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防衛機制

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ぼうえいきせい

心理学用語の一つ。強いストレスから自分を守るために発動する心理的メカニズム。

概要

心理学精神分析で用いられる用語であり、危機や困難、欲求不満などストレスがかかる状況で精神的に不安定な状態に陥った際に、状況への適応、または不安定な状態からの脱却のために行われるメカニズムのことを指す。防衛行動の成熟度によって、主に4つのレベルで区分けされている。

20世紀前半にイギリスの精神分析の始祖とも言えるジークムント・フロイトの娘であるアンナ・フロイトが提唱した概念。曰く、防衛機制とは本能的欲求、衝動から自我を護ることを目的としている。精神的な病を持つものはこの防衛機制が上手く働かないことから本能的欲求を表面に出す事が多い、と言って良いだろう。

しかしながら現在では自我が認めたくない真実などから目を背けることに対して防衛機制が働くという解釈をされる場合も多い。

防衛機制は多くの場合無意識のうちに行われる為、下位のものは自覚無く作動することが多い。

防衛機制の種類

代表的なものは以下の通りだが、この他にも色々あるので興味が有ったら調べてみると良い。

抑圧

欲求や苦痛などを抑え込む。我慢ともいい、一般的な防衛機制とも言える。

やり過ぎレベルの強い抑圧は文字通り無意識の領域まで抑え込まれ、記憶として呼び起こすことが難しい状態に陥る場合もある。

そして人の我慢には限界があるため、早めに発散、消化しなければ精神衛生に悪影響をもたらすことになる。多用は厳禁。

類似するものに抑制がある。

否認

都合の悪い事実や認めたくない感情から目を反らし、否定する。最も原始的な防衛機制とされる。

  • 自分や知人が病気になった時に「そんなワケない、何かの間違いだ」と医者に詰め寄る
  • 好きな作品のメディアミックスや続編の出来が散々だった時に「○○なんて無かった」と言って話題を打ち切る
  • 自分の行動のせいでトラブルや不利益が生じたのに「俺は悪くねぇ!」と頑なに主張する
  • 不都合に対して証拠隠滅を図ろうとする

といったもの。

解決のための手を講じない上に、存在する問題を否定し通すために誤ったアプローチを取ってしまう(病気の自覚症状が出ているのに確定診断を避けるため病院に行かない等)こともある防衛規制で、状況の悪化に繋がる危険性を有する。また、度の過ぎた否認は、時と場合次第で肯定とも取られかねないこともあるため、注意が必要である。

合理化と組み合わさって、複合の防衛機制「最小化」になることもある。また、否認の対となる防衛機制は「受容(アクセプタンス)」。

逃避

現在の状況から逃げるという分かりやすいものである。防衛機制としてはどうにも対処出来なかったからその状況から逃げ出す、ということになる。

例えば

  • 仕事をミスして怒られたくないから仕事をズル休みする
  • 何事も人任せにして自身は責任を負わない
  • 試験勉強の前にとりあえず部屋の片づけを始める
  • 不安になる事を考えないように酒やドラッグで思考力を鈍らせ気分を高揚させる

というのは逃避である。

最も簡単に行えるが最も何の解決にもなっていない防衛機制である為、なるべく別の発散をした方がいいだろう。でなければツケがまわってくることとなる。

反動形成

センシティブな作品はもちろん左の人も相当この反動形成寄りの人物である)

抑圧されている感情と正反対の行動を取ることで感情を表に出してしまわないようにする。

  • 本当は相手が好き(感情)なのにそれを受け入れず、ツンツンして「嫌いだ」という意思表示をする(行動)⇒ツンデレ(重度)
  • 本当は怖い(感情)のに指摘されると「ビビってねーし!」と声を張り上げ恐怖の対象に突撃する(行動)⇒虚勢

といったものがこの中に含まれる。(※ちなみに「自分の感情を自覚したうえで表現が下手なだけのものや、『他者の話題にされるのを避ける』『他者を庇う』『自分を奮い立たせる』など具体的な意図をもって意識的に行うもの」はこの防衛機制には含まないことが多い)

この防衛機制は「弱っている姿を隠す(そうして仲間からの淘汰・敵からの攻撃を防ぐ)」ために出やすい傾向があり、「普段とても元気に振る舞っているが誰もいない所で一人で泣いている」等という形で抱え込み続けた結果、自重で崩壊、自傷に及んだり、最悪自殺に発展してしまう危険性もある。底抜けの明るさに違和感を覚えたら少し注意して観察してみることをお勧めする。限界を迎えてからは「助けて欲しい」の反動形成で「助けなんか不要だ、自分に構うな、踏み込んでくるな」と差し伸べられた手を払い除け、自己嫌悪に陥り、それを隠すために余計に明るく振る舞うという悪循環に陥ってしまう可能性もある。

攻撃

欲求不満の原因となるもの、もしくは無関係なものを傷付けることによって溜飲を下げようとするもの。

幼少期であればよくある他、成長後でも

等という事例は枚挙に暇が無い。

第三者に不利益が及ぶものであるため嫌われ敵が増え助けてくれる人が減る。だけで済めば良い方で最悪訴訟沙汰に発展して不利益が自分に返ってくる

同じ嫌われるなら格ゲーハメ技連発、FPS角待ちショットガン死体撃ち等で相手を苛つかせる程度に済ませよう。そういう界隈ならその程度挨拶である。ただし、やった以上やられても文句を言わないこと。

分離

感情と言動を切り離して捉える。即ち自分自身に降り懸かっている状況を自分自身の事柄というよりは一歩引いた位置から第三者のような目線で認識している状態を作る。

例えば自分が批難されている事に対して「私、批難されてますよね」と笑いながら言うというのは分離である。

状況を冷静かつ客観的に分析でき、パニックになりにくいという長所もある。事故や災害といった非日常に対して強い。

「隔離」とも言う。分裂とは分ける対象が大きく異なっているため、注意。

解離

感情や感覚だけでなく体験そのものを自身の意識から切り離す。

身近な例では「読書に没頭していて呼びかけられても気付かない」といったもの。

重篤なケースは精神疾患に発展する。

  • 外部からの刺激に対して反応が極端に鈍り、身体を動かすことも会話することも満足にできなくなれば解離性昏迷
  • 肉体や周囲と意識の間に距離ができて現実感を感じられなくなれば離人症性障害(離人症・現実感喪失症)
  • 記憶ごと切り離せば解離性健忘(記憶喪失
  • 切り離された記憶や感情から別の人格が形成されれば解離性同一性障害(多重人格障害)
  • ストレスを抱える自分を丸ごと切り離して全く別の環境の場所を目指し無意識のまま放浪してしまうのが解離性遁走

合理化

満たせなかった欲求に対して都合の良い理由を付けて正当化しようとするもの。よく例に挙げられるのがすっぱい葡萄寓話

「今日は調子が悪かった。このぐらいで勘弁してやる」等、フィクションではエリート系のキャラクターが失敗した際にこの合理化をよく行うが、「俺がニートなのはの育て方が悪かったせい」といった類の物言いもこの枠に入る場合がある。

理由づけのために他者を悪者にすると、(たとえある程度事実だとしても)周囲の目が厳しくなる可能性がどんどん上がるので注意。

だからと言って「地球温暖化も、不景気も、政治の腐敗も、お前の母親が巨人に食われたのも全部俺のせいだ!もう…嫌なんだ…自分が…俺を、殺してくれ……」と本当にそうであることからありもしないことまで何でも自分のせいにするのは精神衛生上不味い。何でもかんでも他人に被せても何も解決しないが自分を責めて抱え込んでもそれこそ何にもならないぞ!

摂取(取り入れ)

自分にとって好ましい他者の振る舞い、価値観、感情などを自分の内に取り入れ、自分を高めようとする動き。

幼少期に大人の言動から価値観や身の振り方を学習することから始まり、成長後も

等日常的に行われる。

うまく活用すれば、礼儀作法や言葉使い、社交能力等が上がるという嬉しい効果がある反面、方向性がズレて空回ると所謂中二病意識高い系といった中身が伴わない形で終わる。

後述の「同一視」と一纏めにして語られる場合もあるが、こちらは部分的な模倣に留まり、模倣対象と自分はあくまで別存在として区別が付いている。

同一視

現在と理想とのギャップに対する防衛機制である。

自分の憧れる人物や集団等と自分を重ね合わせることで自分を高めようと考えるもの。

前述の「摂取」と一纏めにして語られる場合もあるが、こちらは自身と対象の境界がより曖昧になる。

具体的には

  • 理想の自分像に近い人物の真似をしたり、自分が主人公の物語を作ったりして「理想の自分」を追体験する
  • 他者の力や業績を自分のもの・自分の手柄だと思い込んだりする
  • 自分を攻撃する者の性質・やり方を模倣する (攻撃者との同一視)

といったもの。

自分はあの有名人の親戚だ/自分はあの大手企業に勤めている/自分は偉大なる◯◯国の民である→だから自分は凄い(※実際に自分が何か手柄を立てたわけではない)」という思想もこれの典型である。

やり過ぎればただの鬱陶しい奴、度を越すと人格を疑われてしまう。親子間で生じれば「親の七光り」の他、所謂毒親問題にも繋がる場合がある。

近年のネットでは「自己投影」とも呼ばれがち。

投射(投影)

自分の欠点や後ろめたい感情を自分ではなく他者が抱えていることにする。本来「自己投影」と呼ばれるのはこちら。

「怖がっているのは自分なのに近くの他人に向かって『何だよ○○、ビビってんのか?』と言う」ようなもの。

ネットで言えば

等。

他者を悪者にして貶める防衛機制であることから社会ではあまりいい目で見られない。(言ったことが本当にそうだった場合でもあまり言い過ぎると白い目で見られてしまう)

ちなみに自身の主張が全くの誤りであると相手や第三者に証明され投射が暴かれた場合、「客観的にはそう見える要素があった(合理化)」「そうやって俺をいじめて楽しいか、このクズ野郎め!(攻撃)」などと別の防衛機制に移るケースもある。

退行

現在置かれた状況に対して子供のように振る舞って自分を守ろうとすること。表面的な振る舞いに留まらず精神的に幼くなることが多い。

今ある問題が無かった頃の状態に戻ろうとする、誰かに庇護してもらえることを期待する、欲求不満を表に出すのを許される存在になりたがる等の心理が働いた結果とも考えられる。

幼少期に兄弟ばかり構う親の関心を惹こうとしたり、他の異性と親しげな恋人などに急に甘えたり、というのは退行の一種である。ある程度なら可愛らしいモノだが、度を越すと非常に恥ずかしい態度である。

しかし逆に言えば恥ずかしい態度を周囲を気にせず取るということは恥など考えられないほど思い詰めている事の現れでもある為、引いたりせず肯定してあげたりしてまず落ち着かせよう。

置換

欲求の対象を別のものに置き換えることで欲求を満足させるというものである。

PS5を買いたかったが売り切れだったのでSwitchを買った、大トロが食べたかったが今月は懐が厳しいので普通のマグロで我慢した等というのがその例でありこのように買い物などではよくお目にかかれる。妥協ともいう。

心にモヤモヤは残るが代替品は手に入れているためそこそこ満足出来るお手軽な防衛機制である。

昇華

欲求不満などに対してエネルギーを向ける対象を別の事に置き換えて打ち込む。ここでいう別の事とは芸術運動など社会的に価値が有るとされる行為であり、置換と比べると全く異なる方向へと置き換える点が異なる。

失恋したのでを作る、社会への怒りを絵画や小説で表現する、推しへの想いを二次創作にぶつけて同人誌を出す、ムシャクシャして堪らないから気が治まるまでひたすら走り高跳びに挑戦する、等がこれに当たる。

補償

劣等感を自分の得意分野で補うという、昇華と同じく非常にポジティブな防衛機制である。例えば運動は苦手だから勉強を頑張る、というのがそれである。

実益や発展性の塊であるため好ましい機制。

ただし、その得意分野で躓くとどうしようもなくなってしまう。

転換

ストレスが身体症状として表れる。

体が震える手や足が動かなくなる、腰が抜ける、声が出なくなる、五感が鈍る、気絶する、食欲異常、嘔吐等症状は多岐に渡る。

身近な所ではやりたくないのにやらねばならない事(登校、出社、嫌いな上司からの呼び出し等)をやろうとすると頭痛腹痛に襲われる、眠れなくなる等が挙げられ、肉体には医学的な異常が発見されず、仮病と誤解されることも少なくない。

症状が持続する場合は適応障害の可能性があり、放置すると鬱病等深刻な精神疾患に繋がるので見逃さないようにしよう。

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