概要
2020年2月にスタートした『ヒーリングっど♥プリキュア』のキャスティング発表で、界隈は話題騒然となっていた。
主人公・花寺のどか/キュアグレース役に、『魔法少女まどか☆マギカ』の主人公・鹿目まどかを演じた悠木碧が選ばれたからである。
これを受けて、まどマギ本編の内容があまりにも残酷かつ鬱展開だった影響から、作品発表時にはまどマギ視聴者から「魔法少女…ピンク…名前が『○どか』…うっ、頭が!」「ラテ(またはラビリン)が『僕と契約して、プリキュアになってよ!』って言いそう」「妖精がキュゥべえ説」「黄色の子が3話あたりで死にそう」「脚本が虚淵玄じゃないよな?」「ラスボスがワルプルギスの夜なのか」などといった声がTwitter上で相次いだのだった。
ちなみに演じる悠木碧は、プリキュア役に選ばれた時のインタビューで「だって憧れのプリキュア役じゃないですか! 私だってちゃんと変身して世界を救ってみたい!」とインキュベーターをも恐れぬ問題発言をぶちかましている。やっぱりちゃんとしてなかったのか…。
本編では……
放送開始前からこれだけの反応であったが、よりによって本作はプリキュアシリーズ初の契約型システムが取られていることが第一話で判明。
ラビリンがのどかに対して誰かを助けるための力を欲しいかと問いかけ、のどかがそれを望んだのちに「のどか、ラビリンと一緒にプリキュアになるラビ!」のセリフが発せられた直後、どう考えてもアレを彷彿させると実況が爆発してしまった。
尤も、ほぼ同時期にまどマギの外伝作品がアニメ化したこともこの現象に拍車をかけていると思われる。
なお当然のことではあるが、第3話の悲劇は起こらなかった(ただし、それに匹敵するトラウマシーンは過去作にもあった)。そして本作でも壮絶な展開が……。
プリキュアのことを関係者以外には秘密にしなければならない……という状況では、「クラスの皆には内緒だよ☆」という例の台詞が盛んにつぶやかれている。
第15話でのどかに向けてラビリンが言った「その必要はないラビ!」、第19話での風鈴アスミのセリフ「その必要はありません」に反応した視聴者も多かった。
第31話からのどかがヒーリングっどアローで戦うようになり、2人とも弓使いであるという共通点が生まれた。
2人の制服交換ネタ。
結び方は違うが、ともに赤リボン姿がある。
のどかはプリキュアプリティストアの「Healin’Good♥Rain」にて実装。
のどかとまどか以外でも、沢泉ちゆと暁美ほむらは「文武両道、才色兼備にして冷静な性格」「ハイジャンで県大会記録を出す(ほむらの場合は体育の授業中)」、平光ひなたと美樹さやかは「いつもは快活でノリが良いが落ち込むととめどなくネガティブになる」といった結構な共通点がある。『まどマギ』本編では確執が絶えなかったほむらとさやかだが、出会い方が違えばまどかも含めてのどちゆひなのような関係になれたのかもしれない。
まどかとのどか、2人の辿った道
同じ声優演ずる鹿目まどかと花寺のどかは名前が一字違いでイメージカラーがピンクであることに加え、共通するキャラクター性、メンタリティを見いだすことができる。
2人は純真で心優しい少女だが、それにとどまらず誰かの役に立とうとするあまり、自らを危険に晒してしまいやすいのである。
まどかは平凡な自分に引け目を感じ誰かの役に立ちたいという思いからかなり安易に魔法少女になろうとする向きがあり、最初の時間軸では猫のエイミー一匹を助けるために契約したほどだった。
本編時間軸でも奴に唆されているとはいえ、魔法少女の危険性を相応に知った後ですら何度も契約に踏み切りかけた。
彼女を案ずる暁美ほむらによってその都度阻止されているが、ほむらからも「役に立たないとか、意味がないとか、勝手に自分を粗末にしないで!」と窘められている。
一方、のどかには本編開始前まで病気で思うように動けず長い間入院生活を送っていたという意外に重い設定があり、その影響で現在でも体力や運動能力は常人未満である(この点はむしろほむらの過去の姿に近い)。
のどかは一人では生きていけない体であったが故に自分がどうにか退院できるまでに回復したのは周りの多くの人たちが自分を支えてくれたおかげだと考えており、今度は自分が誰かを助けたいという思いが募り、契約前や変身不能で無力な状態にあってすらメガビョーゲンに立ち向かおうとする無謀な行動が序盤のエピソードでは目立っている(ラビリンや他のプリキュア達もこの点を心配しながら活動していく事になる)。
まどかは過酷な経験を潜り抜けた末に考え抜かれた決断を下し、あらゆる魔法少女たちの救済を果たすことになったが、一方のどかは敵組織ビョーゲンズの幹部・ダルイゼンとの間に凄絶な因縁を背負っていることが明らかになった。
自らと人々・地球を虐げ続けてきながらキングビョーゲンにビョーゲンキングダムを追われ窮地に陥ると(改心や反省の素振りすら見せずに)、のどかに自身を犠牲に匿ってくれるよう乞い求めたダルイゼンに対して彼女は「都合のいい時だけわたしを利用しないで!」と毅然と拒否して浄化することを決断した。まどか同様、過酷な経験を潜り抜けた上で下した決断であった。
『まどマギ』でまどかの自己犠牲的な優しさに付け込んで搾取しようとしたキュゥべえに、『ヒープリ』ではダルイゼンが対応していたとも言える。
しかし、ダルイゼンを浄化しきれなかった事でキングビョーゲンはネオキングビョーゲンに進化してしまう。結果だけを見ればのどかの決断が招いたのはキングビョーゲンの漁夫の利であった。ネオキングビョーゲンはダルイゼンを見捨てたのどかの決断をあざ笑い挑発するが、のどか達プリキュアは毅然と立ち向かう。
ネオキングビョーゲンを浄化して全ての戦いに終止符が打たれた。
しかし、最終回では人間を快く思わないヒーリングアニマルの存在やヒーリングアニマルは常に人間の味方と言う訳ではないという事実が明らかになった。
「地球環境を蝕む人間だってビョーゲンズのように浄化すべきだ」という主張にのどか達を苦しい戦いに巻き込んだ負い目のあるラビリン達は猛反発したし、そもそもテアティーヌがラビリン達に「プリキュアになってくれる人間を探してほしい」と命じたのがすべての始まりであるのに、そのテアティーヌが「いざという時がくれば人間を浄化する覚悟がある」と言い切ったため「ダルイゼンではなくテアティーヌこそがのどか達を都合良く利用し、搾取していた」と感じる視聴者もいる。
シリーズディレクターの池田洋子氏は2021年アニメージュ3月号のインタビュー内で、ダルイゼンの末路に対して「博愛主義が通用しない相手を見捨てる結果になりましたけど、のどかも自分の手を汚すという覚悟を決めた上での決断なんですよ。」と語っている。
また、同氏は放送終了から4ヶ月後のアニメージュ2021年8月号スタッフインタビュー内で、「ビョーゲンズが消滅したからといって、すべて終わってせいせいしたなんて、のどかは思っていません。キングビョーゲンを滅ぼしたことも、ダルイゼンを見捨てたことも、自分の責任と受け止めていると思います。ダルイゼンを助けたい気持ちはあった。だから苦しんだんです。最終的に彼を突き放したという事実は、のどかがこの先も抱えていくものだと思います。」と答えている。
余談
両キャラを演ずる悠木碧氏だが、プリキュアシリーズへの出演は2017年10月に公開された「映画キラキラ☆プリキュアアラモード_パリッと!想い出のミルフィーユ!」にクック役でゲスト出演するまで、長らく実現しなかった(その30分前のシリーズには既に出演していた)。だがそれまでにも以下の事が確認されている。
- まどマギの劇場版『叛逆の物語』後のインタビューで「ニチアサ風のまどマギをやってみたい」と、明らかにプリキュアシリーズを意識した発言をしている。
- 悠木氏は剣城あきら/キュアショコラが大好きだそうで、あきら役の森なな子にショコラの絵を描いて渡したとのことである。詳細はこちらの森のツイートを参照のこと。また、この悠木自身のツイートを見ると、そのハマりようは半端なものではないようである。
↑イメージ画像
- アニメ版「アホガール」にて悠木氏が演じる花畑よしこは『プリチュア』なるアニメの大ファン(原作設定)で、一部ファンから「アホガールのスタッフが狙ってやった!?」「キャラと中の人がシンクロしてる!」とか言われてたりする。
関連項目
- まどセン:ニチアサの別作品での中の人ネタ。
- 円亜久里/香久矢まどか:過去のプリキュアシリーズの「まどか」。彼女らについてもまどマギと絡めたネタがある他、それぞれ演者である釘宮理恵/小松未可子は『マギアレコード』において里見灯花、十咎ももこ役で出演。
- mktn/安定のmktn:プリキュア×まどマギの共通出演者ネタの古典的なもの。
それぞれを合わせたこんなイラストも。