「始めようぜ!デスゲームを……!」
演:俊藤光利
概要
孤門一輝および平木詩織隊員が配属される以前に、TLT-J特殊戦略任務班ナイトレイダーAユニットの副隊長を務めていた男。32歳。
隊長の和倉から「ビーストハンターとしての腕前は自分以上」と評されるほどの凄腕の隊員であり、後に副隊長となる西条凪を鍛え上げたのも彼である。デュナミストとしての素質もあったらしく、姫矢准や千樹憐達が見た遺跡の夢を彼も見ていた。
だが彼がスペースビーストと戦う理由は「死ぬことが怖い」という恐怖心からであった。やがて溝呂木は闇の中から次々と出現するビーストたちの存在に恐怖し、それらを克服するための「力」を渇望するようになり始めた。
闇の巨人へ
孤門入隊の一年前、溝呂木はビーストヒューマンに占拠された倉庫の中で黒い巨人ダークメフィストと遭遇する。「力こそがすべてに優先される真理」、「自分は溝呂木が望む溝呂木自身の姿」と嘯くメフィストは溝呂木と融合し、彼の心を支配してしまう。
翌日、溝呂木はノスフェルを操ってナイトレイダーの別ユニットを壊滅させ、姿を消した。
メフィストと融合した事で未来予知能力を手に入れていた溝呂木は「ウルトラマンネクサスを倒し、その力を手に入れる」「西条凪を自身の伴侶とする」という二つの目的を達成するために行動を開始。
手始めに孤門一輝に目をつけ、彼の恋人である斎田リコとその家族をノスフェルと共に襲撃し惨殺。リコを自身の手下であるダークファウストに変えてネクサスやナイトレイダーを襲撃した。さらにノスフェルやガルベロスを利用して人間を捕食させ、ファウストが敗れた後もリコの幻影や山邑一家を利用した作戦で孤門に執拗な精神攻撃を仕掛けた。
自身もメフィストに変身することで強さを誇示するも、孤門は絶望の淵から立ち上がり心身ともに成長してしまう。また、悪行の数々は凪の怒りを買ってしまい、彼女からも面と向かって決別を言い渡されてしまった。
その後、ネクサスから光の力を強奪して最強の存在となる為、ネクサス=姫矢准の知人である佐久田恵を人質に取り、終焉の地に誘き寄せたネクサスをクトゥーラの触手で磔にしてしまった。
しかし、ナイトレイダーの活躍でネクサスが復活。クトゥーラも倒されてしまったため直接対決を挑む。この際、復活した姫矢に対して、
「力とは、他者を支配し、圧するためにある。それに気付けぬお前が勝てるはずがない!」
と啖呵を切っているが、姫矢からは、
「この力は、決して希望を捨てない人々のためにある。それに気付けぬお前が、勝てるはずがない!」
と返されている。しかし、それに対しても、
「希望……笑わせるな!俺は無敵だ!断じて負けはしない!!」
と応え、互角の戦いを繰り広げた。
壮絶な空中戦の末、両者はオーバーレイ・シュトロームとダークレイ・シュトロームを撃ち合い、発生した対消滅爆発に紛れてメフィストはダークレイ・クラスターを放とうと試みる。しかし、そこに突進してきたネクサスの鉄拳を受け、両者は共に爆風の中に消え去ってしまう。
こうして、英雄と黒い悪魔は、終焉の地で散ったかに思われた……
贖罪
しかし、後にホームレス同然の姿で生存していたことが発覚。
記憶と変身能力を失い、失った記憶にこびりつく恐怖と罪の意識から逃げ惑っていた。
放浪生活を送る中、偶然にもかつて孤門への精神攻撃に利用した少女・山邑理子と再会する。
自身と同じく記憶を失った彼女に親近感を覚え、バンピーラに狙われる彼女を助けようと試みたが、その途中でTLTに捕獲され、ビーストの情報を得るための実験と称した拷問を受けることになった。
しかし、アンノウンハンドのテレパシーで失った記憶を取り戻し、野々宮瑞生を人質にして逃走を試みる。彼は記憶と共に、闇に囚われる以前の人格を取り戻しており、逃亡を試みたのも理子に自身の罪を告白し、贖罪するためだった。
追手として現れた孤門と凪に追い詰められた際には、わざと撃たれて復讐を遂げさせようとするも、数々の試練と共に憎しみを乗り越えた二人は復讐を望まなかった。溝呂木はそんな彼らに苦笑しながら投降しようとしたが、新たな闇の巨人とされてしまったメモリーポリスの三沢広之に狙撃され、重傷を負ってしまう。
ダークメフィスト・ツヴァイに追い詰められるジュネッスブルーを見た溝呂木は、闇の力ではなく自身の心の光の力で再びダークメフィストに変身。抜群の戦闘センスを活かしてツヴァイを圧倒した。
変身前に負傷していた脇腹をメフィストクローで貫かれて致命傷を負うも、それを利用してツヴァイを拘束。憐に対して「俺に構わず撃て!それが光を得たお前の役目だ!」と叫び、ツヴァイ諸共アローレイ・シュトロームで貫かれた。
変身解除された溝呂木は凪から、
「死んで罪を償うなんて、最期だけ人間らしい顔をして、そんなの卑怯よ!」
「罪を償うなら生きて、もう一度、人間として」と叱咤される。
ようやく心の安息を得た溝呂木は微笑みを浮かべ、「もう一度、人間として……」と呟いたが、そのまま凪の胸元に倒れ込み、粉雪が舞う森の中で静かに息を引き取った。
だが死の間際、彼は「アンノウンハンドはすぐ近くにいる」と警告を遺していたのだった……
もし彼が闇の誘惑に負けずメフィストになることを避けることができていれば、防衛チームに所属しながらウルトラマンとして戦う、典型的なウルトラシリーズ主人公になれていたのかもしれない。
コミカライズ版では
椎名高志によるコミカライズ版では、TVシリーズ後半における更生の過程は描かれなかったが、単行本オリジナルの完結編・第10話に登場。ジュネッスブルーに覚醒した孤門の前に現れ、セラや他のデュナミストたちと共にエールを送った。
「孤門……俺の過ちを正してくれ」
「……人の心は弱く、世界は闇で満ちている。だから人はたやすくそれに呑まれてしまう」
「だがな……」
余談
溝呂木を演じた俊藤光利氏は姫矢准役のオーディションにも参加していた。
このような「ウルトラマン役のオーディションに参加した役者が悪役を演じる」ケースは後発の作品にもあり、例えばジャグラスジャグラー役の青柳尊哉氏はクレナイ・ガイ役のオーディションに、霧崎役の七瀬公氏は工藤ヒロユキ役のオーディションに参加していた。
俊藤氏は後に『大怪獣バトル』にクマノ隊員としてレギュラー出演している。
溝呂木への思い入れが深かった為、クマノ役のオファーを貰った当初は抵抗感があったという。
また、エンディング後のおまけコーナー「大怪獣バトルファイル」でガルベロスが紹介された時は、突然溝呂木のような口調になってとても細かく紹介しようとし、ザラブ星人の妄想でも(何故か敬語で)ガルベロスを召喚しようとするといった小ネタが見受けられた。
関連タグ
ケケラ:約18年後の特撮作品に登場する中の人繋がりのキャラクター。目的のためなら手段を選ばない狡猾な一面を持ち、特定の人物の大切な人を結果的に死に追いやることで精神的に追い詰める点で共通している。ただし、溝呂木は自身の配下と共にターゲットの親しい人物に危害を加えて手駒として利用したのに対し、こちらは元から悪人の人物と手を組み、尚且つ自らの意思で悪事に手を染めた人物が起こした事件を利用した点が異なる。2023年11月8日の尊哉の部屋ではカエルのスペースビーストであるフログロスと合わせてネタにされた。