概要
拳銃の構え方のひとつであるCARはCenter Axis Relock(センター・アクシズ・リロック)の略称であり、銃身軸の再照準という意味である。C.A.R.スタンスとも呼ばれる。
拳銃を斜めに傾けて両手で構えることで、片方の目を潰して一点の目で正確に狙うことや銃を奪われないようにしながら胸撃ちで正確に当てる、また、両手の親指同士を合わせることでリコイル(反動)の軽減を図るという技法である。
胸の前で銃を待機させる「High」、少し前に銃を突き出した「Combat High」、肘を90度曲げた状態でサイトをのぞいて構える「Extended」、完全に手を突き出して構える「Apogee」、と4種類に分けられている。
フルオート射撃の場合でもある程度リコリルが軽減されるが、正確な照準ができないために実用性は低い。
ライフルといった長身の銃は銃本体を自分の体の方に寝かせて照準を行わずに射撃する方法と水平に構えて射撃する方法がある。
またショットガンでは肘を90度に曲げ、その間にストックを挟んで反動を逃がし、片手で撃つという技法も存在する。
警察のトレーナーであるポール・キャッスルによってウィーバースタンスに代わる構え方として考案されたが、1995年に作られた技法であるにもかかわらず、2010年代になるまで知名度はほとんど皆無であった。
というのも当時は軍と法執行機関にしかトレーニングが行われておらず、民間人が知る機会が根本的に存在しなかったためである。
それ故にマイナーな技法だったため、知らない人間には変な構え方と鼻で笑われたという話もある。
しかし2011年に考案者であったポール・キャッスルが亡くなるとその技術がインターネットを通じて公開され民間での認知が広まっていき、映画『ジョン・ウィック』にてその独特なスタイルが好評を博し、近年の日本の銃が登場する作品でも頻繁に登場するようになった。
ただし、昨今の作品では銃を傾けて構えるだけでC.A.R.システムという誤認識も広がってしまっている。
また、そもそも近接戦闘を前提とした技法であるため、必要以上に距離が離れている場合にはこの技法を使う意味がなく、状況に応じてアイソセレススタンスと切り替える必要性がある。
サイトで照準する際は、銃を目元に近づけすぎるとスライドが後退した時に目に当たって怪我をするため注意が必要であり、拳銃を自身の体に近づけたり、間違った構え方をすると銃口の前に腕を出してしまう構え方である都合上、自身の体を撃ってしまう危険性もあるため、昨今のアメリカの一部の射撃場ではこの撃ち方を禁止している場合もある。
また、シングルカラムの拳銃で行うと、引き金を引いた人差し指が左手の親指の横にある手の皮に干渉することから若干握り方をずらす必要があるため、手袋を着けていない場合の射撃にはあまり向いていない。
余談だが、エアソフトガンで行う場合、射程を伸ばすためのBB弾に回転をかけるホップ機構により弾道が曲がり、狙いがそれてしまうため基本的に近距離以外ではあまり実用性はない。
登場作品
『ジョン・ウィック』
上述のとおり、この作品で一気に有名になった。劇中でウィックは大抵この構え方で構えている。
たまにアサルトライフルを傾けて撃っているが1作目に一瞬だけ使われた照準を行わずに傾ける構え方が正しく、2以降は近距離用のRMRサイトに切り替えているだけでC.A.R.システムではない。
ジョン・ウィックより先にC.A.R.システムにフォーカスを当てた作品で、主人公、サム・フィッシャーが拳銃でこの構え方を行う。コンヴィクションではMP7などの拳銃サイズのサブマシンガンでもこの構えを行っている。
のちにレインボーシックスシージにサムがゼロとして登場した際、拳銃を斜めに構えて持っているのはこれの再現である。(ただし斜めに傾けているだけでC.A.R.ではない)
『暴走特急』
1995年の映画であり、主人公のケイシー・ライバックが使用している。おそらく映画史上で初めてC.A.R.システムが用いられた作品である。
シーズン1第13話にてフランク・キャッスルがビリー・ルッソとの近接戦の際にこの構えを使用している。
ドライブがドア銃を構える際にこの技法を行っている。
おそらく、ドライブのモチーフである車とCARをあわせた洒落の意味合いがあると思われる。
なお、登場した時期はジョン・ウィックよりも早い。
A.I.M.S.の不破諫が仮面ライダーバルカンに変身している際にエイムズショットライザーでこの構えをしている場面がみられる。
主人公の弟である五十嵐大二が変身する銃のライダー、仮面ライダーライブは銃ライダーでありながら接近戦メインで戦う為、ライブガンでこの構えを行っている。
ヒロインである緑川ルリ子が使用しているが、特徴的な斜め構えではなくHighポジションのみの使用に留まっている。そのため直ぐにアイソセレススタンスに切り替えている。
主人公の森山真一が使用している。
『ベイビーわるきゅーれ』
主人公である杉本ちさとと深川まひろがこの構えを使用する場面がある。
『亜人』
佐藤対策班のメンバーが麻酔銃でこの構えを行っている。
『MGSV:TPP』
XOFの兵士が燃える男と対峙した際にSz.-336(架空銃)を斜めに構えている。
ただし、これは小島監督が絵として映えるようにするためにあえて演出として傾けさせたものであるため正確には異なる模様。
レオン・S・ケネディがこれに似た傾けた拳銃の構えをとるが、本来は左右の親指同士を銃の中心に合わせてリコイルを緩和するのだが、それを行っていないのでただ傾けているだけで正しい構えになっていない。それどころか銃を90度傾けるという半分ギャング撃ちのようなものも。後に発売されたヴェンデッタのレオンのフィギュアでは正しい構え方になっている。
レオンが敵との交戦距離が近い場合この構えに切り替える。また、モーション流用の都合かエイダ、ルイス、ウェスカーもこの構えを行う。
『CoD:MWII』
9mm DAEMONの腰撃ち時の構えに使われている。
『SPRIGGAN』
Netflix版アニメにて御神苗優がP226でこの構えでの射撃を行っている。
『ドラえもん』
2018年版のガンファイターのび太にて野比のび太がシングルアクションアーミーでこれに似た構え方を行った。(ただし拳銃は傾けていない)。
主人公の錦木千束がこの構えで敵を制圧している。また、劇中ではJan Vickというパロディの映画パッケージが登場しており鑑賞済みの模様。
レベッカが余興でこの構えを行っている場面がある。
PVではあるが登場人物のうちのひとりである夕桐アヤノがこの構えを行っている。
『V.I.P.』
敵のスナイパーがボサ髪(主人公)にナイフで迫られた際に咄嗟にExtendedからHighポジションの構えを行って銃撃する。
5本指の一人ルマジュールがこの構えで射撃を行っている。90年代後半を舞台とした作品であり、当時登場したばかりのこの構えで訓練を受けたことになる。
『鉄拳8』
ヴィクター・シュヴァリエが技でこの構えを使用する。
『ブルーアーカイブ』
アニメ版第7話にて砂狼シロコが洗面室に秘匿していたベレッタ92Fを使用してこの構えを行うが、発砲することはなかった。
これを受けてかゲーム版の公式4コマ181話でもKP85らしき銃でこの構えで射撃を行った。
関連イラスト
関連動画
C.A.R.システムレベル1 近接戦のデモンストレーション - Natural Tactical(2016年10月)
C.A.R.システムレベル2 近接戦におけるドローイング - Natural Tactical(2016年11月)