)。
関連タグ
電王 ソードフォーム ロッドフォーム アックスフォーム ガンフォーム