映画を見てから読むと、面白さ10倍だぜっ。(巻頭の作者コメント)
概要
『コミックボンボン』掲載のコミカライズ『機動戦士ガンダムF91』の事。作者は井上大助。はじけて!ザックや学習まんが・人間のからだシリーズの人であり、決して哀戦士を作曲した井上大輔ではない。
全5話で、単行本はボンボンコミックスの他コンビニ本で出ているほか、大都社から出た『機動戦士ガンダム0080』(著:池原しげと)に併録された。
ボンボン漫画版の例に漏れずだいぶ映画と内容が違うが、30年後の電子レンジに入れられたダイナマイトとは異なり、作者が事前にちゃんと映画を観た上で意図的に変更されているので、話の大まかなあらすじや展開は映画の内容に沿っている。
ただし映画を全5話に収める都合上、ビルギットやアンナマリー、レズリーパパなどの出番は丸ごとカット、もしくは縮小され(アンナマリー及びレズリーは後述のガンダムマガジン版で登場し、ドレルやマイッツァーは本作にて出番が多少ある)、宇宙貴族主義に関しても全く掘り下げていない。また、作者がMSをあまり描き慣れていなかったのか(なお、描写や作画そのものは非常に高レベルである)、MSの小型化に関しても殆ど触れられておらず、旧世代の大型ジェガンタイプとF91などの新世代MSがほぼ同じ大きさで描かれている。
余談として、映画版での食事は、プラスチックトレーに乗せられた簡易的で味気ない物がほとんどであり、その食事シーンはお世辞にもあまり美味しそうな物ではなかったが、今作ではシーブック達がきちんとした茶碗や皿に盛られた料理をガツガツと美味しそうに食べるシーンが、作者の丁寧な作画で描写されているのが特徴である。
なお、同時期に全6号が刊行されていたコミックボンボン別冊の雑誌「ガンダムマガジン」では、上記のボンボン版を短縮、再構成した物を連載しており、基本的な話の流れはボンボン版を踏襲するものの、こちらでは連邦軍に投降したアンナマリーがシーブックと共に戦う話が新規に描かれているという大きな違いがあり、ボンボン版の補完的な要素も持たされている(ただし、今現在もガンダムマガジン版を収録したコミックスは存在しないため、読みたい場合は当時の、もしくは後年復刊されたガンダムマガジンを探して読むしか方法がない)。
ちなみに、ガンダムマガジン版の本編最終回後には特別編(これが連載最終回)が掲載され、こちらは中世に似た時代を舞台に、シーブックが父レズリーが造りあげた中世の騎士風の鎧(F91を模したデザインとなっている)を纏い、姫(セシリー)を助けに行くという冒険活劇となっている。
あらすじ
宇宙世紀0123、西暦でいう所の2168年(※現在、宇宙世紀元年は公式においては不明とされている)。
平和を享受していたスペースコロニー「フロンティアⅣ」に、突如として謎の軍団クロスボーン・バンガードが電光石火の勢いで襲撃を掛けてきた。ガールフレンドのセシリーをミスコンに出場させて賭け金をガッポガッポしていた(※)少年・シーブックは、現れたクロスボーン軍から逃げ惑う内に、多くの友人を失い、更にはコロニーを守る側の地球連邦軍の腐敗を目の当たりにする。そんな中、セシリーはクロスボーン軍に攫われてしまい、シーブックは激高する。
…のだがうまい飯を食ってすぐ落ち着きを取り戻したシーブックは、乗り込んだ戦艦スペース・アーク内にとあるMSがある事を知らされる。その機体は、シーブックの夢の中に無断で登場していた(とシーブック本人が言っている)、かつて自由と平和の護り手とされた伝説のMSに酷似した「ガンダムF91」であった。
※一応映画及び小説版でも(ここまで露骨に大喜びはしていないが)やっております。
主な登場人物
地球連邦軍
「どっしぇ~っ! アーサーが死んじまってるよ!」
我等が主人公にして本作が伝説扱いされる原因の9割を作っている人物。
「見(シー)本(ブック)」の名を持つ原作の優等生ぶりはどこへやら、70年代初頭のロボットアニメから異世界転移してきたかという程の熱血漢で、お調子者かつ短気で能天気。なんというかF91というかドラグナーに乗ってそうな男。
後にパン屋になる事で有名だが、本作時点では沢庵の漬かり具合にシビれたり、F91のコックピットの中で食べたおにぎりの具に舌鼓を打ったりと、かなりの米食派のようである。
原作より早い段階でセシリーにゾッコンであり、彼女が攫われた際には錯乱して大暴れし、飯を食った後もセシリーの名が出た途端に泣きはらし、再会した時には心底大喜びしていた。感情を制御出来ん人間そのもの。とはいえ、家族思いで正義感が強い事に関しては原作と変わらない。
「F91のフェイスカバーが開いた!?」
ご存知ヒロイン。クズ親父(なお血がつながってない方のクズ親父は出番無し)のせいで攫われたり味方になったり忙しい人。
原作同様に超が付く程の美人。その美しさは上記のシーブックが「まぁセシリーちゃんたら、ポ」と鼻の下を伸ばす程。今作ではビルギットが出ていないので、シーブック達のもとに帰ってきた際も特になじられたりもせずあっさりと迎えられている(しかもその際、髪を切った事に気付いた友人達に「相変わらず美人」と今まで通りのノリで言われている。)。
「フンガじゃないでしょお兄ちゃん」
シーブックの大事な妹。バイオコンピュータの暗号解析に成功し、遂にF91が起動する際は、兄と手を取り合って感慨深く見守っていたりする。なお、彼女に語り掛けるシーンで母モニカの事を「お母ちゃん」と言っていたので、本作のシーブックの母親への呼び方は全てのシーンで「お母ちゃん」に統一されている。
「なんてこったシーブック…おめぇは本当にニュータイプじゃねぇかよ…!」
ある意味このマンガで一番得をした人。
映画版に於けるスペース・アークの艦長代行であったレアリー・エドベリが本作では未登場のため、本作では彼がスペース・アークの艦長であり、しかも原作で描写された自己中心的で傲慢な性格ではなく、シーブックと漫才を繰り広げるおもろく気のいいオッサンとなっている。
クロスボーン・バンガード
「バグを使え! コロニー4千万市民を皆殺しだ!!」
ご存知鉄仮面。児童誌設定なのもあってか嫁さんに逃げられた設定はカットされたが、それ故に単にシラフで虐殺を好き好んで行うというとんでもないド外道にされている。特にバグがコロニーを襲うシーンはガンダムシリーズの漫画版でも屈指のスプラッタ描写(映画版の同描写が可愛く見える程)であり、読む際には注意が必要。映画版以上の狂気を見せ、娘からは物の怪とまで呼ばれた。
「ベラ・ロナ様! そやつをぶっ飛ばしてください!!」
感情を制御出来ない人間。
ちなみに本作とか『機動戦士クロスボーン・ガンダム』とかの影響で勘違いしがちだが、実は映画本編ではF91と直接交戦していない。
シーブック大先生の素晴らしき迷言集
「超スーパーすげぇどすばい…」…『機動戦士クロスボーン・ガンダムゴースト』でオウムのハロにネタにされている。
「ワハハききてーか よーしよーく覚えてろよ ガンダムフォーミュラー91どァーッ!!」
「バ…バカスピード違反だっちゅーの…」
「けんどもこんどはドテッ腹ねーーッ!!」
「静かにしろってのトゲゾーくんってば これから射撃大会の始まりなんだから」
「うぬらめが八つ裂きだーーっ!!」
「そったらーてめー念仏唱えろーッ!!」
「ぬかったーッ! 野郎ーーッ!」…なんかこれはキンケドゥ時代なら言いそうな気もする。
「だいじょーV!」
…上記の台詞全てが故・辻谷耕史氏のボイスで脳内再現出来るようになれば君も立派なボンボン版F91ファンだ。
登場メカニック
2分でわかるボンボン版F91
余談
『スーパーロボット大戦』(HDリメイク版)ではこのマンガを反映してかF91が敵に対して「このド外道が!」と発言している。
関連イラスト
関連項目
ボンボン版Vガンダム:これより更にアレなコミカライズ
シルエットフォーミュラ91:本作の連載終了後、上記Vの作者が漫画版を掲載している。
機動戦士クロスボーン・ガンダム:多分後日談
ゲームオーバーだド外道ーッ!:本作を象徴する台詞
宇宙の騎士テッカマンブレード:同じ井上大介がデラックスボンボンでコミカライズを担当。鬱な原作アニメを大胆にぶち壊し改変したが、残念ながら諸事情で打ち切り未完に終わる。