霧崎(ウルトラマンタイガ)
きりさき
「よき旅の終わり、そして…始まり」
演:七瀬公
概要
ウルトラマントレギアの人間態で、半分黒、半分白のブラウスのような服を常に着用し(※過去作の似たような立ち位置の悪役らと比べると、劇中では一度も衣装チェンジ等を行っていない)、無表情ながらもどこか不気味な雰囲気を漂わせた青年の姿をしている。
フルネームは今のところ不明。
変身アイテム「トレギアアイ」を使用して本来の姿であるトレギアに変身する。
この姿でも異空間を通して怪獣を召喚したりする等、ある程度の能力は行使できる。
また、第1話では自分の体から伸びる影がトレギアの形になるという演出もあった。
ポップコーンやビーフジャーキー、タピオカミルクティーなど、何かしら食べ物を片手に現れる事が多く、演じる七瀬公はカウントダウンメッセージにて「地球を楽しんでいる様」を霧崎の見所の一つに挙げている。
宿敵や元親友とその弟子をはじめ、ウルトラマンという種族自体、地球の食べ物には好奇心が強いので、そこはトレギアも「ウルトラマン」と言える。
また、その好奇心は食べ物に留まらず、物語中盤からは社交ダンスなどの芸術にも進出しており、派手な傘を持って街の狭い歩道で人の迷惑もはばからずに練習し警官を呼ばれてしまうという一幕もあった。
第21話の発言によれば、地球のジグソーパズルに感銘を受けたらしい。
ちなみに、ウルトラ戦士の地球での姿は、
…といった具合に多岐にわたる。
このうち霧崎はメビウス以来となる擬態型と思われるものの、なぜこの姿を選んだのかは現在のところ不明。
劇中での行動
第1話にて、ヴィラン・ギルドによるゼガンのデモンストレーションを傍観しつつ、自らも「贈り物」と称してヘルベロスを召還(この際、手に持っていた青い風船が空に浮かんで魔方陣に変化し、そこから怪獣が召還されるという演出が為されている)し、結果的にオークションをぶち壊している。
またこの時、上記の台詞を発してタイガが現れる事を予め予見していたかのような言動を取ったりもしている。
初変身を披露したのは第2話。そのラストでは、自ら子供に風船を与えて喜ばせた所で自らその風船を割るといういかにも彼らしい行動を見せた。
第4話にて宗谷ホマレが(第6話の描写を見る限り、その正体がトレギアである事は知らなかったようだが)その存在を熟知している事から、どうやら彼がE.G.I.S.に加入する前から地球における裏社会にて度々その姿を見せていたらしい。
ちなみに劇中で『霧崎』の名が出たのはこの第4話が初である。
なお、第6話にてガピヤ星人アベルに見抜かれるまでその姿が仮の姿だとは誰にも見透かされてこなかった模様(同じ光の国の出身であるタイガですら、初めて彼の姿を見た際『トレギアと雰囲気が似ている』と感じたのみで、同一人物だとは気づいていない)。
第12話でも、ゼラン星人オショロと顔見知りであるような描写があるが、オショロもまた彼の正体については知らなかった。
タイガ達に直接ちょっかいを出す場合以外はこの姿の事が多く、第1クールの第12話までは現れる敵にほぼ毎回何らかの形で関与してはタイガが怪獣リングを使うように仕向け、手持ちのリングを増やさせている。
また、総集編を兼ねた第13話では初めてこの姿でヒロユキの前に現れ、
E.G.I.S.屋上にてタイガと会話していた彼と接触。
「見ていたよ。ずーっとね」
これまでタイガが怪獣リングを使った場面を回想しながら高笑いし、
不気味な言動に怪しむ素振りを見せたヒロユキに対して
「君は何も知らなくていいよ。何もね…」
と告げると共に吐息の衝撃で怯んだヒロユキに顔を近づけ急接近。
「私は霧崎。そのうち忘れられない名前になる」
と怪しげな言葉を言い残し去っていった。
蠢きだす狂気、引き裂かれる絆(第14話~)
そして2クール目に突入した第14話では戦いに赴くヒロユキを制止しようとしたイルトを光線で妨害。タイガアクセサリーを奪還してヒロユキに手渡す。
「君を助けたくてねぇ」
タイガたちが戦闘を始めるとギガデロスが暴走した原因が自分が感情を埋め込んだせいということをイルトに伝えて煽るなど相変わらずの悪辣ぶりを発揮。
ギガデロスに苦戦するタイガが怪獣リングを使おうとするのを見るや嬉々として「そうだ!私の指輪を使ってアイツの力を封じろ!」と叫び、怪獣リングを使った直後にタイガのカラータイマーから黒いモヤのようなオーラが漏れ出るのを見ると「それでいい…」と不気味にほくそ笑む。
それを見たイルトに自分の狙いがあのウルトラマン=タイガであることを指摘されると「後はよろしく」と後始末を押し付け去っていった。
その後別の場所からタイガがギガデロスを撃破し怪獣リングを入手したのを見届けると
「タロウの息子よ。もう少しでお前はウルトラマンの歴史に名を刻む…」
と意味深な言葉を残して去っていった。
そして第15話にて、タイガを標的とした霧崎の恐るべき計画がついに動き出し、その詳細が明らかとなる。
その狙いとは、タイガを闇堕ちさせ、自身の傀儡に引き込むというもの。また、手駒にした彼をも使い、かつての故郷、光の国への侵攻までも企んでいた。
その全容についてはこちらを参照。
しかし、ヒロユキやE.G.I.S.の面々、さらにタイタスやフーマの尽力によりタイガが救出され計画は失敗。さらにタイガはトライストリウムの力までも手にしてしまう。
予想外の事態に狼狽しつつ、劇中で初めて怒りの表情を浮かべてトレギアに変身し、タイガに戦いを挑むがその圧倒的な力の前に惨敗。
戦闘後、一人彷徨う霧崎は、取るに足りない地球人と放置してきたヒロユキの存在の大きさを思い知りつつ、虚勢、虚脱、狂気、その他ありとあらゆる負の感情を詰め込んだような、笑いとも怒号とも慟哭ともつかぬ絶叫をあげるのだった。
加速する好奇心、絶望への誘い(第17話~)
しかし、これで終わる彼ではなく、第17話からはヒロユキに目をつけて行動を開始。
その第一歩として、怪獣誘導装置を転売しようとしていたセモン星人ミードをE.G.I.S.が護衛するように誘導し、装置を取り返すべくミードを追ってきたペダン星人との乱戦に突入させる。さらにその最中にペダン星人一体を背後から瞬殺してヒロユキの前に現れると、装置を遠隔操作してデマーガを召喚、変身しようとするヒロユキに「戦闘中の仲間と大勢の民間人、どちらを危険に晒すか」という悪辣な問いかけをし、彼の心に揺さぶりをかけた。
結局ヒロユキは変身しデマーガは撃破されたが、事件解決後に連行されるミードを霧崎は物陰から射殺。一瞥をくれつつ、先程ペダン星人から奪った武器を用済みとばかりに放り捨てた。
(カナをかばってミードは撃たれたが、霧崎の性格を考えればそうなることは恐らく見越しており、ミードが倒れれば捨て駒の排除、仮にカナが倒れてもヒロユキへのより深い精神攻撃という、どちらにせよ霧崎にとって好都合でしかない二者択一であった。)
その後、一人オフィスに残っていたヒロユキの前に突如現れ、彼の変身を「仲間を危険に晒した」と嘲笑いつつ、ついにその正体をヒロユキに明かす。
「私は君に興味が湧いてきた。だから、君にも」
『「私のことを』」
『もっと知っておいてもらいたいんだ…。』
驚愕するヒロユキとタイガをよそに、トレギアは不敵に笑いつつモニターを介してどこへともなく姿を消した…。
次いでの第18話では、地球で平穏に暮らしていたとある宇宙人を焚き付けて破壊活動に駆り立て、E.G.I.S.をおびき出す。さらに事件解決直後、宗谷ホマレを奇襲。その際に「君にも知って貰いたいんだ……『絶望』の味をね。この甘美なる味わい……君もすゥ~ぐ虜になるさァ」と、狂気染みた言葉で挑発した。
ホマレが入院する中、今度は人間大の大きさに変身してゴロサンダーを召還、市街で暴れさせた。
ヒロユキがタイガに変身し、カナを人質にとったゴロサンダーと戦っているのを確認すると、狂気の笑いを発しながら「こちらもゲーム開始といこうか」と口にしつつその場から離れている。
無事にカナを救ったヒロユキのシーンから、E.G.I.S.事務所でホマレの許へ向かおうとする旭川ピリカのシーンに場面が変わると、彼女の背後を取るように現れた。
そして、奇しくも壁ドンめいた闇の仕草でピリカを押さえ付けると、「ヒロユキ君には闇に堕ちてもらう」と宣言し、その為に彼女に何らかの細工を施そうとしたが、直後にピリカから何やらただならぬヴィジョンを見出だすや驚きの表情を浮かべる。直後、今度は狂喜の笑いを上げ「計画は変更しよう」と言うと、彼女のこめかみに通電し気絶させ、あっさり手を引いた(尚、ピリカには一連のやり取りは悪夢の類と認識されている)。
迫りくる終末、滅亡の引き金(第21話~)
第21話では、第18話でのゼットンによる破壊活動で母親が重傷を負った田崎修を助け、命の恩人として彼に接触する(もはや説明不要だが、これも霧崎が仕組んだいわば自作自演である)。彼の宇宙人に対する憎悪を煽りゴース星人を襲撃させると、飼い主を助けるため現れたパンドンをタイガと戦わせ、倒させようとした。寸前で事情を知ったタイガが撃破を思いとどまると、自ら変身してパンドンを撃破。そのままタイガと戦闘になるも、軽くあしらうのみで手を引き、霧崎の姿に戻って立ち去る。
「ありがとうタイガ!そして工藤ヒロユキ…。計画通りこの宇宙船からあれを引き放ってくれた」
彼を追った先でヒロユキ達が見たもの。それは、ゴース星人の円盤にあった地底ミサイルを霧崎が打ち出し、それを以て「惑星の魂」と伝わるエーテルを刺激して「宇宙が恐れおののく存在」を呼び寄せる瞬間だった。
ピリカに接触した際に見たビジョンからその恐るべき存在を知った彼は、もはや人の心を弄ぶことは勿論、ヒロユキを闇に誘うことすら暇潰し程度にしか考えておらず、この一件はすべて、地底ミサイルを手にする霧崎の目論見のカモフラージュでしかなかったのである。
目的を遂げた霧崎は「君か、君の大事なものすべてか、どちらの消滅を君が選ぶか見届ける」とタイガに言い放ち、その場から消え去った。
その後、第23話でのニセウルトラマンベリアル出現に便乗し、地球を訪れたウルトラマンゼロにトレギアの姿でちょっかいを出す。終盤にウルトラマンゼロが地球を去るのを見届け、彼の迷いのない「つまらない」在り方と対比してタイガを「やっぱり面白い」と評しつつ、近づきつつある災厄に焼肉ポーズばりに体を仰け反らせて狂喜していた。
「さあ、パーティーの始まりだ…」
そして、第24話にてついに「宇宙が恐れおののく存在」=宇宙爆蝕怪獣ウーラーが地球に襲来。
「人としての自分」と「ウーラー抹殺という使命を背負った自分」との間で揺れ動くピリカの前に現れ、「地球が滅ぶか自身が滅ぶか、どっちにしろバッドエンド」と嘲笑う。
ウーラーを呼び寄せた理由を「単に面白いから」と言い放ち救いようのない外道ぶりを見せつけつつ、「最後に残るのは虚無」「光も闇も全部ぶっ壊れればいい」と持論を語るが、逆にピリカから「あなたの周りに何もないだけ」と一蹴されてしまう。その発言には思うところあったのか、彼にしては珍しくムキになってピリカを罵倒するが、彼女には一切取り合われなかった。
その後はギャラクトロンMK2を召喚してタイガと戦わせていたが、その最中、休眠状態だったウーラーがついに行動を開始。ギャラクトロンを容易く「食べた」ウーラーに対し、独り言のように語りかけた。
「おはよ。腹ぺこ怪獣くん。そいつはほんの朝食代わりだ」
余談
霧崎を演じる七瀬は年代的には平成三部作の世代であり、実際、幼少期に『ウルトラマンティガ』、『ダイナ』、『ガイア』を、変身アイテムを握りしめながら観ていたという。
また七瀬はオーディションはヒロユキ役で受けており、ヒロユキ役の井上裕貴と最終選考まで残り、そのあたりでメイン監督の市野龍一によって霧崎役に決まったらしい。
これまでの新世代作品と同様、霧崎もまた物語を通して暗躍する人間型の宿敵ではあるが、過去作に登場した連中が最初の頃はどこかミステリアスな雰囲気を纏わせていたが、物語が進むに連れて手段を選ばなくなるうちに発狂したりやたらハイテンションになって暴走気味になったりと精神的な余裕がなくなって激しく感情的になりどこか人間臭い部分が露になっていく事が多かったのに対し、霧崎の場合は第16話にて自身の計画が一度破綻して以降も現在に至るまで特にこれと言った大きなキャラ崩壊を起こす事もなく一貫して底の見えない余裕に満ちた雰囲気を維持し続けている。
その第16話においてはトライストリウムの登場に初めて驚愕し苛立ったような表情を見せたり、同話ラストにて発狂したかのような高笑いを上げたりこそしていたが、次の回からはいつも通り余裕綽々のテンションに戻っていた。
また第24話にてピリカの発言に対しても若干面白くなさそうな表情を浮かべてはいたが、依然として表面上の余裕を崩す事はなかった。
彼の余裕の仮面が剥がれる日は来るのだろうか…?