DATA
身長 | 60m |
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体重 | 3万t |
出身地 | 不明 |
特徴 | 賢さ・エネルギー吸収・怨念集合体・強固な皮膚 |
武器 | 放射熱線・引力放射能熱線・発達した犬歯・強靭な脚 |
概要
別名「白目ゴジラ」、もしくは「総攻撃ゴジラ」。
GMK版は歴代ゴジラで最も『最凶』又は『最恐』と言わしめるゴジラである。
日本政府は古代に棲息していた恐竜が水爆の影響で怪獣となったものと推定している。かつて一度東京に出現し、防衛軍の迎撃をものともしなかったが、ある科学者が制作した未知の毒化合物によって退治された。
ただし、当時の防衛軍は「防衛軍の攻撃が通用しなかったという事実が露呈すれば、国民が防衛軍の存在意義を疑問視しかねない」と危惧した為、表向きは「防衛軍の奮闘によって倒された」ということになっている。以降の防衛軍の兵士達はそれを事実として教えられており、真実を知るのは一部の政府高官だけである。
正体
人々がすっかり忘れてしまったからだ!
過去の歴史に消えていった多くの人達の叫びを、その無念を!
本編に登場する民俗学者である伊佐山嘉利の説明によると、その正体は古代の恐竜に太平洋戦争で犠牲となった数多くの人々の怨念が宿った姿であるという。つまり正体は人間である。
怨霊と化した多数の戦没者により生まれ、明確な意思を持って東京を破壊する怪物というとこの人物に近い。
前回の出現から約50年もの時間を空けて再び日本を襲った理由について伊佐山は、過去の歴史に忘れ去られていった人々の無念さを、現代人が忘れてしまった事に対して怒り、再び現れたと語っている。
また、よく「元が日本人なら日本よりもアメリカとか当時の敵国に向かうのが筋ではないのか」と突っ込まれがちで、劇中でも「日本のために戦い命を散らした人々の思念がなぜ日本を襲うのか」と疑問視されていたが、これに対して立花由里は、このゴジラには太平洋戦争の犠牲になったすべての人間=日本人だけではなく連合軍側や戦場となったアジア諸国の人々の魂も含まれているのでは、と推測している。
そういった描写を踏まえて、最初の出現時に続いてまたしても東京をまっすぐ目指す理由について、東京という街ではなくその中心部を目標としているのではないか、と解釈する評論も多いが、劇中では明確に描写されていない。
一方、既にこのゴジラにとって特定の国家や人種などはもう関係なくなってしまっているとも考えられる。事実、冒頭でアメリカの原子力潜水艦がこのゴジラに沈められたとされるような描写もあり、最初の標的こそ日本であったが、もし仮に日本を滅ぼした後は世界各地を回って他の国にも攻撃を仕掛けたのかも知れない。
特徴
本作のゴジラは他者に感情移入を一切許さない、全てを憎み破壊し尽くす『破壊神』として描かれている(メディア本でも『破壊神』と記載されている)。
最大の特徴はなんと言っても、歴代ゴジラで初の白眼となったその瞳であろう。
さらに下腹が太く脚部が非常に大きく、その一方で上半身=腕周りは撫で肩と言っていいほどスリムなフォルムになっており、見るからにズッシリとして安定性に優れたリアルなデザインをしている。2代目以降の歴代ゴジラたちが、シリーズ化に伴って段々と人に近い体型になっていったのに反して、今作のゴジラは初代に近い(背びれのデザインもかなり初代に寄せられている)、怪物性を追求した造形がなされており、見る者により恐怖感を与え感情移入を拒絶させる姿となっている。
劇中では意図的に殺意を持って人間に接しており、ゴジラは人間を見つけては所構わず踏み殺し、放射能熱線で町ごと焼き払っている。中には意図してのことかは不明だが、病院を素通りしたと思わせて尻尾で病院を破壊するなど、残忍でおぞましい破壊衝動・行動が強調されている。
しかし、劇中では攻撃された時や人間を殺す時を除いて建物を一切壊すことなく進撃している。このことから建物を壊すことには関心がなく、その興味の対象は人を殺すことであるとも考えられる。
また、護国三聖獣との連戦では、最初ゴジラは彼らには敵意がなくいずれも最初に攻撃を仕掛けたのは婆羅護吽、最珠羅、魏怒羅であった。このことからゴジラは彼らと闘うのは本意ではないが、自身を守るためやむなく反撃した可能性が高い。現に遭遇した彼らに対してどこか戸惑うような仕草を見せていた。つまり意外な事に他の怪獣に対しては向こうから自分に攻撃することが無ければ特に手を出すつもりはなかったようである。
ちなみに背鰭を上下に動かせるらしい。
また、ゴジラにはほぼ無敵と言われていたモスラを劇中で完全撃破したゴジラである(もっとも寿命が近かったとはいえ、2代目ゴジラがかつては成虫を破っており、自衛隊の猛攻ののち双子の幼虫に善戦しているところを見ると、こちらも頑張っている。ちなみに双子の片割れはこの戦いが原因で死亡している)。
知能および性格
知能の高さは元が人間のためゴジラシリーズでもかなり高い水準を有すると考えられる。防衛軍の捜索を翻弄してピンポイントに東京近くに出現した(初期プロットでは防衛軍を度々翻弄するのがかなり強調されていた)。一度は受けた相手の攻撃を繰り返して受ける事が無く、2度目に際しては用意周到に待ち伏せて迎撃するなど賢さが増している。奇襲攻撃を敢行した婆羅護吽、最珠羅の双方は1度目こそ攻撃に成功したが、2度目はほぼ失敗している。この知能の高さによって防衛軍による捜索網を逃れ続け、ついには関東本土への上陸を許すまで気づかず仕舞いに終わってしまった。終盤で発射された特殊削岩弾を千年竜王キングギドラに命中させるなど狡猾さも際立つ。
また、戦いにおける集中力もかなり高いと思われ、下記の熱線の精密さはもちろんの事、魏怒羅へ攻撃を集中してる真後ろから最珠羅が奇襲を仕掛けようとしたところ、逆に尻尾で弾き飛ばすという鋭い洞察も見せている。
しかし、婆羅護吽との戦いでは殺しに掛かるというよりはいたぶる様な戦い方をしたり、最珠羅のひっかきの後鬱陶しそうに頬をかく、魏怒羅の攻撃を吸収した際に笑みを浮かべる等、感情が無いというよりは意地汚い性格とも取れる描写がある。ただし、婆羅護吽戦に関しては崖を登ろうとする婆羅護吽を尻尾で何度も打ちのめした後、見逃すかのようにゴジラが隙をつくったことや、その場をヘリコプターで報道していたカメラマンが「逃げろ!赤い怪獣!ゴジラが狙ってるぞ!」と言っていることから婆羅護吽を殺害する気はなく、婆羅護吽を打ちのめすことで、戦意を喪失させるだけに留めた可能性がある。
その為、上記の感情移入を拒絶しているのではなく、ただの悪党に見えるという声も少なからず存在する。
身体能力
ズッシリとした巨体に似合わず足が速いのが特徴の一つ。
ミレニアムシリーズのゴジラは総じて足が速いのだが、こちらは「走る」というよりも、「早い大股歩き」であり、地響きを起こしながら上背で迫ってくる姿は恐怖心を煽る。
同時に強靭な脚力を武器にした踏みつけや蹴り攻撃もあり、初戦の婆羅護吽(自身の半分の大きさしかない)を徹底的に痛めつけている。
歴代でも特に発達した犬歯は噛みつく際に有効性があり、積極的に噛みつきに行くという点でもリアルである。
加えて顎も巨大な為噛み付きの威力も絶大であり(他のゴジラにおいても共通)、魏怒羅の鱗を貫通し流血させるほど。
また格闘能力も高く、当時のガイドブックの一つによると「残留怨念の一つに戦前の優れた格闘家がいたのかもしれない」とのこと。
表皮もかなり強固であり、防衛軍の放った特殊削岩弾をものともせず、表皮を穿孔しようとしたドリルは捻じ曲がって破損してしまった。
他のミレニアムシリーズにおいては防衛軍もしくはそれに類する組織の持ちだす新兵器等で皮膚を貫通される事があったが、本作では一切貫通させていない。ただし、覚醒直後の千年竜王キングギドラが放ったビックスパークボールを受けた際には手傷を負っており、以降の防衛軍はその傷口を狙った攻撃を実行している。
放射熱線
その口から吐き出す炎は、再び火炎が青白くなった。勿論のこと放射能の熱線を得意とするところであるが、歴代でも屈指の戦略的機能を有する。
「バースト効果」が発生したのは今作が初で、「狙い撃ち」も同様。その貫通力と射程、正確さでは歴代でも随一の代物。ただし全使用例においてではなく、一度だけに限定されることから、余程にエネルギーを集約したのではないか、と考えられる。
- どれ程かというと、恐らくではあるが原爆に近い破壊力を持っている。その証拠に遠く離れた地域の学校からキノコ雲が確認できており、中程度の地震が起きるほどである。また上記の貫通力と正確さで、防衛陸軍が展開した地上部隊の80%~90%を吹き飛ばすなど極悪さが増している。
そして本作で一番の凶悪技が、千年竜王キングギドラの光線エネルギーを吸収して放射熱線のエネルギーに加算するというもの。無敵と思われた千年竜王キングギドラでさえ、その一撃の前に木っ端みじんにされてしまうなど、凄まじい力を見せつけた。
- 千年竜王キングギドラの「ビッグスパークボール」に熱線を反射されたことへの完全な意趣返しである。
最後
護国三聖獣の残存エネルギーによって海底に押し戻され、一時的に動く事が出来なくなったところに立花泰三准将の乗り込んだ「特殊潜水艇さつま」が体内に侵入(上記の性格から、ゴジラは自分からさつまを飲み込んだともとれる)。体内から放たれた特殊削岩弾が肩の傷を貫通し、内臓から肩口にかけて穴をあけられてしまう。
それでも再浮上して放射熱線を吐こうとするが、その熱線器官も穴が開いていたようで首の傷から熱線エネルギーが吹き出し、大ダメージを負って絶叫しながら夥しい流血と共に海底へと沈んでしまう。
直後にゴジラから脱出した立花准将のさつまに対し何とか熱線を吐こうとしたものの、もはやゴジラの体はその強大なエネルギーに耐え切れず、木っ端みじんに爆散した。
この時、護国三聖獣の残存エネルギーにより、ゴジラの憎悪の念が一時的に弱くなったため、
削岩弾が貫通し、体内の放射気管が暴走したのではないかとも語られている。
いずれにせよ最終的に自身の肉体を破壊したものは正に自身の熱線だったのである。
・・・しかし
全てが終わったかに見えたと思われていたが、
まるで将来の復活を示唆するかのように、東京湾の海底でゴジラの心臓のみが鼓動を続けていた。
ゴジラの恨みは正に尽きることはなく、永遠に消えることはないのかもしれない。
このように一作品のみの登場ながら、映画鑑賞者に絶大な存在感と恐怖を与え、語り切れないほどのインパクトを残していったゴジラでもあり、ゴジラファンに決して忘れられない恐怖と存在感を残したゴジラなのである。
この物語は終わるのか?
新たなる戦いが始まるのか?
(地上波放映版ラストのテロップ)
余談
- GMKゴジラは歴代でも珍しく背鰭を上下に動かせる(参照)。
- スーツは婆羅護吽との体格差を表現するため、歴代ゴジラの中で最大となる頭頂高220センチのものとなった。なおスーツ自体は茶色で、巨大さを出すためブルーライトを当てることで従来のゴジラ同様の黒色を表現している。眼球の色も日中のシーンと夜のシーンでそれぞれ配色を変えている。
- スーツアクターは吉田瑞穂。彼は以前にこのゴジラが登場したGMKと同じく、金子修介が監督を務めた『ガメラ2 レギオン襲来』にてレギオンを、それとほぼ同時期に製作された『平成モスラ』シリーズにてデスギドラとダガーラを演じ、さらにその後、『小さき勇者たち~ガメラ~』ではジーダスを演じた。
- 一方これに敢えて黒目を入れてみると、がっちりとした首回りや顎のデザインのおかげか、シリーズでも随一ヒロイックで凛々しい面構えのゴジラに様変わりする。目のデザインがいかに全体の印象を左右するかがわかる一例と言ってよいかもしれない。
関連イラスト
関連タグ
冷凍凶獣の惨殺:デンマーク唯一の怪獣映画。劇中終盤にて、人間の兵器で倒されたレプティリカスの体の一部が人知れず海中で生き延びているという描写がGMKゴジラの心臓に類似している。
ペロリゴン:本作とペロリゴンのストーリーにはいくつかの類似性が見られるだけでなく、水木しげる作品の歴史と「第一次怪獣ブーム」・ゴジラ・ガメラには関係性があると判明している。