演:武田航平
概要
『仮面ライダーキバ』の1986年パートの主人公。1963年10月8日生まれの23歳。さくら幼稚園時代はパンダ組に所属していたらしい。
紅渡の父で音楽をこよなく愛するバイオリニスト。ファンガイアとの戦いに巻き込まれるのではなく自ら飛び込む。
性格はキザかつ底抜けの自信家で挙動も大袈裟。その自信に相応しくバイオリンの腕前は非の打ち所がない。また、かなりの女好きで女性を見れば見境なく声をかける。女性を口説いた直後に別の女性を口説くこともザラで、「俺のために争うな。2人まとめて愛してやる」という台詞も彼の恋愛観を表している。
さらに毎晩豪遊しては自分の演奏を聞かせて代金を踏み倒すという(曰く「俺の演奏は一曲10億ドル」)、非常にデタラメな私生活を送っており、他人に迷惑をかけてもどこ吹く風、己の欲望のままに生きる奔放かついい加減な男。
しかし本気で惚れた女や音楽に対しては真摯であり、音楽を汚す者は誰であろうと許さず、本気で惚れた女性にはどんな無茶をも厭わない。(彼曰く、運命の人を信じているロマンチストな所があり、「1度目偶然、2度奇跡、3度目必然、4運命」と出会った回数で判断しているのだとか。また、女を見る目が無いわけではなく、相手の機微に気付ける目を持っており、彼なりに真剣に女性と付き合っているのかもしれない。)
「人の心は音楽を奏でている」と語り、音楽を冒瀆する者には激しい怒りを見せる。またファンガイアに遭遇しても、大切なものの為ならば全くひるまず立ち向かう強い心も持つ。その性格上、彼によって人生を狂わされた人間もいれば改心するファンガイアもいるなど、良し悪しは別としてその存在が周囲の人物に何らかの影響を与えている。これらは連鎖的に22年後の自分の息子の渡へと伝わり、彼の成長の要因となっている。
服装は明るい色のテーラードを好んで着る、昭和当時の流行を反映したオーバーサイズフォーマル寄りコーデを愛用する。一方劇場版で2008年に訪れた際は即座にジャストサイズのカジュアルコーデに切り替えており、あくまで「外(女)からどう見えるか」を意識し流行に即したオシャレを好む模様。
好物はオムライスで「素晴らしきオムライスの会」なる奇妙な同好会の名誉会長を務めていると自称するほど。しかし、気に入った女性が作ってくれたものなら、発展途上でも喜んで食する。
糸コンニャクと自分にたてつく男が嫌いでコーヒーが苦手。それとカナヅチ。
劇中の行動
前述の女癖から「素晴らしき青空の会」に所属する麻生ゆりに一目惚れし、彼女にしつこく付きまとう。当初は嫌われていたが、ある一件を機に彼女との距離が急速に縮まり、さらにはイクサの装着者となる。
1000年に一人の天才と呼ばれながらも、その実は誰にも自身を理解されておらず、後に奔放かつ音楽に深い理解を持つ真夜に好意を持つようになり、(但しゆりと共にいようともしていたため好意が移りきった訳ではない)、彼女と一緒にヴァイオリン「ブラッティ・ローズ」を作成する。彼女と心通わせたことでキング(バットファンガイア)に真夜共々狙われることになり、彼女やゆり、そして元ゆりとの恋敵である次狼を守るべく、キングから離反したキバットバットⅡ世の力を借りダークキバに変身する。だが、普通の人間では本来扱うことのできないダークキバの負担が彼の命を蝕んでいき、確実に命を縮める事になる。
それでもなんとか渡との共闘でバットファンガイアを撃破するも、彼の身体はすでに限界を超えており、ゆりや次狼達に別れを告げた後、真夜の膝の上でブラッティ・ローズを抱えながら眠るように息を引き取った。
「そうだ…それだ…それが俺の本当の、音楽だ……」
この一件で、渡は大きな成長を遂げる事になる。
また、他にも別件で音也の時代にやってきた名護啓介の成長のきっかけにもなっており、そもそも渡や名護が過去に来られたのは次狼たちが渡や素晴らしき青空の会を守るように頼まれたことで行ったことである。さらに麻生恵にも音也の持論がゆりを通して伝わっている描写があるので、現代編に登場せずともその影響は大きい。加えて、襟立健吾がキバの正体を探るために依頼した霊媒師の力で魂が呼び出され、渡に憑依してしまうアクシデントが起こった事も。
バイタリティ
音也を語る上で外せないのが、女性遍歴、バイオリンの腕前、そして恐るべきを通り越して無茶苦茶なレベルのバイタリティである。
元々ファンガイアスレイヤーを一発で使いこなす程に身体能力が高く、手先も器用。足指を曲げた状態で爪先歩きをするという「紅家に代々伝わる特技」があり、渡にも遺伝していた事が彼を息子と確信する切っ掛けの一つになっている。
劇中では最もイクサを使いこなしており、プロトタイプにもかかわらず現代編でキバや名護イクサが苦戦する程の上級ファンガイアですら軽々と圧倒している(1986年のイクサは最初に正規装着者として選定されたウルフェン族の次狼が病院送りになるほどのバックファイアが発生するが、音也は気合で歩き続けられる程度の消耗で収まっている)。
さらには自分を止める為に現代である2008年からやってきた(設定上4倍以上の腕力を持つ)キバ エンペラーフォームさえ、渡の決意が固められなかったとはいえ一騎討ちで圧倒している。父親の力恐るべし…
さらに(恐らくキバットバットII世の補助も大きいだろうが)人間どころかファンガイアですら負荷に耐えられない仮面ライダーダークキバの力を三度に渡って使いこなし、しかも三度目の時はイクサで先代キングと戦ってイクサを破壊されるという大ダメージを受けたにもかかわらず、正史においては恐らく単独で先代キングを撃破したという怪物である(余談だが本編終盤で先代キングが復活した場所は音也に倒された湖と同じ場所なのだが、現代では干上がっているため、ダークキバの攻撃(キングスワールドエンドと思われる)で吹き飛んだ可能性が高い)。
本編外
『クライマックス刑事』
『仮面ライダーキバ』初の映画作品だが、基本的には『仮面ライダー電王』の世界に『キバ』のキャラクターがゲスト登場する構成になっている。
1986年パートで鈴木一哉刑事の父親である鈴木一馬刑事に職務質問されていた。
『魔界城の王』
『キバ』の単独映画作品。
レジェンドルガの復活を阻止しに1986年にタイムスリップした渡と知り合うが、自分の息子とは到底信じられず、証拠品の2000円札を見ても「あり得ないな!我が日本国国家がこんな中途半端な札を発行する筈がない」と頑として信じなかった。ただし、自分を逮捕しようとした女性警官を口説こうとする所は相変わらずである。
誘拐容疑を掛けられて警察に追われた末に、息子共々刑務所に打ち込まれ、杉村隆やゼブラファンガイアの暴動に遭遇し、これを鎮圧する。いつの間にか未来に帰った渡に思う所があったのか、今度は彼がゆりと共に2008年に訪れ、渡を自分の息子と確信するに至る。白峰天斗に攫われた麻生親子を追って魔界城にやって来るが、今度は渡がレジェンドルガの洗礼を受けて飛翔態になってしまう。万策尽きたと思われたが、音也が全身全霊で渡を受け止めてから呼びかけた事で、本来解けるはずの無い洗礼が解け、先代仮面ライダーイクサとしてキバ エンペラーフォームに助力し、仮面ライダーアークに挑みかかった。
事件解決後、渡が通っていた高校の文化祭で渡と共にバイオリンの演奏を行い、渡に別れを告げてからゆりと共に過去の世界へと戻って行った。
渡に女性の気持ちを理解させる為に女装させるシーンがあるが、実は本気でメイクした所、劇中より可愛くなってしまったという撮影秘話がある。
マミーレジェンドルガとの戦いでイクサのマスクが破損したため、仮面ライダーアーク戦ではマスクを外した(武田氏が実際にスーツを着た)状態で挑んだ。爆風を伴う攻撃をまともに受けた筈なのに生き延びるとは恐るべし。
余談だがこのシーン、テスト段階で爆発なしで走った際はスーツの重さのため、エンペラーフォームとして併走する高岩成二氏に付いていけず合わせてもらうことになったものの、本番になるとあまりの爆発音の大きさにビビって本能的にスピードを上げてしまい、あとで高岩氏に半ギレされるまで気付かなかったと後のインタビューで明かされた。
なお、2020年に商品化が決定した「S.H.Figuarts 真骨彫製法 仮面ライダーイクサ」では音也の頭部パーツが付属しており、このシーンを再現できる。
コミカライズ版『魔界城の王』
テレまんがヒーローズに掲載。
過去にタイムスリップする描写がオミットされているどころか、渡が息子だという事をあっさり信じているという差異がある。しかし、それを除けば原作の軽い音也そのまんまである。
また、洗脳の解き方が原作とは大幅に改変されており、バイオリンの音色を聞かせて他のレジェンドルガにされた人々も元に戻すという方法になっている。
なお、「2人で散歩なんて昔を思い出さないか?」というセリフを口にしており、この世界の音也は何らかの方法で渡と会っていたのでは無いかと思われる。しかし、2008年自体の渡は心当たりがないような反応だった。音也のジョークと見るか、未来の渡が過去に行ったと見るかは視聴者の想像に委ねられている。
『小説 仮面ライダーキバ』
本編のリメイク作品。
過去編だけに登場するのは本編と同じだが、本作の過去編にはイクサが存在しないためファンガイアスレイヤーだけで複数のファンガイアを撃破している。
『仮面ライダーディケイド』
「ネガの世界」の管理者として並行世界の音也が登場。
ダークライダーと呼ばれる悪の仮面ライダー達(リュウガ、オーガ、ダークカブト)を統率する完全な極悪人であり、原点同様にダークキバに変身するが、変身の副作用で死亡する事はない(恐らくは改造人間か怪人の擬態)。
リュウガ、オーガ、ダークカブトがディケイドコンプリートフォームに倒された後は逃走し、彼のみ生き長らえる(その後の行方・動向は不明)。ただし、何故か髪が黒髪から亜麻色に代わっている事を除き性格は変わっていない。なんなんだアンタ。
ファンからの呼称は「ネガ音也」。
なお、本作には紅渡も登場しているが、こちらとは無関係と思われる。
『仮面ライダージオウ』
未登場。
・・・なのだが、2018年の冬映画では中の人繋がりのネタがメタ的な方向で出て来ており、出演を期待されていた。
演者の武田氏はビルド編での出演が無かったことを悔やんでおり、犬飼氏からも「キバの方で出番があるかもしれない」と言われていた為、少なくとも本人は出演自体は乗り気だったと思われる。
出れなかった要因としては当時、『ビルド NEW WORLD 仮面ライダーグリス』の撮影があった事や、音也は既に死亡していること、出たとしても話がかなりややこしくなる(1986年の人物な為、動かしづらい)という理由が考えられる。
一応、音也のヴァイオリンの演奏が劇中で流れており、決して蔑ろにされているわけでは無い。
キャラソン
「With me」
劇場版主題歌シングル「Circle of Life 1986Ver.」に収録。
「This love never ends」
イクサシステムをテーマにしたアルバム「Inherited-System」に収録。
余談
- メインライターの井上敏樹によると、彼のモデルは若き日の元気な父・伊上勝らしい。
- 音也を代表する台詞である上記の「1度目偶然、2度奇跡、3度目必然、4運命」だが、これは井上氏ではなく武田氏が考案したアドリブ。
- 上記のように音也は第46話で死亡退場するが、その時点での公式サイトには武田航平のオールアップの記事は出ていなかった。最終回での出番を残していたからであり、魂となって渡に手を差し伸べるシーンで視聴者を感涙させた。が、それにとどまらず、最終場面では紅正夫役として登場し、今度は視聴者の腹筋を崩壊させた。
関連タグ
猿渡一海:数えで32年後(本人準拠。作品準拠では10年後)のそっくりさんでサブライダー。3人の戦友がいる、命を懸けた変身を行う、愛する女性に看取られながら最期を遂げるという点まで一致している。2018年の冬映画では中の人繋がりのネタがメタ的な方向で出てくる。
五十嵐元太:主人公の父親。ふざけた言動で周囲の反感を買いやすい、妻から深く愛されている、2種類のサブライダーに変身、息子の為に命を懸ける点が共通している。
2号ライダー変身者
4号ライダー変身者
外部リンク
仮面ライダーイクサ セーブモード[紅音也Ver.] | 仮面ライダー図鑑 | 東映
仮面ライダーダークキバ[紅音也Ver.] | 仮面ライダー図鑑 | 東映