「仮面の下の、涙を拭え―」
概要
タツノコプロ制作のSFアニメで、1992年2月18日から1993年2月2日にかけてテレビ東京、テレビせとうち、テレビ北海道、ティー・エックス・エヌ九州にて放送された。また、テレビ大阪、テレビ愛知、奈良テレビ、テレビ和歌山に加えてTBS系列局約1局、日本テレビ系列局・フジテレビ系列局・テレビ朝日系列局各約2局ずつでも放送されたことがある。全49話。
1994年に続編として、OVA『宇宙の騎士テッカマンブレードⅡ』が制作されている。
かつて70年代に放送し打ち切りとなったTVアニメ「宇宙の騎士テッカマン」のリメイク作品。ただし世界観は異なり、設定や構想の一部が流用されている以外はほぼ別物といえる。
本作の特徴を挙げるとするなら主人公・Dボゥイの過酷極まりない運命、いわば非常に鬱でハードなストーリー展開であり、後期OP「永遠の孤独」の歌詞である「これ以上失うものなどもう無いから」に示されるように、最終的にDボゥイは本当に全てを失ってしまう。制作サイドの非情さは徹底しており、彼に襲いかかる身の不幸は歴代タツノコ作品史上では『新造人間キャシャーン』に匹敵もしくはそれ以上だと言われ、下手をすれば全てのアニメ作品において彼ほど不幸かつ過酷な道をたどったヒーローはいないと思われる。次回予告の決め台詞「仮面の下の涙を拭え」、挿入歌「マスカレード」の歌詞「愛していたはずの者さえも罪という名の仮面を付けたら忘れられる」なども本作の悲劇性を象徴している。
余りに過酷な展開ではあるが、その反動なのかCDドラマや短編ノベライズでは本編とはうって変わりギャグテイストを過剰に含んだ内容でファンの腹筋を組織崩壊させ「いつものあかほり」「声優無法地帯」「仮面の下の涙を返せ」などと評された。
同様に奥谷かひろもアニメディアや月刊OUTでコミカライズをシュールギャグに描いている。また、LD-BOX特典CDドラマでも自虐ネタとして扱われている。
ところでこの作品ではしばしば作画崩壊が発生した、のだが、一般的なそれは作画のクオリティが著しく落ちる事を指すのに対し、この作品の場合「作画のクオリティは高いものの作画監督の個性が著しく反映された結果、回ごとにキャラクターの造詣が別物になる」といった事態を引き起こしている(相羽兄弟の決着が付く重要な回である48話と最終話の二話(及びOPの作画)を観るだけでその傾向の歪さが解る)。
コミカライズ
角川書店刊行のコミックコンプでスタジオOX版が、講談社刊行のデラックスボンボンで井上大助がそれぞれコミカライズを展開したが、コンプ版廃刊で、デラックスボンボン版は雑誌社の方針変更で、それぞれ打ち切り未完となる。
その後、スタジオOX版はバンダイが刊行していたサイバーコミックで完結編が執筆され完結し、単行本も発売された(単行本版も一部加筆)。
スタジオOX版は設定の一部がアニメ版と異なっており、登場人物の立ち位置も大きく異なっているのが特徴。アニメ版以上にハードで鬱な展開だけでなく、見方によってはバッドエンドに近い終わり方になっている。ちなみにpixivでも時折見かける「ボルテッカコラ」の出処はこちら。
井上大助版はアニメとは打って変わりDボゥイは明るく能天気なお馬鹿で、原作では記憶喪失のフリをしていただけに対して本当に記憶喪失になっていたりする。しかしラダムへの憎悪はアニメ以上と言え、非常に過激な台詞が伝説となった。一応原作の中盤まで(スペースナイツ基地崩壊まで)描かれ、エビルとの決着も(半ば強引ながら)付けてはいるので一区切りはしているのだが、オメガとの決着までは描かれていないうえ単行本化もされていない。
ストーリー
連合地球暦192年、謎の宇宙生命体ラダムが突如として地球に来襲し、地球侵略を開始した。人類には対抗する術がなく、その侵攻をただ黙って見ているしかなかった。そんなある日、地球上のラダム獣や地上に根付くラダム樹の調査をしている外宇宙開発機構の前に、正体不明で記憶喪失の青年が現れる。彼は「Dボゥイ」と名づけられ、ラダムの尖兵と酷似した超人テッカマンに変身し、人類が手も足も出なかったラダム獣を事もなく打ち砕いてみせた。
外宇宙開発機構は彼を説得し、どうにか基地に留まってもらうことにしたものの、Dボゥイは自身やラダムのことについて黙して語ろうとしない。
Dボゥイは何者なのか?なぜテッカマンに変身できるのか?なぜ敵と酷似した姿なのか?そもそもラダムの正体は何なのか?
何もかもが不明のまま、反撃の牙を手に入れた人類は、Dボゥイと共に人類存亡をかけた戦いに挑むことになる。
登場人物
スペースナイツ
Dボゥイ / 相羽タカヤ / テッカマンブレード(CV:森川智之)
ハインリッヒ・フォン・フリーマン(CV:鈴置洋孝)
連合防衛軍
バルザック・アシモフ(CV:堀内賢雄)
バーナード・オトゥール(CV:池田勝)
ラダム
フリッツ・フォン・ブラウン / テッカマンダガー(CV:飛田展男)
主題歌
オープニングテーマ
「REASON」(1 - 27話)
作曲:小坂由美子 作詞:安藤芳彦 歌:小坂由美子
「永遠の孤独」(28 - 49話)
作曲:小坂由美子 作詞:さとうみかこ 歌:小坂由美子
エンディングテーマ
「ENERGY OF LOVE」(1 - 27話)
作曲・作詞・歌:小坂由美子
「LONELY HEART」(28 - 49話)
作曲:小坂由美子 作詞:さとうみかこ 歌:小坂由美子
各話リスト
話数 | サブタイトル |
---|---|
0 | 長き戦いの序曲 |
1 | 天駆ける超人 |
2 | 孤独の戦士 |
3 | 防衛軍の野望 |
4 | 理由なき敵前逃亡 |
5 | オレを殺せ |
6 | テックセット不能 |
7 | 起動兵ペガス発進 |
8 | 謎の従軍記者 |
9 | 救出!木星クルー |
10 | 戦火に響く子守歌 |
11 | Dボウイファイル |
12 | 赤い戦慄エビル |
13 | 宿命の兄弟 |
14 | 血をわけた悪魔 |
15 | 魔神蘇る |
16 | 裏切りの肖像 |
17 | 鋼鉄の救世主 |
18 | 栄光への代償 |
19 | 心閉ざした戦士 |
20 | 復活!怒りの変身 |
21 | 愛と死の予感 |
22 | ミユキの決意 |
23 | 傷だらけの再会 |
24 | 引き裂かれた過去 |
25 | 新たなる悪魔 |
26 | 死をかけた戦い |
27 | 残りし者への遺産 |
28 | 白い魔人 |
29 | 戦いの野に花束を |
30 | 父の面影 |
31 | 復讐の街 |
32 | 待ちわびた少女 |
33 | 荒野の再会 |
34 | 光と影の兄弟 |
35 | 霧の中の敵 |
36 | 決戦!!アックス |
37 | 蝕まれた肉体 |
38 | 死への迷宮 |
39 | 超戦士ブラスター |
40 | 愛と戦いの二人 |
41 | エビル・蘇る悪魔 |
42 | 激突!赤い宿敵 |
43 | 訣別の銃弾 |
44 | 迫りくる闇 |
45 | 真実の侵略者 |
46 | 時の止まった家 |
47 | 闇と死の運命 |
48 | 壮烈!!エビル死す |
49 | 燃えつきる命 |
※第0話は設定画や旧テッカマンの映像などを使って構成された特別番組。第11話、第27話、第40話、45話は総集編。
様々な事情に翻弄された不遇の名作
大阪府ではテレビ大阪で放送されていたが、編成上の都合で前半は放送時間帯が不安定且つ半ば不定期放送だった(同時期に毎日放送で放送されていた「少年アシベ2」も遅れネットにして放送時間帯が不安定であり、2019〜2023年時点の読売テレビでのアンパンマンも同様で、現在は漸く土曜早朝で定着している。)
92年夏に消化しきれなかった分を纏めて放送し、92年秋以降は土曜日19時からの放送となったが、即ち当時人気絶頂だった美少女戦士セーラームーンの裏番組となってしまった。
当時、テレビ東京平日18時半枠はローカルセールス枠だった為、TXN全6局と言えども放送時間帯はバラバラの番組もあり、テッカマンブレードもその一つであった。
この事を反省したのか、テレビ大阪では1993年以後、平日18時半枠の番組も同時ネットへと移行した。
ロボットが出ているとはいえ、ロボットアニメでは無いのに『スーパーロボット大戦J』『スーパーロボット大戦W』に参戦、本作の知名度が上がるきっかけを作った。それ以降は関連商品が増え、放送当時発売されなかったぺガスの可変モデルやブラスターエビルの完成品が発売するなど、打って変わって立体化に恵まれることとなった。
『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』においては、タツノコ側キャラクターとしてテッカマンブレードが登場し、旧テッカマンと競演を果たしている。
掲載誌廃刊となったコミカライズを除き、打ち切りこそなかったものの前作同様、本作は色々な意味で不遇のアニメと言える。まず、放送時期がダイの大冒険、横山三国志、クッキングパパ、クレヨンしんちゃん、美少女戦士セーラームーン(先述の通り大阪府での放送後半は裏番組だった)、南国少年パプワくん、ツヨシしっかりしなさい、幽遊白書と言った、空前絶後のTVアニメの当たり年だった1992年の放送だった事で、それらの作品の陰に埋もれる結果となった事と、放送終了後、1998年にテレ東チェックが制定された為、テレビ東京では事実上再放送が不可能となった事でも不遇と言えた。とはいえ、作品自体の評価は高く、前述の通りゲームでの出演で注目を浴びることで本作の評価が見直され、DVD-BOX(BD-BOXも後に発売)や立体化の恩威を受ける結果となった。
余談
- 初期案では『宇宙の騎士テッカマンサイバー』というタイトルで、この時点ではテッカマンのデザインは出渕裕が担当する予定だった。
- 本作は当初『科学忍者隊ガッチャマン』のリメイク版として企画されていたが、プラモ化しづらいことや、プロデューサーの植田もとき氏が『テッカマン』の大ファンであることから『テッカマン』のリメイクになったという。
- キャラクターデザインを担当したTOIIIOとは、湖川友謙の変名。
- ストーリー構成は第26話を頂点にした方曲線を描く構成と、2回目と最終回でDボゥイとアキと別れ、最初と最後でDボゥイが地球へ落下する展開となっていた。また、本編のキモを省き「何故語らないのか?」で引っ張る構成にしていた。あかほりさとるによると、この構成は大映テレビの名作ドラマ「赤いシリーズ」から範に取ったと言っていた。(アニメージュ93年のインタビューより抜粋)
関連イラスト
関連タグ
増子司:スーパーファミコンで発売されたゲーム版の作曲担当。全曲ゲームオリジナル楽曲でサウンドドライバが真・女神転生と同じものを使用しているためメガテン風の曲調になっている。
関連作品
本作の続編であるOVA。本作と打って変わっていわゆる「萌え」と更に後半は「腐」を大きく打ち出した作品となっており、本作のファンを唖然とさせた。ただしセールスは好調だったらしく全3巻の予定が全6巻となっている。ちなみに後半3巻は本作の様なシリアス寄りの展開となった。前日談のコミカライズ&CDドラマと後日談のノベライズである程度補完できる。
リメイク元の作品。前述の通り、本作とはほとんど関連性は無い。本作との区別のため、こちらは「元祖」と呼ばれる事もある。元祖とは「タツノコVSカプコン」の海外版「ALTIMET-ALLSTARS」にて共演。
大張正己監督のOVA。実はこの作品を観たタツノコプロのスタッフが触発を受け、本作が制作されるきっかけとなった。この為か本作のOPは大張氏が担当してる。また、オーガンとは「スーパーロボット大戦W」にて共演している(ブレードⅡとも共演)。